気づいたら大自然 小心者の異世界闊歩   作:yomi読みonly

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みなさん、あけましておめでとうございます。

昨年の内には間に合いませんでしたが、年が明けた1日には43話の投稿ができました。
長い間、お待たせして、楽しみに待っていてくださった方々には申し訳ありませんでした

まだまだ失踪はしないので、大丈夫です。



第43話 みんなで特訓、レベリング![イメチェン、ブレイン]

 メンバー達は、この異空間での過ごし方も徐々に理解してきているようで、入り口だった扉の裏手に作った、人数分がきっちり座れる木製の横長テーブルに全員が腰かけ、ベルリバーこと、魔術師「ベル」の話を聞いていた。

 

 片側には左端からブレイン、ロバーデイク、ヘッケラン、イミーナ、アルシェ。

 

 その対面にはブレインの目の前にフレイラ、その隣にベル、そしてじゃんけんで勝ち抜けをして、ベルの隣をゲット出来てご満悦のディーネ、不満顔のセピア、一番遠い場所にルチルという位置取りで座っている。

 

「なるほど…そういうことだったのですか…なかなか難度が上がっている感覚が表れてこないと思っていましたが…そういう事だったのですね。」

 

 重い口を開くロバーデイク。

 

「しかし…経験値…か、そういう概念は今まで俺たちには無かったな、強い敵であればあるだけ、戦闘で得られる「自分の力量を引き上げる」段階へと至る為の点数稼ぎ、その点数というのが『経験値』というものに置き換えて考えていたと…、そして、満了状態に至る度に難度は引き上げられていく…か、今までザコを何人切り伏せても強くなった実感が得られなかったのはそういう事だったか。」

 

 かみ砕いた説明をしたベルの話を咀嚼するように自分の認識とすり合わせを行いながら口に出すブレイン。

 彼なりに思うところはあるようだ、少し思案しているような表情を浮かべていた。

 

 

「それならパパっと強いやつと連戦すれば…なんてお気楽に言える状況じゃないね、それっていつも死と隣り合わせで勝ちをもぎ取るギャンブル性の高い成長の仕方じゃないの?」

 

 そう口を開いたのはイミーナ。

 彼女の言う事ももっともだ、今言って聞かせたのは「ユグドラシル」というゲームの中での話、あの中では、戦闘によって死んでしまおうが勝手に蘇る。

 

 しかしそれはプレイヤーの持ち金が半額になるというかつてのアナログゲームのような軽い処分より、レベルダウンという重い処置により、勝手に蘇生される世界での認識、戦い方なのだ。

 

 一度、死んでしまえば二度と生き返れない可能性の高い(蘇生魔法の使い手が極端に少ない)この世界では、その戦いで連戦連勝するには、なかなかの強さと、適切な攻撃手段、チームワーク、アタッカー、タンク、回復(ヒーラー)、遠距離攻撃、支援、特殊担当(ワイルド)らと言った役割をこなす者達との連携がどう取れるかによって生き残れる可能性がグンと上がる。

 

 そういう戦いができない場合、連戦して、確実に生き残れる可能性という希望はかなり低くなってくる。

 

 そういう点に於いては、チームワークを是としない…1人で戦ってきたブレインは思いっきり不利な状況だということを目の前に突き付けられてしまったことになる。

 

「私たちは結局、3人とも前衛向きの構成ではありませんし、ブレインさんはブレインさんの好きな戦い方を選択してもらって、私たちはそれに応じたフォローをする、そういうやり方もアリなのではないかと思いますよ?」

 

 と発言したのはエルフ3人娘の一人ルチル。

 

「そうですね、野伏(レンジャー)兼、魔法詠唱者(マジックキャスター)…そして神官(クレリック)の私、そして森祭司(ドルイド)の3人構成ではなんとか戦えそうなのは神官だけ…それでも専門職として経験を積んでいる純粋な戦士には戦力としてはあまりに頼りない程度の戦力でしかない以上、ブレインさんが居てくれることは私たちにとっては助けになってます。」

 

 今までの戦いでも、チームワークという高いものではないが何とか「足並みをそろえる」努力を3人がしていたお陰で、レベルの高いモンスター相手と渡り合うことが出来ていたのも、ベルからもらった装備の力もあるが、もちろんそれだけではなく、前衛を務められるブレインの存在は大きいと、エルフたちはみんなが同じ認識で共通していた。

 

「それはそうと、私はまだその「ケイケンチ」というものの振り分けられ方についていまいちピンとこないんですが、わかりやすく説明してもらってもいいですか?」

 

 そう発言したのはセピア、普段はお茶らけていたり、はっちゃけて居るイメージもあるが、最近になってわかったことだが、彼女はそれなりに危機意識というものに重点を置いているようなのは見て取れる。

 

 不透明な希望にすがるよりも、確実な危険を排する方に意識を持って行く性質なのだろうか?と思うことがある、それも彼女がこだわって、取得する攻撃手段を「炎系の魔法」に寄せているのもきっと彼女なりに思う所はあるのだろう。

 

 「ユグドラシル」でも一番最初に対策をとれるようになるのは「炎対策」と「移動阻害対策」であるため、炎は確かに威力こそ安定しているが、防がれる可能性も高い。

 そのため、炎特化で成長させるより、対策された場合のことを考えて別の魔法を取得させた方が後々になれば窮地を突破する一助になる日も来るのだろうが、そこまでのレアリティのマジックアイテムが出回っていないこの世界なら、プレイヤーと戦うとかの機会がない限り、完全耐性で無効化されるような事象はまず起こるまい…とベルはその危惧を頭の隅に追いやる。

 

 (一番心配なのは、プレイヤーじゃないけど、NPCとしてかなり強めに設定されたビルドで構成された守護者たちとか…シモベ勢なんだよな…、まぁ、今はそんな先の話より、POPモンスターを圧倒できるくらいのレベルになってもらわないと心配でしょうがないからな…それなりに現地民としては「価値」があると思ってもらわないと、アソコの者らに認めてはもらえないだろうし…。)

 

 と、少し物思いに浸りながら、懐からとある駒を取り出す。

 

 ユグドラシル時代、低レアリティで手に入ったアーティファクト。

 

 もっと言えば、戦闘ばかりではなく遊びにも楽しみを見出してほしいという運営からの計らいにより、実装された娯楽ゲーム。

 

 その中には定番のオセロや、将棋、といった対戦方式の物ばかりではなく、ヨーヨーなどと言った物から果てはルービックキューブなんて言う一人でも遊べる歴史遺産的なおもちゃまで色々であった。

 

 そのうちの一つ、チェスで使われていた駒、「ポーン」を10個取り出し、テーブルに置いていく。

 

 

 

 並べる中で、とりあえず、割合を8:2にして、テーブル上に並べた。

 

 そこで疑問を口にしたのはアルシェである。

 

「ベルさん…それ、なんで2体だけ別?」

 

 

「あぁ、それはね…さっき経験値の割り振り方で、設定の確認をしてみたんだが…どうやら僕とフレイラはこの部屋に入る頭数には入っているようだが、経験値の割り振りとしての頭数には認識されていないらしい。 『どのような割り振り方にしますか?』という問いかけに対して示された提示は、最大8名…つまり、ボクとフレイラを除くみんな、ということになる…まぁ、色々な事情によって、私たちは今以上には強くなれない…とはいえ、直接的に戦闘を経験することによって、戦い方の幅を増やすこと自体はできるようになると思う、そういうのはどうやら「経験値」とはまた違う扱われ方のようだ。」

 

 

「そう…それは残念、ベルさんと一緒に強くなれれば嬉しいと思って居た。」

 

「ありがとう、その気持ちだけで嬉しいよ、でもキミ達は、同じチームメイト同士、より高いチームワークを磨くことを第一に考えていてくれた方が、ボクの方も安心できる。 だからそうしてくれないかな?」

 

「…うん、わかった、ベルさんがそういうなら、そうする。」

 

 

「…アルシェ…あんた、変わったね…って、無理もないか…今はもう、妹たちしか残されてないもんね、さすがにそれだけじゃ心が疲弊するし、どこかで安心できる相手は必要…ってことね。」

 

 

「とりあえず、そこいら辺の話は置いておいて、説明に入ろう。」

 

 そう言って、8個の駒をテーブルに均等に並べて、説明に入る。

 

「今までは、「出来高制」という設定だったから、多分だけど、『トドメを刺した者』、『ダメージを与えた者…そのダメージ量の大きさに応じた経験値の分配』、『状態異常や、デバフに成功した者』、『バフや支援に行動を寄せていた者』…という優先順位でそれぞれ経験を割り振られていた感じだったと思ってほしい。」

 

 

「さすがに、どれがどのくらいの割合で…っていうのは目に見えてわかるわけじゃないってことだよな?」

 

 話を聞きながら、ヘッケランが確認を取る。

 もちろんプレイヤーであった自分でさえ、どのような割合で配分されているのか、認識しているわけではないので「その通りだね」と答えるしかできない。

 

「今言った優先順位も恐らくは、というボクからの「仮説」の域は出ない、もしかしたら、支援とかバフには経験値が割り振られていないかもしれないけど…、多分、回復とかデバフには経験は割り振られているだろうというのは8割くらいの核心はあるけどね。」

 

 

「そうですね、ワタクシの時も、畑を作る魔法を使った際、難度が上がって、魔法を覚える機会はありましたし、職業の得意分野とする行動には経験値というものは割り振られると思いますよ?」

 

 情報の確実性を後押ししてくれるルチル、その言葉を聞いたメンバーは一様に頷いて、納得してくれたようだ。

 

「それで、例えば自分よりレベルが上のモンスターを出現させ、倒した時の経験が100もらえる計算だったとしよう」

 

 そこで、一体のポーンを一番前に出し、「こいつが最後のとどめを刺した者だとすると…ゴメン、セピア、これに数字を書くのを頼まれてくれるかな?」

 

 そう言って取り出したのは、前にも使ったメッセージボード。

 

 帝国式の数字を一桁なら問題ないが、3桁ともなるとベルには自信がないので…あくまで助手として、詳しい説明を求めてきたセピアにもよくわかってもらえるようにと、間近で聞いてもらうことにする。

 

 助手として、ボードに数字を書く必要があるという事はちゃんと間違えがないように数字を聞き逃さないようにする必要がある、という名目を免罪符にして、ディーネとベルの間に強引にお尻を割り込ませ「ごめんあそばせ?」とセピアはわざとらしく勝ち誇った顔をする。

 

 少し残念そうな顔をしたディーネだったが、この説明が終われば元の位置に戻るだろうと、自分を納得させたようで、素直に座る位置を交代させることにしていた。

 

 

「多分、最後に倒した一人は半分の50%、つまり経験が50入るんだと思う。」

 

 そういうと、メッセージボードに矢印を書き込み、その矢印の先に先頭に出したポーン、そこに50という数字を書き込んでいく、ベルは書くことには自信がないが<言語読解(リードランゲージ)>の魔法で読むことには自信があるので、ちゃんと書いてくれてることに一安心する。

 

「さらに、ダメージを大きく与えていた直接攻撃役、遠距離攻撃、範囲魔法での<軽症治癒(ライトヒーリング)>)や、接触しなくても発動できる<中傷治癒(ミドルキュアウーンズ)>などでのダメージ(対アンデッド戦闘のような…)と言ったものが発生した場合、ダメージの大きさの順番で残った50の中から更に、4割、2割、2割、2割となって行くような感じだろうな…。

 

 だから、トドメを刺した者はこの場合、経験が数値にして50手に入る。

 

 それで、残った50の中から、一番ダメージを与えた者に4割の20。

 

 …もしここで、ダメージを与えた者で、2番目に大きい者が居て、数値がかろうじての差しか無かったりしたら、想像だけど…そこから更に6:4…つまりは『20から6:4に分ける訳だから…12の8ってことになるのかな?

 

 そういう割り振りかもしれない。

 

 次に『状態異常や、デバフに成功した者』は、2割の10

 

 そして、『バフや支援に行動を寄せていた者』が2割、同じ10

 

 さらに回復や、直接戦闘に参加はしていないが、アイテムを使ったり、指揮官的に行動ボーナスを与えたり、魔法詠唱のキャンセルの手段に集中する役目を担当した者など、チームメイトではあるが特殊な立場の者には2割の、経験値が10…という感じだろうか。」

 

 

「かなり幅があるな…これじゃ、いつまで経っても戦った相手との差の割に貯まる経験の数値が少なく、貯まっていかないんじゃないか?」

 

 渋い顔をしたヘッケラン、それに対してベルも返答を返す。

 

「もちろん、これは「仮に経験値が100もらえる敵だったら」という例え話だ、しかも、この通りの設定とは限らないし、今、この空間は『青の扉』の中だ、もらえる経験値の量は、さらに倍になってるはずだよ。」

 

 

「それで?それを均等割りにすると…どうなるんだ?」

 

 結論を急がせるようにブレインが問いをベルに投げかけた。

 

「そうだね…仮に100の経験がもらえる敵を倒した場合、それを8人で同じ数字にして行く訳だから…全員で経験値が12.5、そしてそれの倍になるから、どんな戦い方でも25の経験値が割り振られることになる…かな?」

 

「そうなると、今の状態では2割の後方支援で、倍計算で20、均等割りだと全員が25…、だが出来高制だと、後方に居る者は支援だけだと20だが、大ダメージを叩き出すことが出来れば、もっと経験値が上乗せされる可能性は充分にある。」

 

 そこまで話を聞いていたブレインが総合した内容を整理して話していく、そうすると、さらにそこに付け加えるように言葉を引き継いだヘッケランが言葉を続けていく。

 

「そうだな、となると、均等割りという設定にすると、どんなに大ダメージを出しても均等に25しか経験は入ってこない、その代わり、今の設定のままなら、一番大ダメージを与えることさえ出来れば、そいつの方にガツンと経験は入ってくる。」

 

「もちろん、さっき見た限り「カスタム」という内容を見た範囲では、人数指定も出来た、例えて言うなら『出来高1:均等7』といった感じかな? そうすることも出来そうだ。 でもそうなると、出来高制の人間は、もしも均等割りのメンバー以上のダメージを出せなかった場合、今回の例で言うと、2割分を2倍した20しか入らないことになるかもしれない。」

 

 一同が悩む、というより一番悩んでいるのはブレインだ。

 

 今までの自分の生き方では自分が強くなるためには自分自身の鍛え方が大事であり、自分が先頭に立って戦い、相手を負かすことで、より高みに上がれると信じて戦ってきた。

 

 なのにこの場に来て、この状況である。

 

 もちろん、大ダメージを出せればいい訳ではあるのだが…、さっき見た限り、宙から降ってくる隕石、炎の柱を立たせることが可能となった二刀使い、雷の矢を出せるようになった女の子…。

 

 とても今の自分では、あれ以上の攻撃を出せる自信は無い、悲観ではなく、現実的に見てもそう判断していた。

 

 そして、さっき口では言わなかったことだが、その設定で均等割りを選んで戦うことになった場合、もちろん、他人のおこぼれで強くなるという道は、何があっても遠慮願いたいブレインの考えからすれば均等割りは選べない。

 

 かと言って、出来高制でも、もし、前衛だろうとダメージを大きく出せなかったら扱い的には「アイテム等での支援役」という立場と(経験値的には)変わらないのだ。

 

 

(どうする…俺の信条としては、自分だけの努力、経験、積み上げ、特訓、生死をかけたギリギリの攻防から得た全てで力をつけていきたい…だが、この世界…というよりあのメンバー達と比べれば自分は明らかに力不足…、ならどう補う…?)

 

 そこでブレインは、はたと気づく、今まであまりにも本人が当然の様にさりげなさ過ぎたため、すっかり見落としていたことがあったことに…。

 

(そうだ、ベル…あいつは会った時から、訳の分からない力があったし、俺の知識にもない、知らない魔法も使っていた…今回の3つの扉を出したあのアイテムだってそうだ…雷の矢を撃ちだせる鎧も、ベルがフォーサイトに渡したモノだし、二刀使いが炎の精霊を武器に宿すことになったのも、ベルが手助けしていた。もしかしたら、今回の難題も解決できるアイテムなりなんなりを出せるんじゃないだろうか…?)

 

 と思うも、そこで一つ考えるべきことがある。

 

 その代償をどう支払うかだ…、散々頭を悩ませたあげく、藁にもすがる思いで、一つの結論を導き出す。

 

(これで、それじゃ足りないなと言われたら…自分の素の力を底上げしていくしかないか…自分自身だけの特訓、訓練で…!)

 

 

 そう判断すると、ブレインはこう切り出す。

 

「俺は他人のおこぼれで勝手に強くなるような…そんな成長の仕方は御免だ、他のみんなはどう思うかわからないが…俺は今まで通りの「出来高」の方でいい。」

 

 そう言うと、感心したようにヘッケランがブレインを称え始める。

 

「お!さすがブレイン、やっぱりお前はそうじゃないとな、自らの力でのし上がる、お前のその姿勢、嫌いじゃないぜ!」

 

 そこで、今までずっと黙って聞いていたフレイラが話を変えるように口を開く。

 

「ところでベル様、もしよろしければ、この辺で少し腹ごしらえでもされてはいかがでしょう?話もとりあえず皆さんの中で結論を出すのはもう少し考えてからの方がいいでしょうし…急がずに、小腹を満たした方がより落ち着いて考えもまとまるのでは無いかと愚考いたしますが…?」

 

 

 そう言われて、ベルもそれに頷く、なにしろ食べる必要も疲労も関係ないアイテムを身に着けているとは言え、他のメンバーはそうではないのだ、疲れもするし、眠りも必要だし腹も減る。

 

 そういう時間くらい必要だろう。

 

「そうだね、とりあえず、ちょっとした軽食タイムと行こうか。」

 

 何かを思いついたようにベルが立ち上がろうとする。

 

 

「あの…マ…いえ、ベル様、どちらに?」

 

 じっと見守っていたフレイラが自らの主の挙動に素早く反応する。

 

 

「あ、いや、食材でも畑から取ってこようと思ってね、この前、畑から野菜を引っこ抜く時、折れちゃったからさ、今度はうまく抜けるように経験を積みたいのさ。」

 

 レベルが100である状態で、戦闘以外でも生活面で磨ける要素はあるのだろうか…それとも全く磨けないのか…疑問が晴れないままココまで来てしまった。

 

 モモンガさんは、冒険者として…モモンとして動いている中で剣の使い方や身のこなしなんかは「日常動作」の延長として自分の技量にまで引き上げていると、以前に夜通し話をしたときに聞いたが…自分はどういう部分が、それに当たるのだろうと、試してみたい気持ちがずっとあったものの、それを実行する機会がなかなか訪れなかったのだ。

 

 せめて、野菜の引き抜き方くらいは日常動作の延長として、昇華させていきたい。

 

 そう思って居ると即座に自らの娘、フレイラに制されてしまう。

 

「いけません! そのような誰にでもできるような雑事、御身がされることはありません、その程度の事、どうぞ私にお命じ下さい! 主の助けになれる様、務めに励むこと、それこそが私の使命、どうぞいかようにもこの身をお使いください」

 

(フレイ…気持ちは嬉しいが、キミだって「ファーマー」のレベルは持ち合わせていないだろう?ボクと似たような状態で引き抜く感じになるんじゃないか?)

 

 ベルはそう思いつつも周りを伺うと、ただ野菜を取りに行くだけだと言うのに、まるで緊急事態の様に顔色を変えて止めようとするフレイラの行動と口調に、一同はかなり引いていた。

 

(今までも彼女の言動から、みんなも慣れてくれてるかと思ったが、やはりこの温度差はNPCと現地住民とではかなり開きがあるようだ。)

 

 少し視線をずらし、ルチルの方へと目を向けるとルチルもそれに気づいたようで、軽く顔を縦に動かし、こちらの意図を汲んでくれたようだ。

 

 すっと立ち上がり、先ほどの烈火のような勢いのフレイラの言葉とは真逆の、穏やかな水面のような優しい言葉で周りに提案を持ち掛ける。

 

「みなさん、せっかくこの場を用意して、テーブルから何から準備してくれているベルさんばかりに何でも先を越されてはワタクシどもの立場がありません、どうでしょう?ベルさんにはここでゆっくりしていただいて、私たちも少しお手伝いなど買って出てはいかがでしょう? もちろん、森祭司(ドルイド)であるワタクシも僭越ながら、この不詳の身を動かすことに抵抗はありませんが、皆さんはいかがですか?」

 

 そう改まって言葉にされると、確かに自分たちは、かまど代わりとなる石の台など、火をくべる場所を作っただけだ。

 この異様な空間に来てから、主導権はベルにずっと握られている気がする。

 

 

 そう気が付いた面々は、それぞれが立ち上がる。

 

「そうだな…俺だって元々は商人の出だ、四男坊とは言え、商品となるような物の扱いはそれなりってところを見せてやらなきゃな!」

 そう発言したのはヘッケランだ、実家が商人なのはチームメイトも知っていることなので、大したことはないが、実際、帝国で戦争を王国に仕掛ける際、兵糧としてあらゆる食材の扱いを複数の商人たちと都合している内の一家であったことは事実なのだ。

 畑から野菜を引き抜く扱いくらいは造作もないと言えた。

 

「そうね、私なんかは戦闘でもあまり活躍できてないし、ここいらで何かしておかないとさすがにいたたまれないわ。」

 

 レンジャー持ちのイミーナも立ち上がる、森での活動を得意とするイミーナが居れば、畑から食材を引き抜いてくる程度の作業、捗るだろうことは疑いようがない。

 

 

「私はこれでも、辺境の地で人の役に立てれば…と思うことも時にはあるのでね、それなのに土仕事もできないのでは、仲間入りは難しいでしょう、ここらでそういう体験をするのもいい経験となるでしょうね、力になりましょう。」

 

「……私は元貴族だから、土仕事の方は自信がないけど…みんなが加わるなら…私も何もしない訳には行かない…行く。」

 

 アルシェもゆっくりと立ち上がる。

 

 

「ホラホラ、あなたたちも、言い出しっぺの私たちが先を越されたら面目丸つぶれよ?」

 

 ルチルが、ベルの隣から動きたがらないセピアと、セピアが動いたら元の位置に戻ろうと狙って動けなくなっているディーネに行動を促す。

 

 

 すると、静かに立ち上がったディーネが冷ややかにセピアを見下ろしながら

「…仕方がないですね、行きますよセピア? …まぁ貴女だけベルさんのそばに居続け、「いい加減うっとおしいな」なんて思われても私はフォローしませんよ? それでも良ければその場でゆっくりしていらしたら?」

 

 

「あ、ひっどぉ~い、違いますぅ! そんなんじゃないですぅ! ボードに説明書きをするお手伝いをしてただけですから! そういうんじゃないですから!」

 

 そう、思いっきり言い訳じみた理屈で自分をごまかし、セピアも立ち上がる。

 

 もちろん、そういう状況下でみんなに先を越されては言い出した自分の立場がない、とばかりに足早に動き出したのはフレイラだ。

 

 もちろん、先を急いで争っているわけではないが、なんとなくみんなが急ぎ足になっているのは競争意識というものだろうか…。

 

 

 

 そして、ポツンと残された、ブレインとベル。

 

 

 そこで、周囲のみんなの目が離れたことでやっと言い出せなかったことが言い出せると、ブレインがベルに話しかける。

 

「ベルさんよ、ちょっと頼みたい…というか、もしそれが出来るなら力を貸してほしいことがあるんだが、聞いてもらえるか?」

 

 急に話しかけられ、ベルの方も座り直し、居住まいを正す。

 

(いきなりなんだろう…今まで自分の力だけで実力をつけていきたいと言っていたこの男が、自分にどんな願い事だ?)

 

 ベルは心当たりがないな…と思いながらも、ブレインの言いたいことに興味があり、先を促す。

 

「もちろん、構いませんよ? ボクにアングラウスさんの望みを叶えられるだけの力があるかどうかは別問題ですが…話を聞くだけなら支障はありません、聞かせてもらうとしましょう。」

 

(なんでも言って下さい、とか言って、「それは出来ないです」なんて答えることになったら格好悪いからな。ここは無難に話だけでも聞きましょう、という姿勢で居よう。 どんなこと言い出すかまだ分からないんだし…。)

 

 

 ブレインが言い出しにくそうに重い口を開いていく。

 

「実は……、最近、周りのみんなの伸びしろがえらい勢いで上昇してるような気がしてな、ハッキリ言って自分だけ置いて行かれてるような感覚を覚えてるんだ。」

 

(あぁ~~…そうだな、アングラウスくんは「自力で強くなる」って公言してたから、アイテムとか装備とかそういう効果で強化されるのイヤなのかと…ストイックなのかと思ってしまっていたが…さすがに急成長する者らを見ると、焦りが出てくるんだろうな…。)

 

 実際は、レベルの点で言うならブレインの方が圧倒的に上なのだが、装備の点で電光の矢を出せたり、主武器に炎の精霊を宿らせたりっていうのは、目の前で見てると羨ましい部分はあったのだろう。

 

 何しろブレイン自身、別にアイテムの力で強くなるという手段に抵抗がある訳じゃない、露店とかマジックアイテムを置いてあるような場所に出くわせば、立ち止まってあれやこれやと品定めをして購入することもあるくらいだからだ。

 

 もちろん「起動1」と「起動2」で、効果が表れるように設定している自らの装備品もマジックアイテムだ、自分が強くなるためなら、装備の力で実力が底上げされることに抵抗はない。

 

 だからこそ、ベルに聞いてみたかったのだ、何かないか…と。

 

「だから、その…、アイツらみたいに…って言いたいわけじゃないんだ、装備の力だけで強くなってもそれは道具自身の強さであって俺の力じゃない、身にそぐわぬ程の武器を持って、武器に振り回されるのは御免だ、だからと言って、強くなれないまま足踏みをしている自分も許せない、だから、何が言いたいかって言うと…。」

 

 ここでブレインは言葉を選んでいるかのように少しの間、口をつぐむ。

 

 そこで思い切ったように言葉にしてベルに告げる。

 

「武器の力だけで攻撃力をあげてくれってワケじゃない、防具でダメージを受けないくらい強いのをっていうのも望んでいない、今以上に…そうだな、アンタの言う…「ケイケンチ」ってものを効率的に身に着けていく方法はないだろうか…?」

 

 

「…ん~~…そうだね、無いこともないが…これは一個しかないからキミにあげるわけには行かない、ゆくゆくは返してもらう必要があるんだけど…くれぐれも無理をして途中で命を落とすことがないようにしてくれ。」

 

 そう言いながら、懐に手を突っ込んで、ローブの中でアイテムボックスに繋がる異空間を発生させる。

 

 そこで引きずり出したのは…仲間と一緒に行動して、フォローしてくれなければとてもじゃないけど戦闘で使う気になれなかった物、しかしこれの恩恵はかなりありがたかった、反作用…デメリットも相応だったが…。

 

 テーブルにゴトンと置かれたのは一つの首輪、ペットの…というよりは明らかにドレイか何かの首に着けて引きづり回しそうな見た目で、できれば装備したくないような外観をしている。

 

「…まぁ、アングラウスくん…キミのその表情で、どういう心境かはボクにもわかるつもりだ…ボクもかつて、これを使っていたが、正直使い勝手のいいモノでは無い…しかしこのアイテム以上に今のキミの要望を叶えられるアイテムという物は他に持ち合わせがないというのも事実なんだ…説明だけでも聞いてもらいたい。」

 

 そう言って、一通りの説明をする。

 

 ユグドラシルでのステータスは細かく分けると「10」の種類があった。

 

 それらはそれぞれ…

 

・力(物理攻撃力に影響、高レアリティなどで重量が高い武器を持てるかにも作用)

 

・体力(HP、物理防御、総合耐性などに影響)

 

・知恵(魔法を取得するレベルまたは威力、知識を必要とするスキルやクラス取得に影響、符術師などの精神操作系などに大きく作用する数値、全般的に「知恵の数値の半分」を基準としたボーナスが魔法防御や、あらゆる耐性に加算される)

 

・信仰心(神官系のクラスや、森祭司などのクラスに必要なステータス、耐性や神聖属性からの防御、威力上昇にも左右)

 

・魔力(魔力系魔法詠唱者にとって必須な数値、魔法防御や、魔法攻撃力にも影響。)

 

・加護(物理防御以外の防御の数値に影響、魔法防御へのボーナスや、精神抵抗値、各種耐性、回避などにも影響)

 

・敏捷(素早さを必要とするクラスには必須、忍者や盗賊、レンジャーなど、魔法を使うものも、これがないと敵の行動に先を越される。)

 

・器用(武器の扱い、鍛冶職の成功率、アイテム作成時の完成度合に作用、武器での受け流しや連続攻撃系のスキル取得にも影響)

 

・運 (総合的な運、チャームや、支配、戦闘時の回避や、武器作成の完成度など、多岐に渡るが何に左右してるか全く説明は運営からもされていない。)

 

・特殊(全ての耐性が基本として加算される、それ以外にもPCアバターごとに定められた隠しパラメーターとして、ある条件を満たすと個別に、とある恩恵が発動することもあるが、なにが設定されているかは「隠し」なので条件が満たされなければ、永遠にわからない可能性もある。)

 

※書籍版(小説)の巻末に乗っているステータスにある「特殊」とは別扱い

 

書籍版の「特殊」は結果として、総合的な数値を計算した後での数字の大きさ。

ステータスの全ての数値にそれぞれ影響を及ぼす、どう影響しているかは不明。

 

上記の「特殊」はPCキャラ個人個人に割り当てられたもの、隠し要素なので、クラスに影響するか、特定のスキルか、特定の種族を選んだ時のみ発動するか、可能性は無限にあり、数値が上がれば可能性も増えるが、隠しなので、なにがいつ増えたのか、全くステータス画面から窺い知れることはない。

(習得することができれば、プロフィール画面から見ることは可能)

 

 もちろん、「書籍版」の『特殊』の要素も含まれているので、数値が大きければ各ステータスの加算もある。 

 

 運営曰く、各PCキャラ、それぞれ一体には必ず、ランダムに割り当てられているという説明はある、が、キャラごとに違うので、満たされる条件が一定の数値とも、レベルとも限らないので、確証はない。

(条件が満たされたら「特殊の条件が満たされました!「〇〇の●●を取得しました」とか出てきたという噂はwikiで見かけたことはあるけど…眉唾だったな…。)

 

 

「つまりはだね…今言った10のステータス、力、体力、知恵、信仰心、魔力、加護、敏捷、器用、運、特殊のそれぞれから、どのくらい負荷をかけるか…つまり簡単に言うと弱くさせるか…の割合で、自分が身に着けていく経験値の取得率が変わっていくアイテムがこれなんだ…。」

 

 

「つまりは、これを身に着けて、どれだけ弱くすりゃどのくらいまで経験を多くできるんだ?」

 

「最大で、全ステータスを半分にまで少なく出来る。一つの項目を1割弱くすれば、取得経験値が1%分上昇する、だから10種類全部を1割、弱くすれば獲得出来る経験は、1割多くなる。全部の項目を半分にした場合、5割減るわけだから、獲得する経験は1.5倍になると…まぁそういう事だね。」

 

「大きいの…か? それは…」

 

「人それぞれの認識によるだろうね、例えば自分より難度が10上の敵を倒す時、普通は100の経験がもらえる物だと仮定して、それが150もらえるとなったら…他のメンバーが2体倒して200の経験なのに対し、アングラウスくんは300、一体分、倒していないはずの敵との戦闘経験が積めているということになる。」

 

「そうか…それは大きいかもしれないな…しかし、今の自分よりも半分の力しか出せなくなる…守りも素早さも半分になる…か、かなり厳しい戦いになるのは確実だな。」

 

「そこは今までのキミの技量次第さ、さすがにフェイントの成功率だとかまで半分になることは無かろうし、敵との駆け引きとか、判断力なんかのインスピレーションまでは半分にはならないだろう。」

 

「いん? すぴ? …なんだって?」

 

「あぁ、悪いね、母国語で言ってしまった、つまりは直観力の事さ、いざというとき『これはヤバイやつだ』っていう本能的な危機察知能力までは低くなることなないだろうということさ、生命として持っている根源的な能力までは弱体化はされないと思うよ?」

 

「そうか…それはかろうじての救いかな…、それがあるだけでもかなり違うだろう。」

 

「とは言え、アングラウスくんの武技である<領域>、あれはいいね、敏捷と器用の低下で命中率が低くなっても<領域>の効果で、それを補うことが出来る。さらにはキミにはまだ〝隠し技″…持ってるんだろ?」

 

「なんだ、アンタにはバレていたのか…うまくごまかせていたと思って居たんだが…」

 

「今までの格上の戦闘でも、あまり追い詰められてる素振りがなかったからね、いくつか奥の手はあるんだろうなと予測はしていたのさ、見事に当たってくれてホッとしているよ。」

 

 

「とは言っても、これはさすがに見た目、どうにかならないか?身に着けるのはどうも…抵抗があるぞ?」

 

 

「ん~~~…そうは言ってもなぁ…」

 

(確か、アイテムの外装の変更は…いくつか条件があったはずだ、一つは自分の拠点、ギルドやクランに未所属の場合は、自力で購入した隠れ家や、ホームグラウンド、洞穴なんかのパーソナルスペースに設定した空間で、落ち着いて作業できる空間が必要だったのが一つ。

 それとは別に、ギルド拠点や、クランの集合ポイントに立てた敵対勢力に見つからないよう設定された施設などで、材料とかユグドラシルコインとかを集めて、鍛冶技術をもつプレイヤーと一緒に作るか…

 

 そうでなかったら、手持ちの材料と、ユグドラシルコイン、外装に必要な素材を用意して<上位道具創造>(クリエイト・グレータ-・アイテム)を使うしかなかったな…選べるのはこの3つの手段の内、一つしか選べる道はないか…)

 

「まぁ、わかった、アングラウスくんに抵抗がなく、似合うような外装にしてちょっとおまけもしてあげよう、でもそれはちょっとだけ時間をくれないか? 食事を終えたくらいには渡せると思う。」

 

「あぁ、わかった、よろしく頼む…、コッチもちゃんと、どのくらい動きに制限をかけるか…決めておかないとな…いろいろと考える時間は欲しいからな…、あぁそうだ、ちなみにそれは設定の変更は可能なのか?」

 

「あぁ、もちろん、一度身に着けて、設定した制限は装備してる間は変えられないけど、装備を外し、身に着け直せば、新しく、細かい設定は可能だ…だけど、それは戦闘中にはオススメしないから、注意してくれ」

 

「了解だ! 今の話は皆には内緒にしておいてくれないか? さすがに今まであれだけ大口叩いてたのに、結局ベルさんを頼っちまったんじゃこっちも気分的に開き直れるほど図太くないんでな…その代わりと言っちゃなんだが、俺のことはもう、ブレインでかまわん、こんなに世話になって、まだ他人行儀とか…さすがにそろそろ打ち解けてもいい頃合いだとは思って来てたからな。」

 

 

 

 そう、彼が用意していた代償と言うのは単純な話で、報酬とかの金銭で、ではなく、「呼び捨てにしていいから」何とか出来ないか?

 

 という取引にもならない取引に持ち込んで何とかしてもらおうという思惑だったのだ。

 

 

 

「わかりました、それではブレインさん、よろしくお願いしますね。」

 

「ブレインさん…か、まぁ今はそれでもいいか…、まぁよろしく頼むよ」

 

 

 そこまで話をして時点で、みんなが畑で育てた食材を持って、ぞろぞろと戻ってきた。

 

「フレイラさんが、引き抜く姿、まさかあんなに苦手だとは思いませんでした、大丈夫でした?」

 

「私もまだまだ修行が足りません、御方のため、もっと尽力できる様、努力を重ね、精進しなければ…」

 

「まぁまぁ、出来ない作業は出来る人がフォローしましょう、その為に私たち3人がベルさんのそばにいるんですから…戦闘ではお二人の足元にも及びませんけどね。」

 

「あぁ!ブレインさん、なにしてるんですか?一人でくつろいで! 一人でサボリなんてずるいです!夕食の分は、ブレインさんが1人で野菜を引き抜いて来てくださいね?」

 

 自分が働いているのに、その間、テーブルでベルと談笑しているように見えたセピアが抗議の声を上げた。

 

 

 

 それに対しての返答はセピアにとっては意表を突かれた、そして、他のメンバーにしてみれば意外過ぎる言葉だった。

 

 

「任せてくれ! これでも元々は農村出身でな! そういった土仕事は嫌いじゃない、夜の時は俺一人に任せてくれ、お詫びに一通り見繕って来てやろう。」

 

 その言葉にみんなが顔を見合わせた、ブレインが元農村出身…あまりにもイメージと違っていたため、それからは、女性陣が農村の野菜料理というのはどういう物があるのか…という質問攻めの時間に移るのだった。

 

 

 

               ☆☆☆

 

 

 

 軽く食事を終え、みんなが食休みをして、MP回復、食事を作っていた炎にはヘッケランの主武器である二本の剣を突っ込んで炎の精霊に英気を養ってもらっていた。

 

 時間経過のMP回復がてら、アルシェは自前で第3位階の<電撃(ライトニング)>を自らの鎧に浴びせ、電力を充填させている、そして、またMPが満タンになったら、再び<電撃(ライトニング)>…という大変地道な作業をしている。

 

 その間、少しベルは、決して近くを離れたがらないフレイラを伴い、あれやこれやと理由をつけてみんなから見えない場所にまで<飛行(フライ)>の魔法で移動して来ていた。

 

「さて、この辺でなら問題ないかもしれないな。」

 

「マスター、これから何をされるおつもりなのですか?皆さんの前では見せられないようなことを?」

 

「いや、そういう訳じゃないよ、ここに森の中に展開していたあの家を一旦展開させようと思ってね…それには、フォーサイトのみんなとかの目は出来る限り無い方がいいかなと…そう思っただけの話さ。」

 

 

 そう言ってベルは「深緑の隠れ家(グリーン・シークレットハウス)」をその場で展開させる。

 

 森の中で展開させた大きさなら、きっと扉のそばにいる者らからも、さすがにここまでは見えないだろう。

 

 

「さて、入るか、フレイ。」

「はい、お供致します、マスター」

 

 

 そして、それほど時間がかからず出てくる2人。

 

「まぁ、こんなものだろ…レアリティとしてはHRに届かない程度だが…Rにしては性能が高い方だろう」

 

「まさか、あのような物までお持ちだとは…お見それしました」

 

「そんな大したもんじゃないぞ? ミノタウロスの皮なんて、レベル40ちょっとくらいで充分に手に入る素材だからな…、この前食べてもらったあのジャーキー肉も、ゴルゴンの肉だったんだぞ?ゴルゴンを倒すのに比べたら、ミノタウロスなんて可愛いもんさ。」

 

「それにしても、あのような貴重なクリスタルまで使われて…よろしかったのですか?」

 

 

「イヤ、STR(ストレングス)AGI(アジリティ)が10アップするなんて程度、そんな凄い物じゃないぞ?HRの段階に入ったらゴミみたいなものだしな、だから、貰い手がなくて死蔵されてたものだ。」

 

「それにしても、そんな外装に出来るなんて…思いつきもしませんでした…」

 

「まぁ…ボクも、昔にマン…じゃなく、書物で見たことがあってね、こういう装備品もあったという記憶を頼りに作ってみただけさ、さっきよりは見た目、ひどくはないと思うんだが…気に入ってくれるといいな。」

 

 ベルはそう言いながら「深緑の隠れ家(グリーン・シークレットハウス)」を元の模型程度の大きさに戻し、アイテムボックスに格納する。

 

「さて、あまり長く離れていて皆を心配させてもいけない、戻るぞ、フレイ」

 

 そう言って、ベルが両手を広げる仕草をすると、フレイラは少し瞳に優し気な雰囲気をまとわせながら、嬉しそうに主の元に近づき、そっとその腕に抱かれるように寄り添った。

 

 

 <上位転移(グレーターテレポーテーション)

 

 

 すると、場所は変わり、元の扉の前に瞬間的に転移が完了していた。

 

「あ、おかえり…ってずるぅ~い! フレイラ、なぁ~にそんなベルさまに抱き着いてぇ~~!!」

 

 ぶんむくれながら文句を口にしたのは言わずもがな、セピアだ。

 

「まぁまぁ、そうしないと一緒に転移が出来ないんですから、仕方ないことなのは知ってるでしょ?」

 

 姉役のディーネが場を収めようとセピアの肩に手をかけた。

 

「むぅ…今度は私の番ですからね…」

 

 よくわからない言葉を残して、ゆっくりとテーブルを拭く作業に戻るセピア。

 

 

「お、さすが、もう後片付けも終わったみたいだね、どうだい? 武器の魔力や、鎧の魔力の方はバッチリかな?」

 

 

 

「……ハイ、ベルさん、4発目のライトニングを鎧に吸収させました、その消費魔力も今回復しきった所です。」

 

「そうか…それじゃ…えぇ~っとブレインくんはどこに?」

 

「あぁ、扉の表側の方で刀の素振りをしてますよ?」

 

「あぁ、わかったありがとう。」

 

 

 

 そう言って、ブレインの元に近づいたベルは、今しがた、作成してきたばかりのアクセサリを彼に手渡した。

 

「お? これって、さっきのあれか? ずいぶん小っちゃくなったな、それに…継ぎ目も無くなってるじゃないか…どうやって首に着けるんだ」

 

「まぁ、アクセサリだし、どこに着けてもいいんだが、首が一番いいだろうな、元々、首に装着する為の装飾品なんだし…ちょっと指をひっかけて両側に引っ張ってみたら、変化はないかい?」

 

 

「お、伸びる、伸びるぞ、これで頭から通せばいいんだな?」

 

 

「うん、それはいいが、減らす数値の割合いの方はもう決まっているのかい?」

 

 

「あぁ、あんたを待ってる間、考えていたからな、バッチリってもんだ。」

 

 

 そう言って、装着することになったということは、デザインは喜んでくれたようだ、とりあえずよかったとムネを撫でおろす。

 

 結局、最初にブレインに見せたデザインはドレイの首にかけるようなデザインだったから気に入らなかったようなので、一風変わったようにした。

 

 とりあえず、フレイラの首に着けてもらい、大きさを小さめにしてから、先ほどの死蔵されていたデータクリスタルをセット、そして外装を変えるため、ミノタウロスの皮をその周囲に巻き付けるようにして<上位道具創造(クリエイト・グレーター・アイテム)>を発動。

 

 外装自体は、革細工のちょっと太めのチョーカーっぽい感じにし、イメージで内部の首輪の金属部分を変形させ、革から円錐状の突起が等間隔で、外周をぐるりと囲むようなデザインにしてみたのだ。

 

 イメージとしては、ドーベルマンがつけているようなトゲトゲの首輪を少し大人しくしたような…。

 

 もっとわかりやすく言えば、ロックスタイルというか…ワイルド系というか…そんなデザインにしただけなのだが…、どうやら割とその外装は気に入ってくれたらしく、文句も言わずに即座に身に着けてくれたところを見ると、まんざらでもないようだ。

 

 

「ところで、どんな割り振りにしたんだい? ブレイン」

 

「とりあえずは、自分には魔力なんてものはないと思ってるから、そこは半分までカットは確定だな、それから神様なんて信じてないから、信仰心も半分にカットとして…あとは特殊は減らさず、そのまま、目に見えない加護やら、運頼みな能力には育ってほしくないからそれは知恵も含めて2割カットだな」

 

「え? 知恵を2割減らすのはなんでか聞いていいかい?」

 

「あぁ、俺は魔法は使えないが、戦うことに於いてはあらゆる知識は集めたい、そういう意味では魔力や信仰心みたいに半分にまで減らしたら、イザ、戦ううえで記憶や知識は必要になるだろうし、脳筋じゃない戦い方を身に着けていくためにも2割にとどめた方がいいと思ったのさ」

 

 

「そうか…後の数値は?」

 

「あとの数字は全部1割カットにするよ…そうすれば丁度、1.2倍になるだろ?」

 

「力、体力、器用、敏捷…が1割減…か、身体能力を極力減らさずに、本来の能力と、減少後の差からくる致命的なミスを少なくするためには、それが最適かもしれないな…」

 

 

「だろ? 結局、欲張りすぎても良くないという結論に達したのさ、1.5倍が1.2倍に減ろうと俺は俺の戦い方で成長していくしかないだろう?」

 

「…そうだな…ブレイン、キミは、そっちの方がいいな…。」

 

「あ、そうだ、一つ注意しなければならないことがあったから今から言っておくよ。」

 

 ブレインは素振りと居合の練習を止め、ベルに向き直る

 

「なんだよ、改まって」

 

 

「せっかく、身体能力の差をなるべく誤差の範囲にしてくれてたところ、悪いんだが、キミの身の安全を考えてね、その首輪を付けている間は、力と敏捷がちょっと上がる様にしておいたんだ、器用さに変化はないから、その分、自分の動きが不自然に感じてしまうかもしれないが…しばらくすればそれも慣れるだろう…」

 

 ベルがそう告げると、ブレインは少し肩を落とすような感じになり、力なくこう言うに留まる。

 

 

「お前さぁ…それよ~~、もうちょっと早く言ってくれや~~…」

 

 

「…すまん」




長らくお待たせしてしまいました。

ずいぶん前から使っていたPCの調子が大変悪くなってしまい、動きも遅い…

それにルーターの電波がプロパティ画面で見ていても「送信」「受信」共に
ちゃんと反応しているにも関わらず、(無線でネットしておるのですが…)
『インターネット接続ナシ』という非情な状態表示…

もちろんブラウザ画面はHP画面に行けずに、接続されていません、と言われ

まぁ…数年前にどこぞの会社などでリースされてたノートPCを安く買った物
で、最近改めてメモリーを見たら「3ギガ」という不思議な表示。

元々2ギガ積んでて、1ギガを上乗せしたのか…
元々が1ギガで、物足りずに2ギガを上乗せしたのか…

どちらにしても、よくわからない拡張の仕方をされてるノートPCでした。

他にもいろいろありそうですが、めんどいので新しいのを近所のアキバで購入

3万でおつりがくる程度の値段で、メモリー8ギガ。
HDDが640ギガ。 無線Wifi搭載式の本体。(今までのは外付けで追加式)

なのに、一年の保証付きという至れり尽くせり。

それにデータの移動なりなんなりで、ずいぶん時間がかかりましたです。

各ブラウザのそれぞれ開いていたタブのアドレスを移行させ、全部開いたまま
起動するようにチマチマ小細工をするのに時間も掛かってしまった始末。

ここでお詫びさせて頂きます。

おかげでなんとか、ネット回線が途中で切れる頻度は少なくなりました。
(なくなったわけではないので、ルーターのせいかもしれませぬ…。)


※ 後日談、そのルーター、保証を使い、なんとかねじ込んで直してもらいました。


 ついでに動画とか…オバロのMADまがいの物をずっと作っていて…こちらの方が
おろそかになっておりました、でもこちら年からは、少しずつ再開していきたいと
思っておりますので、よろしくお願いします。
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