気づいたら大自然 小心者の異世界闊歩   作:yomi読みonly

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やっとカルネ村がこの話で一区切り。

そして、ピニスンちゃん(くん?)の出番が…でも、諸々の事情でちょっとだけ急ぎ足。

ではでは、新しいお話をどうぞ、ご照覧くださいませ、楽しんでいただけたら幸いです。



第36話 夜ふけのカルネ村…そして森へ。

「そろそろお悩みは解消されましたか?」

 

 日の暮れた薄闇の中、近づいて来た人影は二つ、例の仮面の魔法詠唱者(マジックキャスタ-)に変装したベルという男。

 そして、フレイラと名乗る女性のペアだ。

 

「あんたら、今度は門も介さねぇで外出かい? 気ままなもんだな?」

 

 内心、ブレイン自身も驚いている、普通は門を開けて出てくるものだろうに、門も開けさせないで…ということは誰にも見られないでここまで来た。 ということだからだ。

 

「ボク達はこれでもこのカルネ村では、それなりの待遇は受けてはいるんだけどね…それは村長の存在が常に付き添ってくれているからこそさ、村の中で不遇な扱いはされないと言うだけ…村長が共に居ない場合は相応に行動の制限もあり得るからね、自由にあっちこっちと出歩かれては、村長の立場も考えるとなかなか難しいのさ、だからこうして夜闇に紛れて会いに来た。という訳だよ」

 

 なんともない事のようにサラリと言ってのける「仮面の男」ベル。

 

 ブレインに説明したこともその通りなのだが、それならどうやって、という疑問は残るだろう。

 

 魔法やアイテムなどを使えば全て解決することなので、彼らには見張りくらいはなんてことはないというだけなのだが…。

 

 フレイラは自らの創造主より賜った装備、「影の軍団(アーミー・オブ・シェイド)」を装備して、適当な影に潜る…そして、影と繋がっている他の影に移動しながら、防壁の陰に移動…そのまま防壁の影つながりで、外まで進出。 見張り台からの死角に潜み、装備を外し、元の和装姿に戻る。

 

 仮面の魔法詠唱者(マジックキャスタ-)に変装したベルは、透明化している状態で<飛行(フライ)>を唱え、悠々と外に出、フレイラと合流した後、透明になっている状態を解除して<溶け込み(カモフラージュ)>を使って接近。

 

 ブレインに話しかけたというカラクリだ。 もちろんブレインは多少相手が見えにくかろうと【領域】の効果でちゃんと相手の存在を捕捉していたので、特に支障はなかった。

 

「キミの武技の詳細はよくわからんが…ずいぶん応用範囲の広そうな技だね…、今、多分上にいる見張り台の2人は私達のことなど見えていないだろうに…それを驚きもせずにシレっと受け答えをするのだから恐れ入るよ」

 

「今まで、戦士としての修行もそうだが…人から襲われないようにっていう気配察知の修行も怠らなかったからな、姿が見えにくくなってるくらいは障害にはならんよ、気配や圧迫感や、…存在感?ごと消されたらわからんがね…そういうアンタは本当は魔法詠唱者(マジックキャスター)専門じゃないだろう? 歩き方が戦士のソレだし…本気で動いたら、追い越されそうなくらいだとオレは踏んでるんだが?」

 

「お…歩き方からだけでわかってしまったか、アングラウス君には驚かされっぱなしだな…うん、魔法詠唱者(マジックキャスター)と戦士系の両方取りで鍛えてきた方だからね…まぁ、そのおかげで魔法はそこそこの所で止まってしまったんだが…」

 

「魔法を使えるかどうかって所までは戦士のオレじゃ何とも言えないが…そちらのお嬢さんも強そうだってことだけはよくわかるぜ?……ホントにこの村はビックリ箱かい?」

 

「いやいや…その評価は嬉しいが、この子に荒事は出来る事ならしてほしくないというのが正直なところだね…、何しろ今までずっと自分のわがままでほったらかしっぱなしだったからな…その分、長く一緒に居たいし居てやりたいと思う…できればケガもしてほしくはない…が、明日に迫ってるワーカーの仕事では彼女の力も借りなければ、アソコの主が本気になれば抵抗もむなしいものになるからね…、とは言え、自慢の娘だ…むざむざ、無抵抗で殺させはしないさ。」

 

 そういって傍に居たフレイラの頭に手を置いて優しくなでてやる…じっとしてされるがままになっているので、喜んでくれているのだろう…。

 

「あんた…その子の親だったのか…さすがにそりゃ~驚いた…」

 

「まぁ、その分、この子に母親は居ない…だから自分がその分、愛情をかけてやらんとな…そうしなければならんのさ…。」

 

「マ…あ、ィャ…その、ベル…さま、その…母など必要ありません! 私にはアナタさえいればそれだけで充分でございます。そのような寂しいことはおっしゃらないでください。」

 

「そうか…すまないな…そのような言葉を言わせてしまって…キミを悲しませてしまうとは…父親失格だな……。」

 

「いいえ、いいえ、お傍にいて下さるだけで充分すぎるほどでございます。それに勝る幸せなどございません。」

 

 真剣に見上げてくる娘の表情に、嬉しくも…なぜか少し悲しい気持ちになり再びなでてやる。 …それは片親になってしまったため、中学までは行かせてもらった物の、事業の失敗で中退せざるを得なかった自分…そして、母の為にそれからすぐに働かざるを得なかった自分の境遇と、どこか重ねてしまったせいかもしれない…。

 

「まぁ、この村には、運がよければ今後もここに顔出せるようになるかもしれん、その時は娘共々、よろしくやってあげて欲しい。 …この私以上に、こっちの土地に来てまだ日が浅くてね、私も大概だが…この子も時折り世間知らずな所もある…大目に見てやって欲しい。」

 

「……いや、オレに言うのは違わないか? そういうのはここの村の村長さんに言った方がいいんじゃないか?」

 

 

「あぁ…そうだね…そうだった、あはは…こんな感じで普段は抜けているところもあるのさ…でも、キミがこの村の仲間入りをすれば今の挨拶もムダにはならんだろう?」

 

「そうだった…その話で来てくれたんだったよな、すまない。オレが色々と踏ん切りがつかなかったせいでこんな夜にまで足を運ばせてしまった。」

 

 色々な土地を渡り歩き、「武」の追及の為なら、誰と戦おうと、敗れて己の屍をさらそうとかまわないという生き様で今まで来た男が頭を下げた…それだけでもこの男の今の本気度は分かろうというモノだ。

 

「かまわないよ…それで? なにになりたいかは、決まったかい?」

 

「あぁ…さんざん迷ったが、決めたよ…もしオレがその呪いで存在ごと別の生き物になるのだとしたら…オレは…「(ホーク)」になりたい。 堂々と…どこまでも雄々しく居られる…それに…。」

 

「……?、それはイイが、いいのか?キミは刀を振る…剣の道に生きるのが自分で定めた在り方なんだろう?」

 

「だからさ…自分の落ち度で、呪いを受けることになってしまうなら…それは罰だ…、罰ならば自分の一番かけがえのない物を犠牲にして自分を戒める必要が有る…そういうものだろう?」

 

「まぁ…そうだな…それはその通り…だな…。」

(呪いっていうのはその魔法の「属性」であって、枷とするために課すワケじゃないんだが…そうか、アングラウスくんはそういう風に受け止めてしまったか…それなら…彼の望むようにしてやらないとな…)

 

「それならば…少し失礼するよ…」

 

 そう言ってベルこと、ベルリバーはスキルを発動させ、限界ギリギリの範囲に広げた《誘引の色香》を発動させる。 もちろん誘いこむのはコウモリだ…。

 

 そうして、ブレインから少し離れた場所でただ黙ってじ~っと立っていると、村の裏手、森の方からコウモリが数体飛んでくる。

 

 何の変哲もない…ただのコウモリだ、モンスターでも、ジャイアントバットでもない、ただのコウモリ…ベルリバーはすぐさまスキルを切り替え、コウモリが居る方向へ向けて《弱者の悲鳴》を弱めに当ててやる。

 

 するとコウモリは一直線にベルリバーへと迫り…噛み付こうとする寸前に翼ごと、体の横から伸ばした手で左手と右手、同時に握り込む…状態異常を受けているため、手の中で暴れるコウモリを<睡眠(スリープ)>で眠らせ、すぐさま翼をむしり取る、2羽目?2体目?の方もとりあえずむしる…3体目はボクの防具にガジガジとかじりついているが、無害だし痛くもないから状態異常が解除されるまで放っておこう…。

 

 娘の目の前で…必要だとは言え生々しいモノを見せてしまった、と反省しながら彼は体内にいる彼女たちに話しかける。

(ディーネ?ディーネ?まだ起きてるかい? ヒマしてないかい?)

 

 そうするとすぐさま返事が返って来る

〖眠くなんてならないので全く眠ったりしていませんよ? 大丈夫です!それよりヒマです!すっごいヒマです…出番ですか?なにかお手伝いできることでも?〗

 

(あぁ…今も見えてると思うが、このコウモリ2体に<慈悲の雨(マーシーレイン)>…は消費が高くてもったいないか…それなら範囲型の<軽症治癒(ライトヒーリング)>をかけてやってくれないか? 必要なこととは言え傷つけてしまった。)

 

〖は~い! わかりました! ヴェールさんはやっぱり優しいですよねぇ~〗

 

(頼むよ、いつもありがとう)そう言うと〖どういたしまして〗という軽やかな言葉が帰って来たと思うとすぐに効果はあらわれる。

 

 コウモリたちを中心にして淡く光る円形の小さなドームが現れ、コウモリ2体を包み込む、しばらくそうしているとむしり取ったはずの翼が元へと戻り、傷が治ったことにより状態異常『暴乱』(狂戦士化より弱めの効果)の方も、解除され、パタパタと元の森へと帰っていく。

 

 自分の防具に未だにかじりついているコウモリは…フレイラにお願いして〘エルダージャガー〙の種族特性スキル、《上位者の威圧》で、恐怖状態に陥れ、無抵抗になったところを森の方角へと投げ飛ばす。

 

(コウモリの羽根は一対で触媒としては充分だしな…二対目の方はアイテムボックスに仕舞っておこう。)

 

 さて…と、と言いながら、今度は別の作業へと移る、今度は…(ホーク)か…、どうするか…おびき寄せるにしても…この近くにいるとは限らないしな…。と考えていると…

 

「ベル様…これは私の愚案なのですが…僭越ながらよろしいでしょうか?」…とフレイラから声がかかる。

 

「ん?いいよ? 何か思いついたのかい?」

 

 そう問いかけると、少し表情に色が戻ったようになり、…そしてすぐ表情が引き締められる…そんなに気を張らなくてもいいのに…と親としては少し寂しく思う。

 

「よろしければ、ベル様ご自身で召喚されてはいかがでしょうか? たしか自然の動物召喚、及び魔獣召喚系はお持ちのはずでは…?」

 

 我が娘にそう言われて、そうだった…と思い出す、ムーンウルフ、コカトリスを呼んで以降、とんとご無沙汰だったからすっかり忘れてた。とは言えず、フレイラには感謝の言葉を返す。

 

「いや、いい意見だったよ、ありがとう、何を呼び出そうかと思ってたけど、今の言葉で一応方向性は決まったよ、呼び出してみて、彼にどっちか選んでもらおう。」

 

第一位階自然の獣召喚(サモン・ビースト・1st)> 『ブラック・コンドル』

 

第一位階自然の獣召喚(サモン・ビースト・1st)> 『冠熊鷹(クラウンド・ホークイーグル)

 

 ブレインは目を見張る、今呼び出されたのが、どちらも勇壮で…気高い生き様を感じられたためだ。

 

 呼び出されたのは2羽。

 

 どちらも強そうな、それでいて驕り高ぶっていそうな雰囲気はどこにもない、堂々としたものだった。

 

 全体的に黒い姿の方はその名の通り、「ブラック・コンドル」というらしい、首から上は羽に覆われておらず、地肌が丸見えな感じだが、それでも足以外は全部まっ黒、これは闇夜での警戒が容易そうだ。

 

 対して、もう一羽はもっと力強い印象を受ける、どうやら「カンムリクマタカ」というらしい。

 

 意味は…王位に相応しい巨鷹…という意味だそうだ。

 

 黒い方は両翼を広げると2mと少しくらいだろうか…、ベルという男が言うには、この鳥は、主に掃除屋としての側面が強く、獣などの死骸や…捨てられている果物、まれに小動物も狩ったりするらしい。人間の住処の近くだとゴミをあさることもあるようだ。

(こいつは序盤の方で装備もままならない程の強さの時に出てくるモンスターでLV3、そんなに強くはないけれど、ゾンビとかと出てくるとちょっと厄介さが上がる…死肉をついばむ性質通り、ゾンビの5HP分をスキル《屍肉喰い》で奪うと、最大HPの上限を10だけアップさせ、最大HPの上限がアップしてから30ポイントのライフを回復させるという特性を持っていた、単独なら怖くなかったんだけどな。)

 

 

 対して、「王位なる巨鷹」の方は、ベルリバーのリアルの世界でも、昔は存在していた鳥だったという話は聞いたことがある。自分が暮らしていたような大気まで汚染された時代ではなく、もっとみんなが平穏に過ごせていた時代に実際に存在していたようだ…ユグドラシルを遊んでいた時代にはもう見なく…というより絶滅しちゃったんだけどね…、その話はさておき、その鳥が生きていた頃は、翼を広げた時は2m程だが、それを補って余りある鉤爪で、20kgを超える…時には30kg以上の獲物をも掴んだまま、舞い上がり巣に持ち帰ることもできたらしい。

 そして時には、木にしがみつくのが得意な中型の獣でも引きはがしてしまうほどのどう猛さ、攻撃性を持つという…、樹の上、その安全な場所での待ち伏せではなく、獲物を探すように飛び回り、狩る時は低く飛び、それを見て逃げる者たちの中からはぐれた一体に襲いかかるという…縄張りは、巣を作る森の中だが、時には森の外に出て襲うこともあったようだ。

 

 そう両者の鳥について説明していると、ブレイン…彼の目がギラついたのが分かる。

 

 おそらく気に入った方が彼の中で決まったのだろう。

 

 声を掛けてみると、彼が最も気に入ったのは、その体が1mにも満たない身長、そして体重も、3kg強~6kg前後くらいだという…のにも関わらず、自分よりも大型の種を獲物にするというその生き様、ごみを漁るよりもずっとオレに合ってるような気がする。という返答をベルに告げると、選んだ方の鳥に指をさす。

 

「こっちの、黒くない方で頼む!」

 

「わかった、冠熊鷹(クラウンド・ホークイーグル)の方だな…」

 

 そう決めると、ブラックコンドルの方に指示を出す。

 

「そこの大森林に行って、腐敗前の新鮮な屍肉をついばんで来い!好きなだけ…な。」

 

 そう言うと嬉しそうにトブの大森林へと飛び去って行く。

(とは言えアソコは、オーガが居るからな…死骸でも普通にかじりついてるだろうし…運よく見つけても食い残しかも知れないがな…探している内に効果時間が切れて、還って行くだろう。)

 

 そう思いながらも、冠熊鷹(クラウンド・ホークイーグル)を自らの腕に止まらせる、幻で見せないようにしているが、今となっては標準装備として、普段から身に着けているハーキュリーズ(ヘラクレスの)ガントレットをしているため、爪の食い込みによるダメージは皆無だ。 それでも、「1st」で呼べる者たちの中でもLV9というまぁ、トップクラスに属するモンスターだった。

 

 自然界に属する生き物では強い方だろう…まだLVが低いため、筋力低上昇や飛行速度の上昇などは持っててもスキルや魔法は使えない…まぁ序盤に出るモンスターだったからそれも仕方ないだろう…。

 

 こいつの一番の攻撃は初期装備の相手に爪を食い込ませ、上空に舞い上げてから、地面に叩き落とすという攻撃方法もあった、アレは<飛行(フライ)>や<浮遊(レビテート)>が無ければ序盤のHPではかなり致命的な状況に陥りやすい攻撃手段だったよな…。

 

 などと思いながらも、羽根の一枚をもらい受ける。

 

「良し、これで準備は完了だ…、待たせたね、アングラウスくん。」

 

「いや、元々はヒキガエルになる呪いなんだろう?それをオレのことを考えて好きなものを選ばせてくれたんだ、それを待つのに嫌な思いなどしないさ。」

 

 では…始めるか…、それでは…えぇ~っと、たしか専用の詠唱が必要だったよな…(その専用の詠唱がパスワード代わりだったから、直接言葉にする必要はあるだろう。)

 

 そこでおもむろに懐に手を入れると、手慣れたもので、懐の中でアイテムボックスをまさぐり、お目当ての物を探し出す。

 

百科事典(エンサイクロペディア)…か、これを出すのもいつぶりだろう…たしか…あったあった、こんな長い…まぁいいか。言ってみよう。」

 

 百科事典(エンサイクロペディア)を片手に持ち、ページを開いたまま、目でその文章を追い、手の平にコウモリの羽根一対、そして冠熊鷹(クラウンド・ホークイーグル)の尾羽根を乗せたまま、合言葉を言葉に出していく。

 

 

〝キー・オーブス・プラタ・ロー・蝙蝠の羽より来たれ、夜魔の王 我が爪に宿り、契約の効力となれ!〟

 

 

 一言一句間違えずに丁寧に言い終えると、手の平に乗っていた触媒が次第に燻りながら小さくなり始め、それらの収束したものが手の平から、人差し指の爪の方にと移動する。

 

 そうするとじゅくじゅくとした音と共に、爪から毒々しい触手のような…爪の先から枝分かれし始める枝先のような何かが、どこか不安を抱いてしまうような何とも言えぬ青さを際立たせ…深い深い蒼に染まった時、ベルリバ―の中に、新しい情報が流れ込んでくる…これがこの世界で初めてこの呪いの魔法が現実として発動させた効果となったのだろう。

 

「すまないね、アングラウス君、ボクもこの土地に来て…初めてこの魔法を使った結果、頭に流れ込んできた新しい効果があってね、これをキミに伝えておかないと色々とフェアじゃない…そう思ったから伝えようと思う。」

 

「なんだ? また新しい報告かい?」

 

 ジュクジュクとまだ少し枝分かれした部分が揺れる様子を見ながら、ブレインがその内容を聞く。

 

「この魔法を受けた場合、今の私の指と同じ…つまり受けた方の手、その人差し指の爪に青い色がつく…そして、その爪が青い間、服従を誓った存在に対し、翻意を覚えたり逆らったりした時、またはその爪ごと切り離したり、生爪をはがそうとしたりすればその爪は青から紫、そして、そこから段々赤へと変化していく。」

 

 そこで一度言葉を区切り、ブレインがそこまでを理解したかを見てとると、説明を再開させる。

 

「最後に赤から真紅へと染まり切った時、キミの身体は変貌し始め、キミが先程選んだモノへと変わっていく…そこまでが今新しくボクの中に流れ込んできた情報だ、それでもいいかい?」

(ユグドラシルでは『生爪をはがす』なんて行動の選択肢は無かったからな…それも当たり前だが…)

 

「あぁ…男に二言はない!」 

 

「そうか…それなら、どちらの手でもいい…人差し指を出してくれないか?」

 

「あぁ…頼む…。」

 

 その短いやり取りで覚悟を決めたようで、お互いがお互いの指先を触れ合わせる。

 

 するとあれだけ毒々しいとも言える雰囲気の爪の先が、ブレイン・アングラウスの爪に宿り、左手の人差し指の爪がまるで水の色のように青く染まっていた。

 

「おめでとう、アングラウス君、これでキミはこのカルネ村の住人になれる資格をとりあえずは得られたようだよ」

 

「とりあえず? まだ何かあるってかい?」

 

「いいや?それはボクの口から言う事じゃないだろう?」

 

「どういうことだ?」

 

「アングラウス君…キミの忠誠…いや、その呪いを発動する条件として思い浮かべたのは誰だい?ここの村長さんかい?それともエモットちゃんかな?」

 

「もちろん、あのエモット嬢ちゃんだ。」

 

「そうか…ならばここの村長に会ってから、この村に入っていいかどうか聞くとイイ、それでもダメならまだまだこの村に入るには時期が早い…というコトなんだろうからね。」

 

「あぁ、そうか…そうだな、そういうことなんだろうな…わかった、了解だ。」

 

 

「そうと分かれば、村長の旦那に連絡だ。」

 

 ブレインは一瞬、その言い方に違和感を覚える…『村長の旦那』という言葉にだ…普通なら『村長』でいいのではないだろうか…?

 

 それをわざわざ、なんで「旦那」とまでつける必要が…?

 

 とも考えるが…、まぁ別に呼び方なんて言うのは人それぞれだ、ただ単にベルという人物が、「〇〇の旦那!」っていう風に相手を呼ぶクセでもあるのだろうと納得して、魔法で村長を呼び出しているらしいベルをただ静かに見ていた。 (自分の事に関しては「旦那などと付けられる年齢でもないからな…」と1人勝手に結論付けていた。)

 

 

                  ★★★

 

 

「どうしたの?、エンリ…夕食も終わって早々、こんな夜も更けた時間に外に出るなんて…」

「事情は後で話すわ…夕食も後片付けも終えた時間なんだから、ゆっくりと説明はするからさ、その前に門の外に用があるのよンフィ。」

 

 門の内側から声が聞こえて来た、昼間であればそんな声も門の外からだし、人々の生活の音、ガヤつきでかき消されそうなものだが…夜のこの時間、そんな喧騒もない、遠くからの声で、そう大きくはないが、耳に届いていた。しかし気になる名前、自分がこの村に来た最大の理由、それがやっとこの耳で聞こえてきたが、半信半疑であった。

 

 聞こえた声の数は二つ。

 

 その声は男性の声が一つと、聞きなれた女性の声が一つ

 

 それだけでなんとなく誰が来たかは分かった。

 

 しかし、それ以外の声は聞こえない…黙して着いてきているのだろうか…それとも、気配でも殺しているのか…と、いぶかしむも、所詮、防壁の外と内、【領域】の範囲外ではどの道、気配すらわからない…門が開くまでネタバラしもおあずけと言ったところだな…

(しかし今遠かったが、エンリと聞こえなかったか? 聞き間違えかも知れないが…)

 

 そう思っていると、見張り台の者が見つけたのだろう、その門を開ける準備に入り、重々しく門がゆっくりと開かれた。

 

「やぁ、こんばんは、いい月夜だね。」

 

 目の前の男、仮面の男がそう言って声を掛ける。

 

「あ!どうも…ベルさんこんばんは。 いい月ですね。」

 

「あ…ゴウン様…え?エンリ? ベルって?…え?」

 

「は? エンリ?って…え?誰がだ?どいつだ??」

 

 たった一人で落ち着いているエンリ。

 

 事情が全くわからない2人の男、その内の1人、村から門まで来た方…ンフィーレアは目の前の存在を「村の救世主」かと思い声を掛けたら自らの妻は違う名を呼びかける、その混乱で、剣士の前で言っちゃダメ、と口酸っぱく言われていたにも関わらず、つい名前を呼んでしまうくらい驚いていた。

 

 しかし驚いていたのはブレインも同様だ、今までこの村で雰囲気だけは存在を確認できていたが、実際にその名を自分の耳で聞いたのは初めてであったブレインは、腕組みして静かに立っていた姿勢から、思いっきり目を剥いて声のした方を勢いよく向き、凝視してしまっていた。

 

「あ!…ンフィー、ブレインさんの前で言ったらダメだって言ったじゃないの…もぅ…でも、いいです…ベルさん、もう儀式の方は済んだようですね。」

 

「あぁ! バッチリだ!」

 

 ベルリバーこと、魔法詠唱者(マジックキャスター)のベルは、片目をつぶり、右手を挙げ、拳を握ったポーズで親指を立てる。

 

 エンリもそれは始めて見るポーズだったが「うまく行った。」又は「成功!」というイイ方の意味だと受け取り、エンリからもそれと全く同じポーズを返す、片目はつぶっていない、仮面ごしでは片目をつぶってもそれが見えていなかったからだ。

 

 置いていかれてる男性2名は、エンリの下に詰め寄って事情を求める。

 

「ねぇ…どういうこと?ねぇ?ゴウン様じゃないの? ベルって誰?ねぇ?」

「エモットの嬢ちゃん、どこだよ、まさか姿を消してるなんてことないよな?エンリはどこだ?」

 

「落ちついてくださいみなさん、順番に説明しますから…」

 

 2人の前でムネの前辺りに両手を挙げ2人の方に手の平をみせながら…つまりは「落ちついて、落ち着いて」のゼスチャーである、それをして一拍の呼吸を置き、順番に語りだす。

 

「ンフィ?…こちらはゴウン様のお知り合い…? いえ…お友達と言った方がいいかしら?…のベルさん。 …あ、ベルさん、こっちは私の夫で村長代理、そしてポーション職人のンフィーレアです。」

 

「あぁ、お噂はかねがね…(本当は透明化して名前も顔も知っているけど、こっちの存在はンフィーレア君自身には見せてなかったからな、<伝言(メッセージ)>の魔法もお互いの存在と名前を知らないとこの世界では繋がらないらしいから…急な変更で、エンリにしてしまったが…まぁこの程度の混乱なら、エンリちゃんなら問題なく収められるだろう…)ちなみに私はベル…と名乗っている。一応は魔法詠唱者(マジックキャスター)だ…本名ではないがそこは勘弁してほしい。」

 

「あぁ…そう…でしたか…それにしても瓜二つですね…。」

 

「まぁ、彼のことは尊敬しているからね、魔法詠唱者(マジックキャスター)の純粋な実力としては彼の足元にも及ばないよ…、ま、私は剣の道も同時に歩んでいたからね、どっちも極められなかった…程度の男さ」

 

 それをジト目で見ていたブレイン・アングラウスはベルにツッコミを入れる。

 

「あんたの実力でそれを言ったら、オレにしてみりゃ嫌味にしか聞こえないぞ?」

 

「あぁ、すまない、そんなことはないんだが…しかし覚えておくといい、この世界には例え自分は強い…と自負していても上には上が居るということをな…。」

 

「まぁ…そこは、骨身に染みちゃいるんだが…目の前のアンタよりも上の…ってのが想像も出来ねぇんだよ。」

 

 軽く肩をすくめるようにして「それは『ありがとう…』と言った方がいいのかな?」

 

「いらんさ…ただのグチだ…聞き流してくれ…」

 

 その一連の会話で3人の男性に落ち着きが戻って来たのを見て取ったエンリはブレインの前に来て初めて、正式な自己紹介をする。

 

「どうも、ブレイン・アングラウスさん…今までは失礼な態度もしてしまいましたが…どうやら御高名な剣士様でいらっしゃったようですね…こちらに移住希望者として仮住まいしているワーカーの方々から「戦士であれば誰もが名前を知らぬ者などいない」程の方だと伺いました。 …私は『エンリ・エモット』…この村の村長であり、ゴブリンやオーガさん達視点では『カルネ部族の族長』、そして、ご存知の通り、巷のウワサの根源、ゴブリンの大将軍、血塗れエンリとは、私のことです。」

 

 そう一気に言い切ると、会釈した姿勢から顔を上げ、ゆったりとした微笑みをたたえ、ブレインに優しく声を掛ける。

 

「ようこそ、カルネ村へ。あなたを歓迎します、ブレイン・アングラウスさん。」

 

 

                  ★★★

 

 

「落ちつきましたか? …ブレインさん…?」

 

「あぁ…ありがとう…見苦しい姿を見せてすまなかった…。」

 

 

 

 あの自己紹介を受けて、ブレインはずっこけたのだ、というよりも腰を抜かした…というより脱力の余り、ヒザから力が抜けてしまった…と言った方が近いか…。

 

 その直後、立ち上がるのももどかしく、「まて…ちょっと待て!」と言いながら、片手で顔を覆いつつ、反対の手の平をエンリに見せ、自分の頭の整理をまず優先した。

 

 あの夜のことを思い出す。

 

 アインズ…またはゴウン様と、カルネ村の者らからもそう言われていた方の仮面の魔法詠唱者(マジックキャスタ-)はこう言っていた。

 

 確か、「この者はゴブリンの大将軍、それに最も近しい人物」だと…。

 

 だからブレインは最後まで埋められないパズルのピースを探すようにエンリと名乗ったエモットに質問をする。

 

「あんたは、エンリの側近じゃなかったのか?」

 

「いいえ? ゴウン様は敢えてウソでもなく真実でもない…、一番アナタに納得してもらいやすい立場の者として、紹介をしてくれたんですよ…あの夜のブレインさんに「私がエンリです。」って言って信じましたか?」

 

「あぁ…そうか…そうだな、あの夜のオレじゃ…まず信じずに、その言葉を斬って捨てちまってただろうな…その上で本物を出せ!とでも言い出しかねなかっただろう。」

 

「そういうことです、とりあえず、この村を勝手に飛び出して内情をあっちこっちに吹聴して回る心配がなくなったのなら、あなたはもうカルネ村の一員です。さ…どうぞ中へ。」

 

 そう言って、ブレインの手を取ると、女の子の力とは思えない程の力強さで立ち上がらせてもらった。

 

「なるほど…ウワサもあながち……ってことか…。」

 

「え?なんです?」

 

 柔らかな微笑みで小首をかしげている、あの夜の彼女とは明らかに別人のようだ…、あの時のオレは運が悪かったな、まさかこんな子の…文字通り『逆鱗』に触れてしまうとは…

 

 自嘲気味に「ふ…」とブレインも笑みを見せると

 

「なんでもないさ…それじゃ、お邪魔させてもらうとするかな?」

 

「どうぞ、もうここはブレインさんを迎え入れる準備は整っていますから…門番さん?鐘を…一つずつ…お願いします。」

 

「あぁ、了解だ。 集めるだけだな?」

 

 そう言うと、大きく…しかしゆっくりと村中にその音を響かせる…。カン…と鳴らすと、しばらく置いてまたカン…、そして、再びまたカン…その間は恐らく5秒ほどか…それを途切らせることなく、響かせていた。

 

「あれは?」

 

「ブレインさんは「敵襲」の時の音しか聞かせてないですもんね。 敵襲の時は急いで、そして村のみんなに分かりやすく3度鐘を鳴らし、2~3秒置いてまた3度の鐘…それの繰り返しで「急いで避難」戦闘要員は緊急対応。という意味を知らせる合図だったんです、そこはもちろんお分かりですよね?」

 

「あぁ、それは大体どこの村でもそうだからな…だが1つって言うのは初めてお目にかかる。」

 

「あれは、急いで行動することは無いですが、村のみんなにお知らせすることがあるので、みなさん集まってください。の合図です。」

 

「どこに集まるんだ?」

 

「あぁ、それなら村の広場です。 今、私たちが向かっているところなので、ご案内します。」

 

 そう言って、ブレインを連れて、ンフィーレア、ベルにフレイラ。そして先頭にエンリ。というメンバーで歩く。

 

 すると、遠くから人の姿がちらほらと見え始めた。

 

「村長さん…エンリ村長さん? ボクはそろそろ姿を隠すよ、自分が姿を見せたままだと余計な説明まで必要だろうし…エンリちゃんも大変だろう。 ボクもちょっと野暮用がある、この後、少しだけこの村から姿を消すが…、夜のうちに戻って来られると思う。その時は…、まぁ勝手に村に入らせてもらうよ…いいかな?」

 

 そう言いつつ、懐からトラップ機構付き宝箱を取り出し、中からギルドの指輪を取り出す、そして、フレイラにも声を掛け「一緒に見せよう…いくぞ?」とだけ伝えると、要点だけしか言っていないのに、彼女もちゃんと理解してくれたようだ…賢い子で助かるな…と思いっきり親バカになっていた。

 

「エンリちゃんにはもうバレてしまっているようだからな、隠してても始まらんし、とりあえず知っておいてもらった方がいいと判断したよ」

 

 と言い、フレイラは首から下げたネックレス、そしてベルからは指輪の宝石部分を見せられた。

 

 もう細かい説明はいらなかった、エンリもフレイラと同じネックレスをアインズから借り受けているのだから…見た瞬間、その意味を理解する。

 

「わかりました、いつでもお出で下さい、カルネ村はお二人の訪れをいつでもお待ちしています。」

 

「あぁ、ありがとう…、ちなみにアングラウスくん、キミはこの後、村民たちへの自己紹介が終わったら、フォーサイトの男性側の仮住まいに行ってみるといい、みんなきっと快く受け入れてくれるだろう。」

 

 そこまで言って、村長の頭越しはまずいか…と思い、確認だけ取る形で村長に顔を向ける。

 

「そんな感じでも大丈夫かな? 村長さん?」

 

 そう声を掛けると、言いたいことは分かっているのか、ただそれもいいか、と思っているのかわからない表情を見せながら、静かに言葉を返してきた。

 

「そうですね、似たようなお仕事の人たち同士、話は合うかもしれませんからね。」

 

「ありがとう、それじゃ行ってくるよ、エンリちゃん。」

 

 そう言うと、すでにもう言い慣れているのか間髪入れずにこう返される。

 

「行ってらっしゃい、またのお出でをお待ちしています。」

 

 にこやかに手を振りながら見守ってくれる彼女…もうすっかり奥さんの雰囲気が身についてしまってるな…という感想を抱きながら、少し距離をとるように歩き出す。

 

「なぁ、フレイラ、フォーサイトの2人が泊まっている家にはシャドーデーモンを配置してあるんだろう?」

 

「はい、そこに関しては抜かりなく。」

 

「うんうん、上々だ。」

 

 そう言いながら、彼女の頭に手を置き、ポンポンと優しく褒めてやる。おとなしくしてくれているので喜んでくれているのならこちらもありがたいな、なんて思っていつつも…。

 

 今もベルリバーの肩に止まっている冠熊鷹(クラウンド・ホークイーグル)に指示を出し、シャドーデーモンが潜んでいる家の屋根に居ろ。と命令を下して、行動に移させる。

 

 これでひとまずは完了だな。

 

 そう意識を切り替えると、グッとフレイラの肩を抱き寄せる…そのままベルリバーは<上位転移(グレーターテレポーテーション)>を発動させ、カルネ村から姿を消した。

 

 

                  ★★★

 

 

〖ヴェールさん、ここって私たちの家ですよね? なんか用事でもありましたっけ?〗

 

 そう問いかけてきたのはセピアだ…彼女にしてはおとなしく、ずっとお腹の中でくつろいでるようで、特にこれと言って騒がしく感じた事はなかったが、ボクの中で安心してくれているのだろうと思うようにしていた。

 

 一度、自分の建てた家の前に来ると、外見をエルヤーの似姿へと変える。

 

「あぁ、この家を撤去しようと思ってね、これを元の大きさに戻したら、カルネ村の隣に置かせてもらおうかなと…そう思うんだが、みんなはどうだろう?あそこは森も近いし、木の建物だし、過ごすのに居づらいということはないと思うんだけど…?」

 

〖ヴェールさんがそうされたいのであれば私たちの方は問題ありませんよ?〗

 

 体内からの声でそう返してきたのはルチルだ。

 

「今のはボクの意見を通したいって意味じゃなくて、キミら3人の意見としてはあそこで過ごすことに抵抗は無いかい?ってことが聞きたかったんだけどな…。」

 

〖その点なら大丈夫ですよ?ヴェールさん、森の匂いがそばにありますし、木製の物や家なんかに囲まれたあの村は私たち、嫌いではありませんから〗

 

「そうか…それなら、すぐに撤去だな。」

 

 

 そう言って<新緑の隠れ家(グリーン・シークレットハウス)>を回収に入ろうと手を伸ばした時、何かの音が聞こえた。

 

 

 それは気に掛けるほどでもないか?とも思ったが先程から、定期的に…というか、ある程度の時間を置いて…と言った方が近いような気がする…弱々しい音がずっと近くから聞こえて来ていた。

 

〖どうかしましたか? ヴェールさん?〗

 

「いや…さっきから何かの音がずっと聞こえていてね…気にはなってたんだけど、どうも人為的な音じゃないかって気が…」

 

〖私達もそれは気になってました、何の音かな?とは思ってましたけど…〗

 

「ちょっと確認してみよう」

 

 そっちに意識を向けると、弱々しくどこかから石が放物線を描いてこちらに向かって…足元どころか、はるか手前で落ちる。

 

そしてしばらく見てるとまた石…気にする程でもな小さい石、それが先程よりももっと手前で…カサリ、という音を立てて、葉っぱに落ちる。

 

「何だと思う?みんな…これって森の自然現象じゃないだろう?」

 

〖そうですね…声も出せず、助けを求めて…っていう感じのような気もするのですが…〗

 

「ちょっと気になるよね…少し様子を見てみよう、フレイラももし傷ついて死にそうな人でもいた場合は頼んだよ?」

 

「はい…マスター、御身の御心のままに…。」

 

「あ、それに戻っちゃうのね…まぁ、人目がない時はいいけど…ほどほどにね?」

 

「?? 程々に…という意味が図りかねますが…了解しました。」

 

 

 そうして、最初に見た時の石、そして二度目に見た石を直線で結ぶようなイメージで見ると、その直線状の先を目指して進む。

 

 しばらくと言うほどの距離もいかず、すぐにその存在は居た。

 

 

 ちょうど、自分がこの世界で目覚めた洞窟前の廃墟、それを作るため、周辺の樹を伐採したがために出来たぽっかりとした平地のスペース、その境界の外。

 

 木がそこから先にずっと続くエリアのギリギリ辺りで前のめりに倒れている、見た感じ…人型に見えなくはないが、印象としてはミノムシのような感じ…木の枝や、葉っぱ、土、芝…そう言った諸々の物で構成された着ぐるみ…そういうものを着たコスプレ人間?と見間違えそうになるが、その者は、身動き一つできず、唯一動かせる腕を緩慢に持ち上げ、手近にあった石を…ポテ…と投げる。

 

 今度は長い距離を進むこともなくポトリと落ちた。

 

〖ヴェールさん、この子、樹精霊種(ドライアード)です、こんな弱ってるのを見たことは初めてですけど…以前私たちの住んでた森で何度か見かけたことがあります。〗

 

 森祭司(ドルイド)のルチルが教えてくれる。

 

 その言葉を受け、その子をそっと抱えてあげると、少し地面から身体を浮かすようにして、顔を空へと向け、話しかける。

 

「大丈夫か?おい! 誰にやられた? 気をしっかり持て、今治療してやるからな…PKでもされたのか?」

 

 ベルリバーがそう樹精霊種(ドライアード)に声をかけるとその者は目らしき部分をゆっくりと開く…とはいえ、半分くらいしか開けられず、そこまで力が出せなくなってきているようだ。

 

「キミ……は、だ…れ? あそこの……家の……ひと?」

 

 どうやら目が見えていないのか、空を見上げたまま、こちらに目が向けられないまま話しかけてくる。

 

「あぁ…そうだ、誰だ? 誰かに…襲われたのか?」

 

「懐かしいな~…さっきの言葉…あの人達にも…そう言われたコトが…あったなぁ~…「ぴーけー」…か、久し…ぶりに…聞いた、よ…。」

 

(この子…プレイヤーの情報を知っている?)

 

「まってたよ…、ずっと…やっと、あえた…ね…お話し…したく…て…、でも…もう…ダメ、か…な…最後に…声だけ、でも…聴けて…うれし…かっ…た…よ。」

 

「オイ! オイ!しっかりしろ! ルチル! 樹の精霊を癒す魔法か何かないか?」

 

〖この子は、外へ活動に出るための操り人形みたいな感じなので、この子ではなく、本体の樹の方を癒しませんと…〗

 

「オイ!オイ!まだ気を失うな! お前の樹を教えてくれ! すぐに治療しに行ってやる。」

 

 

 そう言うと、抱きかかえていた腕からザ~~…という音と共に、枯れ葉、枝、土、腐葉、諸々のものになったそれらの塊が土に落ちる。

 

それと同時に、一枚の葉っぱがふよふよと宙に浮かび、先端ではなく茎の部分で先を示すように、風に吹かれるでもなくひとりでに動き出す。

 

 あ…そうだ…助けを呼ぼう! たしか、アインズさんも夜通し語り合った夜に「ナザリック農地拡大、農作物資金化計画」っていうのに着手してるって言ってたし…なにより畑仕事に精通していて、植物の状態や生育具合、できれば一目で元気があるか病気か、わかる者でも居れば欲しい…とかって言ってたからな…樹精霊種(ドライアード)ならその条件にあてはまるだろう。 メシも食わないし排泄物も出さないし…エコだよなエコ!

 

 ベルリバーはそう考えを巡らすと、宙に浮かんで少しずつ進む葉っぱを追いかけながら、こめかみに指を持っていき魔法を発動させる。

 

 

「アインズさん! 緊急要請です! プレイヤーの情報を持っているらしい存在を発見、保護しています…しかし虫の息、今にも死にそうです。対象は樹精霊種(ドライアード)! 可能であればマーレをお願いします。」

 




ブレインさんにかけた呪いに関してはすでにネタバレしてあるので、詠唱もそのまんまにしております。

ちなみに呪いをかけられたことにより、ソードマスターのLVが、1LV下がり、その代わり「カースドスラッシャー」という特殊クラスが1LVで置き換えられています。

ケンセイでもあり「カースド」でもある、組み合わせ的にそれがどう作用するのか、出番がこれからあるようなら、もっと書いてあげたいキャラですよね。

ピニスンは、いきなりピンチな状況で発見されてしまいます。

救急搬送という名目で、本人の了解も得ずに本体ごとナザリック入りでもさせそうな流れになりそうなのは気のせいだろうか…?

マーレを呼び出して、ベルリバーさんはどう誤魔化すつもりなのでしょう…?

それにしてもオバロのアプリゲーム…PC版も出たはいいけど…アプリ版と連動できる仕様もいいんだけど…

なぜか私のPCでは連動できません、連動するためのコマンドはスマホでは出るけれど…PCではエラーが出てします…しかも「アプリケーションが起動できません」とかなるし…仕方ない…スマホでずっと遊んでよう…。

あぁ…でも★5の召喚チケット…欲しかったな…><
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