気づいたら大自然 小心者の異世界闊歩   作:yomi読みonly

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未だに、ナザリックのNPC達への罪悪感が消えていないベルリバー。

さらに、それも手伝い、「顔向けできない」「恨み言など言われたら…」という心配から
今回もどうにか守護者との遭遇は避けたいと思っている至高のベルリバー様。

そして、フレイラにも正直に自分の抱えている気持ちを言えない彼は、本当のことと、遠回しにウソを織り交ぜた半々の言い訳で、今回も乗り切っています。




第37話 森での騒動…そしてお持ち帰り

 =======ここはナザリック地下大墳墓=======

 

 今日も執務室で毎日のノルマ…いや、ナザリック運営のためのあらゆることを優先順位の高い物から順に処理していく。

 

 しかし、リアルでは小卒してすぐ社会に出て、営業職一本でやってきたかつての鈴木 悟…今やアインズと名乗っている彼には荷が重いものも多々含まれている。

 軽くその書類を見て、「うん、これはアルベド案件だ。」とか「これはデミウルゴスだな…」とか「こういった難しい計算はアイツに任せよう」など、有能なNPC達に殆どは割り振っていた。

 

 アインズに忠誠を誓っているNPC達は、絶対なる支配者、あらゆる事象を見通し、自分らがもたらす結果以上の成果を出し、常にそれを驕るどころか、「この程度のことなど、大したことはしていない」と言う智謀の主、謀略の支配者、その御手から直接仕事を任されるというコトはNPC冥利に尽きるとばかりに、不審に思うこともなく割り振られる仕事を…やりがいがあればあるほど燃えてくれるNPCには「こういう時は助かるな」と思いながら、自分に回って来た分の書類だけでも片づけていく。

 

 そんな中、ふ…と考えが他の思考に逸れ、傍に控えているアルベドへと支配者は問いかける。

 

「そう言えばアルベド、いよいよ明日に期日が迫っているナザリックへの誘い込みプラン…〝金貨の消費発動に頼らぬ罠での撃退「安心、節約返り討ち計画」〟の方はどうだ?」

 

「は…ご安心を、防衛時における作戦指揮官であるデミウルゴスとのすり合わせを重ね、ご来客の皆様にはご満足いただける仕上がりにして御覧に入れるべく調整中ですが、いよいよ大詰め、ほとんどの配置は終了しております。」

 

「そうか…楽しみにしている…こちらの世界ではどの程度の罠ならば見破られやすく、どの罠であれば有効か…そういった内容も含めて検討したいからな…くれぐれも金貨の消費はカットして全て構築してあるのだろうな?」

 

「問題ありません、全ては御身のお望みのままに…恐怖公への転移や、第六階層への転移などは任意での転移に切り替え、シャルティアの<転移門(ゲート)>と連動させることにより、魔力の消費による発動にして金貨による消費は起こらないようにしております。」

 

「うむ…ならばいい…転移の罠が一番心配であったが、魔力依存で発動できるように設定できるのならば…そちらで運用することも今後は視野に入れておくべきかもしれないな…。」

(しかしシャルティアが<転移門(ゲート)>を持ってるから連動させることが出来たのか、その魔法を覚えてなくても魔力さえ引き金に出来れば金貨の消費がされずに発動可能なのか…それも検証が必要かもな。)

 

 そこで新たに、以前着手したまま、経過観察状態で放置されていた案件を思い出す。

 

「そう言えば、資金といえばアルベド…例の件はどうなっている? 生育の方は順調か? 第六階層ならば問題はないかと判断して、あのままにはしておいたが…光の問題や水質、土の栄養などはどう解決しているんだ?」

 

 それはアインズがいつかギルドとしての維持費を使い切ってしまう未来を危惧しての打開策、エクスチェンジボックスを使い、ナザリックで生み出した食料や、穀物、稲などのもろもろをつっこんで金貨に変えてしまおうという、現在模索中の計画のことだ。

 

「そのことですがアインズ様、光の方は第六階層の光量で充分かと…、それから土…水質共にマーレの魔法がありますので、そちらで問題はありません…ですが、実は畏れながら、生育の方は…停滞しており、成果らしき報告が出来ない状態でございます。」

 

「何故だ?土も水も光も問題ないのだろう? それならばどこで支障が出ているのだ?」

 

「それが…、大変申し上げにくいのですが…御手により創造していただいたスケルトンたちの…その…。」

 

 アルベドは言いにくいようで、顔を伏せながら下げた両手をぎゅっと握りしめ、なかなか言い出せずにいる。

 

「アルベドよ…あのスケルトンは農作業用に…と作ったものだ、それ以上でも以下でもない…それに関して「私が創ったから」という特別な意味合いを持たせる必要はない。 そいつらがどうしたというのだ…?」

 

 

「は…それでは…申し上げます、不敬とは重々に理解しておりますが、御手により作られた存在にこのような言い方をすることをお許しください。」

 

「あぁ、言われずとも罰も与えんし、咎めもしないとも…正直なところを聞かせて欲しい、何が問題だった?」

 

「それでは…あのスケルトンらは耕すことに関しては問題ありませんでした…ですが、こちらから指示を出さなければ作物の不調にも気づけない点…、さらに口頭で伝えても微妙な力加減、または手心を加えると言った認識の欠如。 …そして一番の問題だったのは…。」

 

「遠慮はいらん、忌憚なき意見を聞きたい。 お前が感じたことをそのまま発言することを許そう。」

 

「ありがたき幸せ、その慈悲深さに感謝いたします…、その…土をかける時の…量や、形を整える時の力加減、そこの調節が全くできず…種子の段階で芽吹かせることも難しいことが原因となっております。」

 

 その言葉を聞き、アインズは大きくため息をつく、吐息は出ないのであくまでもポーズとしてだが…。

 

「そうか…ならばマーレの魔法で成長を促してみてはどうだ?」

 

「それも試しましたが、それもうまく行かず…ムリに魔法で勢いを付けようとしても、その効果に作物自体が耐えられず…」

 

 

「あぁ…そうか、わかりやすく言えば、まだ成長しきっていない、体が出来上がっていない、もしくは赤ん坊のままの存在に魔法で全力疾走を要求するようなものというコトか? 与えられた効果に自身が耐えられず、無理を強いられた結果、最悪の状態になったと…。」

 

 

「はい…申し訳ありません、畏れながらその通りにございます。」

 

「そうか…それならば、今後はスケルトンによる農作業の効率化は望めそうにもないな…、となると、そっちのことに詳しい何者かの力を借りねばならんだろうが…マーレの魔法では効果が強すぎる…とはいえアウラでは森には詳しくても、植物の育成にかけてはどの程度その力を割くことが出来るかが問題か…守護者としての役目もあるし、付きっきりで植物の世話ばかりをしている訳にも行くまい…。」

 

「は…まさにその通りでございます。 現在私の方でも目下、探している最中ではございますが…」

 

 

 そこまでアルベドが告げている最中、アインズの脳内に聞きなれたコール音が響く、これは…と思い至り、アルベドには手を挙げ、手の平を見せ、「少し待て…。」のポーズで伝えたまま、こめかみに手を当て、その連絡を受ける。

 

「あぁ…わた」

 

 

「アインズさん! 緊急要請です! プレイヤーの情報を持っているらしい存在を発見、保護しています…しかし虫の息、今にも死にそうです。対象は樹精霊種(ドライアード)! 可能であればマーレをお願いします。」

 

 

「しだ…、急いでいるようだが…何がどうなっているのだ? プレイヤーの情報を知っているかもしれない存在を保護しているだと? それは確かに情報源としては欲しいが…たしかにそのまま死なせてしまうのはもったいないか…」

(あの時の陽光聖典の者たちはアンデッドの媒介に使っちゃったしな…隊長の方は質問に答えさせてたら死んでしまったし、死者の大魔法使い(エルダーリッチ)に創り替えられないくらい爆散してしまったしな…そいつから聞けなかったプレイヤーの情報があるなら…助ける価値はあるか…)

 

「仕方あるまい…その樹精霊種(ドライアード)とやら、助ければ農作業や、ガーデニング、田畑の面倒などを見てもらうにはちょうど良さそうな人材かもしれんからな…この目で見させてもらうこととしよう。」

 

 そう言うと、<伝言(メッセージ)>を切断させ、要望されたマーレ…そして護衛として申し分のない実力者を1人、連れて行くことで不承不承ながらもアルベドは首を縦に振った。

 

 本日のアインズ当番であるトゥワイシィに指示を出し、他の一般メイドにその2名を呼び出すようにと指示を出し執務室まで呼び出してもらう…そして、3人が揃ってから指定の場所、「トブの大森林」まで転移するための準備をし、それを終えたアインズは…

「行ってくるよ、アルベド…なるべく早く帰る。」との支配者の言葉に「行ってらっしゃいませ、お早いおかえりをお待ち申し上げております。」と、アルベド。

 アインズはその言葉を受け、ギルドの指輪(リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン)を彼女に預け、<転移門(ゲート)>をくぐっていった。

 

 

                   ★★★

 

 

「どうしよう…どうすれば…このままだとボクはマーレと鉢合わせしちゃうじゃないか…イヤ、呼び出したのは自分だけどさ…。」

 

「あの…マスター、守護者の方々とお会いするのはなにかマズいのですか?」

 

「あ…そうか、キミには話していなかったね、アインズさんとの約束でね、墳墓調査に赴いた後、守護者の面々とちょっとした手合わせをする予定なんだよ、それで、一通り終わったら「実は…」って正体を明かして驚かせてやろうっていうサプライズを仕掛ける手筈になってるんだ、だから今、身バレするのはマズイんだよ…。」

 

「そういう事情でしたか…それならば…私も装いを変えた方がいいですね。」

 

 フレイラはそう言うと早着替えの効果で、ローブを羽織る。

 

「ん~~…それで誤魔化せるかはわからないけど、しないよりはマシかもしれないな…、でもフレイはそう言えばソリュシャンとセバスには顔を見せていたはずだな?いや、正確に言うと目元だけ…だったか。」

 

 

「はい…仰せの通り、誘拐騒ぎの折り、お二方には屋根の上でご挨拶は済ませております。」

 

「うん!ならば、フレイ!、ここに来るマーレとの対応はキミに頼んだ!」

 

 がしっとフレイラの肩に両手を置いて、指示を出す…自分は隠れているから…という旨もちゃんと伝えるのは忘れない。

 

「ですが…あの、また透明に?」

 

 心配そうにフレイラが問いかける、心配はもっともだろう、現地人たちなら、誤魔化せても、守護者クラスに通じるとは思えないという認識は間違っていない。

 

(マーレならドルイドだし、取得魔法の中に<霊光感知(センスオーラ)>でも持ってそうだ…、生体から出る微弱な光…それを見るための魔法でも使われたら、レンジャーを持っていないマーレにすら見破られてしまう可能性が大きい。)

 

 どうするか…と悩んでいると、今度はベルリバーの方に<伝言(メッセージ)>が届く。

 

『私だ…今トブの大森林に到着したところだが、目印を打ち上げてくれないか? さすがにこの森の中を探し回るのは時間がかかってしまうからな…よろしく頼んだぞ。』

 

「あぁぁ、来ちゃったよ…、アインズさんまで一緒みたいだから、イザって時はフォローしてくれると思うけど…」

 

「仕方ないか…フレイ! ボクは一発魔法を打ち上げるから、その後は頼んだよ。」

 

 そう告げると、すでに会話をしながら本体まで到着した葉っぱは樹木の中に吸い込まれていた…どうやらあの葉っぱは半実体だったようだ、その樹の近くで魔法を打ち上げようと決める。

 

 覚悟を決めたベルリバーはいくつかの魔法強化をかける。

 上空にまでよく見えるようにと<魔法距離延長化>を付加させた魔法を発動させた。

 

吹き上がる熱波(ブロウアップ・フレア)

 

 通常の戦闘で使えば、対象だけに炎属性のダメージを与え、他の対象に延焼などしない限定的な効果が期待できる魔法…広範囲に被害を及ぼしたくない時に有効な魔法だ。

 

 もちろん、この樹々の中、打ち上げる対象は「空」だ、それ以外に燃え広がる心配をしなくていいのは助かる。

 

 魔法が発生し、上空に打ち上げられ、どの樹よりも高く〝延長〟された熱波は森の外にまで見えていた…。

 

 そして現実として、森の入口に<飛行(フライ)>で飛び上がったアインズ、アインズに抱えられたマーレ、そして「キ」を使うことによって空を飛ぶことも可能である<舞空旋>というスキルを使ってアインズに追随するセバスの3人にもその熱波は見えていた、その場所までそんなに時間もかからずに到着するのには充分な時間、吹き上がっている。

 

 魔法を打ち上げながらベルリバーはフレイラに問いかける。

 

「フレイ…キミはジャガー種だから、木登りはできるよな?」

 

「あ、はい…問題なく…。」

 

「ネコ科だから、跳躍も軽々と出来るよな?」

 

「それは…ハイ、その通りでございます、マスター。」

 

「なら、さすがに休眠状態に入ってる樹精霊種(ドライアード)の樹を踏みつけるのは気が引けるからな、その隣の樹木の天辺(てっぺん)に立ってアインズさん達に合流してくれ、事情の説明等は全部任せた!」

 

「あの…マスターはどうされるのですか?」

 

「ボクか…? そうだな…ボクは「樹木」になる! 木を隠すなら森の中! ここは森だ…なら何の問題もない!」

 

 そう言うや否や、手ごろなポジションまで歩いて行くと、<擬態Ⅲ>を発動させ、見た目だけではなく身体構造、細胞に至るまで、そっくりそのまま、この森の中の木と変わらない状態に、変化させる。

(擬態Ⅲ:体組織、身体構造など全てを〝実体として変化したい〟(自然の動植物のみの)擬態対象そのままになる)

 

 

 ただの樹となったベルリバーは、もうすっかり森の一部になっている、もちろん心まで樹になってしまったら、取り返しがつかないので心は本来のままで、いつでも元に戻れるよう外部の状況を認識できる機能は維持している。

 よもや、至高なる41人の1人がまさかこんな大胆な隠れ方を披露しているとは思われないだろうという意識の元、樹としてそこにあり続けた。

 

 

                   ★★★

 

 

「あそこです、アインズ様…あの木の上で誰かが手を振っているようです」

 

「あぁ、あそこか、なるほど緑の風景の中で黒装束にくすんだ茶色のローブか…たしかに目立っているようだな」

 

「あの方ですか、またもやこのような場所でお会いすることになろうとは、私とはご縁があるようですね。」

 

 マーレが木の上に立っている存在を目に留め、アインズに報告するのと同時に、遠くに居るはずのその存在を見たセバスがその存在を見知っているという話をする。

 しかしマーレにとっては初対面だ。

 

「あ…あの…セバスさんは、あの方を…その、ご存知なんですか?」

 

「えぇ、先日、一度ソリュシャンと共に会いまして、ご挨拶はさせていただいております、わがナザリックの新しい仲間、アインズ様のもとで働く同志です。」

 

「えぇぇ? …あの…アインズ様…そうなんですか?」

 

「あぁ、皆にはまだ顔合わせも紹介もしてないからな…マーレが知らないのも無理はない、事情があってな、今のところは全員に紹介するわけには行かないのだ…あまり詮索しないで居てくれると嬉しい。」

 

 明らかに性別的に逆だと思うのだが、マーレをお姫さま抱っこしたまま、空を飛び、その木のそばまで来て宙に浮かんだまま、アインズがフレイラに声を掛ける。

 

「しばらくだな、私からの指令は無事にコトが進んでいるようで何よりだ、フレイラよ。」

 

「ありがとうございます、そのお言葉1つで報われます、しかしまだ全てが終わったわけではありません、まだ本番はこれからですので、油断はできません。 …セバス・チャンさまも、お元気そうで何よりです、先だってはお世話になりました。」

 

 そうわずかに木の上で腰を曲げ、礼をとるフレイラにセバスはわずかに表情を緩め、言葉を返す。

 

「私のことはセバス…で構いませんよ? 同じナザリックにお仕えする者同士、私とは一度挨拶も交わしているのですから堅苦しいのはやめにしましょう、それで…今回の…助けるべき対象はどちらでしょう?」

 

 その言葉を耳は無いながらも樹木の樹皮感覚とでも言えばいいのか、それらで大気の震え、声の振動などで会話内容は理解できたため、目印も必要だよな…と思い至る。

 

 

(そうだな…とりあえずわかりやすいようにしておいた方がいいよな…ディーネ?聞こえるかい?)

 

 木になっているので全ては自分の心の中でやり取りするしかないベルリバーが未だに身の内にいる者の一人の名を呼ぶ。

 

〖はい、ヴェールさん、どうしましたか?〗

 

(えっとな、さっきの樹精霊種(ドライアード)の樹ってどの木だか、エルフのキミらなら一目瞭然だろう? そこに<恵みの雨(マーシーレイン)>をかけてあげてくれないか? 多分水属性も含まれてるし、植物になら効果が強く出るだろうし…それにアインズさんへの目印にもなる。)

 

〖はい、わかりました…それでは、<恵みの雨(マーシーレイン)>!〗

 

 発動させると同時に樹の少し上から雲もないのに空気中の水蒸気から構成でもされているのか、キラキラと輝きながら、それが雨のように樹精霊種(ドライアード)の樹に降り注がれる。

 

 

(これですこしでもHPが回復してくれればいいんだけど…でも一体なんであんな弱っていたんだろう?)

 

 

「アインズ様、今あちらで<恵みの雨(マーシーレイン)>が降り注がれている樹、あれが今回プレイヤーの情報を知っているらしき樹精霊種(ドライアード)が宿っている樹木です、消耗が激しく休眠に入っているようなので、姿を維持できるだけの力も残されていないものと思われます、マーレ様、どうか、お力を…。」

 

「あ…あの、アインズさま、僕が診てもいいんでしょうか? それなら、一度下りて調べたいと…思うのですが…いいですか?」

 

「あぁ、そうだな、マーレが頼みだ、頼んだぞ?」

 

 ゆっくりと上空から地面へと降り立ち、そっとマーレを立たせる。

 

 しばらくの間、樹を見たり、触ったり、なにかの魔法を使ったりしていたマーレが、アインズに振り返り、調べた結果を報告する。

 

「アインズ様…この樹なんですが…、消耗が激しいのは…中に寄生虫が入り込んで…樹の中も、栄養も食い荒らしているからかと…。 それらが解決すれば、あとは時間が経てば自然と回復すると…思います。」

 

 

(なんだ…襲われたんじゃなくて寄生虫か、それなら<誘引の色香>で寄生虫を誘い出せば…ってダメか、そんな悠長なことをしてる内にHPがゼロになったら目も当てられないしな…それにボクじゃ~樹の中にどれだけの寄生虫が居るかわからないしな…どの道マーレを呼んで正解だったみたいだ。)

 

 

「そうか、ならばその寄生虫とやら、どうにかできないか、マーレ?」

 

「大丈夫です! アインズ様のお望みなら、全力を持って当たります!」

 

 嬉々とした表情で、持っている神器級(ゴッズ)の杖を振りかざし、魔法を唱える。

 

魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)>、<寄生虫除去(リムーブパラサイト)

 

 範囲を拡大して、樹精霊種(ドライアード)が宿るほどの大樹、葉っぱ一枚も隙を作らずすべて範囲に入れ、樹木内に巣食っていた寄生虫を全て除去し、一匹残らず一か所に集める。

 

 

(おおお、なんかすごい数だぞ?寄生虫ってもっと小さいかと思ってたのに、まとまると気持ち悪いな。それに数も多いし、よくこれだけの数に食い荒らされて今まで生きてたもんだ…。)

 

 

 樹になった身体でそんな感想を抱いていると、マーレがその一か所に集まった虫たちに向けて、詰めの魔法を発動させた。 

 

根絶駆除(エクスターミネィション)

 

 

(おいおい、それって虫以外にも有効な範囲魔法だったんじゃないか?…ただの虫だったろ?張り切りすぎじゃ~…、守護者って力有り余ってるのか?もしかして…)

 

 

「終わりましたぁ♪ アインズ様」

 

 満面の笑顔で報告しに足元まで来るとまるで「褒めて?褒めて?」とでも言いだしそうな表情で「どうでしたか?」と聞いている。

 

「あぁ、よくやった、これでこの樹精霊種(ドライアード)は命の危険は去ったというコトで問題はないのか?マーレ。」

 

「はい、もう大丈夫だとは思いますが…見た目からして、本体の樹がボロボロに食い荒らされています、それに同じ場所に居ては…今の寄生虫にもうマーキングされてる可能性もあります……、同じ種類の寄生虫にこれからも狙われる可能性はあるんじゃないかと…その…はい。」

 

「マーレ、この樹精霊種(ドライアード)はナザリックに持って帰ろうかと思う、何しろプレイヤーのことを何か知っているようだしな…それにマーレの階層で行っている農作業の方をこいつに手伝わせたらどうか…と思っている。 同じ植物由来同士、病気になったり、元気が無かったりしたら見てわかるだろうしな…。」

 

「アインズさまのお望みなら…僕は大丈夫です、しっかり守護階層で枯らさないようにお世話します。」

 

「そうか…、ならば持って帰ろうか…ところでマーレ、この樹の根元から土ごとごっそり、傷もつけずに引っこ抜くことは可能か?」

 

「あ…はい、それなら範囲を絞った<大地の大波(アース・サージ)>で周囲の土をどかせば大丈夫です。」

 

(おぉ~~い! マーレ! それって…強すぎじゃないか?ここ平地じゃなくて森だぞ? 他の樹に影響しないか? 自分も今、樹なんだけど…へし折ったりしないでくれよ?)

 

 姿を現すわけにもいかず、かといって声も出ない樹木の身としてはコトの次第を見守るしかできず、引っこ抜かれた樹は、アインズがセバスと二人で担いでいこうかと思っていた所、「主人にそのような雑務をさせるわけには行きません」と言われ、アインズ以上の筋力を誇るセバス一人で、軽々とナザリックまでお持ち帰りされてしまうのであった。

 

 

                   ★★★

 

 

「ではな?フレイラ…この樹精霊種(ドライアード)はナザリックで面倒をみることにする、ヒマを見つけて会いに来てもいいぞ? その時はアウラとも面識が出来るといいな。では…『彼のこと』はよろしく頼んだぞ?」

 

 

 そう言い残し、去っていくアインズ、そしてセバスとマーレが居なくなると同時に、<擬態Ⅲ>を解除して、新たに<擬態Ⅳ>を使ったベルリバーが偽エルヤーの姿をとる。

 

 

「これでよかったんだよ…な? うちら、あの精霊の同意をとってなかったのだが…」

 

「イイのではないでしょうか? 命の恩人、しかも食い荒らされていた状態を癒してくれ、寄生虫の心配の一切ないナザリックで暮らせるのですから…、最初は混乱するかと思いますが、慣れれば問題ないかと…。」

 

 フレイラにそう言われたベルリバーは、力なくうなずくだけで、ムリヤリ自分を納得させていた。

 

「慣れれば…か、そうだな、慣れることが出来れば…なんだよな…気を強く持つんだぞ?ドライアード君!」

 

 

 

 

 

 そうして、一段落ついたベルリバーは、森の一角に建っているままの<新緑の隠れ家(グリーン・シークレットハウス)>を回収し、晴れてカルネ村の隣にお引越しを済ませると…、夜の内に戻ることが出来ていた。

 

 あらかじめ仮面の魔法詠唱者(マジックキャスター)の姿へと新たに〝擬態〟すると、堂々と夜の上空高い場所から透明化してカルネ村まで落下、フレイラはベルリバーより先に落下し、地面に映る夜の影に潜ることに成功すると、透明のままの「ベル」と一緒に村の広場に舞い降りた。、

 

 

 

 

「さて…と、翌日の墳墓調査までは…あとどれくらいだ?恐らくは単純に計算しても16~18時間は残っていると思いたいが…。」

 

 

「マスター、時間について何かご心配でも?」

 

「あぁ、いや…今のエルフのみんなやアルシェちゃんたちじゃ~あの墳墓じゃ~あっという間にピンチになりそうな気がしてな…ただでさえトラップが多い場所なんだし…。」

 

「しかし20時間もないのでは鍛えるにしても時間があまりないかと…。」

 

「それなんだよな…、アルシェちゃんだけでもせめて生き残っててくれれば…、って訳にも行かないか…、フォーサイトの面々にはこのカルネ村での自警団としての役目…というか、戦力の増強という面でも役立って欲しいからな…、ロバ―デイクさんは、こっちで神父さんとかやってくれると助かるんだよな…、まぁそれは引退してから、っていう見方もあるが…。」

 

「…ある程度のお仕事や、ナザリックでの使命などが片付いたら、という前提ではありますが、私がここに駐留するという方向で考えるのはどうでしょう? ベルさま」

 

「あ、そっか、何も一人にこだわらなくてもいいのか! ありがとうフレイ、またキミのアイデアに助けられた。」

 

「いえ、この身の愚案程度で、助けになるのであればいかようにも…それにこの村でのポーション作成、それの助けになれるというのも…我が主から生み出された使命のようなモノを感じますし…私もそうしてみたいのです。」

 

 フレイラが偽りのない正直な気持ちを告げる、ベルリバーも今の今まで思い出さないようにしていたが、そもそも魔力回復用のポーションというユグドラシルではあるかどうかすら怪しかったものを作り出せないか?というある意味「ロマン」を求めて作ったのがフレイラである…その認識に落ち着くというのも必然と言えた。

 

 

「そうか…そういう事なら、そっちは取り合えず保留にしておこう、まずはナザリックで生き残ることを念頭に入れて行動しようか…できれば安全策で言えば100LVは最低でも欲しいが、生憎と時間がない、とりあえずPOPのシモベに倒されないように…ってことで50LVをメドに修行するか? 『無い時間』なら作り出せばいい。」

 

 そう言うと、まずは男連中の方だな…と結論を出し、とりあえずまだ時間切れを起こさず、健気にも命令を遂行中である「冠熊鷹(クラウンド・ホーク・イーグル)」が屋根に止まっている家へと向かう。

 

「さてさて、夜からの特訓だが、まぁ…アレを使うのはもったいない気はするけど…、実際自分が持ってても使う機会はないから、宝も持ち腐れっていうのもあるし…仕方ないか…。」

 

 主の誰にともなくポツリとつぶやく言葉の真意がつかめず、小首をかしげ不思議そうな顔をするフレイラの頭をなでるようにする、「最近これもクセになってきてるな…」となでることにより、何故か自身も安心できる副次効果に思考を割かれながら、目的の家の前に着く。

 

 

 コンコン

 

 家のドアにノックをして、訪問の合図を送る。

 

「おう!こんな時間になんだよ、誰が何の用だ?」

 

 そう言ってドアを開けたのはブレインだ…根がそもそも善良という訳ではないだろうが、悪い人間という訳でもないのだろう、こちらが伝えた言葉の通り、結局この家にお世話になることにしたらしい。

 先に住んでいる(とは言えまだ仮住まいだが)ヘッケランとロバ―デイク、その二人に遠慮して、新入りの自分がドアを開ける役を買って出たのだろう、彼らしいことだ。と一人で納得していた。

 

「お、ベルさんかい? なんだ、戻ったのか、そっちの用事はすんだのかい?」

 

「あぁ、こっちの用はもう済んだよ、晴れてこのカルネ村のお隣にお引越しは済ませたからな、どどんと居を構えさせてもらったよ…ということは、これから自分は〖王国民〗という位置づけになるのか?」

 

「家を…かい? さっき姿を消してから時間はそんなに経っていないと思うが…、ホントあんたって男は底が知れねぇな…。」

 

「まぁ、経緯や手順やらでどうやって建てたか、っていうことより、すんなり結果だけ受け止めてくれると余計な悩みを抱えなくて済むぞ?」

 

「いや…、普通はそういう…って、まぁいいや、用事があって来たんだろう? それに今じゃなければならない理由って事じゃなければこんな時間に来やしなかっただろうよ、一体、何ごとだよ?」

 

 口には出さないが「揉めごとかい?」と目で訴えて来ている、そういう訳でもないんだがな…。

 

「用事は、この家にいるフォーサイトのお二人さ、良かったら、明日のワーカー仕事の前に難度を上げるための特訓…いや、自分を鍛える修行でもしないか?と思ってな。」

 

 そんな言葉を家の中にいる2人に向けて問いかけては見たものの、戻ってきたのはあまりいい反応ではなかった。

 

「その申し出はありがたいが、明日に控えて、体を休めておきたい…いざ、当日になって体が充分に動かなくなったら、本末転倒だしな…。」

 

 

 そんな言葉に打開案を用意していたベルという男は、彼らの予想を覆すアイデアを提示する、一度聞いただけではまず真意など理解できないような…そんな内容を彼らに聞かせた。

 

 

「自分なら、明日の墳墓集合までに…そうだな、体感時間で7~8カ月以上の時間は作ってやれるぞ?その間に自分を鍛えて実力を上げるための手伝いをしてあげたい。未知の遺跡探索なんだろう?どんな者が出てくるかわからない…実力はありすぎて困ることはないと思うが?」

 

 

「あんた…正気かい? 時間を? 作るだって? しかも数カ月単位? 帝国の三重魔法詠唱者(トライアッド)の爺さんだってそんなこと不可能だぞ?」

 

 中に居たヘッケランとロバ―デイクが扉の前まで来て、リーダーであるヘッケランが反論する。

 

「まぁ…信じられないのも無理はないよ…実際、何も知らない者たちが聞いたら狂者のたわごととしか受け止めてもらえないだろうことを口走っているというコトは理解しているさ…それでも、見てみるだけでも損はないと思わないかい?」

 

「面白い事を言うじゃないか、オレらの貴重な時間を奪って、無駄だったら、ゴメンじゃすまないぞ? もしウソだったら、あんたウチラと墳墓で行動を共にしろよ? アングラウスさんから聞いたが、あんた、剣も使えるんだってな?フォーサイトは前衛がオレしか居ねぇんだわ…ロバーは回復役として、出来れば一番前には出したくないからな…もう1人くらい注意を引く役目の誰かは欲しかったんだ、だが認められない内はメンバー入りはさせないからな?」

 

「はっはっは、とことん自分らに有利な条件を提示してくれるものだが…いいだろう、その条件受けた! …ということでリーダーがそう決めたんなら…チームとして他の2人も見に来てくれる、と認識していいのかな?」

 

「そうだな…アルシェとイミーナは別々の家に居るみたいだからな…声を掛けてみるさ…、もちろん言い出しっぺのアンタも、来るんだろ?」

 

 

 こうしていよいよ、ベルリバー主催、フォーサイト特訓(ユグドラシル仕様)イベントが開始されようとしていた。

 

 

 

 




 いよいよ、ナザリックに行く前の特訓イベントが開始されることになります。

 勘のイイ方は、どんなマジックアイテムが飛び出すのか、ピンと来てるかもしれませんが…おそらくその予想、間違っていないと思いますw

 心配なのは、寄生虫の危機から逃れられたピニスン…彼(彼女?)が気が付いたら、そこはなんとナザリック…、SANチェックで成否はどうなってしまうのか?

 気を強く持って生きてください…そこには世界を滅ぼせる生き物など山のようにいる世界ですから…、一日も早く慣れる事をオススメします・・・。
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