気づいたら大自然 小心者の異世界闊歩 作:yomi読みonly
その情報をくださった、某筆者の方、本当に感謝です。
まだまだ、読めていない特典小説の方が多いですが、少しでも読めただけで私は結構、満足だったりしています。
欲を言えば、もっと読みたいなと言う内心はちょっとありますが…
それにしても27万文字も使って、まだ本来の目標、「墳墓編」にも行っていない現状…。
まだまだ先は遠そうですな…。
あ、そうそうオバロのスマホゲームアプリ…やっとアインズ様が出ました。
嫉妬マスクを装着したバージョンですが…、やっとそっちのゲームではカルネ村編も開始。
二軍さんも、今までの☆3から☆4にバージョンアップ。
☆4の方は「魔封じの水晶」を掲げています、なんと最初の10連で、どちらも出た上、
何と冒険者モモンも出まして、そのゲームを始めて、初の豪運に震えてしまいました。
そして再び、ここはナザリック地下大墳墓。
支配者に対しての報告が寄せられ、支配者は戸惑い、驚き、怒り…感情の抑制が働き、一周回って冷静にブチ切れていた。
「ほぉ…帝国は王国よりマシな国だと思って居たのだが…そうか…うちの商会の傘下である末端組織の一部門に過ぎないのだが…それでも我ら、A・O・Gに遠回しにでも喧嘩を売るような愚か者が居るとはな…」
職務に励むための執務机の椅子に腰かけ、背もたれに体を預けながら、そばに控える女性に声を掛ける。
「どうすればよいと思う?アルベド…この件、お前であればどのように片づけるのか、聞くだけ聞かせてもらっていいか?」
鷹揚に振る舞う支配者に「怒り」の感情がくすぶっている語気を感じ、微かに身を固くしながらその問いに返事を返す。
「そのような下等生物ども…、あまり表に出ることを良しとしない至高なるアインズ様のご威光は到底理解が及ばないとは言え、わずかにでも不敬な行いをしでかし、不快な思いをさせ、我らナザリックに連なる組織に害を及ぼそうなど、とうてい許される事ではありません、その組織ごと、滅ぼすべきでしょう。」
(そうか…そうなるよな…、しかし、面倒なことになりはしないか? イヤ…そんなことはないか…、すでに手中にあり、我らに忠誠を誓わせてるとは言え、かつての八本指の連中も、娼館ごと、奴隷部門含めて壊滅させるのに、それほど時間はかからなかったしな。)
そう考えていた時、「そういえば…」という、少し忘れかけていたことに気づく。
「そういえば、娼館で働かされていた女どもはどうなった? ペスト―ニャに預けていたはずだが…あの時は確か、『心の傷が癒えるのに時間を要する』ということで様子見にしたのであったな?」
急に話の方向性が変わった問い掛けに一瞬の戸惑いも見せず、アルベドは優雅な礼をしながら返答をする。
「はい、アインズ様、仰せのようにニンゲンどもの中でも気にするまでもない、力も智慧もさして目を見張るもののないあのような存在に時間をかけ、治療する価値はあるのか疑問ですが…順調の様です。 ペストーニャの下であれば、そろそろ外に出ても問題はないかと…」
アインズはギィ…と執務用の椅子に背を預けながら中空を見上げ、アルベドに言い聞かせた。
「まぁ、彼女たち自身は放っておけば、生まれた土地で普通に育ち、毎日の仕事に明け暮れ、寿命を迎え、死ぬ…それだけの人生だったはずが、あのような痛ましい環境に放り込まれたのだ、彼女らは何も悪いことをしていたわけでもないのにな…」
そこまで言うと、ゆっくりと椅子から立ち上がり、王者にふさわしい歩みでアルベドの前を歩きながら、独白を始める。
「我らのギルドは「理不尽な暴力からの救済、保護」を良しとして集まったメンバーたちだ…、それを引き継ぎ、ギルマス…いや、支配者として皆の上に立つ私からすれば、例え、人間であろうとも、力はなくとも…理不尽な暴力を受けている者に貴賤はない。等しく救われるチャンスは与えるべきだろう…少なくとも私はそう思って居るのだが…アルベドはそれにたいして異論はあるか?」
アルベドの知る限り、このナザリックに属する者達はかつて、この墳墓に侵略をしに来たその多くが人間種であった者達に対する報復を是とする行いを推奨していたような認識であったのだが…
まさか根本は「理不尽な暴力からの救済」などという思想があったとは初耳であったアルベドは、内心で驚きながらも支配者に深々と頭を下げる姿勢をとった。
「とんでもございません、至高の存在であられるアインズ様のご決定は何よりも優先されるべきであり…私のような者の浅慮など考慮するにも値しません。…それに…そのような思想が至高の御方々にあったとは…、どうやら私の認識に間違いがあったようです、お許しください。」
予想もしない反応に内心、アインズは一度だけ鎮静化が起きているが、頭を下げている最中のアルベドにはそれが見えていなかった。
「いや、お前の考えに大きな間違いはないとも…たしかに我らは人に恐れられ、遠ざけられ、時にはその恐怖の矛先が自分に向かわぬようにと崇められることもあろう。 だが、その延長で、もし我らに…そう、現地の者達からすれば価値があり、それがなければ明日は死んでしまう、それほどの物を『思いやり、博愛から来る施し』をされた時、例え、それが我らにとって、取るに足らぬゴミのような行いであろうと…その際はその者には我らからの恩情を与えることに異論はない…」
「あ…あのような下等生物程度のムシケラに恩情をお与えになると?」
「あぁ…だがそれも私に友好的な反応をし、害を与える意図はなく、見返りを求めるつもりもないのに親切にしてくれた場合、それは「恩」と呼ぶ…私はな…恩には恩で返す、そして仇には仇で…な。 …それが信条なのは以前にも誰かに言った覚えはあるが…受けた恩はちゃんと受けた時以上の、こちらの感謝の気持ちも含めて、相手に返す。」
そして、一拍の沈黙が広がった後、重々しく支配者は口を開く…どこまでも暗く、重圧を感じられるような言葉と共に。
「そして、もし我らに害を及ぼそうとする者などが居れば、その時は当然、受けた行いの報いを受けてもらう。それは私の怒り、そして報復、相手からの悪意の全てをも上乗せして、倍返しどころではない返礼をさせてもらう…それが過剰だと言われようが、我らに牙をむくことの愚かさを身をもって知ることになるだろうが…、そこにためらいなどは全くない…。」
その言葉を受け、アルベドは「そのお言葉、しかと胸に刻んでおきます。」と跪いて礼をとる。
その臣下としての礼に対して、背中を向けたアインズはそこからの行動方針を独り言のようにつぶやく。
「しかし、そうだな…そうなると人選はあまり多くなくても問題は無かろう…話を聞くに恐らく、大きなバックボーンはおるまい…そこは小さな…例え大きく見積もっても中小規模の組織で、恐らく情報収集能力がお粗末なのだろう。 そうであれば、そうだな…この場合、手を出されたのはイプシロン商会の従業員と、その母親だ…となれば、そこに出向くのは名目上は社長令嬢と言ってもいいソリュシャンだろうな…そして、お付きの執事と言う設定のセバス…そこら辺が妥当だろう。」
「その二人のみで行かせるということでしょうか?」
アルベドがアインズの決定の確認をとる、それを怠り、支配者の思い描く計画に破綻する要素などがあってはならないという統括としての責任、そして使命感だ。
「いや、さすがにそれは軽率すぎるだろう…その程度の組織に「裏で糸を引く」存在が居るとは思えないが、念には念をだ…セバスとソリュシャンには数体のシャドーデーモンを連れて行くように伝えろ、万が一、なにかしらの強者の気配を察知したら、計画を即座に中止、シャドーデーモンを盾にして、撤退せよという命令を徹底させろ…。 最初は弱い囮…今回の例で言えば、その哀れなゴロツキどもの事だが…そいつらで気を引き、我らが姿を現したところに本命が現れ、包囲するというのはユグドラシルでは一般的なやり方でもあったからな…」
「は!承知いたしました。アインズ様。」
頭を下げながら、上体を少し起こし気味の角度にすると、「しかし、アインズ様…」という歯切れの悪い発言がアルベドから発せられた、このように言い淀むアルベドも珍しいなと思い「どうかしたか?」とアインズは続きを促す。
「シャドーデーモンを数体程度では囮としては1~2秒、もつかどうかではないでしょうか?」
その言葉に少しの戸惑いも見せず、支配者の空気が和らいだ、アルベドの「アインズさま好きスキ大好き観察眼」を持ってして感じられた程度だが、きっと不敵に笑ったのだろう。
支配者はアルベドの言葉にこう答える。
「もしも万が一、強者が居た場合は…そうだな…、そういう状況だからこそ、それが効果的なのだよ。」…と。
…そして、支配者はおもむろに<
☆☆☆
そこには闇のみがあった。
そして一体自分に何があったのかを冷静に思い至るにはしばしの時間を要した。
自分は朝食を終え、息子を送り出すついでに朝の買い物を済まそうとしていたはずだ…
そこまでは覚えている、そしてお店のある商店街へと歩を進め…少し近道をしようと狭い横道に入ったはず…
そこからプツンと記憶がない…自分がどこかに寝かされているのは分かる、しかし身体はどこも痛くはない、ケガもしていないようだ…周り中が闇なのは、おそらく目を開けてもどうにもならないこと…そしてこめかみあたりにある違和感で何となく理解できた…きっと目隠しをされているのだろう…。
それにケガはないとは言え、体は自由に動かせない、後ろ手にされていることから、きっと縛られているのだろう…、どのくらい気を失っていたか、眠っていたのか、どちらなのかはわからないが、その姿勢でずっといたのだろう…不自然に体が強張っている感じがする。
とりあえず、寝かされたままでいたということは、今すぐに害する気はないだろうということ…。
多分、なにかに巻き込まれているということは分かるが…この状況下では助けを呼んでも恐らくは近くに見張りの1人は居るだろう、自分から「目覚めましたよ?」と宣伝するようなものだ…。
片足を少し動かそうとして見る…、しかし動かない。
そして気付いた、足の方も縛られている。
縄のように足にチクチクする感じはないため、恐らく細長い布か何かか…
試しにわずかに口から舌を伸ばしてみる…すると、口から舌の先が出たくらいに、舌が伸びるのを邪魔するものがある…きっと大声を出されないようにとそうされたのだろう…
ここまでされて、他にはなにもされていないような感じはする、服は着ているようだ…後ろ手にされた腕で感じる布地の感触でそれが分かる。
足を動かそうとした時も同様だ、少し動かしただけでズボンは脱がされていないのはわかった。
とりあえず、ずっと不規則な呼吸をしていると、見張りに不審がられるかもしれないと思い、寝ている風を装うため、規則的に寝息を立てていることにした…。
どのみち、他にすることもないのだ、即座に危険がないのなら、自分の今、置かれている状況の把握ができるまで、このままでいる方が…、どこの誰だかわからない連中も無警戒に事情を「雑談」という形で聞かせてくれるかもしれない…。
下手に唸り声でも出して起きたことを気づかれでもしたら、貴重な情報を得る機会が失われるかもしれない。
とりあえず、唸るのはそれからでも遅くないでしょう。と結論付け、彼女はもうしばらく寝ている芝居をしていた。
・
・
・
しばらく待って、寝息を立てる真似をし…いい加減本当に眠気を覚え始めていた頃、ようやく扉を開けて、何人かが入ってくる気配を感じ、再び寝たふり作戦を続行していると…
「それにしても起きませんね、この女…いつまで寝てるんでしょう…?」
(…と、ようやくここで初めて聞こえた男性の声。 まだ若い感じの声だ、息子より上くらいだろうか…)
「まぁ、それなりに強い誘眠作用のポーションを布に含ませ、嗅がせましたからね。」
(最初の一言に対応した声も男性、こちらは青年というよりはもう少し上の様だ、きっと年齢は一言目の男の子よりは上なのだろう。)
「それにしても手際が良かったですね、<
(この声は先程のとは違う男性の声、1人目と年のころは同じくらいだろうか…でも違う声なので別人だろう。)
(でも、なるほど…そういうことをされたのね…ん~…それだと、どうやら魔法の通じる近距離にまで私が近づいたところで、死角から魔法をかけたと…それで、放心状態のところに誘眠作用のポーションを布にでも染み込ませ、その布で口を覆って嗅がせたのかな?…ということは今、口を塞がれてる布は、嗅がされた布をそのまま使って…ってことのようね。)
「それに…調べた限りじゃ~、この女、正攻法じゃ、取り押さえるのもムリっぽかったからな…、<
(この声は話の内容からして、魔法をかけた方ね、声の感じからして、中年くらいかしら…まぁ魔法を使えるんだし、後ろ暗い世界にいるようならそれを覚えるのにも苦労したんでしょうね。)
「あれは凄かったですよね、1度目は建物の陰から小さく開けた穴ごしに目標を見据えて発動…で、
(この声は一言目の男の子の声だ、あと他には何人いるんだろう…?)
「うるっせぇよ! オレの実力が悪いんじゃねぇよ、この女の抵抗力が高すぎんだよ!」
(あらあら、現役引退してから割と長い間、ず~っと病気だったから結構ブランクあったはずよ? 最盛期よりは落ちてるとは思うけど…)
「それにしても、こうしてるとそんなに強そうには見えないですよね、それどころか、これで母親だなんて、信じられないくらい若く感じないですか?」
(この声は…新しい声だ…、うん、もし自由になったらこの子のおしおきは軽めにしておいてあげよう…)
「お前、そんな不用意に近づくなよ?一応、一時期は名前の通ったワーカーだったんだぞ? それなりの歳なんだからな?だまされんなよ?女は化けるんだからな!」
(さっきからうるさいわね、この声、魔法を使ってくれた方よね、この声は…、自由になったら、覚えてなさい?)
「そうなんですか? ウチの父は冒険者をやっていて…あまりワーカーのことよく思ってないらしくて、あまりそっち方面は教えてくれないんですよね…どんな活躍したんですか?」
(この子の親、冒険者なのね…帝国でよくそれで食べていけるものだわ…まぁ、多少の安全は保障されるけど、仕事のほとんどは帝国の職業軍人さんが代理で肩代わりしてくれるから、ほとんどはどうでもいい仕事か、消耗品のように使い古される仕事か…のどっちかが多いのよね、でもそれでまだ生きてるってことは有名な冒険者なのかもね…。)
「聞いて驚くなよ? そいつは『襲足の戦争鬼』ってよばれてんだ…とにかくおっかねぇ~女だったって話だぜ…」
「す…すごい女性だったんですね…」
(ま…真に受けないでぇ~…ちがうもん…『俊速』だもん…誰にでも襲撃しかけたりしなかったし~…それに…『旋・颯・姫』で、鬼じゃないし~、いつからそんな呼び名に~…)
すぐにでもうなりたい当人を置き去りにして、思い思いの言動が飛び交う…、しかし眠っていると思われている人間がいる部屋で話し込むというのはどういう神経なのだろう…これは起きていいのだろうか?という心境になってくるも、もう少し、有意義な情報は得たいな~と思い、もう少し寝たふりをする。
すると…出てくる、出てくる…内部情報…そういうのは好物です、とは思うも自分の命がかかっているのだ…もう少し聞いていることにしている。
聞いている話を総合すると、こういうことのようだ…
・まずなぜ私がさらわれたのかは、確信的な内容は出てきていない。
・しかし、ある貴族崩れがず~っと借金をして、返済するつもりのない買い物をしている。
・借りた金を返済するために借りている方ではなく、家族で別に働いて返してる存在がいたらしい
・もっと手っ取り早く金を回収していこうという金貸し側の利害と一致し「双子の妹」を借金の金額を帳消しに…という条件で親が手放したらしい。
(ここまで聞いていてその「親」ってやつに腹が立ってきた、小一時間どころか何時間でも問い詰めたいわ…)
・その「帳消し」にした分の金額より、妹さんらの金額は高額だったということにして、少しだけ多めに金貨を渡したら、たいそう喜んだそうだ。
(実はそのお金が、実は貸した金扱いされて、せっかくゼロにしたつもりの残金が、再び借金扱いにされたらしいわね…さすがにここまで来たらアホだわ…)
・その上乗せされたと思いもしていない金貨を元手にして、もう貴族でもないのに「貴族にふさわしい」という言葉を言えばすぐにそいつは借金してでも高い買い物をするらしい。
(縛られて、手は動かせないけど、もぉ聞いていられないわこれ、もぉ耳を塞ぎたくなってきた…でも聞きたくないけど聞かざるを得ない状況が恨めしい)
・親は返さないが、その親の娘が必死に返していた、第三位階魔法の使い手で、ワーカーをして長い期間支払っているらしいが、利息分とちょっとしかいつも返せておらず、結果的に負債は膨らんでる。
・金貸し的には好条件で、ウハウハだったらしいが、買い取ったはずの「双子の妹」を連れ帰る時に余計な横やりが入り奪われたらしい。
(なかなかに詰めの甘い、お間抜けな金貸し団体ね…しかし、聴いててもわからない…なんでそれで私がさらわれる必要があるのだろう…あまりにも知ってる子に環境が似てるのは気になるけども…)
そんな思考に陥ってると、意外な情報が飛び込んできた。
なんと、その第3位階魔法を行使するお嬢さんが、うちの息子とどこかへと馬車で移動した直後、行方知れずになったと言うのだ…それで、帰ってきたと思ったら、ウチの息子だけ…その時点で、何かを知ってることは確実。
…とまぁ、そういう事情らしい。
(そうかぁ、似てると思ってたけどアルシェちゃんのことだったのね…さて、事情は分かったけど、これからどうしようかしら…)
と思っていると、その男どもの軽い口はどうやら油でも塗っているかのように情報が滑り落ちてくる。
話している内に得意げになってきているらしい。
・最初の方こそ貴族崩れの目利きもできない一家に本物を売りつけていたが、試しに一度、1つだけ偽物を持っていき、勧めてみたところ、疑うどころか本物と信じて言い値で買ったことがあり、それからずっと安く作れる偽物を売りつけていたため、言い値で買ってくれた分、本物を安く仕入れるよりも純利益でかなり儲かったようだ。
・儲けがかなり潤っていた上、借金の返済、そして利息の率と組み合わせても、充分元金は取り戻せている。
(もちろん返済しているアルシェちゃんの金額も含めれば、ということらしいが)
・しかし、書類上の「貸した」分の借金を全て払いきっていない、という建前が彼らの手の内にあるため、まだ支払い続けてもらう方が細く長く、搾り取ることができる…なので手放すなどもったいない、という事情。
(まぁ…そういうやつらからしたら、正直者で疑うこともしない、金の卵を産む雌鶏でしょうからねぇ…)
・そして、一番の肝は、売りつけに来る業者と金を貸す団体は、元をたどれば、同じ系列…つまりは同じ穴のムジナ…安い偽物を用意し(その分の費用は実費)、業者がそれを持って売りつけに行く、貴族崩れの婿養子がありがたがって、言い値で(借金の手続きを経て…)買う。
この時点で、安物のガラクタ同然のなんちゃって美術品を「言い値」で買うので「貸した」名目の金貨は、ただ移動をするだけ、この時点で損も得もしていない。
そのまま同系列の業者間で、金貨が右から左に移動するだけなのだから…仲間内の資金の移動で、損など出るはずはない。あるのは「借金をした」という哀れな一族がそこに居るだけ…材料費、加工費だけが回収できれば、それで儲かるという仕組みの出来上がり。
(アルシェちゃんがわずかでも返済すれば組織としてはそれが利益になる…あとは、理不尽な高額を付けたガラクタの分の価格を払ってくれれば更に言うこと無しって具合ね。)
・しかし、問題は母親の方だという話が出た、母親の方は美術品には明るくないが、化粧品や、香水などのような物に対してはさすがにイイ目をしているらしく、さすがに偽物を用意するのは難しい。
母親はいつも、注文があるときはそういう物ばかり要求する、必然的にそういう物を用意する必要があるため、そういう意味では「その件」に限り、旨みはなかったらしく、その分をアルシェの返済分で上手く回していたということだ…。
(ということは、ほとんど損はしてなくて、儲けしかないんじゃない? 名目上の借金なんてあってないようなものじゃ~…? 欲張って妹さん達を買い取ってさらに搾り取ろうとしたから破綻したのよ。)
なんだかんだ、身動きはとれないものの、事のあらましの大方は把握ができたため、だんだん無駄な話を聞いてるだけの状態もヒマになってきた…。
(そろそろこの拘束から逃げ出してやろうかしら…モンクとして積んだ経験で得た【武技】<肉体向上>と<筋力増強>で少し全身の筋肉量を引き上げ、それに応じて自分を縛っている布だか、ヒモだかは分からないが、それの結び目が筋肉の肥大に応じてふくらんだ瞬間に【武技】を解除すれば、こんな拘束くらい、ゆるんでさえしまえば脱出することくらいワケはないんだから…。)
これでも、一応、息子を女手一つで「帝国魔法学院」に入れ、卒業させるだけの蓄えは作れるくらいの実力はあったのだ、こんなことくらい修羅場とは言えない…との認識から割と余裕のあった彼女は、「そろそろ潮時よね」と思って居た矢先、さらに外から駆け込んできた新たな声で、事態の変化を感じ取り、「もう少し、このままでいた方が楽しそうになるかも…」と脳天気なことを考えていた。
彼女をそんな認識にさせた言葉はこうだった。
「アニキ! とうとう来やがったぜ? その女の息子と…取り巻きらしい女どもだ…約束通り俺らの邪魔をしたあのヤロウはいねぇみたいだぜ!」
そう…この時、彼女はワクワクしていた…なぜなら、いつもは見られない『息子の危機的状況の対処能力』が見られるかもしれないと思ったからだ。
まぁ、いざとなれば(彼女自身が)自力で何とか出来るだろうという、心の余裕も手伝い「息子の活躍がこの目で見られるかも…」っていう淡い期待を抱いているのであった。、
☆☆☆
そして、場面は一転し、今…彼女は嬉々として屋根から屋根へと羽のような軽やかさで次々と飛び移っていた。
ようやく己の創造主と言葉を交わし、その温かさに触れ、直々に命令までいただいたのだ…早くその命令の遂行をし、「よくやった」と褒めていただきたい。
ひたすらその一心でワーカーらしき者らを屋根の上から尾行していた…そしてその姿を注視できるものはこの帝都には恐らく居ないだろう…<透明化>を自分にかけ、己が身に着けるローブを中心に<静寂化>の魔法もかけているのだ。
屋根の下の住人にも、恐らく屋根を移動する音すら聞こえていないだろう…冒険者とワーカーを見分ける手段は1つ。
首に「冒険者プレート」を下げているかどうかだ…帝都に来てプレートをしている者としていないものが居る。
違いは何か?と思いつつ、観察していると、プレートをして居る者は一定の建物に入っている。
恐らく冒険者にとって必要な情報などがある場所なのだろう…。
対して、ワーカーは例外なく、酒場兼宿屋に行くか、依頼に出かけている。
…依頼に出かける前の準備で買い物をする者もいるが、それは冒険者、ワーカーどっちもその行動はしているので判断基準にはしていない。
「さて…それではどのワーカーさん達が「遺跡調査」なる依頼について集合日程を知っているやら…ですね…次から次へと影に潜んでみましょうか?…少々非効率な手段ですが…そういう会話が出るのを待った方がいいのでしょうか…」
そう言うつぶやきが我知らず、零れた時、唐突に脳内に何かの感覚がつながった音がした。
反射的に、こめかみに指を持っていき、出てしまった。
どちらにしろ、私に<
屋根の上で臣下の礼として跪くが…そのことを外から察知できる者は周囲には誰も居ないので、特にそうすることに不都合はない。
「ハイ、フレイラでございます。」
〖おぉ…出てくれたか…私だ…アインズだよ、よかった、息災そうだな…どうだ?『彼』には会えたか?〗
「あぁ、これはアインズ様、ご心配していただいているとは感謝に堪えません…我が主、ヴェールさまには無事に会えましてございます。」
〖そうか…それは何より、それはそうと実はな…とその前に、お前は今、他に何か仕事などをしている最中か?〗
「え? ぁ、いえ…実は我が主より使命は賜っておりますが、出来るだけ早くと言った雰囲気はありましたが『何が何でも急いで調べよ』とまでは言われておりません。」
即座に返事をしようとするも、つい言い淀む…我が主から使命を言い渡されて行動中ではあるのだが…至高の41人のまとめ役、総監督とも言っていい存在の言葉を無下にしていいのだろうか…という想いから、そういう言い回しに留めることになってしまった。
〖そうか…それならば頼みたいことがある…実は、これから頼みたいこととは、その「彼」にとっても全くの無関係ということではないのだがな…〗
(え?我がマスターと
「それは…どのような不心得者の仕業でしょうか? 我がマスターの手を煩わすまでもなくワタクシが直接、話をつけに…」
〖あぁ、いやいや…待て待て…、そういきり立たずとも、彼もその現場に「助っ人」として向かっているのだ…わたしに話を持ってきた者の話を総合すると、どうやらお前の手柄にしてやりたいという想いもあるのだろう…姿を変えて、お前に成り代わってるらしいぞ?〗
「それは…なんと畏れ多い…至高なる御身が私などのような被造物の者の姿をとるなど…数々の偉業を汚すことになりは…」
〖そんなことはない…彼にとってお前はたった一人の…この世界に来て唯一の心のよりどころのようなものだ…彼の気持ちも察してあげてくれ、さて、それでだが…〗
「はい! アインズ様に於いてはその海よりも深い慈悲の心、感銘を受けましてございます。」
〖あぁぁ…まぁ、うん、それはいいのだが…話を続けるぞ? 私に話を持ってきたのは、私の傘下にある「商会」の一部門の支店長を任せている者だ…その母親がさらわれたようだ。〗
「な…! アインズ様の支配なされている商会に仇成す者など…許されるはずはありません! 仕置きを考慮すべきです。」
〖こらこら、段々と声が荒ぶってるようだぞ、少し声を落とせ…、お前のことだ、何かしらの手段を取っているのだろうが、何ごとも念には念を入れ、警戒は怠らぬようにな?〗
「は…お恥ずかしいところをお見せしました…我が主と、至高なる御身、両者共に危害を及ぼそうとする存在が居るなど…到底見過ごせない心境になりまして…」
〖ははは…その気持ちは嬉しいが、私が頼みたいのは「彼」のサポートに回ってほしいというものだ…どうだ?頼まれてくれるか?〗
その言葉に深い配慮がうかがえた…至高の御身は私のような者のことを「我が主の所有物」として〝勝手に使うのは悪い〟と思ってくれていたのだと…そう感じた。
それならば問題はない、きっとマスターなら…優しい主人であれば、そのような頼まれごとをされればきっと断らないだろう、私にはそれが分かる、きっとそうされるはずのお方なのだから…。
「はい、何も問題などあろうはずが御座いません、全ては御身と我がマスターの為に…この身の全てを捧げる所存、どのようなこともお命じ下さいませ…アインズ様」
〖そうか…そうであれば私も遠慮なく命じることにしよう…良いか? 何かしらの手段を持って彼に連絡を取るのだ…、そして『陰から支援する』という旨を伝えよ…これよりこちらからもソリュシャンとセバスをそちらに向かわせる…どのようにするかは、私は目をつぶるので現場の判断で、あまり帝都の民衆に恐怖の対象となるような「大きな事件にならぬように」と言う条件だけは付けるが…好きなようにするがいい…それはソリュシャンとセバスにも伝えてある。 お前であれば「彼」の一挙手、一投足から、何をするつもりなのかは手に取るようにわかるだろう…まぁ…あまり大惨事にはならぬようにな?〗
そう言われると、御方からの通信は静かに切られる…。
となれば、後は御方より言われたことを我がマスターに伝えるまでだ…、そう思い立つと静かに屋根の上で祈りの為の10分を過ごし、<
「アインズ様より我が主の事情、お聞きしました、先程命じられた使命を一時取りやめ、そちらのサポートに向かいます。 ヤシチより」
(これで60文字ですか…、これで無事に届くでしょう…マスター…どうかご無事で…)
そう念じて、魔法の効果を発動させると、帝都に突如現れた強大にして、自らが忠義を捧げるべき、懐かしく、安らいだ気持ちになれる気配を感じ、即座にそちらへと進路をとる。
常にアルベドがそばにいる為、話す言葉にも注意せねばならず、わずかなりともアルベドの「警戒センサー」を起動させないように気を使っての会話だったため、<
そして、大事なNPCからの通信を受け取ったその「彼」は、気軽な調子でその返事を即座に返していた。 「うん、よろしく、助かるよ、探知対策はしないでおくから気配をたどって来てくれるかな?」という返信を受け、その何気ないやり取りに歓喜の感情が限界突破し、彼女は大きく跳躍したのであった。
アルベドの「警戒センサー」とは『敵対』という意味ではなく、アインズ様が他の女に意味深な話を持って行ってないかと言う…そういう意味での「警戒」です。
アインズ様はまだまだアルベドの内心には気づいておらず、感情を昂らせれば襲われるし、放置気味にすれば、なにかとリアクションに困る迫られ方をされ…
職務上、仕方ない事情であっても誤解させそうな言い回しをすればヤキモチを焼かれる…。
支配者からすれば、どうすればいいんだ?状態だったりしております。
アインズ様からすればギルドイベントとして楽しみにしている「ベルリバーのナザリック帰還」という大イベント前に、『サプライズ前のネタバレ』が起きないようにという意味もあってあんな遠回しな言い回しをしています。