純潔な女性<ひと>、満ち足りた心   作:kwhr2069

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間に合いました…!
紆余曲折あり、一度は今日中の投稿を諦めもしましたが何とか踏ん張って書き上げました。

とはいえ長い前置きもアレなので、本編へ参りましょう。
短編第三話で、視点がこれまでからガラリと変わっています。宜しくどうぞ。

花丸ちゃん、Happy Birthday!!


花丸side

 ここは、関東に位置する大学の、とある一つのキャンパス。

 

 この大学に一年前から通っている私は今、ある事情からキャンパス内を駆けまわっていた。

 

「国木田さん、そこに積まれてる箱もさっきと同じ場所に…」

 

「あ、マルちゃんお疲れ~なになにお手伝い?」

 

「ちょっとそこの人、ここの扉開けてくれる?今両手塞がってて」

 

 言われるがまま、私に対する呼びかけへの返事もそこそこに、手足をせわしなく動かす。

 とにかく忙しい。なにしろ大慌てで作業しているし。

 

 ただ、楽しさもある。

 こんな風に、色んな人たちと協力して何かを成し遂げようとすることは好きだ。

 それにこの仕事も、自ら希望して引き受けたもの。

 弱音なんて吐いていられない。

 

 

 そして。

「ありがと~助かったよ国木田さん」

 

「ということは、これで準備は完了...ですか?」

 

 私の問いかけに、グッと右手の親指を立てて応える。

 

 この人は大学の先輩で、年は二つ上。

 私が入学してきた時、一番最初にお世話になった先輩。

 右も左も分からない私に色々教えてくれたし、本が好きという共通点もあった。

 文芸部のようなサークルでも一緒に活動している。

 

 その反面、私と違ってアクティブなところもあるこの先輩は、大学の生協にも加入している。

 

 そして今日は、何を隠そうオープンキャンパスの日。

 この大学では高校の生徒たちが夏休みに入ったばかりの時期に開かれるのだが、先輩を始め多くのボランティアの人たちが、今日までもその準備に追われていた。

 

 それで私も、先輩と一緒ならという事で微力ながらお手伝いをすることにしたのだ。

 

 仕事自体はこれまでもやっていたけど、今日は実際に生徒たちが来る。

 その人数などの最終確認だったり、それに伴った案内板の設置であったり。

 時間ギリギリまでの作業で、なんとか無事に済ませることが出来たみたい。

 

 

「それじゃ...って、何してようか?」

 

 先輩が少し困った顔で問う。

 

 確かに、先輩はこれからも働くことにはなるが、私は準備までのお手伝い。

 居てもむしろ邪魔になるだけだ。

 

「ん~私は、来てる生徒さんたちの様子少し見てから、帰ろうかなと思いますけど」

 

「そうね。まあ、長居してもやることなくて暇だろうから...」

 

「はい」

 

「ありがとね、国木田さん。ホントに助かったよ」

 

「いえ...私もお手伝い出来て楽しかったですから」

 

「それなら良かった(笑)」

 

「ではまた、先輩」

 

「うん!ホントにありがと!

 今日はゆっくり身体休めてね~」

 

 そう言いながら先輩は、足早に立ち去っていった。

 恐らくこれから予定がある場所へ向かったのだろう。

 

 

 それでなにするか、何だけど…。

 先輩にはああ言ったものの、様子を見るってどんなだよと、自分にツッコミを入れる。

 

 大学にもう特に用はないので、とりあえず出口へ向かうことにする。

 

 するとそこで、三人組の女子が目に入る。

 何となく見ていると、昔のことを思い出した。

 

 

『ほら二人とも見て見て!』

 

『すごいおっきな建物ずら~!

 でも、こんなところに来年から通うなんて、マル不安になってきちゃった』

 

『確かに想像できないね...』

 

『…善子ちゃん?』

 

『ヨハネよ』

 

『はいはい。

 それで?どうしてそんなに縮こまって歩いてるずら?』

 

『何よ?別に...人の多さに怖気づいてるとかじゃないんだからね!?』

 

『………』

 

『なんとか言いなさいよ!』

 

『クスッ』

 

『あ!笑ったわねルビィ!』

 

『ごめん、でも...』

 

『でも、何よ?』

 

『なんか、ね?花丸ちゃん』

 

『うん。善子ちゃんのおかげで、不安が相殺された気がするずら』

 

『そうそう』

 

『……』

 

『どうしたずら?』

 

『バカにするなぁ~!』

 

『あはははっ』

 

 

 …あれは確か、三人で初めて関東の大学までオープンキャンパスを利用して行った時のことだ。

 懐かしい記憶に、思わず頬が緩む。

 

 その思い返しで、周りに目がいっていなかったからか。

 

ドンッ

「痛っ」

 

 影から出てきた人にぶつかってしまった。

 

「すみません!」

 

 咄嗟に謝る。

 

 頭を下げて数秒。

 返答がなく心配になって顔を上げる。

 

 すると目の前に、私の顔を見てポカンとしている女性が。

 

「あの...もしかして変なとこぶつかりましたか?」

 

 もしや記憶が飛んでいるのではと疑い尋ねる。

 いや待った。

 変なとこぶつかりましたか、はなんだか違う気がする。

 

 そう思って訂正しようとしたところ、

「国木田...花丸さん?」

 

 唐突に名前を呼ばれる。

 見知っている覚えがない私は困惑してしまった。

 

「えっと、あの...どこかでお会いしたことありますか?」

 

 そう尋ねると、

 

「それはこちらの台詞です...」

 と返され、すっかり何がなんだか分からない状態に。

 

「いや、名前...」

 

「ああそれは、そちらの名札で」

 

「あっ」

 

 すっかり失念していた。

 オープンキャンパス準備のボランティアに参加する際。

 誰が誰かが分かるように、とそれぞれが服に名札を付けることになっていた。

 それを使ってこの女性は私の名前を呼んだに違いない。当たり前のことだ。

 

「それで、どこかでお会いしたか...という話でしたが」

 

「いえ、それはもう忘れて下さい。

 単なる勘違いでしたので」

 

「そうですか...」

 

 ただ、言われてみると私も、何だか見覚えがあるような気がしてきた。

 

「…と、すみません。ぶつかっておいて。

 お怪我とか、ありませんか」

 

「はい、問題ないです。

 貴女の方こそどこか痛んだり…?」

 

「私も平気です、問題ありません」

 

「それなら良かった。

 大事な生徒を傷付けるところでした...失格ですね」

 

「生徒?」

 

「はい。お見受けするに、本校の学生さんでしょう?

 私はこんなですが、一応この大学に勤めているんですよ」

 

 !?

 私、やらかしちゃった…?

 

 でも、普通に考えてみればそうだ。

 校内にいる年上の方は、大抵は先生という立場の方に決まってる。

 

「すみません...私、知らなくって...」

 

「そんな。全然気にされなくていいですよ」

 

 …と、いうことはだ。

 私の抱いた既視感は、大学の中で見かけた事があったからなのだろうか。

 

 定かではないけれど、それが一番、可能性としては高い気がする。

 

「それで貴女は、どうしてこんな日に大学へ?

 もしかして生協の?」

 

「ええと、サークルの先輩が生協に入ってるんですが、今日はそのお手伝いで...」

 

「…人のために尽くせる、優しい方なのですね」

 

「そんな、優しいだなんて。言い過ぎです...」

 

「そうですか?

 自ら人のために働こうと思える人が、優しくないわけがないと思いますが」

 

「そうなんですかね?」

 

「そうですよ」

 

 何だろう。

 少し頑固な人なのかな。

 褒められることは嬉しくもあるけど、少し恥ずかしいかも。

 

 ちょっと照れくさくなって、歩き出す。

 

「それで手伝いも終わったので、帰るところだったんです」

 

「なるほど」

 

 そう言いながら、当然のようについてくる女性。

 

「先生の方はどのような用事だったんですか?

 やっぱりオープンキャンパス関係で?」

 

「まあ、そんな所です」

 

 やや曖昧に返される。

 何かあったのだろうか。

 

 でも、わざわざ私が踏み込んでいいような話じゃないかもしれないし。

 

 やや困った私は、失礼しますと断りを入れ、スマートフォンをポケットから取り出す。

 

 何となく、最寄り駅の時刻表を確認する。

 

 あまりこの時間帯に電車に乗ることはないから、ちょっと確認。

 まあ、本数は割とあるからそこまで待つ必要もないんだけど。

 

 …と、そこで。

 

 メッセージアプリに、母からの通知が二つ。

 気になって見てみると、そこには。

 

「えっ」

 

 驚くべき事が書かれていて、思わず手に持っているスマホを、私は二度見することになった。

 

 それは。

 

 

 私の高校の時の1人の先輩。

 果南ちゃん。

 

 その祖父が亡くなったという、訃報だった。

 




次話は、なんとか海未ちゃんの誕生日よりも前に…願わくば日曜くらいには投稿したいと思っています。
応援して下さると嬉しいです(笑)

それではひとまず、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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