気づいたら大自然 小心者の異世界闊歩   作:yomi読みonly

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本編の前書きとしては全く関係の無い話になりますが、気長にオバロのアプリゲーム、まだ続けています。
かなり渋い評価なゲームで、バランスが悪いだの、アイテム交換する際のポイント設定がバカにしてるなど
言われていますが、それでも原作が好きなので続けていられる感じ…。

六腕イベントでは、マルムヴィスト(☆3)とエドストレーム(☆3)が出た。
とりあえず女の子が出て満足…あとは趣味でデイバーノックさん(☆4)が欲しかったのですが、なかなか出ず。

あきらめて、水着プレアデスガチャを回したら、なぜかデイバーノックさん、ご降臨…
(ホント何故?って感じ)

 まぁ…ゼロは欲しくなかったから最初から度外視。

 ついでにアウラがやっと出たのが嬉しかった。しかも山河社稷図持ち…欲しい方のアウラが出て満足でした。



第42話 みんなで特訓、レベリング![お昼と食休み]

 ベルリバーとフレイラを含めた総勢10名のメンバーは、皆、一様にキャンプよろしく、まるでアウトドアの現場の様にテントを張ってみたり、たいまつ数本で作った焚き火を囲むように石を敷き詰め(この石はどこから出てきたのかは後述参照のこと)、簡易的な炊き出し場を作り出していた。

(もちろん、その焚き火の火に当たるようにして、ヘッケランの剣、その刀身の根本、剣の平たい部分に光り輝く炎のような紅い精霊石、それに炎を浴びるようにさせる、これで、少しでも回復してくれれば、さっき手助けしてくれた返礼代わりともなると思っているのだろう。)

 

 

 もちろん、先程、戦闘していたドア正面ではなく、ドアの裏側に移動して、そこに休憩が出来るようにと憩いの場を作成し、そこでの食事、または睡眠での休息をとらせることでダメージ、疲労などの回復をしてもらったり、気分転換のように息抜きをしてもらおうとしていた。

 

 

 

 その作業をしようとしていた時に、いつでもそばから離れないフレイラが「非力な我が身も、微力ながら手伝わせていただきたく…」と伏し目がちに言ってきた。 …そう言われてしまうと、仲間外れも可愛そうだなと思い、お願いすることにした。

 

 …のだが、しかし作成者(プリペアー)のクラスをいくら習得していても、それは液体とか関連についての技量(調理、材料の仕込み、煮炊きなど、薬液などの調合も含む)であり、アウトドア関連に対しての知識はほとんどなかったため、結局、他のみんなの手間を増やしてしまうだけ…と思われたのだろう…「フレイラさんは、どうぞゆっくりされていて下さい、細かい作業はワタクシどもが…」と言われてしまい、ベルの横で落ち込んでいた。

 

 そして、当のベルは、ユグドラシル時代に無料コイン(ユグドラシルコインとも言うが…)で初期の初期、購入していたアイテムを提供し、それで今回のキャンプ場の作成を提案した流れで、今回のこのような作業に取り掛かることになってしまったのが、現在のこの状況に繋がることになる。

 

 

 ユグドラシルで、まだ自分というアバターが発生したばかりのサーバー世界。

 

 大きく分けると『アースガルズ、アルフヘイム、ヴァナヘイム、ニダヴェリール、ミズガルズ、ヨトゥンヘイム、ニヴルヘイム、ヘルヘイム、ムスペルヘイム』に分けられた九つの世界…、自分たちの最初のホームとも言えたそれらサーバー単位での各種世界から出ていけなかったくらい低レベルだった頃、当時、一緒に良くコイン&経験値稼ぎで外に誘われていた時に、一緒に持って行っていた「おでかけ用」のセットも10人分賄えるように、みんなに提供していた。

 

 それは、初心者でも購入しやすいようにと、店売りだった「ピクニックセット」「アウトドアグッズ一式セット」「サヴァイバルツール」の3種を出して、あらゆる材料提供をしていたため、こちらものんびりと…というより「どうぞ、お疲れでしょうから…」と遠回しに『おとなしくしててくれませんか?』と暗に言われたようなもので、こちらもみんなから外され、ひっそりとしていたのだった。

 

 「ピクニックセット」は、通常のブルーシート4枚、持ち運び用のバスケット、日よけ用の日傘(折り畳み式)に、5人分の…ワリバシ、スプーン、フォークも人数分含まれており、当時の無料コインで100コイン…その中にはちゃんと5人分の水筒(500mℓ程の容量、すぐに飲み干しても微量ずつ中の水は回復し1時間で500mℓ満タンになる仕様。)も入っていた。

 

 「アウトドアグッズ一式セット」の方は、当時500コイン、もちろん、5人分の…アウトドアを楽しめるよう、耐火用の大型テント2つ(男女用)、煮炊き場を作るのに必要なカマド作成の為の「石」数十個。この石はそれなりの大きさがあり、座るための椅子代わりとしても代用できるような形と大きさになっていた。

 

 その上でこっちでも…多分、これ単品でも大丈夫なように設計されていたのだろう、これにもスプーン、フォーク、ワリバシ、さらには皿、器、小ボウルがこっちにも人数分(最大人数の5名分)入れられていた。

 

 当然、鍋、手鍋、鍋フタ兼用のフライパン、飯盒(はんごう)は言うに及ばず、アウトドアで多人数で食べる場所と言えば「木のテーブルと椅子」だろうという思い入れでもあるのだろうか…それも入っていた…普通の認識で言えばアウトドアにはそんなもの、持っていけないと思ったのだが、そこは「一式セット」の中に含まれるものらしい。

 

それ以外にも人数分のマグカップも普通に含まれていた。

 

 見た目からどう見ても持ち運びは無理だろうというテーブルに、キチンと足場も作られ、しっかりとした造り。

 さらには、椅子の部分は一本の丸太を縦にすっぱりと真っ二つにしたような形、平面を座る場所になるような…そんな感じの趣のある椅子ではあり、横に長いので、5人くらいは問題なく座れそうだ。それにテーブルの対面にもその「丸太真っ二つイス」はあり、確かにいい物ではあると思ったのだが、私がリアルで過ごしていた世界ではピクニックはもちろん、アウトドアなんてものは金持ちの道楽だった。

 

 アーコロジー内でなければ健康的な空気などは提供されず、日光のような清々しい光などはあり得ない世界だったのだ。

 

 ピクニックだって、それ専用に(もちろんアーコロジーの施設内で)作られた場所でなければ「そんなこと」しようとも思わない公害が日常だった世界、かつての「そういう文化」があった時は本当にそういうものを使っていたのだろうか…ボクには全く分からない世界だが…死獣天さんなら、詳しく知っていたのだろうか…?

 

 ぷにっと萌えさんでも色々と教えてくれそうではあるけども…、やはり信頼度では大学教授の死獣天さんに軍配が上がるかな…。

 

 など色々と考えにふけってしまったが、とりあえず細かいことはどうせわからないのだ、知っている人たちに任せた方がいいだろうと、アウトドアの達人ら(こちらの人たち)に任せようという結論に達していた。

 

 

 

 ついでに言うとサヴァイバルツールは上級者用で、課金アイテムだが…あの背後に浮かぶ文字、たっちさんの「正義降臨」でも使われていた、一文字分に相当する50課金晶(クリスタル)で買える程度のアイテム…とは言え、有料課金を良しとしない「無課金同盟」が全盛だった時は「こんなもの邪道だ!」とみんなに言われていたっけな。

 

 「誰用になんだ?」と悩んだのは携帯用トイレ、さらには「折り畳み用トイレ」などと言うものもあり、組み立てれば、木の枠の外装だが、天井もしっかりしていて、それなりのスペースもある…、水量調節や、音姫なる機能があったのだが…これはきっとアーコロジー内の家庭向けの仕様だろうか…ウチにはこんな機能のトイレは無かった、普通の洋式トイレだったのだが…。

 

 その機能がついていたのは女性用だけだったので「フレイラ…私が女性用の場所に入るのもアレだ、だからお前が説明してあげなさい」と、とりあえず緊急避難的にぶん投げたのだが…フレイラは何ともないように、これはこういう機能で…と普段から使い慣れてる様に細かい使い方まで説明していたのにはかなり凹んだ…。

 

(ユグドラシルアバターでは「排泄」なんて機能、なかったはずだが…誰用の目的だったんだ? …、それともこっちの世界仕様に変わった弊害? もしかしたらユグドラシルでも、人間種にはそんな機能があったのかもしれないが…そこは何とも言えないな…自分にはわからない世界だ。)

 

 

 

 

 

 

 他のみんなが忙しなく作業を続けてくれている中…、ベルリバーは当時を思い浮かべていた。

 

 

 当時のユグドラシルはまだリリースされてまだ数年も経っていない時期で、のんびり無課金で楽しめるゲームでもあるという点を売りにしてたこともあり、そこいらでキャンプのような真似をする事も出来た。

 

 しかしながら、、もちろんそんなことを悠長にして居たら、意味もなく「PK」されることもあったわけで…。

 

 その頻度は意外に多く、自分もその洗礼は否応なく受けることになった、それは一度や二度ではない。

 

 今も昔もネットゲームというのはそういう輩は居るものだという事前の心構えはあった、大昔、普通にネットが普及し始めていた時代、今のようなダイブシステムではなく、普通にバーチャルでのネットゲームであっても、そういう輩は居たという記録が残っている。

 

 自分が吐き気がした記事は「血のバレンタイン事件」と後に呼ばれるようになった惨事。

 運営が企画した大量初心者殺戮イベントが、バレンタインの時期と合わせる形で催された祭典。

 

 謳い文句は「愛を知らないプレイヤーに愛のこもったチョコを送って、愛を教えよう」だった。

 

 実際は大したことをするわけでもない、PKを生きがいとする者たちが集まるサーバーに、そのチョコを送りたいという、まだ何も知らない本当の初心者プレイヤー達に告知をすることでおびき寄せるという策略を打ち立てたのだ。

 

 初心者ではないプレイヤーにも、その告知は同様に届いては居たが、少し長くプレイしていれば、その舞台となるサーバーの広場は、PKプレイヤーしかいないことを知っているため、「誰がそんなとこ行くかよ」という結論を出し、誰も行くわけないよな。とそのイベントが成立する訳ないとタカをくくっていたのだ。

 

 もちろん運営側はそこのサーバーは「そういうヤツら」の巣窟だということを親切に告げる事もせずに、大々的に募集をかけ、ちゃんとイベントとして告知した。

 

 チョコアイテムを送信するのではなく手渡しで…という条件まで付ける念の入りようで、とにかく善意のプレイヤー達をかき集めていた。

 

 運営は、そこのサーバー内のプレイヤーにチョコを渡すことに成功したキャラには盛大なボーナスポイントや超レアアイテムなどを用意、一番チョコを渡せた者だけがそれを受け取れるという話だった。

 

 無論、愛を教えに行くため、戦いに行く装備は持ち込み厳禁。ということでまともな装備も身に着けず、チョコだけを持って、そのサーバーに入った瞬間に、周囲のPK達はなにも知らずにやってきた彼女らに襲い掛かる、という図式はもう出来レースだった。

 

 

 その事件の被害者は相当な精神的ショックを受け、そのゲームを辞める者たちが続出したらしい、もちろんそんなゲームの寿命も長くは続かなかったらしいが…。

 

 

 そういうこともあるという認識を持ってここに来た自分は、PK自体にはそれほど衝撃は感じていなかった、どこにでもこういう輩は居るものだし…とある意味、蔑(さげす)みの感情を持って、あきらめ半分でもあった。

 

 しかしゲームとしての楽しみを期待して参加した初心者組は、そういう風に割り切れるはずもなく、それでやめていく人が多かった。

 

 自分をキャンプやら、外に経験値稼ぎやドロップアイテム収集に行こうぜ!と誘い出してくれたのもその内の一人。

 気がついたらいつの間にやら、外に誘われなくなり、最後にはアバターの抹消まではしなかったものの、イン自体がなくなっていた。

 

 さみしい気分で、その友人と共に、よく行っていた場所にソロキャンプ気分で単独で行ってみた。

 

 その時は危険があるかも…などとは考えてもいなかった…というよりすでに自分を終わらせることを前提にしていたのかもしれなかった。

 

 ひょっとしたらただ、少しでも寂しさを何かで紛らわせたかっただけかもしれないけれど。

 

 今の自分でも、当時のあの時の自分はどっちだったのか判断は出来ない。

 

 

 

 森の適当な場所に到着すると、一人でテントを組み立て、野営の準備を一人で行い、火をおこす。

 

 そうしていると、気が付くと変な奴らに包囲されていた、その時の自分は自暴自棄になっていた、彼がもうどこにも現れてくれないなら、デスペナを食らって、なんなら1レベルまで落ちるだけ落ちて…この世界も辞めて、キャラデリくらいしてもいいかな…とくらい思っていた。

 

 そもそもこんなPKなんかがなければ、あいつも辞めることは無かった、今も楽しくこの世界での探検を楽しめていたはずなのに…と、どす黒い想いも無いではなかったが、多勢に無勢、自爆アイテムなんて持ち歩いてるはずもないので、包囲していた輩の中、そのヤツらの誰でもかまわない、誰にともなく語りかけた。

 

「こんなところでまたPKですか? 揃いもそろって暇ですね…、自分より弱い異形種を食い物にして何をしたいのかは知りませんが…もうこの世界ともこのキャンプを最後に去ろうと思いますので…どうぞご勝手に。」

 

 その言葉をどう受け止めているのか、ただ静かに、こちらをはやし立てることも、バカにすることもなく、ただただジワジワと距離を詰めてくる。

 

 自分はその時、静かにため息を吐いた。

 

 こんなことがユグドラシル生活最後になるのだろうかと…ギルドどころか仲良しだけでクランを作ることもないまま、このゲームの醍醐味も知らないまま、辞めること自体に未練がないでもなかったが、それ以上にもうこれ以上、こいつら「PK」する輩が、弱い物いじめに精を出し、愉悦を見出すように…強いものに挑むではなく、とことん自分より実力のない相手ばかりを標的にする、そんな奴らに纏わりつかれるのにも嫌気がさしていたのだ。

 

 特に抵抗するでもなく、焚き火をいじりながら、座り込み、最後の炎を見つめるベルリバーがとことん不気味だったのかもしれない。

 

 それとは別に、ただ「こいつは無抵抗だから楽な相手だ」と思ったのだろうか…一定に離れた場所からは近づいて来ようとしていなかった集団の中から一人が歩き出してきた。

 

(あいつがボクを最後にPKする最後のプレイヤーか…上等だ…実力で負けてたとしても、負け犬の遠吠えと言われようが最後まで罵り続けてやる。)

 

 そう決心してにらむように顔を向けると、その相手は他のメンバー達を後ろに少し下がらせたまま、自分が座っている場所のとなりに腰を下ろし、座り込んだ。

 

 この目の前の相手の行動の意味がわからないベルリバーは、いぶかしげに相手から目を離さずにいるだけしかできなかった、見た感じ相手の装備だけでも自分の持つ物以上のレアリティを感じる。

 

 自分がまるで「初心者装備のまま」、近寄ってきた相手が「〇トの武具」に身を包んだ上級レベルプレイヤー。

 

 ぱっと見でそれだけの差があったのだ。

 

(あぁ、これは確定だな、ここで…今日が自分の命日になって、ここが墓場ってことか…)

 

 そう思っていると、その相手は、

 

「こんなところで何をしているんだい?」

 

(なんだ、こいつ…馴れ馴れしく話してきやがって…そうか、こっちが「この人たちは安全だ」と判断したら襲いかかって、何が何だかわからないって狼狽える様を見下ろしながら、せせら笑おうって魂胆だな…、その手には乗ってやるもんか!)

 

「見てわかりませんか? ユグドラシル生活最後のキャンプをしてるんですよ…」

 

 するとその目の前の相手も異形種の為、表情も変わらないので性別はわからないが、おそらくは男性っぽいと思われる声で尚もこちらに質問をしてきた。

 

「こんなところで、1人で?」

 

(しつこいな…そんなにぼっちかどうか…あぁ、そうか、伏兵がいないか警戒でもしてるのか?…そんな相手いませんよ…思ってて悲しくなってきたよ…。)

 

「その質問に答える前に、私からもいいですか? …なんでお隣に?」

 

 すると、少し首をかしげるような仕草をされた後、そいつは、自分のコンソールを呼び出し、ポチポチと何かの操作をすると、含み笑いのような…押し殺した笑いを口から洩らした。

 

 と、その相手は少し後ろに控えていたメンバーらしき者達を見えない場所にまで下がらせ、二人きりになった。

 

「そうか…それはすまない…そうだったのか、本当に初心者のソロキャンプだったとは…キミはなかなかに命知らずだよね。」

 

 そう言われても仕方がない、今日を最後にしようと決めていたのだから…

 

「私にはもう続ける理由がありませんからね…、このゲームを始めた同輩…と言ったらいいんでしょうか…、親しくしてくれたアイツももう来ないようですし…その原因を作ったPKのやつらに恨み言の一つでも言いながら消滅でもしようかと思ってここに来たようなものですから…だから、どうぞ、伏兵も何も、私には協力してくれるどころか、利害で結ばれた程度の人脈もないので…好き放題に殺しまくってくださいな…もう疲れましたよ…。」

 

 一通り、心の中の想いを吐露すると、相手もなにかコッチに伝えたいコトがあったのか、PKに及ぶこともなく話を続けた。

 

「そう言えば、さっきのキミからの質問に答えてなかったね…オレがキミの隣に座ったのはキミのステータスを確認するためさ…遠くからだと相手の外装、装備の「見た目」しか分からない…それが幻なのか…実体なのか、初心者のような装備でもそれは本物か幻か、本当のプレイヤーレベルはどれくらいか、仲間をどこかに潜ませてるのか…森と言う場所を生かしたトラップなどは?とか、色々気を付けなければならないことが多いからね…その中でも一番有効なのは、相手の隣に座ること…そうすることでキャンプ仲間のような位置づけに勝手に認識されて、隣の相手の表面上のステータス程度は読み取れるようになるのさ…もちろんキミも、オレのを見られるはずだよ?」

 

「え?」

 

 意外な答えだった…友達だと思っていたアイツにはそれは教わっていたが…初見で、まだ友達申請もしていない相手が、隣に座ったくらいで…表面上だけとは言え、ステータスを見られるような仕組みになっていたなんてコトは知らなかった仕様だ。

 

 自分もコンソールを操作して相手のステータスを見る。

 

(相手の名前、クラン所属、総合レベル…HP…MP…うん、自分より比べようもないくらい上だ…)

 

「すごいですね、クランに入られてるんですか…」

 

「あぁ、そうだよ、その感じだと初対面だからクラン名までは表示されてないだろう?」

 

「そう…ですね…、それは見えてません。」

 

「唐突だが、キミ…ウチらの仲間にならないかい?」

 

 リアルの自分の眉が顰められるのがわかる、こいつは何を言い出すのだろう…と不快感が先に立ったためだ。

 

「PKの仲間になれと?」

 

「確かにクランの名前に「PK」という文字は含まれるが活動内容は真逆だよ? …いや、する事は同じようなものだけど、報復という点では「楽しみ」の為ではない、って立場だから、その点で全く違う、って言い直した方がいいかな?」

 

{PKの片棒を担ぐなんて死んでも御免だ…アイツを追い詰めたヤツらと同レベルに墜ちるなんて…}

 

「まぁ、とりあえずボクがキミに招待メール送るからさ、とりあえず了承してみてくれよ…そうすればクラン名がわかる、それがわかればオレらの活動内容も勝手にわかるはずさ…それを見てもやはり、相容れないと思ったら、その時、キミの「クランメンバー一覧」から「退会」を選択すればいい。」

 

(まぁ、PKと真逆の活動なのにPKという単語が入るクラン名というのは確かに気になる…メンバーになってから退会していいなら、クランの名前やメンバーの名前を確認するだけでも損にはならないしな…『了承』…と。)

 

 クランの名前を読んだ瞬間に衝撃が走った。

 

 そんなことは思いもよらなかったからだ、まだギルドではなくクランという規模だが、それを活動内容にしようという団体が出来ていたのか…という新鮮な驚きだった。

 

「PK(プレイヤーキラー)ハンターズ」

 

 …後で、その男はクランリーダーだったことを知る。

 戦闘に於いてはあまり前線が得意と言うわけではないが、素早さ&回避、攻撃をさばく技量に特化しており、得意なのはチームの支援、集団戦ではメンバーの実力の底上げを得意としていたらしい。

 

 自分に何故声をかけたのか…ということについては「自分たちがこれからPKハントをするにあたり、しようとしてた初心者装備になっての『囮』作戦と全く同様の状況だったから」とのこと、要するに自分たちと同じような志で活動するチームも別に立ち上がったのか?と思ったかららしい。

 

 

 それならば、一度挨拶くらいはしてもいいかもしれない…という話になったから、と言うのと、もし活動するきっかけとなる想いは同じでも根本的な『報復目的』がお互いに相容れなかった場合、お互い不可侵で、ターゲットが被った場合は、捕捉、尾行を先にして居た方が優先権を…とかの取り決めをするためでもあったようだが、結局は『正真正銘ボッチの初心者』だったことがわかり、いたたまれなくなって誘ってしまったらしい。

 

 もちろん、それからはそのクランの活動の下、自分のレベル上げ、PVPのやり方、PKに襲われた時の防衛策…など、貴重なことを最初に教えてくれたのは彼らだった。

 

 

 結局そのクランの活動のおかげで、PKする際は初心者装備のソロキャンパーは気をつけろ、という認識にまで至るようになり、そう言う点では少しは彼らに痛い目を見せることに尽力できたのは、そこはかとなく自分の自信にもつながったと思えた最初の出来事だったな…。

 

 

 

 そして、その活動の上で、とある「ギルド」に潜入することになり、そこから自分の運命が大きく変わり始めるのはまた別の話だ。

 

(結局、あの時のクランメンバー…、ギルドにまでなったのだろうか…? そこまではウワサ、流れてこなかったな…)

 

 

 

 

 

 そんな思い出に浸るのもそろそろ、時間切れとなり…とりあえず、しばらく待っていた一連の作業を終えた達人たちは一通りの作業を終わらせ、戻ってくると、見事に同時作業ができるようにと、鍋用の…手鍋用の…飯盒用の…という3種の煮炊き場を作ってくれていた。

 

「おぉ!…これはすごいね…ボクらはこういう事は慣れてないから、キミ達がいてくれて助かるよ、ありがとう。」

 

「それはいいが、何で料理する? 肉も何もあの中からは出てこなかったみたいだが?」

 

 もっともな疑問だ、食べる場所を作っても食べる為の肝心の材料がなければどうにもならないのは誰が見ても明らかだ。

 

「ちょっと待っていてくれ、手軽になんとかなる物は、あるにはあるんだ…ちょっと味気ない感じだから、物足りないかもしれないが…」

 

 そう言って取り出したのは久しぶりの出番「無限の水差し(ピッチャー・オブ・エンドレスウォーター)」だ。

 

 それを大きめの鍋に「このくらいか?」と言いながら人数分の水を満たしていく。

 

 

「あ!…」

 

 といきなり口にしたイミーナ…。

 

 

「どうしました?イミーナ…?」

 

「なんかあったか?」

 

 

「あんたたち気づかないの? あれ…あの水差し! 私たち、一度見てるでしょ?」

 

 

「え?そうだったか? どこでだったっけ?」

 

「ん~~…そう言えば見たような…えっと…」

 

 

 チームの男性陣はあまりそのことについては覚えていないらしかった、肩の力がガックリと抜けていく。

 

 

「はぁ…もぉいいわよ、アンタ達、あんな怖いことあったのに忘れてるなんて…ねぇ、アルシェは覚えてるわよね?あの時の…」

 

 と、そこまで言い、最後まで言えずにアルシェを見てしまう…なぜか笑っているのだ、それも手で口元を隠し、押し殺すような笑いで…

 

「な…なに? どうしたのアルシェ…、なにか…なんかおかしいことでもあった?」

 

 

「ん? なんでもない…ちょっと、意外だっただけ…そうか、みんなそう言えば知らなかったままだったんだ。」

 

 

「え!!!? …まさか…もしかして…アルシェ…あんた…知ってたの?」

 

 

「うん、知ってた。 だから少し前に言った。『今の姿では初対面だけど、そうじゃない時に会ったことがある』って…」

 

 

「あぁ!!! そう! 言ってた! そっか、そういう事? 私たちにも隠してたなんて酷いじゃないの!」

 

 

「最初から言っても多分、信じてくれないだろうから言えなかった部分もあった、だからだけど…でも今なら大丈夫かな?」

 

 

「大丈夫なの? あの時のアイツでしょ? あの姿は…変装してるってことだけど…」

 

 

「大丈夫、少なくとも、私たちの知ってきた中ではかなり友好的な、善良な人、私も妹の件も含め、かなり助けられた。」

 

 

 イミーナから驚きと共に、疑いの眼差しを向けられるような言葉を投げかけられた。

 

「正気? アルシェ、アレなのよ?あの時のアイツ…あんなのを信じるって…<洗脳(ブレイン・ウォッシュ)>でもされたわけ?」

 

 

 その言葉を聞いたアルシェの目も、少し険しいものとなる、アルシェからすると、イミーナの言い分の方が信じられない言動だったためだ。

 

「イミーナ…それは少し言い過ぎ、妹たちの恩人にそれはヒドイ言い草…」

 

 

 

                   ★★★

 

 

 

 

 なにやらフォーサイトの方が賑やかな雰囲気を感じながら、ベルが手持ちのアイテムから飲食用の消費アイテムを引きずり出す。

 

 初期はかなりお世話になった代物。

 

 後半になっても時々コレを落とす敵はちょいちょい出てきていたので、使っても在庫が切れることも無く、使ったところで序盤ならいいが後半では、その手間の方がめんどくさくなってしまい、使わなくなったといった方が近い。

 

 そのアイテムは2種。

 

「パピースター」と「メロリーカイト」

 

 前者の方は、主に「幼年竜(ドラゴン・パピー)」を代表される、あらゆるモンスターの幼児期タイプの敵が良く落と(ドロップ)していたもの。

 基本的に生物はほとんどそうだろうが、子供を単独で勝手に遊ばせてる親など、育児放棄したモンスターとかでない限り、そんなケースはあまり無く、ほとんどが「幼年竜(ドラゴン・パピー)」を見たら、親ドラゴンも居ると思え、と言われていた程だったくらいだ。

 

 他のモンスターの場合は多様で、例で言うと鷲獅子(グリフォン)と一緒に幼年鷲獅子(グリフォン・パピー)などに出くわすようなことは滅多になく…。

 

 単体で、幼年鷲身馬(ヒポグリフ・パピー)を見かけることは多い、対して幼年鷲獅子(グリフォン・パピー)は単体でも、親と同伴でも外ではあまり見かけないなど…モンスターによっても事情は全く違う。

 

 

 後者の方は主に「メロウ」と言われる水辺に良く出現する半魚人のようなモンスター、水辺に出るモンスターが持つのにべちゃべちゃに濡れていることが全くないという不思議仕様。

 

 そして、「カイト」という飛行系モンスターや、「巨鳶鳥(ロックカイト)」などと言ったモンスターらも落とす。

 

 カイトが落とした場合は妥当だと思うが、「巨鳶鳥(ロックカイト)」が落とした場合、外れ感が強かった、何故なら飛行系は倒す手段が魔法や射撃系武器でないと効果が薄い為、倒しにくい上に体力もある、そのため労力の割に、報われなかった感が強く出てしまったためだ。

 

 そんな2種のアイテムの効果は、

「パピースター」

 

 空腹の状態を回復させ、5%空腹を満たし、行動力も5Pt回復。HP、MP共に5Pt回復という効果と共にスキルポイントも1ポイント回復もしたが、回数制限のあるスキルは回復しなかったという不親切効果でもある。

 

 アイテムの説明欄に「そのままでも食べられる菓子麺、もちろん、お湯で茹でて食べても美味しいお手軽食品。」と書かれていたがユグドラシルではお湯を沸かすなんていうことの意味は異形種にはあまり縁がなかったため、したことは無かったし、本当に茹でて作れるものかどうかも不明なアイテムだった。

 

 

 

「メロリーカイト」

 

 これも空腹を満たす効果があるもの、その上、「栄養補助食品」という名目だけの上級感だけは有名だったが、果たして美味しいかどうかの真相はついに謎のままだった。

 

 効果は手軽にどこでも食べられる、それと「水分」と共に摂取すると幸運度が1アップするという謎の効果も追加であったが、基本的にこれも腹を満たすため、5%空腹度の数値が回復の方に上昇、行動力が5Pt上がるのも同じだが、「栄養補助」という名前があるせいか、各種抵抗力(レジスト)値が<下級抵抗力上昇(レッサーレジスタンス)>分上昇するという効果があったが、この効果は1個食べようと、20個食べようと、上昇した1回分の効果以上の恩恵は受けられなかった。 無論それは幸運度の方も条件は全く同じである……しかも時間の経過で、その効果は消失するというのは当たり前の話なのだが。

 

 

 そんな「メロリーカイト」をまず人数分の座るだろう位置へと、木のテーブルの上に並べていく。

 

 フレイラが、「そのような雑用は私が…」と言い出しているが、「私だけ何もしないでふんぞり返っている訳にもいかないだろう?」と無理やり静かにさせた。

 

 ついでに先程、鍋で水をお湯に沸かしている流れで、「パピースター」を10個投入。

 

(こういうのはみんなで食べるからこそ美味しいんだよな、全員分作らないと少なすぎて、効果が出なかったら残念な結果になるしな…それにこっちの世界でも普通に効果が表れるのか、実験したいっていう部分もあるし…ボクもこの際、その実験の被験者として味わわせてもらっちゃおう)

 

 しかし…と少し悩む。

 

 さすがに麺だけだと、見た目が寂し過ぎるよな…と何か、具はないか?と探していると、あった。

 

「ゴルゴンの燻し肉(ジャーキー)

 

 他にも、「ミノタウロスの牛タン」などあったが、それはまた今度にしよう。

 

 意を決して、鍋にゴルゴンの燻し肉(ジャーキー)を小さく千切ってぶち込む…これでしばらく茹でれば…少しは柔らかくなるだろうか…?

 

 そういえば、あっちでもこっちでもリアルでも野菜とか植物系とか…そっちの知識は明るくなかったな…中学でもっと勉強しておけばよかった…まぁ家の事情で中退することにはなったが、途中までは通えてたから…とは言え、学歴的には小卒ってことになるんだよな。

 

 

「あぁ~…えぇ~っと悪いけど…ルチルさん? 少し聞きたいことがあるんですが…?」

 

 いきなり声をかけられたルチルは少し驚いた顔をしてベルの方を振り向いた。

 

「あの…ドルイド系の魔法で、植物から、食用とかにできる野菜とか…野草とか…そういうの、作れないかな?」

 

「できないことも無いと思いますが…試したことは無いので…やっては見ますけど…」

 

 少し、及び腰だ。

 

 扉の裏のスペースから少し離れ、充分なスペースがあると思われるあたりまで移動したルチルはいくつかの魔法を連続で発動させる。

 

植物の絡みつき(トワイン・プラント)

 

植物成長(グロウ・プラント)

 

植物作成(クリエイト・プラント)

 

 

 ルチルが3つ目の魔法を唱え終わると、地面から拘束用に出した根っこが、成長して超巨大な植物の根のような物へと変化し…その根っこが、横たわり、地面に大きなスペースを確保するように複雑に絡み合う…すると色々な種類の植物に育つような適切な「プラント(設備)」が同時に組み上げられていく。

 

「あ…」

 

 何かが気になったのか、ルチルが唐突に顔を上げて、他のことに気を逸らしていた。

 

「ん?どうした?ルチル…何かあったか?」

 

「…あ、いえ…なんでも…では続けますね。」

 

「???」

 

(何かあったようだが、隠し事なんて珍しいな、それとも本当に何もなかったのか? だとしたら、最初の「あ…」というのがそもそも成立しなくなるし…まぁ本人が言いたくないなら、今は聞かなくていいだろう、聞いてもらいたいと思ってくれたなら聞いてあげればいいよな。)

 

作物畑(クロップ・フィールド)

 

 その魔法を唱えた瞬間、植物だったものが穀物に…根菜類に…、野菜に…と様々な作物が実る場に変わっていく。

 

 

「あれ? すごいじゃん、ルチル…新しい魔法じゃない?それ?」

 

 セピアが近づいてきて、その光景を見るや否やそのようなことを口にする。

 

「えぇ、新しく難度が上がったので、新しく魔法を覚えることが出来ました、なのでこの魔法を今回は選択いたしましたよ?」

 

 

(え? せっかくの新しい魔法獲得のチャンスを、畑作成の魔法を覚えるのに使っちゃったの? …もったいない…って、そうか、そう思われるから、気に病まれるんじゃないかと思って隠したのか…ホントに、イイ子達だよ、この娘らは。)

 

 

(ん~~…でもさすがに、卵にナルトは難しいよな、これ以上負担をかけるわけにもいかないし…)

 

 

「それじゃ、間に合わせで…ほうれん草に、ニンジン、あとはネギ…と、ありがとうルチル、それじゃ遠慮なく使わせてもらうね?」

 

「あの…ベルさま、それなら材料の方は、私が…少しくらいは手伝わせてください…ダメですか?」

 

 おずおずとフレイラが声をかけてくる。

 

「それはいいけど、切るのにまな板がなくってな、あとは手ごろな包丁…、さすがにサヴァイバルナイフでネギ切るわけにもいかんし…切れないわけじゃないが…見た目的に…な。」

 

 悩んでいると、表情を明るくしたフレイラが距離を詰め、顔を近づけたまま見上げてきた。

 

「それならば、カルネ村での調理の際、下賜していただいたまな板と、小振りながらも切れる包丁はございます、あれからナイフ用の鞘をかぶせて大切に保存しておりますので…。」

 

「あぁ、そう言えばそうだったな、それならお願いしようか、頼んでもいいかい?」

 

 そう言うと、彼女は花が咲くようなという表現にぴったりな微笑みを浮かべ、笑顔で頷いた。

 

 

 それからはネギはナナメ切り…と言いながら、切り方を隣で教え、ニンジンは短冊切り…と言いつつ、その切り方も教えていく、ほうれん草は…お湯に根元から入れていくだけだから、普通に手を出すまでも無かった、泥を洗い落とすのに少し手間がかかったみたいだったが…。

 

 茹でられたほうれん草は熱いので、手早く自分が素手を湯に突っ込み、それを引き上げ、手早く絞るとまな板に横にして置いた。

 

「さて…切り方は根元の部分を切り離したら、等間隔で切っていくといい。あまり間隔は大きく広がりすぎない程度…そうそう、そんな感じだ。」

 

              ・

 

              ・

 

              ・

 

 後は、ほうれん草を茹でる前に固い根菜類の方を短冊切りにしたモノを茹でて、柔らかくしておいたので、軽くネギを散らすだけ、で完成した。

 

 

「さぁ! これで出来上がりだ。それぞれの器を出してくれ!」

 

 結局のところ、器は代わり映えのない同じデザインなのだが、それぞれ受け取り終わると、テーブルに並べ、その器に茹で上げた麺を移し、その上に彩りの緑、オレンジ、白を並べていく。 仕上げに細かく千切って湯通しをしたジャーキーをチャーシュー代わりに乗せていく。

 

(どうしてもナルトがないとラーメンらしさが微妙なところだが、なんとなくの体裁はついたな…。)

 

 これも、みんなギルメン達と同じ会話を共有したいという欲求で、色々手を出していた結果、無駄に浅く広く知識だけはそれなりにあった。

 

 ヒーロー物は、なんかみんな同じようなものに見え、どれがどれやら…って感じで今もどのヒーローがどんな戦い方だったかも怪しいものだが、マンガだとかアニメだとか…ゲームとかはそれなりに…ゲームの方だけは知識の豊富な本人から借り受けることが多かったが、ソレの替わりはない、現物はそれだけだから取り扱いには注意してくれ!と言われると、気を使わざるを得なかった。

 

「まだエミュとかの方が、気楽に遊べたのにな…」

 

 ラーメンをよそいながらも、過去の記憶に想いを馳せる。

 

 そんなことを思い浮かべているうちに、よく読んでいたマンガの1シーンを思い浮かべてしまった。

 

 その決め台詞、言ったらどういう反応が返って来るかな? そんな子供じみた気持ちが湧いてきた。

 

 一通りの器に全員分のラーメンを注ぎ終え、人数分の「メロリーカイト」を箸休めに(…というにはちょっと頼りないが…)それぞれの場所に置いておいたポイントの横にラーメンの器を置いていく。

 

「さぁ! おあがりよ!」

 

 ドバンと、思いっきり自分だけの盛り上がりで、完成の意を告げると、みなは特に何もなく、それぞれ「なになに? できたの? な~にコレ?」とか「見たことないけど、ちょっと美味しそう…」など、分かっていた事だが、これと言ったリアクションはない。

 

「おあがりよ」という部分はちゃんと相手の耳に翻訳されていたのか、それぞれテーブルについて、みんなが食べ始める。

 

 

「もうちょっと、何かしらの感想は欲しかったけどな…」

 

 と、シュンとしながらボヤいていると隣のフレイラから小さい声でフォローが入る。

 

「大丈夫です、きっとみんな気に入ってくださいますよ…。」

 

(そうじゃない…ソコじゃないんだよな…ボクが言いたかったことって…、まぁでもせっかく娘が気を使ってくれたんだし、そういう事にしておこう。)

 

「あぁ、そうだね、ありがとう、フレイ…、さぁ!ボクらも食べようか…。」

 

「ハイ!」

 

 

                   ★★★

 

 

 

 ラーメンをすすりながら、時折「メロリーカイト」をかじるという…ある意味面白い光景が目の前で展開されている中、みんなそれなりに美味しいとは思ってくれているようで、途中でフォークを止める者は居ない、自分とフレイラは箸を使っていたが、その他のみんなは、フォークの方が使いやすいようだ。

 

「ところで、さっきは賑やかだったけど、何を話していたんだい?」

 

 不意にベルがフォーサイトの方へと話題を向ける、食べながら、男性陣は苦笑い、アルシェは少し不機嫌な表情を出していた。

 

「???」

 

 なんだろう…ケンカでもしたのだろうか…そう思っているとイミーナからラーメンをすすりながら問いかけられる。

 

「アンタさ…、久しぶりなのに正体を隠したまま、ずっとこのまま過ごすつもり?」

 

「なんのことだい?」

 

 そう返答すると、イミーナは不意に立ち上がり、声を荒げた。

 

「その仮面の下よ! ずいぶんガタイがいいとは思ってたけどさ、中身がアレなら頷けるってものよね…私もさっきの「水差し」を見るまでは思い出せなかったんだけどさ…けどもう言い逃れはできないよ?」

 

 そこで納得が行く、あぁ…それでひと悶着あったのか…と。

 

 

「そうか…ボクのせいでチーム内に不和が起きてしまったか…それは申し訳なかった、隠しておくつもりではなかったんだが、別段、波風を立てて引っ掻き回す趣味もないものでね…知らないままでいいなら、しばらくはそのままでいいかなって思ってたのさ。」

 

 

「良く言うわよ、アルシェにはちゃんと正体を明かしていたみたいじゃない? 私たちは信用ならないってことなんでしょ?」

 

「おいおい、イミーナ言いすぎじゃないか?」

 

「そうですよ、みな誰しも言いたくないことや言えないこと、言い出しにくい事というのはあるものではありませんか?」

 

 

「ロバーにヘッケラン、ずいぶんとこいつの肩、持つじゃないの…どういう風の吹き回しよ?」

 

 

「どういう…って、なぁ?ロバー…?」

「ですね、ヘッケラン、どうやら同じ気持ちの様ですね」

 

 

「なに2人で通じ合ってんのよ、わかるように説明してよ!」

 

 

 エルフの3人は特に何も言わず、静かに食べている、それぞれが無関心を装うようにテーブルから目線を上げようとしていない。

 

 ブレインだけが、ことの成り行きを気にしているようで、ちょいちょい顔を上げては話の内容に耳を傾けている。

 

 

「まぁ、確かに? イミーナの仮説が、本当ならそりゃ驚くことだろうけど…あの人が「アレ」だったからって、今はそれほど…なぁ?ロバー」

 

「そうですね、今となっては、それが果たしてそれほど騒ぐ程のことでしょうか?という感じもありますからね」

 

 

「どぉぉしてよ! なんでそんなに落ち着いていられるのよ!」

 

 

「だってイミーナはこの人が「アレ」だったからって衝撃で、それを受け止めきれてないだけなんだろう?」

 

「思い出してください、イミーナ、正体がどうのと考える前までは普通に接することが出来て、普通に相手もそれに応じてくれ、精神的な隔たりなど何もなく、同じ立場として接することが出来ていたのではありませんか?」

 

「そういうことだな…中身だの、正体だの…そういうのより、今までの彼の振る舞い、言動、気遣い、それらがまるっきり嘘だとは俺も思えない…、対等に付き合っていけるなら見た目は関係ないと思わないか? それはイミーナが一番身に染みて分かっている事だと、俺は思ってるんだが?」

 

 

 そこで少し、冷静になれてきたようで、ゆっくりと腰を下ろすイミーナ。

 彼女もハーフエルフとして、いろんな目で見られてきた歴史がある、本当の自分を見てくれる相手は砂の中の砂金を見つけるより難しいと思っていた。

 

 自分だって、自分を守るために相手をわざと遠ざけるような言い方をすることもある、傷つきたくないから、敢えてキツイ言い方をして相手から離れてくれるように仕向けたこともあった。

 

 でも、目の前のコイツはそうじゃない…さっき見た剣速だって、人の領域を軽々超えていたように見えた。

 

 魔法だってアルシェの言葉が真実であれば…いや、彼女の「目」が予測を外したことなどない…なら間違いなく第8位階まで使えるのだろう。

 

 そんな逸脱者すら、かすんで見えるような超人が、なんで姿を隠すことがあるというのか…そこが納得できないからこその反発なのだ。

 

 

 一人、納得できていないイミーナに対してか、全員に対してかは分からないが、ベルは一人言をつぶやいた。

 

「1つ、これは真実として受け止めてくれて構わない、というより嘘だとしか思えないだろうが…事実として君らがもうすぐ直面する現実という名の絶望が数えきれないほどの脅威として襲い掛かって来る未来がボクには見えるのさ、どうしても…こっちの世界に来て初めて通じ合え、会話が出来た、そしていろんなコチラの情報もくれた、その恩人に対して、なにか力になれるなら、それもいいかなと…そんな小さな望みを持ってしまっただけだよ。」

 

 

「はぁ? 私達を憐れんだってこと? ふざけないで! 私たちはこれでも名前の通ったワーカーよ?リーダーのヘッケランだって、まともに渡り合えるヤツなんてそうそうお目にかかれないんだから!」

 

「そうかい…それは、プライドを傷つけたならすまなかったね、では視点を変えよう…これからある例え話をキミらに聞かせた後、ある質問を問いかけることにする。 その時ボクは「この時、キミらはどうする?」と問いかける、それまでは状況説明だ、静かに聞いていてほしい。」

 

 

 

 

 その物語は始まった。

 

 

 

 

 とある場所に、ひっそりとそびえる過去の遺跡、外観は見るからに地下墳墓。

 

 その墳墓の地下は、一度深くまで入り込めば出ることは不可能。

 

 ドアを開けようとすると大きな口が襲い掛かるドア型のモンスター。

 

 本物のドアを探し当て、部屋に入ると転移の罠。

 

 見知らぬ場所に飛ばされれば、自分が今どこに居るのか、チームはバラバラなのか、揃っているのか、自分の置かれてる状況は…色々な判断材料を知るまでに挙動が遅れる…その間、墳墓に居る者たちはゆっくりとキミらを料理する方法を考えることが出来る。

 

 難度90までのアンデッドモンスターが自然発生する墳墓、それは尽きることなく、何度でも湧き出てきて、アンデッドの特性ゆえに疲労も何もない。

 

 とことん追い詰めてくる敵、少しでも倒すのに時間がかかると、物量はどんどん膨れ上がっていく。

 

 対して、倒せば倒すほど、そして、倒せなかったら倒せなかったで、キミらは疲労が溜まっていく、疲労が溜まれば攻撃力も機敏さも衰える。

 

 うまく自然発生する者らを退けて、奥に進めても、ソコには難度180など、子ども扱いな連中がゴロゴロしているエリア。

 

 難度200どころか、250を超えるモンスターも普通にそこいらを歩いている。

 

 運よく、それらをすり抜けて奥まで到達したとしても…そこに居るのは難度300に達する、その墳墓に於いて最強とも言える番人、守り人…守護者と呼ばれる者たち。

 

 しかもその墳墓は階層によって区切られている。

 

 フロアではないよ?

 10フロア分の地下ではなく、10の階層で分けられている伝説やおとぎ話のような世界の遺跡。

 

 そしてそれぞれの階層には、階層を守護する難度300の「階層守護者」がそれぞれいる。

 

 

 自分でも知る限り、「階層守護者」に限定しなくても難度300に達する者らは少なくとも8人より少ないことは無い。

 

 ひょっとしたらもっと居るかもしれない…。

 

 

 さて、そんな中、深い階層まで入り込んでしまったキミたちはどうする? 下手に動き回れば転移の罠でまた良くわからない場所に飛ばされる。

 

 飛ばされるだけならいいが、チームのメンバーがチリヂリに分けられて、無力化されてしまう可能性もある。

 

 飛ばされる場所は当然、初見の場所、当たり前だが地上までドコをどうやって進むのかなんて親切に教えてくれる存在など1つとしてない。

 

 そんな場所に入りこんだキミたちは、どのようにして脱出する手段を見出すのかな?

 

 

「…さぁ、もしこの「例え話」が現実として、キミらの目の前に展開されたら…それでも果敢に挑めるかな? キミらはどうする?」

 

 

 

「バカにしてるの? そんなの伝説やおとぎ話としても3流以下よ、攻略のしようもないじゃない…。」

 

 

「…そうだね、まさに「人を」小馬鹿にしたような場所だよね…でも、もしそこまでは行かなくとも、それに近い絶望的状況が初探索の…今まで未発見の場所なら…警戒しておくのは必要じゃないのかな? だからこそ、キミらにはせめて難度150程度までは行ってほしくてね、差し当たって、その前の難度90を目安に成長していってもらいたくて、こんな状況を作り出している訳なんだが…強くなるのには反対なのかい?」

 

 

「つ…強くなりたくないなんて、言ってないじゃない、それとコレとは話が別よ!」

 

 イミーナが顔を背けるようにして、それだけを言うに留める。 そこには文句はない様子だ。

 

「そうだね、それなら個人的なわだかまりは後にしておこう、何も今すぐどうこうしなくてもいい事だろう?まだ時間は8か月以上もあるんだから、のんびりと行こう。」

 

 

「まぁ、それでいいなら、ゆっくりとアンタのことは調べさせてもらうけどさ、それよりもさっきの言い回し、気になったんだけど、聞いていい?」

 

 

(ん?なにかしくじった言い回ししたかな? 変なこと聞かれなけりゃいいけど…)

 

「時々、『こっちの世界』っていう言い回しを聞く気がするんだけど、元々、どこ出身?」

 

(あ! …そっちか…まずい…どう答えたら…)

 

 チラリとこちらの様子を窺うように視線を向けたアルシェが、その言葉を引き継いでベルに言葉をかける。

 

「それは私も知りたいと思ってた。 ベルさんのアイテム類は、こっちの魔法では考えられない程の性能がある。 …かつて栄えていた、失われた超古代文明の、今とは独立した体形の魔法が使われたアイテムだったとしてもおかしくない…」

 

 

(それだ! ありがとう、アルシェちゃん、頼りになる!)

 

「そ…そうか…どうやら早くもバレてしまったようだね、そうさ…魔法実験の事故で飛ばされてこっちに来た時に、事故の影響でこんな姿になってしまってね…自分が持っているのはその時の手荷物なんだけどね、みんなその文明の遺産さ。 おそらくはもうあそこには戻れないだろう…。」

 

 

「そ…それは…ごめんなさい…魔法の事故でそんな姿になってただなんて…その、知らなかったから…」

 

 意外にもイミーナが素直に頭を下げてくれた。

 

(生まれ持った姿なら認められなくて、事故だとしたらすんなりと行くか…、彼女の認識はどこに重きを置いているか、よくわからないが、とりあえずアルシェちゃんに助けられたということは事実だ、そこはまた貸し1つ…あれ?借りの方だったっけ?、あぁ、いいや。)

 

 

「そこまで気にしていないからイイヨ、それより、洗い物でもしようか」

 

 そう言いながら、食器をまとめようとしていると「それは私が…」とフレイラに横から奪われる形となる。

 

(まぁ…いっか、それならこっちは、彼女に貸してみようかな)

 

「それじゃ、イミーナさん、コレ!」

 

 と言って、先程の「水差し」を彼女に貸してやる。

 

 

「え?これ? …て、え?」

 

「何か勘違いしてないかい?洗い物をする際に貸すだけだよ?」

 

「あぁ…そうか…そうよね…ははは。」

 

「ご存じの通り、そこから出る水は尽きることがないから、どれだけ水を流してもいい。

 だから、食器を洗うのに水をかけてあげる役目をお願いしていいかな?」

 

 

 

「え?でも水なんて、どこに流せば…」

 

 

「なに言ってるの? ちゃんとさっき水を流せる場所を提供してあるじゃないか…まぁ食器の洗い物をする場所じゃないけどね本来の用途は…。」

 

 

 とりあえず、先程、折れてしまったオリハルコンの剣を材料に使って<道具作成(クリエイト・アイテム)>を唱え、オリハルコン製の「水切りかご」を用意してあげる。

 

「水でゆすぎ終わったら、それに伏せておけばいいから…あとはやっておくよ」

 

「それじゃ、フレイ、みんなの洗い物の方、頼んだよ? 水を流す役はイミーナさんがやってくれるからさ。」

 

 

「承りました、では行ってまいります。」

 

 

(ん~~…なんか返事が重たい感じだな、もしかして、さっきのイミーナさんとの会話、根に持ってる?大丈夫かな? まぁ、カルマは善だから、滅多なことは起きないと思うけど…。)

 

 

 心配ではあるものの、命じた以上、うかつに女子用簡易組み立て式トイレには入れない為、ソワソワするしかない創造主であった。

 

 

 

 

 

 そして、洗い物も終わり、みんなが食休みをして居る間、ベルリバーは一人、扉の設定画面をもう一度確認をしに来ていた。

 

(手に入る経験値が2倍っていう事なのに、ずいぶんレベルの上りが渋い気がする…このままで順調にレベルアップが進むのか?)

 

 と、設定画面を開き、下にスクロールしていっても、別段、他の設定項目があるわけでもない…さっきもルチルがレベルアップしてるし、気のせいだったかな?

 

 そう思い直し、設定画面を閉じようとすると、設定画面の上方、右すみ、歯車のようなマークの右横に「▶」というマークが目立たないように出ているのを発見した。

 

 

(これか?これを押したら、何が出る?)

 

 いつもは画面の右下の「閉じる」という部分を押して、画面を閉じていたため、そこの発見に遅れたことを悔やみつつ、そのマークを押して右側に隠れていた画面を呼び起こす。

 

 すると、地味に重要な設定が隠されていた。

 

 それも…

 

「経験値割り振り率」という項目と「リザルト報酬設定」、「タイマー機能一時休止」の3つであった。

 

 

 

「経験値割り振り率」の項目を見てみると、「出来高率」で設定されていた。

 

 …ということはおそらくダメージを与えた者は与えたダメージの量だけ、経験値がもらえる。

 

 回復職はダメージの回復や、アンデッドに回復魔法でダメージを与えた数値分経験値が入る、もちろん最後のトドメを刺した1人が、敵を倒した際の経験値✕2の全部を独り占めにできる…。という概念なのだろう。

 

 道理で、支援メンバーのレベルの上りが渋いはずだ…。

 

 これは後で、みんなと相談して設定を変える必要が出て来るかもしれない。

 

 

 

 それから「リザルト報酬設定」の方を見る。

 

 すると「ドロップ設定ナシ」となっていた…道理で、何も落ちないはずだ…こっちの設定を最初から見つけてたら、なにかしら落ちているのだろうが…最初の3戦…とは言ってもサラマンダーは厳密にいえば倒したわけではないからな…リザルトも何もない。

 

 自分が召喚したハイコカトリスのやつも、倒したら元の世界に戻されるだけだ…倒されたと判定されるなら経験値も入るだろうが、もし「帰っただけ」と認識されたなら、トドメを刺したヘッケランに経験値は入っていないかもな…。

 

 同様の理由で、ドロップの方も多分、召喚モンスターでは発生しないかもしれない…。

 

 

 …そして最後に気になるのは「タイマー機能一時休止」だ。

 

 これはどんな時に使うのだろう。

 

 項目を指でつついてみると…

 

 一時休止、中断、カウント再開。 の3つがあるだけだった。

 

「一時休止」の設定を指で選ぶと、下の方に余白が現れ、そこに説明が表示されていく。

 

 どうやら、休止してタイマーを止めている間、自由に、外の世界と出入りすることが出来るらしい、しかし、この扉の内の世界に最低でも一人は残る必要があるようで、全員が出てしまうと「中断」とみなされる。 …と書かれてあった。

 

 

 そこで、「中断」を選んで、説明文を読む。

 

 すると案の定、今までの経験は獲得済みとして解決はされるが、残された未解決の時間数分は全て消失し、3回チャレンジできる権利の内、1回はまるまる権利の放棄をしたとみなされるということのようだ。

 

 

「再開」は、読む必要はないだろう…多分、休止状態から復帰して、タイマーが再び動き出すことを示しているのだろうことはまず間違いないだろうから…。

 

 

 

 以上の新しい発見を改めて知ったベルは、食休みで休憩時間をとっているメンバーの元に行き、経験の割り振りの設定の件から伝え始め、今のままでいいか、又は、各員均等の割り振りをされた上で、それぞれがその数値の2倍になるのがいいか…それとも仕留めたやつ、ダメージ与えたやつが中心に育つ方式の方がいいか?と、相談することから意見を交わしていた。

 

 

 

 




さてさて、こんな感じであとがきまで到達するまでの間に★3のガチャチケットを使い、15枚ほど使っていたら、エドストレームが追加で2体、奥義も2LV上がって、奥義3LVに。

そのついでにサキュロントも出てきちゃったのはご愛敬。


 今回は、小休止、人間である以上、戦っていたらお腹もすくだろうし…ということで。

 8か月も生活するなら、そのくらいの救済策は必要ですしね…ニワトリは居ないので卵は入手できないけど…、一応畑はあるけど、田んぼはないから小麦大麦、お米などはまだ難しい感じ。

 そのため、外に出て食材をゲットする必要も出てくるだろうことを加味して設定の追加。
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