純潔な女性<ひと>、満ち足りた心   作:kwhr2069

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盛大に遅れました。こちら第二話です。

明日はマルちゃんの誕生日なので、頑張って書き上げて投稿する心づもりです。
ちなみに展開自体は決まってますが、話を組み上げることにどれくらい時間かかるかな、という感じです。

いやホント、グダグダになっちゃってますけど頑張るので!!
ひとまず今話、よろしくお願いします!


私たちの海

 海辺に、二人の女性が並んでいる。

 

 黒を基調としたワンピースを着こんだ女性は、砂浜に立ち海を眺める。

 ダイビングスーツに身を包んだ女性は、そこにしゃがみ込みぽつぽつと言葉を紡いでいく。

 

 そうして彼女の口から語られたのは……。

 

*  *  *  *

 

 私は、浦の星を卒業後、一人外国へ渡った。

 厳密に言えば外国の大学に進学した親友も一人いたけど、国が違うから話は別。

 

 私が海を渡った理由。

 それは海外でダイバーの資格、すなわちダイビングライセンスを取得するため...というのは実は、要因としてはさほど大きくない。

 日本にもその資格を取得できる学校はあるし、海外の学校へ行く方がお金もかかる。

 

 それでも、両親を説得してまで海外進学を希望したその理由は、簡単に言うなら自立のため。

 私が愛するこの地元だけじゃなく、もっと他の海も見てみたいと思ったから。

 そして、これまで一緒に過ごしてきた親友たちと別れることで、自分をもっと成長させたい、と。

 ただ、その二人も地元を離れるという選択をすると聞いた時は驚いたけど。

 

 

 このことについて悩んでいた時、最後のひと押しをしてくれたのが、他ならぬ祖父だった。

 一言、広い海を味わってきなさい、と。

 

 あとで知ったのだけど、祖父も若い頃に海外でダイビングをやって、そこから本格的にお店を建てることにしたのだそうだ。

 

 そんなこんなで、色々なことが起こった後、私は高校を卒業。

 実際に通う学校に入学した。

 

 海外での学生生活、しかも単身女子での入学という事で、住まいは学校付属の寮。

 

 私が初めに直面したのは、英語でのコミュニケーション...ではない。

 単純に、季節の逆転という違いだった。

 

 渡航先を決めるときに候補に挙がったのは、二つの国。

 そのうち一つは、なんだかあの子を追いかけてるような感じがして、やめた。

 それで選んだ国は、時差こそほぼ無いけれど、季節は真逆な、自然あふれる国。

 

 実際に来てみて感じたのだが、本当に季節感が逆だというのは違和感だった。

 簡単に言うなら、タイムスリップをした気分。いやまあ、タイムスリップしたことなんてないけど。

 

 一方で英語でのコミュニケーションに関しては、特に問題なかった。

 それもこれも、”海外に行くならEnglishは必須デ~ス”なんて言って、ほぼ毎日英会話をさせられた親友のおかげなんだけど。

 

 結局のところ、私は助けられてばかり、支えられてばかりなのだ。

 

 そんな自分から脱却するためと、強い決意で飛び込んだ海外での経験の数々は、私にとっては新鮮なことだらけで。

 一年目は、それこそ何も考える暇などなく、怒涛のように過ぎ去っていった。

 毎日が学びの糧で、私自身成長していると感じることが出来た。

 現地の人たちとの新鮮な出会いも、私を成長させてくれた貴重な財産だ。

 

 二年目からは、少し心にゆとりも出てきて、自分の時間も増えた。

 まあ単純に、海外での暮らしに慣れたという事もあるのだろうけど。

 

 そこで私は、新たな事にも挑戦し始めた。

 それは、本格的な英語の勉強。

 

 実は、ダイビングライセンスの取得というのはそれほど期間をかけるものでもない。

 基本的に二年間で取得することが可能なのだ。

 そこで、その二年目をより有意義なものにするため、あえて自分を厳しい方へと追い込み、充実した海外でのキャンパスライフを試みたのだ。

 

 しかし、この決断が後に私を大きく苦しめることになる。

 

 今考えてみれば、当たり前なことだ。

 

 いくら慣れてきたとはいえ、あくまで自分がいるのは海外。

 当然ながら、不測の事態というものが起こりやすい環境なわけで。

 更に言うと、基本的に二年間で取得できるライセンスも、違うことを並行して学べばそれだけ大変にもなるし、余裕もなくなってしまう。

 

 そんなことも考えず学習意欲だけで突き進んでいた私は、後に痛い目を見ることになった。

 

 それが、大学生となって2年経った時の、7月頃の話。

 ダイビングライセンスも英語も座学メインの忙しい時期で、毎日勉強漬けだった。

 長期休暇に入っても、自習に追われる日々。

 

 そんな時。

 ふと頼りたくなって、夏季休暇に入っているであろう私の親友に、一本の電話をかけた。

 

 でもそれも、何でもないフリをして切った。

 

 元々は自立のために海外へ渡航したのに、結局頼っている自分に気付いたから。

 

 

 それから、なんとかしてダイビングライセンスも取得し、英語の学習も一段落つき。

 久々に帰郷した私。

 

 そこで待っていたのは、寂しい街だった。

 

 誰もいない。

 私が一緒に暮らした親友も。後輩も。

 

 そして同時に悟った。

 ”寂しい”という感情を抱いた私は、要するに何も成長できていなかったという事を。

 

 

 だから、本来なら資格を取ってからすぐに実家で父の仕事を手伝う予定だったところを無理やり延ばして、私は再び大学の二年間を過ごした国へと帰った。

 

 

 そして、今。

 祖父の死という形で地元に帰ってきた私だけど、その目に映る街は半年前と何も変わっていない。

 私は未だに何も変わることが出来ていないんだなと思い、少し悲しくなった。

 

*  *  *  *

 

 そうして語られた彼女の過去を、砂浜に立った女性はただひたすらに聞いていた。

 聞いているだけなのにどこか安心感のある彼女の佇まいに、過去を語る彼女の口は止まらなかった。

 

 止まらぬ口で彼女は尋ねた。

 あなたは何者なんですか、と。

 

 問われた彼女は少し考えた後、言った。

 単なる一人の心理カウンセラーですよ、と。

 

*  *  *  *

 

 祖父の葬儀は、慎ましく厳かな雰囲気で執り行われた。

 

 涙は出なかった。

 おそらく、昨日海で全部洗い流したからだろう。

 

 海と言えば、昨日浜辺で出会ったあの人は、どこへやら。

 今日は姿が見えない。

 

 いや、当然と言えば当然なんだけど。

 昨日話を聞いてくれて、心がすごく落ち着いたからそのお礼もしたかったのに、残念。

 

 ただ今になって思うと、昨日は本当にぶっちゃけた話をし過ぎてて正直恥ずかしさが残ってる。

 

 

 昨日語った過去の話と関連して、葬儀で一つ思い出したのが一人の後輩のこと。

 彼女は、こんな私を慕ってくれて、卒業して海外に行くという話をした時も、一番気にかけてくれた記憶がある。

 

 今頃彼女は何をしているのだろうか、と。

 会うはずもない後輩の事に想いを馳せながら、私は、祖父のいなくなった街と海を眺めていた。

 

 




ダイビングライセンスについては、調べた限りだと大学四年間で取得する代物ではなさそうだったので独自路線でこんな形に。
正式には違うのかもしれませんが、その辺りは目を瞑って頂けると有難いです。

…と、いうことで。
今から24時間以内にお会いできることを祈り、今日はひとまずここで。

では、ここまで読んでいただき、ありがとうございました!!
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