気づいたら大自然 小心者の異世界闊歩   作:yomi読みonly

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さて、いよいよみんなのレベリングが開始となりました。

書いていて思いましたが、「ローグ」持ちのイミーナは罠の解除だったり発見だったり
なんかでは確かに必要な人材でしょうが…
でもハーフエルフで、人間社会で育ったためか魔法らしい何かを使う所って見てないん
ですよね…戦力としてはどうなんでしょう…。

それにしても久しぶりの戦闘シーン

上手く書けている気がしない。
そんな作品でも読んでいただけたり、感想を下さったり、評価してくださる方が居ると
いうのは、いつも励みになります。

髪が金色になって逆立つくらいまで強くなる皆さんの成長を期待しててくださいw
多分そうはならないと思います^^;


第39話 みんなで特訓、レベリング![難度90の壁]

 

 そこは真っ白な世界だった…どこまでも真っ白。

 

 …周囲を見回しても何もない、床はあるが見渡す限りの地平線…それがどこまで続いているのかもわからない。

 

 天井も無く、空もない、ただただ真っ白な世界が広がるだけであった。

(<飛行(フライ)>で飛んで行ったらどこまで上がれるんだろう…)

 

 だがしかし、自分の後ろには大きな扉がある。

 

 そして扉に浮かぶように表示されているパネル、そこに時間経過が表示されていた。

 

「あと…〘8ヶ月と14日〙 現在…一日目  消費時間…00:01-54  外の時刻〘20:47〙」

 

 という具合にだ。

 

(まだそんな時間だったんだな…)

 

 こちらの世界に来て、少しずつ慣れてきているとは言え、かつての「リアル」と呼んでいた世界を思い出す。

 

 あっちではあんな空は見えはしなかった、空どころか星空も…、一応昼間は薄暗いかな?程度で…太陽は、淀んだ雲が灰色よりももっと濃い暗さで空にあり、それごしに何かが光ってるように見える…そんな程度。

 

 爺ちゃんのお父さん、つまりは曽祖父…から「昔はメガネをして太陽など見たら眼に悪いからと直視など出来なかったんだが…」と言っていたが…こっちに来てからならそれがよくわかる。

 

 そんな雲にずっと覆われてる空だったから、晴れていたとして、夜の空を見上げても一番星が辛うじて肉眼で見えれば運がいいくらい。

 

 星空など拝めはしない世界を思い出し「ふぅ…」とため息をつく、(リアルの世界より、あっちの世界の方が愛着はあるよな…。)と一しきり感慨にふけった所で周囲を見てみる。

 

 自分の横にはフレイラ…逆側にはルチルがいた…、とりあえずよかった。

 

 ルチルの横にはセピア。

 

 セピアの横にはディーネ。

 

 エルフの3人もどうやら目が覚めてはいないようだ。

 

 ゆっくりとフレイラを揺り動かす。

 

「お~い、フレイ~? 朝だぞぉ~…大丈夫か?」

 

 ゆさゆさと肩をゆするが…いまいち反応がない…自分の耳はどこにあるかわからないが…フレイラの口元に、かつて耳があっただろう場所を近づけていくと、呼吸はしている様子、ほっと一安心か。

 

(まぁ…とりあえず…「メッセージボード」でもフレイに抱かせておくか…)

 

 アイテムを異空間から引きずり出し、一筆入れておく…「他のメンバーを探しに行きます、扉の周囲で待っていてください、回収次第戻ります。 」

(時間が惜しいから日本語のみだけど、フレイなら読めるよな…。)

 

 そっと胸に「メッセージボード」を抱えさせ、<飛行(フライ)>を唱える。

 

 一気に上空高く舞い上がるも周囲はどこまでも真っ白、目印になるようなものは眼下の彼女たちと、扉のみ、床にも一点の曇りも無く色もないため空から見ると、彼女らが白い空間で浮かびながら眠っているようにも見える。

 

(さて…どこまで広範囲の空間だかわからないからな…ともすれば広範囲をカバーできる魔法でも使うしかないな…)

 

 そう思い、ベルリバーは魔法を発動させる。

 

 それは広範囲をカバーできる代わりに探せるのは生体の気配のみ、それを球状の光で見えるようにするもの…<生命探知(ディテクトライフ)>のように決められた視覚範囲内の中の生命体に意識を向けるとある程度のその者の情報がわかる魔法と違い、今使う魔法は強化魔法で範囲を広げなくても…<魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)>を使用しなくても上空から見える視覚範囲内程度なら充分カバーできる、しかも範囲を広げる魔法の強化をすれば、視覚の範囲外でも感覚でわかる…だが、そこに居るのが集団なのか個体なのか、レベルは?性別は?種族は?などのことは全くわからないという問題はあるものの、今の状態では問題ない、私たちのメンバー以外の生命体が居るわけないのだから…。

(もちろん心臓という器官のない…植物みたいな生命や、アンデッドなどには反応しないんだけどね。)

 

 そいう訳で、【捕食者】という関係上、罠を張る時に良く使った、懐かしい魔法を記憶から引っ張り出す。

 

 空に浮かんだまま、<魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)>と、そして<生命探索(ライフズサーチ)>を唱えた。

 

 自分が見える範囲の外まで範囲を広げて発動させると自分の感覚がどこまでも広がっていくような感覚に包まれる。

 

 この魔法は自分を中心にして、広がるように展開させるので、自分が動けば、探索範囲もそれに応じて動いてくれる、それが何より便利だった。

 

 

 それからは特に書くこともないただの単純作業みたいなものになる。

 

 それだけの範囲をカバーしながら飛び回れば、でたらめに飛び回っても、反応にひっかかる者を見つけるのはそう難しくはない。

 

 問題はどうやって目印のないこの空間で、異界との接点であるあの扉まで戻るのか…だが、それは転移で戻ることにした。

 

 あっちの世界と違い、転移した後に建物や、人工的な何かや、壁、柱…生き物などの中に転移してしまい「同化」しないだろうか?…なんて心配をすることがないここの空間ではMPの節約として<転移(テレポーテーション)>を使う…イメージは扉がなんとか見える程度の距離を選択。

 

 …と、ひたすらそれを繰り返し、なんとか10名全員が揃うことが出来た。

 

 

「さて…これでやっとみんなも目が覚めたようだな…大丈夫か?どこか調子が悪いとか気分が悪いとかはないか?」

 

「こっちは大丈夫みたいだぜ?」

 

 とヘッケランがチームを代表して答える。

 

「俺の方も問題ない。」

 

 と、ブレイン。

 

「こちらも問題はありません。」

 

 と、フレイラとエルフ3名。

 

 

「よし、それじゃ~早速特訓を開始するか? …と、その前にみんな装備の方は準備いいか?」

 

 静かにみんなが頷いている、どうやら問題はないようだ。

 

 

(それはいいが…どうやってモンスターを呼び出すんだ?一応…「任意」ってことにしておいたが…)

 

 

 唯一の思い浮かぶ要素として、イメージにするか、パネル式で選ぶのか?のどれかだろうと思い浮かぶも…パネルのあるだろう「何か」自体がこの空間には存在しない。

 

 …あるとすれば、あの扉くらい…

 

(ん?…扉?)

 

 と気が付き、扉の方に歩いて近づくと、時間表示の下に空白のパネルがあった。

 

 そっとそれをタッチして、様子を見ると…

 

 〝出現させるモンスターを選択してください〟

 

 と出て、その文章が消えると、別の選択肢に移った。

 

「出現レベル - [60 ▼]」

 

 と出ている…、▼のマークを押すと、下の方にずら~~っと項目が現れる、それを追っていくと一番下が「LV30」で切れていた。 

 

(30が低レベルの限界か~…あっちではそのくらいは簡単に乗り越えられたけど、こっちの世界だと…難しいよな。30レベルって言ったら…アインズさんに聞いた周辺国家最強っていう人がそこいらへんだったって聞いたくらいだもんな。)

 

「まぁ…でも一応、ウォーミングアップ的な意味でも、みんなの強さがどれくらいか…って言うのは見極めた方がいいよな…」

 

 と、独り言を呟いた後、みんなの集まっている場所まで戻る。

 

「ちょっとみんなに聞いて欲しいんだけど…みんなは例えばここに難度100の相手がモンスターで出てきたら…戦うかい?」

 

「一体で、斬撃が通じる相手なら戦いたいな…もちろんサシで…だ」

 

 と即答したのはブレインだ。 みんなで協力して叩く…というのは最後の手段らしい。 

 

「うちらも…だな、難度100の相手が1体なら俺らが協力すればなんとか…って感じだ、斬撃が通じない時はアルシェ頼みになっちまいそうだが…。」

 

 と、ヘッケラン。

 

「わたし達はフレイラさんと一緒なら戦えそうな気はします。…でも、私たち3人ではどこまで連携できるか…そこが心配ですね。」

 

(そこは一応、変装しているボクのことは気を使ってくれてメンバーには入れてない前提で…か、さすがに賢明ですね、みんな)

 

「いや、チームごとに…っていう感じの前提でもいいんだけど、ここに居る9人で戦った場合…とかは?」

 

「あれ?あんたはどうするんだ?」

 

 ベルの質問にかぶせるように質問してきたのは自分にあまり遠慮をしていないブレイン。

 自分が入らなくても9人も居れば大丈夫だとは思うが…それとは違う理由も話しておく。

 

「ボクの方はボクの方で、一応、決闘方式での戦い方の勘を取り戻したくってね…こっちはこの扉の中では最高レベルの60…じゃなかった、難度180と1対1で戦うことから始めてみたいんだ…でもそれは一応キミらが休憩してる時にでもさせてもらうよ、危ない時はボクが助けられる立場に居るというコトで安心してもらいたい。」

 

 一同が顔を突き合わせ、とりあえず挑むのは全員だが、9人単位での行動ではなく、それぞれのチームごとに動くけど、行動は一緒、という結論に落ち着いたようだ。

 支持の方は、それぞれの指示役が担うことにするらしい。

 

「それじゃ~、この世界で呼び出せる一番弱いのは難度90のモンスターからで、一番強いのは180になる…その範囲で戦うことになるらしいから、みんな、気を引き締めてね?」

 

「難度90…」

 

 グビッと生唾を飲む音が広がる、ブレイン以外の現地勢は一様に緊張しているようだ。

 

「まぁ、それに挑む前にボクがウォーミングアップ用に難度80くらいのを呼び出そうと思う」

 

第3位階 魔獣召喚(サモン・ビースト・3rd)

 

「ハイコカトリス!」

 

 すると足元の地面に光り輝く魔法円が出現し、そこからあの時エルフの3人が見たことのあるコカトリスと比べ、一回り大きな体、そして頭の上にはギガントバジリスクのような王冠にも似たトサカがあった。

 体色の方も通常のと比べて少し濃いような気もする。

 

「おい!こいつ、コカトリスかよ…石化対策なんてしてないぞ?」

 

 非難じみた言葉を出すヘッケランだがそれに対してブレインが横から大丈夫だ、と告げてくる。

 

「避けることに専念しておけば問題ない、嘴からの石化効果にさえ当たらなければなんて事は無いんだしな。」

 

 

「あ、一応させないようには言っておくが、こいつ、石化のブレスも吐けるから、どこかで同種のやつを見かけたら気を付けてな?」

 

 召喚した主人であるベルからのその言葉でみんなが引きつる、引きつっていないのはフレイラたち、エルフの娘らくらいだ。

 

「大丈夫ですよ、召喚された存在は召喚主には忠実です、この戦闘では使ってくることは無いでしょう」

 

 エルフチームがそう保証すると、少し安心した様子になり、少しずつ「やってみようか…」という空気になって来る。

 

 そこでベルが口を開く、今後の方針として一番最初に認識しておいてもらいたいことを納得してもらうためだ。

 

「こっちの世界での特訓って言うのは、主にこの世界で呼び出せる種類のモンスターを倒し続けることで、相手のモンスターの攻撃手段、それに対する対策、対応の模索、更にはその経験で難度を飛躍的に上げて行くことを目的に置いている。

それぞれのメンバー同士での模擬戦もオススメだが、コッチの異世界では、その模擬戦の経験からは難度のアップは起こらないのは覚えておいてほしい。

その代わりに、モンスター相手では得られないようなスキルの組み合わせ、フェイントなどの戦術の組み立て、相手に合わせた戦い方などを考えて行うことで勝率を挙げていくことも出来るようになる。」

 

「そういう経験も貴重だから、機会があって、それぞれの力量が釣り合ってるなら試してみてもいいと思うよ?」

 

 

 そこまで言うと、少しだけ後ろへと下がるベル、そして右手を大きく空に掲げて「では準備はいいかい?」

 

 その言葉で、9人のメンバーがそれぞれ、チームごとの戦いやすい陣形へと素早く位置に着く。

 

 

 

「それでは…はじめ!!」

 

 

 

 決着は割とあっけなかった、一番前衛として相手に飛び出したブレインが、少しではあるが「神聖属性」が含まれている自分の刀で、<瞬閃>を発動させ斬りかかる…そうすると何故か徐々にコカトリスが弱っていく…というより動きが鈍くなっているような様を不思議そうに見ていた彼だったが、今は戦闘中というコトもあり、今はそっちに意識を集中したようだった。

 

 しかしその弱り方に思う所があったベルは「戦闘が終わったら、確かめてあげよう」と思っていた、なによりブレイン自身もその原因はまだわかっていないだろうから。

 

 続けて、そのブレインの攻防を支援するのはエルフチーム、セピアが自分の渡した木の矢で、ショットボウ[ボルカノ]を使って、溶岩弾を射出、その身を焼き焦がしていく。

 

 弓を使っている間は魔法詠唱者(マジックキャスター)として魔法の使えないセピアに変わり、ディーネとルチルが支援魔法を唱える。

 

 ディーネは前線で戦っているブレインに<祝福されし護り(ブレスド・ガード)>を使用、同様にフレイラも前線での戦闘に参加、スキル【獣の力】を使い、攻、耐久値(防御に影響)、速を上げ、鋭く伸びた爪を武器に使い、両手での2回攻撃を繰り出し、攻撃しながら素早く動いて相手を翻弄、かき回して対象を絞らせないようにしている。

 

 ルチルは戦況を見守り、ヘッケランへと<土の守り(アース・ガード)>を使い、防御数値とダメージ減少率の向上という効果のある魔法を与え、<風の守り(ウィンド・ガード)>も併用、万が一[石化のブレス]があったとしても、最前線で戦っている、一番危なそうなヘッケランへと…その身に纏わせることになった空気の対流により、ブレスが直接身体にかからないようにするため、という意味で護りを固めてあげた。

 

 そうすると、魔法の発動に応じて彼女のヤドリギの杖の先端に淡い光が灯り始める。

 

 そこでどうやら第一段階の強化状態に入ったようだ。

 

 ヘッケランが、ブレインとフレイラの動きに翻弄されているコカトリスに対して、<双剣斬撃>を見舞う、難度80の敵の為、なかなか深くに刃が食い込まないが…それでもダメージを与え続けている。

 

(やっぱり、毛皮や表皮である程度、剣の傷は軽く済んでいるようだが…普通のコカトリス相手に刃がほとんど通らなかったエルヤーの攻撃力は、やはりあまり強くは無かったんだろうな…それとも<空斬>という武技は距離が離れれば離れる程、攻撃力が落ちるデメリットでもあったのだろうか?…それも要検証…だな。)

 

 中距離でヘッケランに<下級敏捷力増大(レッサー・デクスタリティ)>を発動したのはロバ―デイク。

 

 それでようやくヘッケランもコカトリス相手に有利に動けるくらいには素早く行動できるようになっていた。

 

 アルシェは、<魔法の矢(マジックアロー)>で確実に命中させ、少しでもダメージの蓄積を狙う。

 

 イミーナはアルシェの護衛として敵からの視線がアルシェを捉えないように庇いながら射線を維持している、普通の矢なので、牽制程度の役にしか経っていないようであるが…。

 

 1ターン目の敵の攻撃、ハイコカトリスは突進からの頭突き攻撃を仕掛けてくる。

 もちろん召喚主から、石化の嘴攻撃、及び石化のブレスは使用を認めない、っていう指示を受けているのでそれに従って行動する必要がある。

 

 コカトリスは考える、誰を一番に攻撃するか…、可能なら一番ダメージを与えて来た溶岩弾の射手の方であるが、だが、距離があるし、自分とその射手の間には鎧を身に纏った神官らしきヤツがいる。

 

 これでは直接そいつへ攻撃に行く前に何人もの敵に囲まれる。ならば斬り付けられて不調を感じた最初の剣閃を見舞ってきた剣士に行こう、と判断を下す。

 

 そいつに的を絞って突進するも、<領域>を展開中のブレインは悠々と回避に成功した。

 

 2ターン目

 

 <領域>を展開していて、命中率も上がっているブレインはもう一度<瞬閃>を見舞う、それは吸い込まれるようにコカトリスの脚へと到達し傷を作ったものの傷自体は深くない…、であるにも関わらず、2度目の攻撃でまたコカトリスの動きが鈍った。さっき斬り付けた脚とは逆の脚の為、両足ともちょっぴり傷ついたことになる。

 

 次に、セピアの溶岩弾の矢がコカトリスの顔面に命中する。

 

 顔面ではじけた溶岩弾は相手の目を潰すことになり、コカトリスも目つぶしを食らったのと同じ状態に追い込まれ、まともに攻撃対象を視認することが困難な状況に陥った。

 

 そのタイミングでルチルが<茨の締め付け(ソーン・バインド)>を発動、魔法とはかくも偉大なもので土も茨もないこの異世界でも問題なく発動した。

 

 淡い光が先端の、六個の突起がある★のような形をした部分を包むモノから杖の頭全体を包む光になってくる。

 

 強化状態の第二段階まではまだ少しかかるようだ。

 

 体を茨のトゲに巻き付かれ、身動きが取れないコカトリスへと、フレイラが走り寄り拳を握る、そして装備している[焼けつく拳(バーンナックル)]がその身に届くと、それと同時に<熱波の炸裂(フレア・ブラスト)>の魔法付与の効果が発動し、コカトリスの体内で爆裂した。 内臓やらなにやらを焼かれたコカトリスは、のたうちながら、茨のトゲを身体に食い込ませ、継続ダメージを受けている。

 

 力づくでその拘束を引きちぎろうとしているようだが、魔法の茨で、しかも第一段階とはいえバフ状態からの発動だ、そうそう切れるモノではない。

 

 そこでディーネが最近覚えたばかりの攻撃魔法を唱えた。

 

聖衝波(ホーリーウェーブ)>がコカトリスに当たるも、神聖属性の為、ダメージは通ったものの、そこまでの威力はなかったようだ。

 

 しかし、体内を焼かれているコカトリスの動きが弱々しくなっているのを見て取ったフォーサイトのメンバーは「ココが決め所」と判断する。

 

下級筋力増大(レッサー・ストレングス)

 

 ロバーデイクがヘッケランに向けて支援魔法を放つ、それと同時にアルシェは<火の矢(ファイアーアロー)>を撃ち出し、コカトリスの胴体に命中させた。

 

 ヘッケランがチャンスとばかりに立て続けに武技を発動させる。

<肉体向上> <限界突破> <剛腕剛撃>

 

 

 まずは肉体自体にかかる負荷に耐えられるよう、肉体の性能を上げ、体にかかる効果に耐えられるほど強くした後、自分の限界すらも突破させる能力をその身に課す。

 

 さらに攻撃力を劇的に上げる武技を発動させてからの、<双剣斬撃>へと移る体勢に入る。

 

 コカトリスに向かうも、気合の乗った雄たけび、攻撃をする際に武技の名前を叫び続けた結果、その声で、視界の利かないコカトリスも、次の攻撃が目の前まで来ているのを察知して、カウンターを仕掛けようとする。

 

 締め付けられてる茨で身動きはとれないが頭突きでの吹き飛ばしで応戦しようとしている。

 

 しかし、それを許さなかったイミーナが殴打属性付きの特製の矢を使い、コカトリスの額を撃ち抜く。

 

 一瞬だけ、クラリと目の前が揺らいだモノの、すぐに意識を立て直すが、それも遅い…そのわずかな合間で、高く跳んだヘッケランの上段からの<双剣斬撃>がコカトリスの首を左右から斬りつけ…斬り飛ばす。

 

 その瞬間、ハイコカトリスは、光の粒となって、茨の拘束の中、姿を消した。

 

 

                   ★★★

 

 

「さて、みんな…感触の方はどうだった? 一応石化の方は使わせないように指示を出しておいたんだが…」

 

「あぁ、準備運動にはちょうど良かったが…さすが魔獣なだけあるよな…とにかく、あの耐久力で石化のブレスなんて来たら遠距離だけが有効手段だな…接近戦なんてあまりにも恐ろしい…」

 

 さすがのブレインも石化の対策まではしていないようで、<領域>の武技を使って避けても吐き出した石化ガスに触れれば…という状況を考えると近づいて戦うのは自殺行為だと思っているようだ。

 

 そんな空気の中、ヘッケランが沈んだ空気を換えようと違う話題で雰囲気を軽くするため話し出す。

 

「そういえば聞いたか? エンリ村長さんから聞いたんだが、最近エ・ランテルで新しくアダマンタイトの冒険者チームが現れたらしくてな…この前エンリ村長さんも助けられたらしいぜ?その英雄に。」

 

「へぇ…いきなりどうしたの?ヘッケランそんな話なんて持ち出してきて…」

 

「いや、それがな…その人「漆黒のモモン」って名前なんだが…、その英雄譚の1つにギガントバジリスクの討伐って言うのがあってな?なんと2人のチームなのに、モモンってやつが一人でギガントバジリスクを討伐したらしいぜ?」

 

「それは…すごいですね、青の薔薇という人たちも恐らくチームで戦わねば恐らく難しい敵でしょうに…それを一人とは…石化対策もされていたのでしょうね…」

 

「それがな?そうでもないらしいぜ?」

 

「…どういうこと?…」

 

「その話では貴族の坊ちゃんの護衛を頼まれて、ゴブリンを倒すお坊ちゃんの度胸試し…っていうか成人の儀式?みたいな手伝いを頼まれて依頼の遂行中に遭遇しちまったらしくてな、そういう準備も全くしてなかったらしいんだよ」

 

「それは…不運でしたね、冒険者というのもワーカーというのも悪い時は悪いことが重なることもありますからね…。」

 

「で?…ヘッケラン、そいつどうしたのよ、まさかその坊ちゃん連れて逃げ切れたからすごいっていう話でもないんでしょ?」

 

「もちろんだって、その坊ちゃんと、お付きの護衛役だって居たらしいんだが、二人とももちろん「逃げましょう」って結論だったんだよ、当たり前だよな、…でもな、そのモモンって人はこう言ったんだってよ。」

 

 少しの時間タメの時間を作り、言い放つ。

 

「『石化の視線など…レジストしてしまえば何も問題はありませんよ』…だとさ。

「それでお坊ちゃんたちが逃げてる間、自分だけで足止めを買って出て…「足止めはかまわないが、アレは別に仕留めてしまっても構わんだろう。」と軽く言ってのけたらしい。

 

「それだけですか? たったそれだけの理由で…、一瞬の失策が命取りになるギガントバジリスクを…たった一人で討ち取ったと言うのですか?」

 

「あぁ…俺たちにゃ~とても真似できねぇ…もはや芸当でも何でもねぇよな…どんだけなんだって話だろ?」

 

「だが…そうだな、そうでなきゃな…」

 

 そんなヘッケラン達の話を聞くとはナシに聞いていたブレインがそうつぶやき始める。

 

「どっちにしたって、俺が進む道は一つだ、ただただ、目の前に立ちはだかる背中に手が届くように自分を鍛えていくしか、そこに到達できる道はない…そういう事だよな…」

 

 すっと立ち上がり、誰に言うでもなく、自分の中で決心の表れのように言葉を紡いだブレインの言葉に…。

 

「ま…そういうことだわな…」

 

 ニヤっと笑いながら同じように立ち上がるヘッケラン。

 

「私は…みなさんの足手まといにならない程度には自分を鍛えておかないといけませんね。」

 

 やれやれという顔で立ち上がるロバ―デイク。

 

「ホント、男ってワケわからないよね…アルシェ?」

 

 と、イミーナ。

 

「…その言葉、今なら少しだけわかる気がする…。」

 

 という話が展開される中…。

 

 実は今の返事は半分は生返事だった…、それと言うのもさっきまでアルシェは別の考え事をしていたからだ。

 

 何故なら何か聞き逃してはいけない何かを聞いた気がして、気になっていたのだ…だがそれが何なのかピンとこない。

(なんだろう…何に今、引っかかったんだろう…忘れてはいけないような…前にもこんな思いを抱いたような気がする…その時も同じように思い出せなかった…)

 

 そんな風に悶々としている中、ベルの方から、質問が投げかけられる。

 

「皆さんの中で、ちなみに力が湧いてきてる~みたいな感覚を感じてる方は居ませんか?」

 

「ハ~イ!ハイハイハ~~~イ!! わったし~♪ ヴェールさぁ~~ん、わったし~♪」

 

 勢いよく手を挙げるのはセピア…まぁ、彼女が一番平均ダメージは高かったしな…ボーナス経験値でも加算されてのレベルアップか?と思うも、その前にやることがある。

 

 すす…とセピアの前まで進み、目の前まで立つとおでこに縦チョップを見舞う。

 

 ゴ!…と鈍い音が聞こえると…「なぁ…今、すっげぇ音したよな?」と、ブレインがヘッケランに言葉をかけた。

 

「あぁ…女の子にチョップしたぞ?チョップ…いったそうだったな…。」

 

「いったぁ~い!なぁにするんですかぁ~~ヴェ」

 

 そのタイミングでそれ以上言わさず今度はチョップの手の形のまま、手刀でノドをズビシ!と突いてやる。

 

「あれは…容赦ないですね…」

 

「ギュブフゥ!」と表現したらいいのか、何とも言えない声を口からだし、ノドを手で押さえている。

 

(これは傷を治すキュアウーンズじゃなく症状が少しは緩和する方のヒーリングの方がいいですね)

 

 と判断し、森祭司のルチルがセピアに<軽症治癒(ライトヒーリング)>でノドの痛みを治してやると、ノドをさすりながら「ありがとう」と言っている、少しは良くなったようだ。

 

 そのやり取りを見ながらベルがふと目を向けると、ルチルのヤドリギの杖、その先端にある球状の、密集した植物の繭のようなものが、丸々白く輝く光に包まれていた。

 

(ふむ…敵との戦闘以外でも…治癒魔法でも使用した魔力に応じて効果が累積…、バフ効果も発揮するのか…それも面白いな…)

 

 なんて思いながら、セピアにはちゃんと言って聞かせないと…という認識のもと軽く説教。

 

「お前はちゃんと考えてから、私の名を呼ぶように…セピア、勝手に今の私の名前を伸ばして呼ばぬようにな…」

 

 そう言いながら、こめかみに指を当て、セピアに<伝言(メッセージ)>を飛ばしてツッコミを入れる。

 

『この姿の時はずっと「ベル」だって名乗っていただろう…せめてそこは察してくれセピア…』

 

 と言ってブツリと通信を切る、そうすると「うぅぅ…すみません。」と返って来た。

 

「まぁ、良しとしよう、それで? 成長でもしたか?」

 

 と、今度はさっきのような重い含みの声ではなく、共に成功を祝う家族のような声。

 

「ハイ! 一個上がったんですけど、一つ…【遠射の一撃】っていうの…覚えたんですけど…なんですかね?」

 

「あぁ…魔法詠唱者(マジックキャスター)として成長してくれたかと思ったんだが、そういえばレンジャーとしての戦法しか使ってなかったからな、レンジャーが成長したのだろう。 ちょっと待ってな?どれどれ…」

 

 懐から「百科事典(エンサイクロペディア)」を取り出し、ページをめくる。

(自分はレンジャーは覚えてないけど、PVP用にどんなスキルがあるか、とかは公式に書き込まれてたwiki情報なんかをココに書き留めておいたと思った…が…、あった、これか…)

 

「『遠射の一撃』…スクリュー状の回転を武器に与えることで推進力が増加…射程距離20%up、命中も同様に20%up、さらに刺さりながら捻じりが加わることによりダメージ10%up…か、まぁ、矢の攻撃や、刺突武器のような「突き」の手段に命中率を上げてくれるようなものらしいね…さすがに刺突武器で射程を伸ばしてくれはしないだろうけど…」

 

「できれば、魔法とかそっちの技とか覚えたかったのにな~…。」

 

「それなら次はコメットロッドを使えばいいんじゃないか?次は難度90に挑んでもらうんだし、戦闘開始早々、第3位階の彗星でも堕とせばそれなりのダメージは通ると思うぞ? まだMP使ってないんだろ?」

 

「そうですね、ハイ、そうします!!」

 

 花が咲くような笑顔だ、次のレべ…じゃなく難度アップで1つでも魔法を覚えられるようなら今後の戦い方の幅も少しは違ってくるだろう。

 

「さて、ちなみにアングラウスくんは、気になることがあるんじゃないのかな?」

 

「あ? あぁ…まぁ、な…わかるか?」

 

「さっきの戦いでボクも気になっていたからね…ちょっとだけ、武器を貸してもらえるかな?」

 

「あぁ…頼む。」

 

 ブレインからの武器を受け取ると<道具鑑定(アプレイザル・マジックアイテム)>と<付与魔法探知(ディテクト・エンチャント)>を発動させる。

 

「ふぅ~む…神刀、属性神聖、低位魔法効果、物理障害に対する斬撃効果20%向上、物理ダメージ5%向上、および一時的効果+10%、非実体に対し30%のダメージ効果、クリティカル率10%上昇…か、どうやら気になる要素はこっちの武器の方ではないようだ。」

 

「それではアングラウス君自身の方かも知れないから、そこを調べることにしよう。」

 

 そう言うと、ベルは自身の持つ魔法、アインズからも…かつてモモンガだった頃に「覚えておいた方がきっと役に立ちますよ」と助言されて覚えた魔法、あの頃はダメージを大きく与える魔法ばかり覚えていたよな…と思い出しながらその魔法を唱える。

 

職業構成の精髄(クラス・エッセンス)

 

 すると、己の中に浮かび上がってきた情報…その中で見つけた初めて見るクラス名、それで原因に思い至る。

 

 この魔法はどんなクラスを持っているか、という表層的な情報しか判別できない、そのため、どんなスキルを持っているか…魔法は覚えるのか?などは自分の中の情報だけが全てであるため、ぷにっと萌えやモモンガたちにも折に触れ、情報の価値について聞かされていたため、調べてはいたが…こんなクラスがあるとは聞いていなかった、きっとこの世界に対応した結果の職業だろう。

 

「わかったぞ?アングラウス君、キミに新しいクラスが発生した、そのため先程のコカトリスはクラス由来の効果で不調が起きた…と言うのが原因だろう。」

 

「俺に…? 新しいクラスが? …どんなのだ?」

 

「あぁ…それがな…『カースドスラッシャー』という職業だ、恐らく「呪われし抜刀者」とかいった意味だろう」

 

「呪われた…そうか…それでか…」

 

「あぁ、多分その刀だけでなく、アングラウス君の使用する武器なら全て「負のダメージ」を与えられるようになったんだろう…だが、…いや…そうなると…。」

 

「なんだよ? 自分の中で考えてないで俺にも教えてくれよ、そんなに考え込むような不安要素でもあるのか?」

 

「いや…キミの武器は神聖属性が付与されている、だから相手がアンデッドとかであった場合は、武器の特性によりダメージは少し上乗せされるだろう…だがキミはクラス能力のせいで「負の攻撃」を取得してしまった。 …つまり、アンデッドを例にあげると、弱点の神聖ダメージを与えることは出来るが、その直後、「負のエネルギー」を相手に与えることにより、アンデッド特有の「負のエネルギー(ネガティブ・エナジー)」による回復という効果を与えてしまう危険性が出てくると…まぁそういう心配が浮かんだだけだ。」

 

「それじゃ~3歩進んで2歩下がる的な攻防じゃないか? それに自分が使う武器なら…ってことなら、どんな武器にしても結局、相手を回復させちまうってことなんだろう?」

 

「まぁ…それなんだが、その能力は<スキル>と呼ばれるものでな?あと少し、経験を積んで、クラスLVが上がれば…「負の属性」を任意でカットすることも出来るようになるはずだ…だから、今はそこまで気にしなくてもいいじゃないか?」

 

「そうか…それならいいんだが…」

 

 

「まぁ生物に対してならどっちかは問題なく効くんだし、ひょっとしたら…負の属性が普通に通って、神聖が弱点っていうモンスターが居ないとも限らないしな、悪いことばかりじゃないかもしれないぞ? それにその逆のパターンもあるかもしれないし…とにかく悲観することはない。攻撃の選択肢が増えた。と思えばいいよ」

 

(ま…LV27の…普通のコカトリスより1ランク上って言ってもその程度のレベルだし、経験値も9等分ならそんな大きな収穫にはならなかっただろうしな…)

 

「他のみんなも難度が上がったとしても別にボクに言わなきゃならないってことはないんだけど…チームメンバー同士での相談くらいはしてていいよ? あと少し休んだらさっそく本題の「難度90」に挑んでみるからね。」

 

 

                   ★★★

 

 

 しばらくの休息を入れて精神力(魔力)も回復して、ライフの方も全く減っていなかった面々はいよいよ難度90という難敵に意識を向ける。

 

「さて、いよいよだけど、装備品の変更はナシでいいのかな?」

 

 一応尋ねてみるも「大丈夫だ、いつでもいいぜ?」とブレインはやる気満々だ。

 

 他のメンバーたちも特にこれと言って何かを言い出す様子はないので、そのままでいいんだな、と結論付け、パネルの操作をする…「レベル30」にセットすると、ちょうどレベルが30のモンスターの名前が表示される。

 

(うん、これは面白いかもしれない…)

 

 どういう戦い方をするだろうという感想を持ちながら、「決定」の操作をする。

 

「みんな! 一応これから呼び出すのは、正式に呼び出されるモンスターでボクが召喚するものとは別種だから…本気で戦わないと死んじゃうかもしれないから、気を付けてね?」

 

 と言うと、みんなの構えが強いモノとなる。

 

(もちろん、呼び出したヤツがこっちに来るという可能性もあるが…そうなったら、相手をするだけのことだ。)

 

 そう思っていると、メンバーの目の前に黒い球状のものが渦を巻き、そこからなにかが這い出てくるのが見て取れる。

 

 何が出てくるか知っているベルは気楽だが、一同は気を引き締めて待ち受けているだろう…と思っていると、その全貌が明らかになる。

 

 炎をその身に宿し、その身の周囲にも炎を纏わせる成人男性の手首から肘くらいまでの大きさのトカゲのようなモンスター…それは冒険者をしていても滅多にお目にかかれないモンスター…サラマンダーだ。

 

 

 

 自分の居た元素界からいきなり呼び出されたサラマンダーは不機嫌だった。

 

 こっちの都合も考えずに好きな時に呼び出し、勝手な要望を押し付ける…召喚主と呼ばれる者には良い印象などは無かった。

 

 呼び出されたからと言って相手の意のままに振る舞うつもりのないサラマンダーは、敵意の咆哮を上げる。

 

 目の前の存在達もどうやらこっちを使役するために呼び出したわけではないようだ…、一様に戦闘態勢をとっているのは分かる、もちろん敵意を向けられていることもだ…ちょうどいい、憂さ晴らしに相手をしてやろう…という意識の外、自分の横にはやる気のなさそうに、変な扉に寄りかかる者が居る。

 

 なんだ、あいつは…こっちを相手する訳でもなく、友好的と言う訳でも、敵対するつもりもないようだ…

 

 どちらかと言えば無関心…と言った方が近いだろうか…まぁ、それならいいだろう、一番後回しにすればいい。

 

 

 そう意識を切り替えたサラマンダーは、敵対的な対応を見せている者達に向き直り、戦闘開始の雄たけびを上げた。

 

 

 

 第1ターン

 

 戦闘開始早々、その姿を見てから手段を講じていたのはディーネだ。

 

 雄たけびを上げられる前から詠唱の準備に入っていたため、雄たけびの直後に間に合った、その魔法を唱える。

 

恵みの雨(マーシーレイン)

 

 ディーネがそう唱えると、サラマンダーの頭上に揺らめくモノが発生し、そこからキラキラと煌めき、炎の身体を形づくるサラマンダーに降り注ぐ。

 

 癒しの雨とも言えるその魔法は、光りの属性であると同時に水の属性の魔法でもある。

 

 降り注がれるその魔法で炎の勢いを抑えられてしまい、現れた時に比べると、少し炎の勢いが弱められたように見える。

 

 体力の方は、最初から満タンなので、回復の恩恵は全くない。  ただ炎を消すほどの威力は無く、まだサラマンダーの方がレベルは上の為、少しだけ弱められた程度で終わっている。

 

 その次に控えていたのはセピア、先ほどのアドバイスに従い、準備をしていた彼女は手に持っていたコメットロッドを振りかざし、全魔力の半分を使い第3位階分まで引き上げた「彗星」の準備をする。

 

「コメットインパクト!」

 

 それは、サラマンダーの頭上から垂直に落下してくる隕石のようなモノ…それは狙い(あやま)たずにサラマンダーを直撃…しかし炎属性+殴打の効果では、炎のダメージは最小ダメージしか通らず、殴打の方しか充分なダメージは与えられない。

 

 だが、彗星自体の主成分は氷などで形成されている。

 

 炎の属性はあくまで、飛来落下する際に起きる空気との摩擦熱で起きる「熱」からくるもの、必然的に、「氷」属性もその彗星には含まれている。

 

 その分のダメージは問題なく通ったようだ。

 

 

 フレイラがブレインに<火属性防御(プロテクションエナジー・ファイヤー)>を唱える。

 

 ルチルは<自然の精霊(エレメンタル)召喚1st>を発動させ、レベル6の水の精霊を召喚し、ヘッケランに[水のベール]をかぶせ、炎ダメージの軽減効果を与えていた。

 

 ヘッケランが行動する前にロバ―デイクも行動を起こす、<祝福(ブレス)>の魔法を使い、ヘッケランの持つ、魔法の攻撃が出来ない普通の武器に少しでも魔法の恩恵を乗せるも、攻撃力自体はそこまで高くはならない為、ノーダメージよりはマシだろう程度に思っていた。

 

「悪いな、ロバー!」

 

「いいんですよ、このくらいしかできませんからね。」

 

 アルシェはマジックアローを唱える。

 

 本当は先程のコカトリスとの戦闘で、新たにファイアーボールを覚えていたのだが…炎の精霊に対しての効果はまず望み薄だと判断し、まだこっちの方が…との判断でそっちに切り替えていた。

 

 3本の魔力の矢がサラマンダーに刺さり、精霊の呻きが聞こえる。

 

 イミーナは、自分の持つアイテムでカルネ村に来る前、帝都での市で買った物を取り出す。

 

 魔法のクラスを取得していない自分では精霊種には効果的な行動は出来ないことに歯噛みをし、少しでも何かできないかと思い、考え付いたのがそれだ。

 

 それは滅多に出回ることの無い貴重な品、錬金溶液を作る際、わずかに残った溶液の下に残る沈殿物、そこに集まってしまった純粋な魔素、それを一滴一滴、つまり溶液一容器につき一滴。

 

 それをかき集めることでポーション瓶一本分になったそれこそ、「錬金魔化溶液」一度使用したら使い切りだが、それでもその溶液をかければ使用する武器に魔法の付与を持たせることが可能なのだ。

 

 特に炎や、氷結などといった効果は、この瓶には込められていないが、それでも武技【戦気梱封】と同等の攻撃力向上効果は見込めるはずだ、という主人の口上を信じ購入した。

(普通のヒーリングポーションの5倍の値段が使い捨ての魔化手段で終わってしまうのはもったいないけど…死んでしまっては元も子もないしね…、効果はそれなりに持つみたいだし…。)

 

「ヘッケラン、武器にこれを…!」

 

 と言って、ヘッケランのそばに寄ったイミーナが彼の武器にそれを注いでいく、2本の剣、それぞれにだ…瓶は1本しかないので、これで効果が半々になどならなければいいが…と思うイミーナをよそに、そんな不安すら気にしていないヘッケランが感謝を口にする。

 

「ありがとうな、これで何とかなるかもしれない」

 

「いいよ、その代わりちゃんと活躍してくるんだよ?」

(本当は矢を束になるように一つかみにして、全ての矢の先端にかけてやろうかとも思ってたんだけどね、矢の本数分、効果が割り引かれたんじゃ、効果が期待できないのと同じだからね…それならヘッケランの武器の方がまだ望みはあるってもんさ)

 

(フォーサイトはここで1ターン目の行動終了。)

 

 フォーサイトのメンバーが悠長にそんなことをしている間に、ブレインが囮役を買って出ていた。

 

 炎対策をされていたブレインは炎の弾、矢、などを己の武器に宿る力…さっき刀の鑑定をしてもらった時に聞いた「低位魔法効果、物理障害に対する斬撃効果20%向上」と言う部分に望みを込め、敵から撃ち出された<火の矢(ファイアーアロー)>をその刀の横の部分をナナメに構えることで後方にそらす。<火の弾(ファイアーバレット)>を上段から切り裂く、そのままの勢いで迫ったブレインは神聖属性が宿り、ついでに負の効果も与えられるクラスの能力により、刀は実体だが、属性効果でジワジワとした効果をサラマンダーに及ぼしていた。

 

 

 

 

 サラマンダーは少しイライラしていた…なんだこいつらは…ダメージを満足に与えることも出来ないくせに、チマチマ、チマチマ…チマチマ、チマチマと鬱陶しいことばかりしてやがって

 …これじゃ憂さ晴らしどころかストレスが溜まっていく一方じゃないか…と思うも、忌々しいのは最初に水の効果の魔法を使われたことだ…、まさか最初にあれで勢いを削がれるとは予想外だった。

 

 だが、今の所、要注意なのは目の前まで来ている刀を持った剣士だろう、小癪にも非実体に対する攻撃が出来る武器を持ってやがる…。

 

 純粋な魔素から身体を構成している自分には魔化されたものや、魔法でのダメージ、それから…伝説の魔法武器くらいでしかダメージは通らない…だが非実体にも効果がある武器は例外だ。

 

 そっちでも攻撃のダメージを素通りさせることは出来ず、損傷は蓄積されていく…。

 

 ならば、目の前の剣士に集中すれば…

 

 

 …という認識の元、ブレインにサラマンダーの狙いが定まる。 

 

「嬉しいね、こっちに来てくれるかい? それなら遠慮なく…腕試しと行こうか!」

 

 

 

 

 それからはブレインとサラマンダーとの勝負のようなものだった。

 

 宙に浮かびながら、重力の問題など無視するように縦横無尽に立ち回るサラマンダー。

 

 それに<領域>の効果で対応し、躱し、身をよじる。

 

 敵が牙を突き立てた時には、その口に刀の刃を押し当て、噛み付かれないようにする。

 

 爪の攻撃は、その刀さばきで弾いていく。

 

 爪を弾きながら一閃。

 

 口に刃を当てながら引いて斬る。

 

 サラマンダーも応戦して、距離を置いてからその身の炎をかき集め、<炎の翼(フレイム・ウィング)>を自分を中心に円形に広がらせ、炎の奔流を叩きつけるものの、炎属性の防御が宿っているブレイン。

 

 さらに、ルチルが呼び出した…まだレベルは6しかない水の精霊が周囲に水蒸気、霧を展開させている為、炎の状態も呼び出された時の半分近くにまで落ち込み、望んだような威力は発揮できなかった。

 

(あの水の精霊もいい加減、鬱陶しいが…だが所詮はレベル一桁台…オレが本気を出せば、なんて事は無い、その気になればいつでも始末は出来る…だがこの剣士との長期戦は不利…今も負のダメージが蓄積している…攻撃の速度も思ったような速さではなくなっている…すでに攻撃も見切られてる…)

 

 一見、サラマンダーが不利に見えるが、ブレインも炎の防御がいつまで続くかわからない為、出来れば早く決着をつけたい気持ちがあった。

 

 とは言え、刀としてのダメージよりも「非実体への攻撃」の効果でしかダメージを与えられていない実感がある。

 

 これでは、自分のとっておき、「秘剣」の方もあまり期待は出来ないだろう。

 

 

 ここで両者は思った、「お互いに決め手に欠ける」と…。

 

 

 膠着状態に陥った彼らの間に入ってきたのはフレイラだ。

 

 彼女はブレインの横に来て、耳打ちをする。

 

 それはサラマンダーには聞こえない内容だったが…

 

「そうか…少し不本意だが、今の俺では決め手に欠ける…このままジワジワ押しきるように削り合っての勝利は、まるで泥仕合の様で好きじゃない…、キミの好きにしてくれ…」

 

 そう言って刀を仕舞う。

 

「すまないな、本当は最後まで決着をつけたかったんだが、この娘さんがキミの相手をするそうだ…無事だったらまた、戦おう。」

 

 そう言い残して、その男はあっさりと味方の方へと歩いて行く。

 

 

 

 なんだ、この女は…オレの憂さ晴らしにケチをつけやがって…許さねぇ…こんなやつ…と思って、挑みかかろうとして…

 

 首をつかまれた。

 

 フレイラのレベルは50

 

 純粋なレベル差がある上、元々獣人種であるため、素早さも他のステータスより上、さらに【獣の力】によって素早さも底上げされている為、気が付いたらサラマンダーは首をつかまれ、高く持ち上げられていた。

 

 

 

「すみません…ベルさま…少し試してみたいことがありまして…私の勝手な行動をお許しください。」

 

 

(珍しいな、あの子が率先して、そんなことをし始めるなんて…何をするか気になるな、見守ってみるか…)

 

「あぁ、気にすることはない。好きにするといい。」

 

 ベルがそう言うとフレイラは感謝の言葉を返し、吊り上げたままの手でもがき、困惑しているサラマンダーを見上げた。

 

(なんでだ?なんでこのニンゲンは…私をつかめる…自分は魔素で作られた体、物体としての身体構造はしていない…しかも摑まれるなど…)

 

 

「不思議ですか? 自分が掴まれていることが…簡単です、この身に<火属性防御(プロテクションエナジー・ファイヤー)>を使って火傷しないようにしているのですよ…そして、私は非実体の存在に特化したスキルを使えます…そう…【星幽体の接触(アストラス・タッチ)】というモノです。」

 

(なんだと…それは…そんなの…知らないぞ…今まで、そんなのを使える奴に、会ったことなどぉぉぉ!!)

 

「あぁ、知らなくても仕方ありません、これはあまり人気のある能力ではありませんでしたからね…さらに、こんなものとも組み合わせることも出来るのですよ?」

 

 そう微笑むと、サラマンダーを掴んでいた…接触している手から何かが吸われる感覚がサラマンダーを襲う。

 

(なんだ…なにをしている!! なんのつもりだぁぁぁぁ…)

 

「あぁ、勝手にすみません、あなたのエナジーを搾り取らせてもらってます。スキル【魂の吸い上げ】ってやつですね、これはソウルスティーラーのスキルの1つ…そしてその二つ目がこれから使うスキルです…」

 

(やぁぁぁめぇろぉぉぉぉ!!! オレの…俺の身体を構成する魔素がぁぁぁ…)

 

「すみません、大切に流用させていただきますので…成仏…と言って適切なのでしょうか?精霊さんの場合は…まぁいいでしょう…安らかにお眠り下さい」

 

【生体濾過】

 

 そのスキルを使うと同時に、今まで吸い上げていたものと、現在吸い続けているモノが全て彼女の身体を通し、純粋な魔力(魔素)、炎の元素、負の元素とそれぞれ分けられ、彼女の意志の通りの場所から排泄されていく。

 

「失礼…」

 

 そう言うと彼女は手持ちのバッグの中から、空になったポーション瓶を3本取り出し、目頭に瓶の口をあてがう。

 

 すると、その目から色のついた液体が涙のように溢れ、瓶の中へ注がれていく。

 

 もちろん逆の方の目からもだ…。 3本目の瓶には、また、1本目の分を注ぎ終わった方の目から涙のように瓶に注ぎ入れていった。

 

「ハイ、終了です、ありがとうございました。」

 

 ポカンとしているメンバーたちの中、手に持っていたサラマンダーはすでに姿を消していて、その手にはひっそりと「火の元素石」が握られている。

 

「あ………」

 

 フレイラも一瞬、呆気に取られながら…ベルに報告に行く。

 

「ベル様…サラマンダーを倒しましたら、このようなものが現れましたが…これは、ユグドラシルのドロップアイテムだったりしませんか?」

 

「なに!!!!!??」

 

 フレイラからその石を受け取り、<道具鑑定(アプレイザル・マジックアイテム)>を唱える。

 

「これは…たしかにそうだ…まさか…この異世界空間では、ユグドラシルのドロップアイテムが落ちるようになっている世界だというコトか…これは…貴重かも知れん…。」

 

 

「なぁなぁ…なんかあったのか? 色々聞きたいことが山積みなんだが…聞かせてもらってもいいかな?」 所在なさげにヘッケランが遠慮がちに聞いてくる。

 

「あぁ、済まない、ついこっちの話で意識を持っていかれてしまった。 ところで聞きたいこととは何かな?一つ一つ、可能な限り答えてあげよう。」

 

 ベルがそう告げると、メンバーがベルの周りに集まる。

 

 そして、サラマンダーがどうなって、あぁなったのか、倒せたのはどういう仕組みか…さっきの涙みたいなのはなんだ?という質問から、なんで掴めたんだ?とか熱くないのか?などと言った質問まで…それぞれが知りたい問題が乱れ飛んでいた。

 

「それでは、私がわかる範囲で答えよう。」

 

 とベルが言うと、皆、目を剥いて注目してきた。

 

「彼女は…カルネ村でも見たと思うが、非実体の存在に対して働きかけることが得意な職業も有している、そこは分かってくれるかな?」

 

 そういうと、今の今までそこはスポンと忘れていたらしく、「あぁぁ!!」とみんながその時のことをようやく思い出せたようだ。

 

「それで、そのことを踏まえてなんだが、さっきもアングラウス君はフレイの魔法によって、<火属性防御(プロテクションエナジー・ファイヤー)>をその身にかけてもらったと思うんだが…熱さやダメージなど感じなかっただろう?」

 

「あぁ、それはその通りだ、ダメージらしいダメージは通ってこなかったな。」

 

「それもそのはずさ、フレイはサラマンダーの難度の1.5倍以上の実力があるからな、レベル差で完全に遮断できていたというコトさ。」

 

「なるほど…それで?サラマンダーを手づかみにするって離れ業に関しては?」とロバ―デイク。

 

「それも非実体の存在に働きかけることに特化した職業由来の能力でね、「魂への接触」と言ったらいいかな? 実体がなくても触れる技があるんだよ。」

 

「それで? あのサラマンダーは、なんで急に消えちゃったのよ?」

 

「それは【魂の吸い上げ】って能力で、接触してる相手から「魂」と呼ばれるものの構成物質をまるごと吸ったりすることが出来る。それを【生体濾過】ってスキルで濾過してそれぞれの純粋な魔素やら火の元素やらに変換したってことさ、詳しいことはわからないだろうから、「濾過」について聞きたかったら、ンフィーレア君が一番良く知ってると思うぞ?」

(本来はどっちも吸い上げてHPにしたり、濾過してMPにしたりってだけだったんだけどな…。)

 

「それで…さっきはなんで涙を…その瓶に?」とアルシェ。

 

「それは私から話しましょう…その私の身体を通して不純物を取り除き、超純粋な…わずかな混ざりも許さない性質に変え、それを液体にして、体外に排出したのです。」

 

「え?それだけの理由?」 不思議そうな顔になるイミーナ。

 

「はい、本当であれば人体から出せる部分であれば、どこででもそれは可能なのですが…その…見た目からしておイヤでは…ありません?」

 

「え?何が?」 何のことかわからないという風なアルシェ

 

「例え、混じりけのない液体だと分かっていても…その…鼻ですとか…口ですとか…耳から出したり、さらには下の方から出された液体を…それをポーションになどされたら、みなさんはそれを身体にかけたり、飲まれたり…そういう気分になりますか?」

 

 

「「あぁぁ…わかった、やっと納得した」」とイミーナとアルシェ。

 

 

「ところで…とりあえず…戦闘は終わりましたが…みなさんの調子はどうでしょう?何か変わりはありますか?」

 

 

 そこからメンバー同士の情報交換が成され、ベルリバーは「火の元素石」を手に持ち、じっと眺める…

 

(このことも、後でアインズさんに報告した方がいいのかな?…した方がいいだろうな…まさか…こんな手段でドロップアイテムが手に入るとは…)

 

 

 できれば、ワクワクしたこの気持ちのまま、すぐにでも報告したいと思うベルリバーだが…、今そのことを言って「仲間に入れてくださいよ」なんてアインズが言ってきた場合…守護者達も護衛で一緒に来るだろうことも考えられる…そう考えると気が重くなるし…まさか今さらこの姿を辞めて別の変装になんて…難しいよな…、という結論を下す。

 

 そして、結局「やっぱり今はやめておこう…」と思い、このことは先延ばしにいておこうと強く心に留めるのであった。

 

 

 




ノリノリで書いてたら、なんと2万文字オーバー

自分としては快挙でございます。

ただ、くだらない言い回しや説明台詞が永くなってしまっただけという意見もあるでしょうが…

説明もなく、それぞれの脳内補完でコトがすむような情報まで書く必要は感じません。という作者さんも居たものでね…その作品は、ラストがどうなるのか楽しみに読んでおりましたが、作者さんが新しい話を更新しなくなって残念なままとなっております。

 なので、その作者さんもアルシェ救済を話の中心に置いていたので、自分もそれを貫きたく思います。

 言い訳にしか聞こえないでしょうが、これからも当方の、説明重視の文章、読んでてダルくなる人もいらっしゃるとは思いますが、生温かい目で見ていただければ幸いです。

これからもどうぞ、ごひいきの程を…。
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