気づいたら大自然 小心者の異世界闊歩 作:yomi読みonly
お送りいたします。
今回の戦闘は、わりとゴチャゴチャとした戦闘になっておりますが、なるべく、解りやすく書いたつもりです。
結果的に残された戦力なども、あとがきに書いておこうかと思いますので、次のお話にそれがつながる様にしたいですね。
ちなみに、今までの話もそうですが、私の中で戦闘時の1ターンというのは10秒程度の時間で、その間に出来る行動であれば、1アクションでなく2アクションの行動を挟む場合もあります。
さすがに1秒じゃ、短いですしね。
「こいつで終わりだ! くらえ!」
その言葉と共に繰り出された神速の一刀、そこから放たれた2連撃。
その攻撃により、目の前に出現させた敵、
それと同時に、周囲に居た
崩れ去り、黒い靄のようになっていく
「うお! なんだこれ! 初めてじゃないか? こんなの出んの!」
元商人の家の出であったヘッケランが驚愕の声を上げる、それもそうだろう、緻密な彫りに裏と表で違う肖像画をコインに削り込んだような横顔、しかもそのコイン自体には自分らが知っている金貨とは比べ物にならない厚み、さらには歪みも凹みもない、綺麗に真っ平な金貨、どう見ても価値が違うのが分かる…そんなモノが、アンデッドの居た場所から落ちてきたからだ。
「なんだよ、ベルさん、これ! 一体なにが起きたんだ?一度目にアンデッドと戦った時はこんなの落ちてこなかったよな?」
拾い上げて、それが何なのか、何が起こっているのか、なんでそういう現象が起きているのかわからないヘッケランが質問攻めに入ってきた。
それはそうだろう、ヘッケラン自身、初めての体験なのだ。
「アンデッドを倒して金貨が出現する」という奇跡的…いや、奇怪的な現象に遭遇したのは。
「あぁ、ボクの過ごしていた世界ではアンデッドを倒しても今の様に金貨や、運がいいとモンスターのレベル…あ、いや強さに応じたドロップアイテムなども出ることがあったのでね、そういう設定に戻したのさ、今までがキミらの世界に合わせた設定だったみたいだからね、こっちの方が強い敵でも倒し甲斐があるだろう?」
「いりゅうひん? 落とし物ってこと?」
首を傾げながらアルシェが横から今の説明を聞いて問いかけてくる。
「モンスターが落とし物をするなんて初耳、ベルさんの世界は変…。」
「落とし物…?」
(そっか、うっかりしてたけど、こっちの世界って翻訳されて相手に伝わるんだっけ…ドロップアイテムという概念も、単語も無い場合そう変換されるのか…、遺留品…か、そうと言えなくもない…か。)
「私も飽きる程、カッツェ平野でアンデッドを狩ったりしてきたけど、コインが落ちて来たなんてこと初めてよ、さすがは超古代文明の遺産ってところなのかしら?」
イミーナが説明を聞いても釈然としない顔をしながらも、現実に目の前にある金貨を指で拾いつつ、夢じゃないことを確かめている。
「まぁ、そうだね、だからこそ…金には困らなかった「冒険者」が多かったね、今のボクのような異形の姿をした者を『異端』として、人に何の危害を加えてない存在でも【異形種狩り】なんてことにまで手を染める者も居た…。それも今となっては、その文明の名が残されて無いという事は慢心が過ぎて破綻、崩壊させてしまったのかもしれないね…。」
(…という事にしておかないと、あれやこれや説明することになったら、大変だもんな、こっちだって説明を求められても説明できない現象のことが多いって言うのに…)
「だからこそ、異種族であっても互いに分かり合え、力を合わせて生活をしているあの村に思い入れがある…ということでしょうか?」
拾い終わったロバーデイクがその金貨が入った袋をベルに手渡しに来る。
「なぜ、ボクに? 倒したのはキミ達だ、キミらが持っていてもいいんじゃないか?」
「そうだぜ?ロバー! これだけの金貨だ、下手したら交金貨2枚、いや3枚くらいの価値はあるかもしれないぞ?」
じゃらりと音を立てる革袋を手に持ち、笑顔のヘッケラン…しかしそれをどこか辟易したような目で見やるロバーとの温度差が異様に目立つ。
「持つだけならご自由に? でもそれを持ち帰ってどうするんです?自分で彫ったとでも言うつもりですか? それとも正直に遺跡から発掘したアイテムから発生した異空間でアンデッドを倒したら、これらのコインが落ちて来たんだ…とでも?」
「理由なんて、適当にごまかせばいいじゃないかよ、ロバー!これだけの大金なんだぜ?」
どこか諦めきれない雰囲気のヘッケラン、しかしそれもロバーデイクを説得する材料には成り得なかった。
「私はもう御免ですよ? 一般に出回っていない品を売ろうとして命の危機にさらされそうになるのは…あの時はアルシェとジエットさんが居たから助かったようなものの…あの時は不覚を取って私は眠らされてしまいました…、目覚めた時のあの衝撃的な状況は、今も忘れられません。」
それはきっと<
そう受け取ったヘッケランは、静かに、その袋をゆっくりとロバーに手渡す。
「そうだな、あの時は俺自身はレジストに成功して眠らずに済んだが…俺一人じゃ、ロバーとイミーナの2人を抱えて逃げることはできなかった。 …あのままの状態だったらどうなってたか、無事二人を無傷で助けることが出来ても、俺自身はお尋ね者になってたかもしれなかったからな…最悪そこまでのことが頭をよぎったよ…あの時は…。」
そこで、ベルのそばにいたアルシェがゆっくりとヘッケランとロバーデイクの近くに来て口を開く。
「みんなには感謝している、今まで家族の為、お金が必要だった私を仲間に入れてくれて、ずっと何も言わずに…私に負い目を感じさせないように分け前を多めにしてくれてたのは知っていた、でもその厚意を全部、借金に当てなければ…と、あの時はそればかりだった、そんな私の装備だってずっと同じだったことも問い詰めないで居てくれたみんなには感謝してもしきれない…でも、もうそれも…その借金もすでにない…もう必要以上に稼ごうとしなくても、今回の依頼が済めば、あの村で穏やかに過ごしても私は構わない。」
チームの妹役、魔法知識担当のアルシェにそう言われれば、そこはリーダーとしては何も言えなくなってしまう。
「わかったよ、アルシェ…なぁベルさん、これからも戦った中で落ちるものは、とりあえずアンタが管理してくれないか?」
「えぇ、かまいませんよ、必要になった時はいつでも言って下さい」
(いいチームだな…、昔の様にボクもあんな風に仲間に戻って来て欲しいけど…もう無理だろうな…。)
「でもまぁ…確かに言われてみりゃ、俺らには、あの時ジエットさんから買い取ってもらった代金が丸まる残ってるしな…これ以上あくせく稼いでいく必要もないか…」
「そうよぉ~? これからは商人の能力より、耕す方を求められるかもよぉ?」
と、意地悪そうな笑顔でヘッケランをいじるイミーナ。
「ありえそうだ…水汲みとか薪割りの速度で、村長に負けたら立ち直れないかもな…そりゃ」
「大丈夫よ、あそこじゃ薪割りはともかく、水汲みは蛇口を捻れば出てくるマジックアイテムが全部の家に普及してるからね、必要ないんじゃない?」
「じゃ~今度は、手をかざしたり、指を突き付けるだけで火が付く
などの軽口を利かせたヘッケランにアルシェが「警告」ともとれる忠告を口にする。
「それはダメ…数日の違いでしかないけど、あそこの村で暮らしてきて、村人の気質は分かってきた、あそこの人たちはそういう意見に敏感…自分らが楽をするためにゴウン様に頼るような考えを言おうとすると、周囲から反対意見の嵐になる…。」
「そ…そうか…冗談でもそういう言葉は言わない方がいいか…村の生活も、街とは違った大変さがあるんだな…。」
「最近はオーガも増えてきてるから、力仕事も丸太を運ぶのも、巨石を運び出すのにもみんなで協力し合ってる。今でも隣にオーガがいると落ち着かないけど…多分、もう少しで慣れると思う…。」
「いつかトロールも増えてくるようになるんじゃねぇか?大丈夫なのかよ…」
恐怖心から少し警戒し始めるヘッケランだが、それに対してアルシェは違う方向で答えを返す。
「そう遠くない内にきっとそうなる…あの村長は魔力こそないけど、底知れない何かが眠ってる…いや、きっともう目覚めてるかも…。」
そう言い放つアルシェに同意する言葉を投げかける存在が近づいてきた。
「まぁ、そりゃそうだろうな…あの女は、俺に膝をつかせたくらいなんだぜ?」
(ま、形としては自発的にも見えただろうが、結局は膝まづかされた訳だしな…)
ウソも誇張もしていない、聞いた側の認識に任せただけ…と自分に言い聞かせ、ブレインがエンリのことを評価する言葉で締めくくる。
「王国戦士長と以外では今まで負け知らずのブレインが…ヒザをつかされた…?」
アルシェは、その「ヒザをつかされた」瞬間の現場は見ていないが、その後の翌朝…いや、昼前まで膝を地面につけていたブレインの姿は記憶している。
「そうなのか?アルシェ?」と問いかけてくるヘッケランに「まぁ…地面に膝をついていたのは事実…その瞬間の現場は見ていないけど…私が知ってるのは膝をついてから後の姿だけ…。」と告げるに留める。
きっとこれなら、ブレインの戦士としてのプライドも傷つけないだろうというギリギリの線は保てたはず…自分は戦士じゃないし、男でもない、ましてやブレイン自身でもない訳だから…本当のところはどうか、そこは分からないが…。
しかし、この話によって、ますます「覇王 炎莉」という名称がつけられる要素がまた一つ付け加えられてしまったことには、この話題を始めた当の2人も、全く気がついていなかった。
まだ、ゴブリンの大将軍、鮮血の女隊長、血まみれエンリ…などの名前で済んでいる今の状況とは、そう遠くない内に世界の認識が変わっていってしまうコトになるなど…今はまだ誰も知らない未来の話である。
「ところでブレイン、そっちはどうよ?うまく制御できるようになってるか? さっきは割と調子よくスケルトンや、スケリトルドラゴン共を蹴散らしてたみたいだが?」
何かまずそうな空気になってきたのを鋭敏に感じ取ったヘッケランが話題を変えるべく違う質問をしていた。
それは呪いの効果によって「
「あぁ、なんとかな…、一つ難度が上がったからなのかどうかはわからないが、何となくスイッチの切り替えのような感覚はつかめるようになった。」
「よかったな、これも敵さんが、バシバシアンデッドを生み出して?召喚?してくれたおかげって事か?、それとその相手を選んでくれ、経験を積ませるチャンスをくれたベルさんにも感謝しないとだろうな」
多少わざとらしくもあるが、おどけるようにそんな言葉を出してきたヘッケランを別段、責める要素はどこにもない、今事を荒立てて、空気を悪くするつもりのないベルがそれに答えを返す。
「いや、それには及ばないよ、ブレインが強くなればカルネ村の防衛力も上がる、戦力が高いのに越したことはないからね、それにブレインも、さっきの戦闘で新しい技のアイデアがちょうど浮かんでるタイミングじゃないか?」
そうベルが水を向けると、ブレインもそれに反応する。
「よくわかったな…まだ頭の中でのことだから言わなかったんだが…、前々からそれが出来るようになれば…と陰で練習はしてたんだ…だがさっきの手応えで、やっと何かつかめたような気がしたんだよ。」
「やはりね…さっきの戦闘でブレインの難度はまた一つ上がったようだな。」
ベルのその言葉に納得の言葉が上がる。
「そりゃそうか…相手にとどめを刺したのはブレインだしな…経験値ってやつもその分、ブレインが獲得してるんだろうからな…。」
「とは言っても今回は骨が相手だったからな、斬撃も突きも効果的じゃない以上、刃じゃなく「神聖属性」頼りになってしまった、この刀にそれが付与されてて助かったよ。それに斬撃じゃなく、寸前に刃を返して峰打ちにしてたから、「殴打」属性でしのげていたようなものだったからな。」
「しかし…どうしたものか…なかなか順調ってわけにも行ってないところが歯がゆいね…、もっと強いのを出さないとレベリングはうまく行かないんだが…、かと言って死なれても困るしな…う~ん。」
そこにそばに控えていたフレイラが口を開く。
「差し出がましい言を差し挟むこと、お許しくださいベル様、それでしたら、ベル様の召喚される魔獣を呼び出し、共に戦わせるという手段はどうでしょう? もし支障があるようでしたら、私の神聖系の召喚、天使を呼び出すという手段も併用すれば、どうにかなるのではと…愚慮するのですが…」
「そうだね…そうすればなんとか、数体の敵モンスターを一度に出現させても大丈夫そうだが…そうなると…3体くらいか…1体はフォーサイトチーム、もう1体はブレインチーム…3体目は、決着つくまで足止めの盾役として、極力召喚した者らで防御に専念させとけば…ダメージを負わされても、召喚される前の元素界に戻るだけだしな…よし、その方向性で行こう。」
そう言って、お礼の言葉と共にフレイラの髪を撫でてやる…かぶっている帽子の下には普段は目立たないように隠しているケモ耳がある…その感触も手に心地よい。
「あれ?」
ベルはそこで今まで感じていなかった違和感を覚えた。
フレイラの頭にかぶっている帽子の額の付近にある、クレリック職を覚えさせるために便宜上、「信仰する神」として設定させた『聖印』、そのマークに見覚えのない輝きを見て取ったためだ。
「フレイ…ここの『
「あ…これのことですか…これは、確か私がまだ起動を許されていなかった時に、た…」
とここまでフレイラが言葉を紡いだ瞬間、外野から声がかけられる。
「お~い、ベルさんよぉ!!…もういっちょ行ってみるかい? まだ1~2回くらいなら、戦闘に耐えられそうだぜ!」
「あぁ…わかった、それなら今からちょっとした変わり種を用意してあげよう」
一言、ヘッケランにそう言葉を返すと、会話は一旦置いておこうとフレイラにも言葉を投げかける。
「フレイ、すまないがその話は次の機会に聞かせてくれ、これから呼び出すのは運が良ければ、アルシェちゃんの鎧に最後のスロットを埋めるデータクリスタルが落ちるかもしれないからな…そのために、戦闘が始まるタイミングに合わせてみんなを範囲にして<
「は、承知いたしました。そのように致します。」
「あぁ…頼んだ!」
★★★
ベルは扉のパネルを操作し、敵の設定を始める。
「今回は、すでに召喚魔獣も召喚天使も配置済みにしてあるからな…レベルはさっきの〝
(でも一応、順調と言えば順調か? 難度的には108ってことだしな…。)
ポチポチと操作し、呼び出すのは炎の精霊、サラマンダーより少しレベルが上の雷の精霊種、【雷精】というモンスターだ。
全身は青で、外観は人型をしている、体の所々に赤、または黄色で、イナズマ模様が各部を彩っている。
燃えるような瞳は赤で、トンボのような複眼、額からは蛾を思わせる触覚のような装飾が左右の両端に伸びるようにして上を向いている。
それが、全身から弾けるような電流をバチバチと身にまとわせながら3体現れる。
すかさず、ベルは複数呼び出した魔獣の内、3体のムーンウルフそれぞれに念で呼びかける…攻撃に見せかけ、相手が動作に入ったら全力で防御をしろ!という風にだ。
もちろん呼び出したのはムーンウルフだけではないが…、一応、別動隊として、待機。
ムーンウルフが倒されたら、そちらの出番だ、という指示は出しているので、後発組はじっと戦闘区域から離れて後ろに居る。
そして戦闘が始まるより前、その隙に、ベルはパーティのそばに<
第一ターンに移るタイミングでベルは再び<転移>を発動。
今度は別組のヘッケランとロバーデイクに同じように<
その用意が済んでから、第1ターン【雷精】の攻撃は自分に向かってきたムーンウルフに<
他のムーンウルフ2体も、その状況に変わりはない。全員HPの残数は一桁だ。
防御魔法を身に纏ったブレインが、さっきの戦闘で身に付いた実感が得られた武技、<縮地>を発動させ、一気に【雷精】との距離を詰める。
今回はアンデッドではないので、意識下で〝負の属性"をカットする必要はない。
神聖系のダメージの上乗せは期待できないだろうが…と、そのまま攻撃に移る。
戦闘に入ると同時に<領域>を発動させるのは最早、自然に体に染みついた行動になっているブレインは、そのまま命中精度が上がった神速の刀閃、2連撃を見舞う。
わずかながらも「非実体」にもダメージが通り、かつ「物理障害に対する斬撃効果20%向上」という性能もある。
【雷精】のパッシブスキルである<雷の衣>を『物理障害』と認識されるようなら、非実体への30%のダメージに加え、さらに20%が加わり、最大ダメージの半分に落ち込んだダメージから相手のスキルの割合分差し引かれ、通るダメージは相当にわずかな分だけ…という可能性もあり得るのだろうが…。
だが、それも繰り返し連撃で切り付けて行けば、積もり積もったダメージはバカに出来ないだろう、とブレインは思考を切り替える。
ルチルは、
このままではすぐに火が付き、燃え尽きてしまうだろう。
そのため、恐らくはバインド状態は次のターン頭に解除されることが予想された。
MP節約のため、レンジャー持ちの
矢の先端に発生した溶岩弾の熱により、射出した瞬間、先の溶岩部分を残し、それ以外の部分は燃え尽きながら、【雷精】へと一直線に飛んでいく。 その燃え盛る溶岩の塊は、バインド状態の【雷精】に直撃した。
【雷精】のパッシブスキル<雷の衣>により身を守られ、ダメージが少し減ったようだが、それでもダメージはかなり通ったようだ。
ユグドラシル製の鎧を身に纏っているディーネはブレインのすぐ後ろで、攻撃に備えている。
今まで出せなかった自分の武器、「ホーリーフレイル」に付与されている攻撃手段。
「シュート!」と発声し、フレイルを【雷精】に向け、目一杯近付ける。
すると、フレイルの先端から更に魔力的な光を帯びた鎖が伸び、2mだけ先に発射される形で、【雷精】に直撃する。
LV55金属で出来ている先端の鉄柱の直撃はそれなりに威力はあったようだ。
射程が2mと短いため、前衛より少し後ろ、くらいまでしか距離が取れないのは危ないとも思えるが、握り柄の棒自体が1m以上あるので、目一杯伸ばせばもっと距離的な面では有利に展開できるだろう。
★★★
一方、チームフォーサイト。
こちらはやや不利な状況だ、初撃こそ、ムーンウルフが<雷撃>を引き受けてくれたものの、戦闘時の素早さではヘッケランより【雷精】の方に軍配は上がる。
もしも、第2ターンの攻撃でムーンウルフが沈めば、次の魔獣が間に入ってくれるまでは1ターンかかる。 必然的にその3ターン目の攻撃を<
しかし戦闘時に迷っている暇はない。
一番使い勝手が良く、消費も低い為、使い慣れ始めた攻撃手段<双炎斬撃>を【雷精】に見舞う。
セピアが放った攻撃と同様、炎系も少し抵抗が入る、予想していたダメージには少し足りなかったようだ、常時発動する形でダメージがいくらか軽減されるスキルでも設定されているのだろう。
ヘッケランの次に立っているのは前衛向きのロバーデイクだが、相性は悪い、こちらの装備は現地産だ。
ユグドラシル製より脆弱で、かつ金属鎧は電撃系にはあまり抵抗力がない、ダメージを軽減される魔法をかけてくれていても、金属製鎧のデメリットとプラスマイナスで相殺され、ダメージ的には変わらないかもしれない、つまりトントンと言った感じになるだろう。
そんなロバーデイクだが、アンデッドが相手であれば、「ターンアンデッド」や「回復魔法」でのダメージも期待できるが、今回は精霊種、肉体もなく、非実体の存在に攻撃手段がある訳では無い。
その中で彼が選んだ手段は…<
そうすることで、最前線のヘッケランに<
今回、戦闘開始早々、ロバーデイクは後方支援に徹底した方がいいだろうという結論を早くも出していた。
自分が所持しているのはメイスで、<
それなら回復役、もしくは支援に専念するべき、という選択肢しかないことをイヤと言うほど理解できた為だ。
「あんがとよ!ロバー!これで、少しはマシになったってことだな。ダメージも上乗せできる魔法もあれば言うことは無いんだけどな!」
もちろん何かを期待しての発言ではない。
炎の精霊が力を貸してくれるとは言っても、炎の残量には限りがある。
たっぷり補充してあるとは言っても、無計画に炎をまき散らし、結果…相手に致命傷レベルのダメージを与える前に自分の攻撃手段が枯渇してしまえば意味はない。
「実際、あんまり炎のダメージが通ってる感じはしないんだけどな…」
「なら別の手段! 違う魔法でダメージを与える!」
後ろで魔法の準備をしていた、アルシェが詠唱の終わるタイミングで魔法の発動をさせる。
得意のファイアーボールでも、ダメージはヘッケランの攻撃の感触だと減らされてる様子と判断した彼女は、ライトニングもあきらめる、恐らくは、【雷精】に雷撃を食らわせても大きなダメージには成り得ない気がするのだ。
「それなら…これ!<
空気中の水分から集約された「水の気」で作られた刃が発生する。
刃の部分全体を、流れる水の如く小刻みな水流となって「引いて斬る」役目を果たすように目では負えない速度で刃部分が波打つことに加え、半月状の水の刃が高速回転する。
そのため、見た目としては円盤状にも見える水刃が【雷精】に迫る。
彼女が滅多に頼らない水系の第3位階魔法である。
魔法的に生み出された水の刃は【雷精】の精霊的な身体を切り裂くも、それ自体も効果的な手段ではなかったようだ、血こそ出ないし、傷口もパックリと裂け目を作っているものの、予想するほどに傷口は出来ていなかった。
イミーナは矢じりにミスリルのコーティングをしてあるとっておきを矢筒から引き抜き、矢を【雷精】に向けて撃ち出すも、威力不足のようで、他の面々のようなダメージも通らなかった様子だった。
(いかんな…他のメンバーは着々と戦力増強がされてるが…彼女だけはいまいち決め手に欠ける…、なにか彼女に相応しいナニかがない物か…)
★★★
第2ターン
ルチルにバインド状態にされていた【雷精】がターンの頭に拘束状態から解放される。
その瞬間に、その【雷精】Aの表情がわずかに歪む。
その意味は「この程度なら脅威には成り得ない。」
そういう判断が下されたような表情だ。
すると、【雷精】Bが大きく上に顔を上げ、他の【雷精】達に呼びかけるように「ピャーーー!!」とでも表現する方が近いような金切り声を上げた、それは頭の上の触覚のようなものを震わせ、他の2体の【雷精】の触覚にもその震えは伝播している。
それは何かの共有の合図をしたかのように、メンバーのみんなには感じられた。
その瞬間、呼びかけた一体の【雷精】B、そいつの行動はそこで終わる。
それ以外の2体【雷精】AとCの身に変化が起きた。
体中から今までよりも大きく、激しい電流が迸り、それが全身にいきわたると、そのバチバチとした光は背中で大きな翼のような形状を作り上げていく。
まばゆいばかりの雷の翼が両腕を広げたよりも、その倍くらいの大きさの翼を形作る。
そこで【雷精】達の第2ターンが終わった。
ヘッケラン達、彼らはその光景に危険さを察知してしまう。
今のうちに仕留め切らないと、何が来るのかわからないが、次は絶対やばいものが来る、というワーカーとしても、剣士としても…経験からくる危機感に襲われ、その危険性に気が付いていた。
そこですかさずベルは背後に<
別段、自分にとってはレベル的にも恐ろしいというほどの魔法ではないが、それでも自分が致命的な時に手助けしてしまっては、イザと言う時に甘えが出てしまう恐れがある。
それはあの「地下大墳墓」に於いては最悪の状態とつながる恐れがあった。
…そう、あそこでは『死はそれ以上苦しみを与えられないという意味で慈悲』という場所なのだから…。
転移したその場で唯一、状況を左右できそうな武器を持っているディーネに一つだけ<
それは中学で教わった知識、うまく行けば無傷、うまく行かなくても最小のダメージで済むだろう。
ブレインチームはそれでいいとして、フォーサイトチームは大丈夫だろう、あの聡明な天才児、アルシェが魔法戦に於いて、判断を誤るはずがない、チームが無事で済む可能性にはすでに気付いているだろうと信じて見守ることにした。
【雷精】の行動が終わって、自分たちの行動になった瞬間、2つのチームは、それぞれの【雷精】に立ち向かう。
『雷の翼』を広げる敵Cに正面から立ち向かおうとするフォーサイトチームと、一方は行動の終わった【雷精】Bと、そして『雷の翼』を広げて、次のターンにはその翼を使って何かをしようとしているのが明白な【雷精】Aとの間に移動したディーネが、ベルに指示された通り、己の武器を地面に立てて、先端を天に向けた状態で、なるべく姿勢を低くしてかがんでいる。
ルチルと、セピアにはそれぞれ、別の指示をディーネは残している。
きっと言った通りのことをしてくれるだろう。
セピアは<
ルチルは<自然の精霊召喚1st>を発動。
呼び出すのは地の精霊。「1st」なので、まだ精霊になりたてのレッサーアースエレメンタルだ。
ここではルチルの召喚により、そこでの行動は終了、呼び出された精霊は呼び出される際、地面に伏せるように召喚されている。
そして、フォーサイトのターン。
「ここは私に任せて!」
短くそう言い切る魔法関連担当のアルシェがヘッケランより前に出る形で、【雷精】Cの目の前に歩み出る。
「おい!アルシェ!あぶねぇぞ! 見てわかんだろ?」
「わかる…だから私が来た、この攻撃に対抗できるのは、今のみんなの中では私だけ、だから少し後ろに下がって…、私が防げたら、ヘッケランはいつでも反撃できる様に…」
そう伝えると、それだけの言葉で理解してくれたのか、理解できなくても魔法の知識に関してはチーム1のアルシェが言うなら…と従うことにしたのかはわからないが、ヘッケランがアルシェの指示通りにアルシェの後ろへと下がる。
「頼んだぜ?アルシェ!」
「……任せて。」
ロバーデイクは、最悪の場合に備え、<
これで、金属鎧でのデメリットも多少は和らぐだろうと淡い希望を抱いてだ、かと言って、直撃すればただでは済まない。
「イミーナはもう少し後ろに居た方がいいでしょう。」
「あんただって金属鎧で危ないんじゃないの?人の心配をしてる場合? …まぁいいわ、お言葉に甘えて下がらせてもらうけど…無茶はしないようにね。」
「えぇ、アルシェの声は聞こえてましたか? イミーナの数少ない武技、あれを使ってダメージが通らないなら、打つ手はありません、安全な場所に居た方がいいかもしれませんからね。」
イミーナは考える、それはその通りだろう、自分が覚えてる武技は数えられるくらいしかない、あとはローグとしての[罠解除]だの、[鍵開け]だの、そういった専門技能ばかりだ。
ロバーが言うなら「邪魔だ」という意味じゃなく「安全な場所に…」という、純粋にそれだけの意味なのは理解できた彼女は、少し後ろに下がり、射程ギリギリの場所まで避難し、いつでも次の行動に移れるように矢をつがえた。
★★★
第3ターン
誰よりも素早さの高い【雷精】が、行動に入る。
3体の内、2体AとCが広げられた大きな雷翼から戦闘に入っているメンバー、それぞれの4人に行き渡るような広範囲に電撃を広く撃ち出す。
<
【雷精】AとCの2体が同時に発生させたそれは、全体攻撃ではなく、範囲攻撃だったのがせめてもの救いだが、それでもこのレベルのモンスターの電撃が全員に襲い掛かれば<下級>しか防御を張れないメンバーでは一発で体力のほとんどを持って行かれるだろう。
その為、それに対抗できる者達の対応は早かった。
「シュート!」
「全部吸いなさい! 少しだって後ろには通さない!」
それは2人とも、声にしたのは同時だった。
方や、一番小柄な女の子の身に纏う鎧が、まるで周囲の雷だけを吸い寄せる吸引機のように、範囲全体に広がろうとする電撃を全て吸い込んでいく。
それは、今、アルシェが装備している、某エロバードマンが作ったネタ装備、それを有効利用させた結果、本来は4人に行き渡るはずの雷撃を、全て、その鎧に吸収し.更にはもう1体の方の雷の翼、その片翼の分も引き込んで吸ってしまっていた。
そして、一方、エルフチームの一人、ディーネの発生した言葉によって効果が表れたのは、地面に立てたホーリーフレイル、その鉄柱を天に向けて居た状態でのパワーワードの発声…、先端の鉄の棒部分が空に射出される形となった。
とは言っても2m程度ではあるのだが…しかしそれでも、他の伏せている者たちの誰より、高い位置…持ち柄の長さを合わせても3mの高さに存在しているソレに……4人に直撃するはずだった雷撃の翼、その残された片翼の雷撃ダメージが、全部その一本の鉄の棒部分に吸い込まれ、ホーリーフレイルの素材を通して、地面へと流れていく。
その結果、本来、1体目と3体目の【雷精】、その目の前の存在にも届くはずだった翼からの雷撃は、瀕死のムーンウルフにも届かず。
そのターンの攻撃は無駄に終わった。
今度は苦々しい表情に顔を歪めたのは中央の…金切り声を上げた方の【雷精】だ。
一度<
発動直後、3ターンは使用が出来なくなってしまう。
ならば、違う方法を考えなければならない。
ここで<
ならば無駄撃ちするべきではない。
そう判断すると、未行動の【雷精】の行動は早かった。
己の右腕を天に向けて高く掲げると、第4位階の<
本来、<
しかし、この<
ある意味、第4位階という序盤の魔法でも、対空魔法の代わりにも使え、使いようによっては便利な魔法だったのだ。
しかし、この【雷精】はそれを違う用途に使う。
発生させた<
利き腕に電撃の属性を付与させ、攻撃力を上げた状態で、忌々しい、小柄の…電撃全てを吸い込んだ女に狙いを定める。
本来は、そのような攻撃手段はユグドラシルでは存在しなかったのだが…今の【雷精】にはAI(人工知能)ではなく自立した思考回路が存在する、必然的に、応用した攻撃も生み出すことが出来る様になっていた。
それはレべルの高さも起因しているのかもしれないが、今はそれを考えている場合ではないだろう。
肉弾戦に持ち込もうとアルシェに近づいた【雷精】は右腕を振りかぶり、拳を突き出し、スクリュー状に拳部分を強化している雷撃ごと、アルシェを撃ち抜こうとしているのは明白だった。
<
直撃すれば恐らく、ただでは済まないだろう重い攻撃が目の前にまで迫る。
純粋な魔法なら吸い込むことも可能だが、直接攻撃に付与された強化属性までは防ぐことが出来ない。
ヘッケランは後ろに下がらせてしまったため、防ぎに来てくれるのは間に合わないだろう。
他のメンバーも同様だ。
鎧を身に着け、動けるようなクラスを取得しているといってもまだまだ1レベルだ。
肉弾戦に長けているわけでもないので回避もままならないだろう。
死を覚悟した彼女の前に、タワーシールドをさらに大きくしたような広さの石壁が地面から発生し、敵の拳との間に割って入った。
ルチルが呼び出したレッサーアースエレメンタルが作り出した、1LV分の
アルシェを守る為に作られたが、所詮は「1LV」でしかない、<
貫通弾という名前通り、その勢いは石壁を突き抜いても衰えず、アルシェに迫る。
今さら、恥ずかしいなどと言って居られないと判断した彼女は、自分のウエスト部分を覆っているアーマー部を独立展開させ、自動防御の盾として使うことを決断するも、わずかに一直線に迫る拳の方が早い。
間に合わないか!
と思った瞬間、炎の刃が【雷精】の拳に当たり、勢いを削ぐ。
ヘッケランの<空炎斬>が、石の壁を爆散させる為、わずかに速度を落とした拳に間に合った。
拳に炎のダメージを負った【雷精】Bは、怯むも、今一番警戒するべき対象に向ける敵意は緩めない。
ダメージを受けながらも雷を纏う拳を撃ち出し、届くかと思った瞬間、アルシェのアーマーから外れた自動防御をする浮遊盾がなんとか間に合い、雷の拳をガードする。
その盾の性能は、いくらネタ装備とは言え、36レベル程度のモンスターが太刀打ちできるほど弱くは作られていない。
そこはロリは国宝! 有形文化財!と豪語していたエロバードマンの想いが異世界に来て強化してくれているのか、36レベルの強化攻撃程度ではビクともしない。
それが全力展開することにもなれば、4枚浮遊して、守りに割って入るのだ。
こうなっては、【雷精】に出来ることはなくなってしまったと言っていい。
少女を睨みつけながら、どうしてやろうかと思案している【雷精】の目の前に彗星が迫る。
それは体を丸めたトロール程の大きさもあり、彗星の主属性である氷を空気との摩擦熱で燃え上がらせながら、炎属性と氷の属性という相反する属性を同時に展開させ、油断していた【雷精】に直撃した。
セピアが『コメットロッド』で撃ち出した、自分の総魔力の6割近くも消費させ、発生させたとっておきの「第3位階」相当の彗星。
1タ-ン目の攻撃が関の山と思って居た【雷精】の虚を突いた一撃、それが大幅にHPを削る。
その身に<雷の衣>を展開させ、ダメージを常時軽減させているが、本来は自分を相手にするはずではない場所に居たエルフからの攻撃魔法。
まさか、それが自分の方に来るとは思って居なかったのだ、軽減している分よりダメージの方が大きい。
半分近くになった体力で、焦りを覚えた【雷精】だが、次の行動までは<雷の衣>でしのぎ続けるしかないと覚悟を決める…しかし切り札でもあった<
そんな中、まだ未行動の存在が居ることを頭から除外していたのに気づいていない【雷精】は背中に電流の痺れを伴う直撃を受ける。
どこからだ?
周囲を見渡すと先ほどの小柄な…忌々しい雷撃を吸う娘…。
その時、ようやく娘の腕に電撃で作られた弓のようなものが形作られているのに気付いた。
自分は【雷精】。
雷撃系のダメージだけは3割程軽減させることが出来る。
それなのに、このダメージ量はなんだ…?
半分残っていたHPが一気に50%の3分の1、つまり全体の17%を割ってしまったことになる。
あんな小娘のどこに、そんな魔力が…?と警戒するも、【雷精】は気づいていなかった。
雷撃を吸収する娘が、吸った魔力を攻撃魔法に転化させられる装備を身につけていたという事を…。
つまり【雷精】が受けてしまったのは【雷精】自身が放った<
それを、電撃の矢に変化させ、そのまま【雷精】にお返ししたのだ。
これが雷神クラスであれば『雷撃吸収』などの特殊効果があってもおかしくはないのだが、【雷精】はそこまでのレベルではない、軽減させる程度までしか耐性を身につけてはいなかった。
意識がアルシェに向いている瞬間を縫うように1本の矢が飛来する。
その矢はミスリルのコーティングがされた、イミーナの矢だ。
その
きっとロバーデイクの<
さっきの矢程度の攻撃力なら、1本くらいそのまま受けても、軽減能力でダメージはナシにできる。
そう判断して、たった1本の矢を無視することにする、軽減を突き抜けるほどの攻撃力などありはしない。そう結論付けてだ。
しかし、その判断はその予想通りに行かなかった。
確かに矢自身の攻撃力は大したことはなかった、ダメージも受けていない。
淡い光で魔力を付与させていた分も軽減の範囲でゼロにできた。
しかし、その直後だ。
その矢がいきなり刺さった部分を抉り、矢自体が回転をして穿つような動きを見せ始めた。
それが、イミーナの数少ない武技、<
命中にボーナスはつかないが、矢が当たりダメージ判定の計算がされた後(軽減の効果の解決後)に、追加ダメージを与える、それはもちろん防御を突き抜けてからのダメージなので、そのままダメージが通る。
しかし、だからと言って、大ダメージではない、削り技でしかないのだ。
「癪に障るわね…自分の力がこの程度だって実感させられるのってさ」
とイミーナがぼやき、
「それを私の前で言いますか? 私などは、ダメージを与える手段もないのですよ?」
と、ロバーデイクがフォローする。
【雷精】に通ったダメージは軽微でしかなかったが、それでも2%は削られた。
残りは15%…と元AIだった思考回路が冷静に自分の残りHPを計算した。
場面は変わり、【雷精】Aの目の前。
セピアが<コメット・インパクト>で第3位階相当の彗星を直撃させた時、【雷精】Aは、そのエルフを警戒し始め、今のうちに始末しようと決断するが、目の前の剣士がそうさせてはくれなかった。
<瞬閃>と<神速二段>を組み合わせ、その剣士が魔法の詠唱の時間を与えてくれずにいた。
この剣士の攻撃は危ない、命中の練度が並外れている。
かと言って、受ければわずかなダメージでもなぜか体が重くなる。
ならばと空に逃げようとすれば、金髪の方のエルフが石の散弾を魔法で放ってくる。
きっと、あの彗星を生み出した茶髪のエルフが自由になれば、今度は自分が標的になるだろう。
【雷精】Aは少し焦り始めていた。
このまま目の前の剣士の攻撃を受け続けていればダメージ自体は軽微でも、受けた回数に比例して体が重くなり、宙に浮かぶ余力もなくなってくるだろうことは容易に予想できることだからだ。
このまま【雷精】BがHPを全て失ってしまえば、フレイルをもつ鎧の娘、そいつがこっちに集中できるようになる。
あいつのフレイルの先端は、ただの鉄ではない。
何か特殊な金属だ、ということは判断できるが、正体までは解らない、その為、警戒心がかなり上位にランキングされていた。
今は目の前の相手が一番少ない【雷精】Cに期待するしかないか…と、そちらに活路を開いてもらうことを願っていた。
そして【雷精】Cサイド。
第1ターンで、瀕死にされたムーンウルフが「防御しても結果は同じ」とわかっているのか、果敢に攻めに転じていた、とは言え20レベル、普通に【雷精】に腕を横に振りぬかれるだけの通常攻撃で息絶えてしまう。
さて…Bの助けに行くか…と考えていると、そこにもう一体のムーンウルフからの不意打ちで、首に噛みつかれる。
本来は肉体のない精霊であるため、首を狙われても痛みも何も関係は無いのだが、今、首に噛みついているのは「ムーンウルフ」月の守護をわずかなりとも受けている魔獣だ。
月は、人の精神に大きく左右する魔力を持つ天体として有名だ。
そのため、この魔獣の牙は、精神体などの実体のない存在にも効果が表れるようになっている。
すでに【雷精】Bが瀕死の為、念話でこっちの助けてやれ、と召喚主から指示があったため、急いで来たが間に合わなかったようだ、せめて少しでもダメージを…と一桁しか残っていないHPで、ムーンウルフが牙を突き立てる。
★★★
第4ターン
(第1…ライトニングでムーンウルフにダメージ、ムーンウルフは全力防御)
(第2…【雷精】Bの合図で<
(第3…<
首に牙を突き立てているムーンウルフに対し、【雷精】Cは逆に相手を抱き締める。
それにより、<雷の衣>から発生する微弱な継続ダメージを受け、一桁しかなかったHPがゼロになり、ムーンウルフは息絶えた。
そこで【雷精】Cの行動が終わった。
そして瀕死の【雷精】B。
「<肉体向上> <限界突破> <剛腕剛撃>」
ヘッケランが瀕死の【雷精】Bに攻めかかる、その技のコンボは以前、ハイコカトリスにもお見舞いした技だが、今回はそれに加えて、炎の属性が付与された武器だってある。
その時とは攻撃力も段違いだが…もちろん武器としての金属も違うものにすり替えられてるので土台としての攻撃力も全く違うのだが、そのことにヘッケラン自身まだ気づいていない。
「くらえ! <双炎斬撃>!」
ヘッケランの底上げされた攻撃力をもってしても、【雷精】のライフの全てを刈り取ることはできなかったようだ、ダメージ減少があるとは言っても、それなりにダメージは通っている、あと一押しと言った感じで、フラフラの状態の雷精に、追撃の一手が迫る。
<狙い撃ち> <強撃射> <穿ち撃ち>!
矢の部分に今度は<
神聖化で、攻撃力が上乗せされ、武技の<強撃射>に拠るダメージ向上。
さらには<穿ち撃ち>での、追加ダメージ。
残りわずかだったHPもそこで命の火は消えた。
「やったぁ~~…でもとっておきのミスリルの矢、3本も使っちゃったよぉ…大散財…」
この異空間に来てから初めて最後のトドメとなった攻撃を繰り出せたことに喜ぶイミーナ。
しかし、その為の犠牲は決して小さくはなかった。
「いいじゃねぇか! これで、イミーナも勝ち星が1だな!」
と、喜ぶメンバー達の前にゴトリと、重々しい音が聞こえた。
「なんだ?」
とヘッケランがそちらを伺うと、丸くて…小さくパチパチと火花のようなものが模様として浮かび、一瞬として同じ模様で居てくれない、見てて飽きない宝珠のようなモノがそこにあった。
エルフ&ブレインチームサイド
「向こうは片付いたみたいです、今度はこちらを何とかしましょう!」
目の前に注意を払いながら、【雷精】Bにも意識を向けていたセピアが目の前の【雷精】Aに集中するような言葉を全員に投げかける。
「あぁ、こっちもずいぶんとイイ感じになって来たぜ?」
『負の効果』によって、当初の動きがすでに見られず、精彩の欠いた動きしかできない【雷精】Aの姿がそこにあった。
動きは緩慢になって来ているが、純粋なステータスとしての『力』や『魔力』などに衰えはない。
ただ攻撃力、魔法攻撃力などに影響しているだけで、素の数字以下にはならないため、油断はできないことをまだブレインは知らない。
もちろん行使できる位階魔法も、使用制限なども起こるわけではないのだ。
レベルも格上の相手なのだから油断していい相手ではない。
「とりあえず、相手が弱っている間に決着を付けましょう!<
「それは同意見ね!『コメットインパクト 2nd』!」
「シュート!」
「くらえ! 秘剣!
スパンと、鮮やかな軌跡を描き、首が華麗に宙空を舞う、そして、ゴロリと転がった所を、すかさずセピアが目隠し&触覚も縛り上げ、遠くに蹴り飛ばす。
「さて、そいじゃ…こいつのトドメは後回しにして…近づいてきているアイツ…だな」
ユグドラシル製の鎧の為、相手に触れても継続ダメージの入ってこないディーネが安全圏外まで、首のない【雷精】を足で蹴りつつ移動させる、動きはあるので首は無くてもまだ生きてはいるようだ、人の形をしているとは言っても、そういう見た目をしているだけ、実体はないため、首がなくても生命維持に支障はないのだろう。」
と、そこでチームフォーサイトと合流できたブレイン&エルフチームの8名で、最後の【雷精】との決戦が、ついに火蓋を切ることになる。
とりあえず、何とか36レベルモンスターを2体撃破できたメンバー達。
そして、雷精を倒した時に落ちた宝珠は一体なんなのか…
かなりの魔力を使ってしまっているセピアにアルシェ。
(アルシェは自前の魔力はほとんどまだ使っていませんが…。)
一番、レベルアップの遅いロバーデイクはこれからどうなっていくのか…?
色々と課題は山盛りですね。
そして現在、残された戦力。
フレイラが召喚した天使たち。
<第2位階天使召喚>で呼び出した
ムーンウルフは3体共、全滅。
首を飛ばされた【雷精】はあとでゆっくり料理の予定。
そして、微力ながらもルチルが召喚したレッサーエレメンタル・アースもまだ存在しています。
フレイラの「聖印」の秘密、その種明かしは墳墓編に明らかになる?かも?
余談ですが、やっとスマホゲームのオバロ、モモンガ様がゲットできました。
もちろん嫉妬マスクVer.でも、湯上りver.でもないノーマルな方、やっと…念願のが出ました。
覚醒させる材料がなかなか出ないので、100LVなのはコキュートス(初期)、ヤルダバオト、嫉妬マスクモモンガ様の3体だけ…。
せめてあと一人、★5で100LVが欲しいものです。