気づいたら大自然 小心者の異世界闊歩   作:yomi読みonly

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すみません、気が付いたらいつの間にか22話が消えていたので、再投稿。

バックアップで残っていたやつをそのまま出したので、誤字脱字あるかもしれませんが。

その時は温かい目でスルーしていただくか、優しく助言などいただければ幸いです。

では…

消えてしまった22話、始まります。


第22話 その名はフレイラ

(……ヴェールさま?)

 

 何故その名前を…それになんで今、扉の外に居る存在は自分のことを「さま」と言ったのだろう…いきなりわからない事だらけの事態が発生したぞ…

 

 ひょっとして、何かの情報系魔法で自分の存在を感知した何者かか?

 

 第3位階程度で限界を迎えてしまうような存在が多いこの世界で、そこまで高性能の探知魔法を使える者がいるとは思わなかったが…

 

 そういえば、あそこの村で夜通し会話していた時にモモンガさんから聞かせてもらった話で「一度、攻性防壁が発動したことがある」と言っていたっけ。

 

 多くはないというだけで、ゼロではないということか?

 

 油断しすぎるのも問題ってよくモモンガさんもPVPに関しての知識で教えてくれたことがあったな…それはそうと、なんて答える? どう答えるのが正解だ?

 

「その名前には聞き覚えがありますが…今ここに居るのは私たちだけですね。その人になんの御用でしょう?良ければ私が代わりに要件を承りますが?」

 

(これは一応ウソじゃない…相手がどう受け取ろうと、なんとでも解釈できるように伝えようとした結果だ、一言も「自分はその人じゃない」とは言ってないし、「ここに居るのは私たちだけ」って言うのも間違ってはいない、「自分が要件を聞く」というのも自分=ヴェールと言う線を結ばせないようにするためだ。)

 

「何をおっしゃいますか…扉ごしでも伝わるこの強大で温かみのある気配。私がこの気配を間違えたりするはずがございません! 私を試しておいでですか? マスター?」

 

(しまった! 探知対策の装備をして居なかったか…しくじった! …って、え? 今、この子…なんて?)

 

「失礼、今、聞き捨てならない言葉を聞いた気がするのですがね? 私のことをなんて言いましたか?」

 

(気が付いたら、なんか怖い顔したエルフの3人娘が扉の前まで来て、じっと耳を澄ませている…そんなことしなくてもキミら、耳がいいんだから聞こえてるでしょ~に…)

 

「マ・ス・ター…と言いました。この身の全てがあなたの為の物…どのようなご寵愛も、ご命令も…御身の為とあらば…全身全霊を持って当たらせていただきます。」

 

(う…なんかこの言い方、最近モモンガさんから聞いた、『部下の忠誠が高すぎて、振る舞い方に気が抜けない』って言ってたのに似てる気がするけど…、これのことか?)

 

「私を「その人」と結びつける要素はなんです? 声も話し方も違うのではありませんか?」

 

「その程度のこと…なんの障害にもなりません、お言葉の一つ一つに、マスターの温もり、温かみを感じます…そう、まるであの時…私をその腕で包み込んで涙してくれた『あの時』のように…」

(おい!なんだそれ? この世界に来て、そんなこと誰にもしたことないぞ! いつの話で誰のことだ!)

 

 そう思っていると、自分が次の言葉を言うより早く…(会話しながらも、話の合間で幻影魔法を使って、彼女たちに纏わせていたので、見た目はまんま、耳を斬り落とされたドレイ状態なのだが)エルフの3人娘が扉をすごい勢いで開けて、外に居る存在に対して、問い詰めモードに入ってしまっている。

 

「ちょっと!突然来て、あなた何のつもり?、ヴェールさんの何なの?」

「そうです! 私たちにだって、そんなことしてくれたことはないと言うのに…」

「それより、マスターはやめていただけません? そんな言い方を誰かに聞かれたら、困るのはあなたが「マスター」と言ってはばからない当人なのですよ?」

 

 3人が3人とも、剣呑な雰囲気で、ケンカ腰な空気を漂わせている。しかも、セピア…キミ、なにげに私がヴェールだってこと、バラしてくれちゃって…と、少し顔を手の平で覆いかけたが、「イヤ…まだ直接バラされたわけじゃない、まだやり直しは効くか…苦しい状況だが…」と、頭を上げ、訪問者の顔を見る…と同時に衝撃が走った。

 

 その顔は忘れられるわけはない…ユグドラシルで自分が唯一、作った、そして起動させることも出来ず…置き去りにせざるを得なかった…そしてそのまま去ることになって二度と会えないかと思っていた存在…自分のただ一人のNPCだ…。

 

「お前…フレイ…? もしかしてフレイラか?」

 

「あぁぁ…マスター…お姿こそ当時と変わられましたが…、私の名前を憶えていてくれたことだけで私は嬉しゅうございます。マスター!!」

 

 そう言って肉食獣のような金色の瞳に涙をいっぱいに貯め、エルヤーの姿のままのベルリバーに抱きついて、縋りつく。

 

「マスター…この日をどれだけ待ち望んだことか…」

(あぁ…そうか、さっき言ってたことって、ボクがユグドラシルでギルメンみんなの多数決で起動は認められない、って空気になった後、自分の部屋に戻ってからそんな行動したっけか? ほとんど忘れてたけど…)

 

「ちょっと、セピア、その扉閉めて? いい加減誰かに見られたらマズイでしょこれ…」

 

「分かってるけど…それ、どうするの? チームには入れられないでしょ?今更…」

(むくれながらも少し乱暴に扉を閉めるセピア、その行動からして心中穏やかではないようだ。)

 

「まぁ、その話は後よ、それより先に…事情の方を聴かせてもらいましょうよ……ね? ヴェールさん?もちろん…言えない…何てこと、ないですよねぇ~?」

 

 氷のように張り付いたような笑顔で固まった様に感じさせる表情を向けてくれるディーネにちょっと寒気が走った。

 

「あぁぁ…この子、前に言ったでしょ? ボクの娘…、唯一造った一人娘。」

 

「「「え?」」」

(そりゃ、そうなるよな、自分も今そんな心境だよ、こっちだって事情が分からないんだから、こっちが説明してほしいわ)

 

「ちょっといいかい? フレイ…こっちも会えて嬉しいのは嬉しいんだけど…なんでお前がここに? っていうか動けるようになったのか?」

 

 落ちつかせるように頭をなでながら、ゆっくりと体を離して、なるべく優しく語り掛けてあげた。

 

「はい、至高の御身であらせられる、モ…ぁぁいえ、アインズさまによって、命を吹き込んでいただきました。」

 

「そうか…そういうことか…よくわかった、ありがとう」

(あの時、ただのイジリかと思ってたから気にしてなかったけど、本当に動かしてくれたんだな、モモンガさん…ありがとう。)

 

「それはそうと、見慣れない手袋してるな…それとも拳を保護するためのグローブか?」

(なんか女の子がするにはゴツい気がするな…左右の手袋共に甲の部分に鉄板があって、その鉄板には、見事にカットされた鮮血のような色をした真っ赤な宝石がはめこまれている。

 

 それぞれの指の拳頭と呼ばれる部分にはコーン(円錐)状に突起がびっしりと4つ、規則的に並んでいる…、恐らく真っ赤な宝石はデータクリスタルだろう。

 

 相手を打ち抜く拳のインパクト部分に円錐が親指以外の4指の付け根に一つずつ合計で4つ付けられている為、見た目の殺傷力がえげつないような見た目に感じてしまう…こっちの世界の一般人ならかなりダメージ行くんじゃないか?)

 

 そう思いながら、しみじみとゴツい手袋を見ていると、主からされた質問に嬉々としてフレイラが答え始める。

 

「はい、これはアインズさまから賜ったもので、これで殴ると相手の体内で<熱波の炸裂(フレア・ブラスト)>が発動するそうで…自動か任意かは聞いておりませんが…そういうものだそうです。」

(すごい嬉しそうに話してくれてるな、まぁモモンガさんって、昔っから身内にはダダ甘だったもんなぁ~)

 

「基本が自動で、手加減が必要な時は「カット」して体内を焼き尽くしたりしないようにする必要があるか…それとも基本が任意で、手加減不要の相手にだけ心の中で「ブラスト!」って言うのかのどちらかが必要になるんだろうが…」

 

「どうなのでしょうか…実験する機会がなく、マスターの助けになるようにと、アインズさまからご命令を受けてすぐに飛び出してきてしまったもので…」

 

「そうなのか…ならそのグローブみたいなので殴るときは、その前に「ブラスト効果オフ、発動機能、カット」って言ってから殴る必要があるな…一応頭に入れておいた方がいいぞ?」

 

 そうは言った物の、街に行ってなにかしらの活動をするよりも、墳墓への調査依頼の期日が来ちゃいそうだな…と思ったベルリバーは、先ほどの発言内容を少しだけ変えて言い直す。

 

「まぁ、その辺は今度、ナザリックに行った時に好きなだけ、実験できるだろうさ」

(ついそう言って頭をなでてしまう…これはもぅ、しかたないな…こういうのを心のどこかで待ち望んでいたんだから。)

 

「それはそうと、お腹は減ってないか?今、ちょうど食事をしていたところでな…」

(打ち解けるにはまずは食事をしながらっていうのは王道だよな、やっぱり。)

 

 ベルリバーとしては他のメンバーとも打ち解けてもらいたいからこその提案であり、4人とも仲良くしてもらいたかったという心配りで言ってみたのだが、思わぬ返答を受ける。

 

「と…、とんでもございません!御身の盾となり、剣となるため、それこそが喜びであり、そうであるように創られた私のような存在と同じテーブルで…しかも御方のお食事に手を付けるなどと言う非礼、なによりそのような行い、不敬にございます。」

 

(うぉぅ…出た、これか!モモンガさんが苦労してるって言ってた、「納得させるための言い訳探しが大変なんですよ」って言うの…あの時は実感なかったけど、目の前で展開されると…こう…何と言うか…、来るものがあるなぁ~…)

 

「そ…そう…か? ムリにと言うつもりはないけど…」

 

 彼が言い淀み、これからどうしようかと悩んでいると、一瞬、その食材を見た瞬間にフレイラが立ち上がりその料理が盛られた皿を持ち上げた。

 

「ど…どうした?急に…?」

(なんか気になることでもあったか?)

 

「大変申し訳ございません、差し出がましいことは重々承知の上、それは理解しております、ですが…それを伏して、伏してお伺いいたします…これはそちらのエルフさん方のお食事でしょうか?」

 

「え?違うよぉ~? さっきまでヴェールさんが…「ヴェールさんが!」食べていたお食事だよぉ~?」

 

(やたらそこを強調するな~…でもそこをちゃんと後でボクからも言っておこう、そうでないと、このまま「マスター呼び」が定着したら大変だしな…)

 

「どうかしましたか?それが何か…気になることでも?」

(ルチルの方も、腕組みしながら返答してる…そりゃ、そうだよな、さっきまで3人で頑張って作ってくれてたんだものな…)

 

 それを聞いたフレイラがヒザから崩れ落ち、皿を取り落としそうな勢いで両手を床についてしまった。

「こ…これが…マスターのお食事…なんと…なんとおいたわしや…私がもう少し早く…御身の為に働けていれば、このようなお食事をお出しすることは…。」

 

 それを聞いたセピアが心外とばかりに口を開く。

「しっつれいね~? それでも火は通してあるんだよぉ~??」

 

「まぁ…捌いて、ぶつ切りにして、火を通しただけですが、ヴェールさんがそれでもイイって言ってくれたからなんですし?」

(少しだけ、申し訳なさそうな雰囲気になりながらのディーネのフォローにも力がないな…)

 

「あぁ…そう…でしたか…それは…、ご苦労されていたのですね、マスター…、私が今、新しくお作り致します。 少々こちらでお待ちください。」

 

 そう言うとフレイラは、まだ冷蔵庫に入れられていた鳥を引きずり出し、和服っぽい衣装の脚の合わせを華麗にはためかせると、腿に巻き付けられている黒い革の帯、そこにあるポケットに備えていた包丁を「シュ!」…と引き抜き、頭を落とし、足を落とし、次々と、捌いていく…。

 

「そうだった、そういえばそういう設定で作ってやったんだっけ…」

 

「え? どうかしたんですか?ヴェールさん…」

 恐る恐るだが、セピアが一番最初にそれに反応した、先ほどの言われようが相当堪えていたようだ。

 

「イヤ、女の子だし、せめて料理くらいは出来るようにしてやろうとコックの技能を1レベルだけど、取得させていたんだよ…」

 

「あぁ、それで、料理のことであのような感想だったんですね…」

 

 ルチルも一応は最低限の調理をしたとは言え、専門的な料理などができたなどとは内心、思って居なかったのだろう…少し、声に張りがなくなっている。

 

「うん…しかも料理ができても他が出来なきゃかわいそうだと思って、コック1LVを取らせる時に必要な技能を付けさせちゃったんだよね…」

 

「え? そんなことできるものなんですか?」

 ディーネが驚いたように顔をこちらに向けた。

 

「まぁ…うん、コックは最低限の料理ができるようにって言うのもあるけど、食べると能力値の向上…じゃないか、ステータスが上がる?の方が近いか?…まぁ、一時的にだけどね? そういう料理を作れる職業だから」

 

「え?ヴェールさんの居た世界のコックってそんなすごいんですか?」

 みんながそろって大きく目を見開いてボクを見上げている。

 

「まぁ…それが仕事内容だったからね…それに対応させるように「職能技能で「料理人」…生存技能で「アウトドア」、鑑定で「食材見極め」、そんで知識に「食材捌き、解体」、それに職業の得意技能で<技能熟練:料理>って特化して割り振っちゃったんだよねぇ」

(まぁ、1LVだけどさ…)

 

「それじゃ~…、お料理に関して妥協ができない風になるのも仕方なさそうですねぇ」

 

「ごめんね?ウチの娘が先走っちゃって…せっかく作ってくれたのに…みんなの作ってくれたのも美味しかったよ?」

 

「まぁ…、悪気はなかったようですが、ちょっとショックでしたね…頑張って作ったものだったので…」

 

「でも、ヴェールさんが美味しいって言ってくれたのならそれだけで報われます。」

 

 3人が3人とも、うなだれたようになっている所に、皿を4つ運んできたフレイラが、テーブルに調理済みのそれをザッと並べ始めていた。

 

「さて、出来ました、こちらの3皿がみなさんの分、こちらがマスターの分です…どうぞ、ご賞味くださいませ?」

 

 

「あれ? フレイ…キミの分は?」

 

「先程、味見をする時に少しだけつまませていただいたので、ワタクシのことはお構いなく…、それだけで充分ですから、お心遣いありがとうございます。」

 

「じゃ~、ありがたくいただいちゃおうか? ちなみに普通の料理だよね?バフ料理とか勢いに任せて作ってないよね?」

 

「はい、ごく普通の料理となっております、バフの効果も付けた方がよろしかったでしょうか? マスター…」

(イヤ、普通で良いから! そんな顔しないでってば!)

 

「いや、最初は普通に料理の味を楽しみたいからさ、こっちの方が嬉しかったからそれで正解だよ。バフ料理の方はまた今度にね?」

 

「はい、マスター! その時はこの命にかけて、ご満足いただける物を作ってごらんに入れます!」

 

「だから、そんなことに命まで賭けなくっていいから! 普通に作ってよ?」

 

 ただ普通に釘を刺しただけだったのだが、何を思ったか、ご丁寧に跪いて「ハイ!承りました!」とやたら気合を入れた返事が返ってきた…。

 

(これが周囲全員のNPC達の「普通」の反応だったとしたら、そりゃ~気を抜けないし、期待に応えなきゃ…って思いたくなるのも仕方ないかもなぁ~…)

 

「さて、それじゃ、せっかくだしみんなも一緒にいただこうか?」

 

「は~…い…」

「そうですね、いただきましょうか」

「私たちより美味しそうなのがシャクですね…」

 

 それぞれに、考えるところはあるのだろうが、とりあえず、空腹には耐えられないし、美味しそうなものが目の前にあれば手を出さずにはいられないのは仕方ないと3人は思ったようだ。

 

「う…美味しい…」

「これは…上品な味わいですね」

「これが、同じ食材で作ったものだなんて…」

 

「それはよろしゅうございました、お気に召していただけた様で何より嬉しゅうございます」

 

「「「え?」」」

 

 3人が3人とも驚いている…3人の中では、きっとフレイラはもっと勝ち誇って「どんなもんよ!」って感じの表情を浮かべる者だと思われていたらしい…そんなカルマ値低く作るわけないじゃん!

 せめてそこはあのオオカミ女メイドさんとかぶらないようにと言う親心…というか、小さい抵抗だったのだが…

 

「なにか?」

 フレイラは彼女らの反応が心底、何を示しているかわからなかったのだろう…小首をかしげ、キョトンとした表情をしている。

 

 毒気を抜かれたのか警戒していたような3人は思いついたように話題の方向性を変えて来た。

 

「あぁぁ~~…その、ヴェールさん、もぅいいですから、そろそろ幻の方…解除してもらえません?」

「あぁ、そうそう、もぅ天武のふりはしなくていいと思いますよ?」

「そのことも一通り説明すべきでは? このままだと外に出ても「マスター」って言われますよ?」

 

「あぁ、そうだね、それは説明すべきだろうね、ボクからも説明は必要だろうと思って居たところだったからちょうどいい。」

 

 

                   ☆☆☆

 

 

「…っていう流れで、今、ここにこうしているわけなんだ…わかったかい?」

 

「はい、万事…御方の置かれている状況は把握いたしました。」

(事情を聞いてる間、ずっと同じ姿勢で跪いている…もう少し楽な姿勢で聞けないのかな? NPC達、ホントにみんなこうなのか?)

 

「そう言う事だから、これから…この姿で居る時はエルヤーさんと呼ぶようにね?」

 

「私たちは元々、エルヤーさんだった人にドレイとして飼われていたので、そのままエルヤー様って呼ぶことにしていますけれど…」

 

「すでに過去の人、って扱いなんだね、エルヤーさん〝だった人〟って…」

(ちょっとかわいそうだなとか思っちゃったよ…不憫だな…エルヤー…)

 

「だってそうでしょぉ~? ヴェールエルヤーさんこそが私たちのご主人様なんですからぁ~」

 

「まぁ…、ナザリックに入って、ある程度ことが進むまでは、『天武』で居なきゃいけないわけだから、それまではエルヤーっていう役割を演じてる訳だしね。」

 

「演じている…でございますか?」

 

「まぁ、そういうことだね、フレイには演技とかそこらへんは設定してないけど…、今の所、新しいチーム名を名乗るまではフレイを表に出すわけに行かないのは理解しているね?」

 

 別に威圧した訳ではないのだが、必要以上にかしこまって姿勢を倒し、顔を伏せ…「はい、その旨、認識はしておりますが…」と何か言い出しにくそうにしている。

 

「どうした? 聞きたいことがあるなら、なんでも聞いていいんだぞ? 聞かなかったことで、致命的なことされても困るし…」

 

「はい、それでは恐縮ではありますが…、御身のお力になれない間、私は何をしていればよいのでしょうか?」

 

「そうだな…フレイ、キミには「ヤシチ」になってもらいたい!」

 

「ヤシチ? …でございますか?初めて聞く名称ですが、それはどのような役割なのでしょうか?」

 

「うん、これは私の仲間たちの中でも特に時代劇とかに造詣の深かった『武人建御雷』さんや、『弐式炎雷』さんに聞いた限りではな?かなり難しい役割だ…だからこそ、その役はフレイ…キミにしかできないと思って居る。」

 

「そ…そのような…まさか至高の41人、御方々のお名前をお聞かせ願える栄誉に預かれるとは…光栄です。」

 

「う?…うん…まぁ、そうだな…(至高の41人って…モモンガさんからも聞いたけど、本当にそう呼んでるんだ…)まぁ、それでだな…?ヤシチというのはどうやら忍びの者、つまりは炎雷さんのような影からいざという時に助けに来てくれる人のことのようだ。」

 

「わ…ワタクシのような末席の者にそのような大役が務まるのでしょうか?」

 

(こっちが可哀そうに思っちゃうくらい目を見開いて小刻みに体を震わせている…例えが悪すぎたか…少しハードルを下げてあげよう…、まぁ…さすがに炎雷さん並にって思われてたら、絶対ムリって感じちゃうだろうからなぁ~…)

 

「まぁ、例えを炎雷さんで出したのが悪かったな、そこまでを期待しているわけじゃない、フレイは本来の種族上の特技として、【登攀】【軽業】【水泳】【隠密】なんかもあったはずだな?」

 

「はい、それは間違いなく…ですが、ソリュシャン様や、CZ様のような専門性があるワケではありません…」

 

「それでもいいんだよ、ボクが望んでいるのは、その「ヤシチ」という称号を与えられている者が担っていた役割なんだから。」

 

「え?? …その役割とはどのような…?」

 

「そうだね、たしか、彼らが言っていたのは、裏方に徹しての情報収集、その場、その場のパーティたちの置かれている立場を考慮し、有利な情報を集め、ピンチになった時にはさりげなく救いの手を差し伸べ、戦力が足りない時は後方支援、もしくは背後から襲われないように不利な位置での専守防衛的な戦闘、庇うべき存在が居る時には、護りながらの戦い、それらがこなせる心強い者…それがヤシチ…ということだと聞いたな。」

 

「光栄でございます、まだ生み出されて間もないこの身にそのような大役を仰せつかるとは…、そのご期待に沿えるよう努力いたします。」

 

「まぁ、そのヤシチと言われる本家が人知れずに助言などのアドバイス、または危険を知らせるような手段をとる際にはかなり特殊な、投擲用のアクセサリを足元にわかるように投げつけ、床に刺して知らせていたようだが…」

 

「アクセサリ…ですか…それはどのような?」

 

「フレイ、お前はそこまで真似する必要はないぞ?精霊魔法の<風のささやき(ウインド・ヴォイス)>や、信仰系の<発信思念(センディング)>なんかもあったはずだろう?それを使えばいい。」

 

「は、ではそのように…」

(そろそろ、姿勢を柔らかく、楽に聞いてもいいんだぞ?って言った方がいいよな…)

 

「あの~…ヴェールさん?ちょっと聞きたいことがぁ~…」

 

「ん?どうかした? ルチル? なにかわからないことでも?」

 

「私、一応精霊魔法の低位なヤツやら、名前と効果くらいは知ってるはずなんですが…その<風のささやき(ウインド・ヴォイス)>っていう魔法、初めて聞きましたぁ…」

 

「あぁ、あまり有名じゃないからね、シルフの助けを借りて、対象が視認可能で、500mの距離内に居る場合に有効な魔法さ、術者の方じゃなく、かけられた方の周囲の音を術者が聞くことが出来て、更に相互の会話も可能だけど…その魔法がかけられた相手の周囲、半径5m内しか有効じゃないっていうデメリットがある。」

 

「もぅ1つの方はどんな効果なんですか?」

 信仰系と聞いて、こちらも興味をそそられたのだろう、ディーネがもう一つの魔法、<発信思念(センディング)>について知りたくなったようだ。

 

「あぁ、こっちはもともと特定の信仰する神さまを相手に、短いお告げ?って言ったらいいのかな?神託を受けられるようになる魔法、って感じだったかな?(まぁ、神って言うより運営にちょっとした質問やプレイヤー間のいざこざを対処してほしい時に使うのが主な役割だったし、広まらなかったんだろうな…。使用直後の再詠唱冷却時間(リキャストタイム)が微妙にネックだったみたいだし)こっちは相手と自分がお互いに見えてなくても短い文章、ボクらの世界で通じていた「ニホンゴ」って言語で75文字程度の文章を1度だけ送受信できるって魔法さ。 でもこっちは落ち着いて祈りができて、冷静な心境で神託を受けられる環境じゃないと送信する側の負担が大きいって感じだから使い勝手が難しいのが難点かな」

(さすがに敵と戦いながら、運営に対しての文章を打つなんて離れ技じみてるから、そうなったんだろうけど…、単純に言えば、準備から発動までに10分かかるっていうテキスト上での設定があったはず…その設定がこっちの世界でも生きてるなら、きっと間違っていないはずだ…。)

 

「どっちも利点があって、不利な面もあるんですねぇ~」

 しみじみとレンジャーレベルの方が上のセピアがうんうんと納得している。

 

「セピアだって魔力系の魔法詠唱者(マジックキャスター)じゃなかったか?」

 

「私の方は、攻撃魔法なんて、コカトリスちゃんの時に使わせてもらった…ドレイになる前から覚えていた<炎の矢(フレイムアロー)>しか持ってないですよ?あとは、能力向上系しかあのくそったれに覚えさせてもらえませんでしたし~」

 

「それじゃ~、そのコメットロッドを持って、初めての<炎の矢(フレイムアロー)>以外の魔法が使えるようになったってことだね」

 

「そうなんですよぉ~♪ 矢の次が「堕ちる彗星」だなんて、まるで夢みたいです~」

(杖を抱きしめて、頬ずりしている、よほど、他の攻撃魔法を使いたかったようだ…)

 

「『堕ちる彗星』? あぁ、発動するパワーワードが「コメットストライク」だったからな、そういう翻訳でもあながち間違いでもないか…」

(そういえば、みんなに出してあげた武器の中でセピアが使えるようにと思って見せた装備って、直接攻撃魔法をっていうのはそのコメットロッドだけだったな…、最初に効果が発動した『トゥインクルスター』も、周囲に散らばる星々は追加効果で攻撃魔法じゃなかったし、魔法詠唱に制限がかからないように造られたスリングスタッフの方も自動で魔力弾石が装填される仕様だったんだけど、そっちも覚えていない魔法は使えなかったしな…)

 

「まぁ、喜んでくれるのはいいんだけど、魔力切れには気を付けてね?第3位階魔法までは魔力消費はそのまんまなんだからさ…」

 

「分かってますよぉ~…気を付けて使いますって♪」

 

 

「そうそう、フレイ…キミにはその作戦行動中に限り、ヤシチを名乗ることを許可する。 しかし必要に迫られない限りは極力、その姿を見られるのも、正体を知られるのも避けるように、それが守られるならどのように行動しても構わない、必要な情報、そして、助けが必要な時はこっちからも<伝言(メッセージ)>でしらせるので、間違ってもスレイン法国なんかにはちょっかいをかけるようなことは…って、そうだ、フレイ?キミはスレイン法国っていう国は知っているか?」

 

 言いながら、大事なことを知らせていなかったかも、と心配になり、問いかけると彼女は懐から一枚の地図を取り出し、ヴェールに見せた。

 

「は…こちらにアインズ様より直々に賜った周辺地域の地図が御座います、ここに、その名前がありますので、場所は分かりますが…その国がなにか?」

 

「いや、その国は人間至上主義を掲げていてな、人間以外は…かなり対応が冷たい国だそうだ…だから…その、あまリ遠くに行ったりはするなよ?」

 

「はい、なんという慈悲深いお言葉、私のような身を心配して下さりありがとうございます、決して御身を残してわが身の命を無駄に散らすようなことはしないと誓います!」

 

(せっかく娘が動き出して意思疎通が取れるようになったのに、死なれちゃ敵わないしな…少しでも長くこの3人娘同様、長生きしてほしい…エルフには寿命はないんだったか?たしか何かでそんなこと聞いたことがあるけど…誰にだったか?、まぁいっか。)

 

「ちなみに『有意義な状況下』であっても命を散らすような真似はしてくれるなよ?」

 

「は?…それは…その、どういった意味でございましょうか?」

 

(う~ん、やっぱり忠誠心の方が上過ぎて思い至らない感じか…わかりやすいように説明してあげないと…)

 

「つまりはだな? フレイ…もし私が、お前のことを『盾』として役立ってほしいと思って作ったのなら、守護者統括のような防御特化の仕様で作ったはずだ…そこは分かるか?」

 

「は…はい、おっしゃることはよくわかります。」

 

「さっきもフレイ自身が言っていた内容で「剣となり、盾となるために…」って話をしていたが、もし剣として使いたいなら建御雷さんの作ったNPCのようなクラス構成にしたと思わないか?」

 

「それは…確かに納得のできるお話しです。……それならば、私が存在するための意味にはどのような意図が含まれているのでしょうか?」

 

「それはだな…フレイの主人たる私の戦い方は遠距離の敵がいるなら魔法を使いながら相手の体力を削り…そして自分の有利な間合いに入れば戦士系の戦いに持ち込むやり方が得意だ…が、私のクラス構成では回復という手段がない、その上うまく隠密や、敵の情報などを集めるなどの行為、さらには自然の動物の召喚以外の召喚魔法は使えない…まぁ、「魔獣の召喚」というのだけは使えるんだが…、そういった不得意な分野があるんだ、それを補うためにお前という存在が必要だと思ったのだよ。」

 

「そういう…ことでしたか…だから私はクレリックを持ち、シャーマニッククラスを備え、かつ…非実体に対しての対策に特化したクラス…この3つが高レベルなわけなのですね?」

 

「そういうことだ…とはいえ、私はあまりにお前に多くを求めすぎて、逆に中途半端になってしまったようだ…第8位階まで使える『ガンマ』ほどじゃなく、肉迫した戦闘については『アルファ』に及ばない、隠密や尾行については『イプシロン』や『デルタ』にも敵わず、治癒魔法の位階についても『ベータ』に一歩も二歩も譲ってしまう…、まぁ…召喚する者の使い方、適切な運用、効率的な立ち回りが出来れば『ゼータ』には何とか並べるかもしれないが…私のせいで…すまないな、フレイ…」

 

「それは…御身のせいではありません! 私の力が及ばないのはひとえに、私の精進が足りないせいでございます、マス…ぁ、いや…あの…ヴェー…ル…さ…ん…」

 

(ずいぶんその呼び方に抵抗があるみたいだな)

 

「それでは私のことを試しにエルヤーさんって呼んでもらえるかな?」

(こっちの呼び方なら直接「さん」付けしてる感じは印象として薄いから、なんとかなりそうなんだがな…)

 

「あ、はい、畏まりました、エルヤーさん。」

 

「うん、そっちなら問題なく、どもったりもしないで言えるようだね、しばらくはそっちで呼ぶように…あっちで呼んだりこっちで呼んだりだと逆に不便だろう。」

 

 そう告げると、跪いた姿勢のまま、ヒザに顔でも埋めそうなくらい深々と頭を下げ…

「大変、申し訳ございません、ワタクシが至らないばかりに、御身にそのような気を使わせてしまい…」

 

「あぁ、かまわないさ…、こっちで本格的に活動するようになったら顔の雰囲気も変えて、名乗る名前も変えようかと思う、そうしたら、フレイ…キミにもヤシチの役職名は返上してもらって、同じ仲間として振る舞ってもらいたいからね、それまでに心の準備は整えておくんだよ?」

 

「わ…ワタクシが…でございますか? 御身の…なかま? そんな…そのような…身に余る光栄ではありますが…、ワタクシは精々、エルヤーさm…ん、の…手足の代わりであればそれで充分でございます。」

 

「こらこら、今「エルヤーさま」って言おうとしたろ? まだ堅苦しさが取れないようだな…」

 

「ヴェールさん…さっきから聞いてるけど、会話が堂々巡りになってるみたいよ?」

 

 ルチルから冷静なツッコミが横から入れられてしまった。

 

「ホラ、フレイ…こんな風にお前も、私のことを『ヴェールさん』って呼んでもいいんだからな?気軽にな?気軽に。」

(モモンガさんがナザリックでNPCの意識改革に数年かけてやっと一般メイドの硬さを和らげることに実感が持ててきたって言ってたけど、意味がわかった…こりゃ大変だわ。)

 

「まぁ、とりあえず、それは今後の課題にして、フレイにはいくつか、与える物があるのを思いついたよ、ちょっと待っててくれ」

 

「は…? いえ、そのような…御身自らのお品をワタクシなどがいただくわけには…」

 

(相当、腰が引けてるな、そんな大したものじゃないんだが…とりあえず勘違いだと思わせることで気を軽くさせよう)

 

「フレイは勘違いしているようだが、これはヤシチとしての仕事に必要なものだ…それにあげるわけじゃないぞ?貸すだけだ、ちゃんと返してもらうつもりだから、無くしたりせずに大切に身に着けておくんだぞ?」

 

「まぁ、ひとまずは背中を向けて見せてみろ?最初のを預けるからな?」

 

 そう言うと、フレイラは跪きながら背中を見せるという器用なことを流れるような動作でしてみせる。

 

「うん、それじゃ、ホラ腕を上げてみろ…そうだ、そして、反対の腕を伸ばして…そうそう」

 

「よし、装着完了だ、まず単独の行動をするにはそれがなけりゃ始まらん。<無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァサック)>だ。」

 

「え? これは、御身にも必要なものでは?…あぁぁぁ…」

 言われた直後、外そうと試みたフレイラだが、背中にセットされた瞬間、霞のように背中に背負った物が消えてしまい、「装着済」という扱いになったようだ…こうなったら、外したくても外し方がわからない。

 

「遠慮するな。私にはまだ本体の<無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァサック)>の中にも9つの<無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァサック)>が入っている。総量で5トンは入る計算になる、それ1つ無くてもどうとでもなるからな、一つくらい持っていけ?」

 

「このような貴重な物まで…その信頼に応えられるよう…」

 

「ホラホラ、そんな口上はもぅいいから…ホレホレ。」

 

 ベルリバーは嬉しそうに、次々と、フレイラに必要そうなものを渡していく。

 

 その中には<無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァサック)>の中に入ったままの、というよりベルリバー本人が気を利かせて各種ポーション等を入れてあったりもするのだが…

 

 <無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァサック)>の次は、『着替え』の1アクションで1ターンを費やさなくても羽織っている上着を外すだけで元の装備に瞬時に着替えることが出来る『早着替え』の効果が入ったデータクリスタルを装填しているローブ。

 

 そして、その次に、「やはりヤシチと言えばこれだろう」とつぶやきながら、黒装束をフレイラに装備させる。ユグドラシル製なので裸になって着替える、などしなくても背中に当てて『装備』と意識を向けると、するっと装備され、さらにサイズもマジックアイテムの仕様でピッタリと合う。

 

「それはシノビの者としての必須アイテム。<影の軍団(アーミー・オブ・シェイド)>だ!」

 

 これもユグドラシル時代、言わずともわかる『弐式炎雷』に、一緒に作ってみませんか?とベルリバーが持ちかけ、それならこういうのがいい、と炎雷がアイデアを提示して、ノリと冗談半分で作ったもの。

 

 その効果は、『軍団(アーミー)』とは名ばかり、明らかに名前負けの効果なのだが、本人たちは満足していたらしく、一発ネタで気が済んで死蔵されていた物。

 3つの効果の内、どれかを選んで発動ができる、しかし、どちらも1日に3度、装備者の周囲に展開させるか、装備している者が選んだ対象の周囲に展開させるか、の効果を選ぶことが出来る。

 シャドーデーモンなら一度に2体

 シャドーデーモンの下位種、シェイドスピリットであれば一度に4体。

 シャドーデーモンの上位種、シャドーデビルであれば1体のみ。

 

 つまり、一日単位で考えれば、「シャドーデーモンなら2体を呼びだす」という効果を3回、つまり出し惜しみしなければ、日に6体出す事が出来、これの良い点は冷却時間が存在しない点だ。

(実際には存在はするが、時間にして、呼び出す存在のレベル分…つまりシャドーデーモンなら2体呼びだし、22秒待てば、次の2体という感じで、戦闘中でなければ気にするほどでもない時間なのだ。)

 

 シェイドスピリットの方は、そのままであればシャドーデーモンの半分のLVしかなく、ユグドラシル勢であれば一刀のもとに片づけられるザコモンスターなのだが、最大の技、<影の模倣>を使われた場合、シェイドスピリットと敵対しているパーティの内一名の能力を8割再現する形で、ライフや魔力(MP)も8割だが、外見の姿は模倣する相手そのまんまとなるので本来より格段に厄介な敵になってしまう。

 

 弐式炎雷はこのシェイドスピリットを、この装備の効果で4体呼び出し、11秒したら、次の4体、さらに11秒が経ったら3度目の…つまり12体と自分を入れて13体分身!という冗談を披露し、自分の姿を真似させ、スクリーンショットで『影分身』とかっていうネタをギルメンに見せる為だけにそのアイテムを作ったのだ。

 

 自前のスキルで同じことは出来るのだが、そっちは戦闘中でしか効果を表さない。

(さすがに12体出すのは無理だが…)

 

 だから、普通の移動アクションでそれを展開させ、ネタにした、というだけの話だった。

 

 こっちの世界に来てどんな仕様になったのか<道具鑑定(アプレイザル・マジックアイテム)>で見ていないので、詳しくは知らないが、隠密の役には立つだろうと判断している。

 しかも、弐式炎雷自身は、自前でその能力を持っていたので気にしなかったらしいが、実は装備している者はシェイドスピリットや、シャドーデーモン達同様、影に潜って相手の動向を探ることが出来る。

 

 こっちの世界では、陰に潜った場合まずバレる心配のない方法となったのはベルリバー達にとっては嬉しい誤算である。

 

(まぁ、フレイラのシャーマニッククラスって、精霊の力を借りて、例えば光と風の精霊の力を借りて、透明化の効果と同じ状態にしてみたりもできたはずだったよな…たしか色々な組み合わせをして、効果を発動させるはずだったから応用は広いはず。)

 

 しかしこれでは、どこからどう見ても怪しい忍者娘の完成にしか見えない。

 

 エルフの3人は、どう反応したらいいのかわからない風であったが、ベルリバー自身も満足しているようで…それでいて、フレイラも同様、自らの主人に「貸してもらっているだけ」とはいえ、こんなに何個もアイテムを都合してもらえて歓喜していたので、特に口をはさむようなことはしなかった。

 

 そんな複雑な視線には気づいていない当の2人は、独特の空気を纏いながら、なおも会話を続けている。

「あぁ、そうだ、フレイラ、もしアインズさんに連絡するようなことが起きた場合は、ちゃんと本名の方で伝えるんだぞ? いきなりヤシチとか名乗ったら、アインズさん戸惑うからな?」

 

「は! 委細、承知いたしました!」

 

「それでは、フレイラ…改めヤシチよ…、まずは帝国の内情調査だ! 最優先事項はワーカーたちの間で依頼が集中している「某墳墓、遺跡調査の内容」に関してだ。」

 

 と、ここまで言うと、後ろで温かく見守っていたエルフの1人、ディーネが話しかけて来た。

 

「あれ? ヴェールさん、あそこのことは粗方、調べ終わってるんじゃありません?」

 

 そう言われたベルリバーは、エルフの3人に分かるように指示した内容の真意を伝える。

 

「ホラ、ボクらって、この森の中で居を構えてから、帝国に戻ってないでしょ? ワーカー連中がいつ、あの遺跡に調査に行くってことになったのか、聞いてないじゃない?」

 

 そこでようやくそこに気が付いたのか、ルチルがやっとわかったとばかりに口を開く。

「あぁ、ようするに他のワーカーと日程がずれたりしないように、集合する日時を調べるわけですね?」

 

 エルヤー姿のまま、ニヤッと笑顔を浮かべ、「そういうこと!」と短く言うと、かしこまって跪いているフレイラに再び顔を向け、こう告げる。

 

「それでは、フレイラ…改めヤシチよ! お前の最初の指令は分かったな? それではヤシチとしての使命を果たすのだ!」

 

 …と、ノリノリのベルリバーからの初めての直々の命令を受けたフレイラは、嬉々として外に飛び出そうとし…、ふ…と立ち止まると、エルフの3人に視線を向けると、こう言い残して外に飛び出して行ってしまった。

 

「みなさん、ワタクシのマスターを孤独にしないでいてくれてありがとうございます。 いつもそばに居てあげられない間、マスターのこと、よろしくお願いしますね?」

 

そこには〝同じ主を持つ者として〟仲良くしましょう…そういう意味が込められているように3人には思えてならず…

その言葉を受けて

 

「そんなに悪い子じゃ、ないみたいですね? エルヤー様?」…とディーネ

 

「でしょ? ボクの娘だからね」…と偽エルヤ―

 

「早くも親バカですか?」…とセピア

 

 そんな日常の会話が4人の間で交わされるのであったが…しかしその少し後になると色々と衝撃的なことが起きることになろうとは、まだ誰も知る由もなかった。

 

 




この話でのあとがきって何を書いたか、忘れてしまった…

でも、それなりにこのお話、読んでくれている人はいるみたいなので、それだけでも励みになってます。

感想は来ないけど…しかし来ないということは文句やクレーム、つっこみを入れるほどの不快感を読者の方々に与えてはいないという認識の元、それなりに楽しんでもらえてるものと受け止めて頑張っていきます。

とにかく、「帝国編」から早く「墳墓編」にシフトしていくために話を進めていきたいですね。

よろしくお願いします。
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