気づいたら大自然 小心者の異世界闊歩   作:yomi読みonly

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現在の状況。

敵 → 雷精 LV36(難度108)

メンバー
ヘッケラン(火蜥蜴の双剣)残り炎精残量 約80%)武技精神力残量 58%
ロバーデイク(HP Full 、残りMP 約75%)
アルシェ(HP Full 、残りMP 約86% 鎧の雷、残弾ストック3発分、雷の矢1発分消費)
イミーナ(HP&MP Full 武技精神力残量 78%)

ブレイン(HP 88% 武技精神力残量 42%)
ディーネ(HP 85% 残りMP 88%)
(フレイルを避雷針代わりにした際、直下にかがんでいたので、地面へとアース
 される際、わずかに通電ダメージを負った。)

ルチル (HP Full 残りMP 74%)
セピア (HP Full 残りMP 27%)



防御用の盾役

レッサーアースエレメンタル
守護の地天使 × 3

______________________________________________________________


第45話 みんなで特訓、レベリング![雷精]後編

 ベルはフレイラに指示を出し、召喚した天使を3体同時に援護に向かわせるよう命令させる。

 

 その直後、守護天使は3体共、【雷精】の方へと向かっていった。

 

(セピアのやつ、相当ムリしているな、第3位階相当は、本来セピアじゃ使えない領域の位階魔法…それを無理やり引き上げようとすれば相応の魔力を余分に使うことになる。今では3割残ってるか、3割切ってるか…ってところだろうな…、イヤ…実際、第2位階の彗星も一発、盾壁(シールドウォール)も使っていたし、確実に3割残っては居ない…25~26%ってところか?)

 

 

 3体の天使が【雷精】より少し離れた地点、8人のメンバー達のすぐ後方で、3体それぞれが魔法の準備に入った。

 

 中央の天使は<鎧強化(リーンフォース・アーマー)>を唱える。

 

 すると、中央の天使にその効果は及び、光が体を包んで攻撃に対しての耐性が上がる。

 

 防御の魔法が物理耐性を強化すると、両翼の天使が<石筍の柱(ピラー・オブ・スタラグマイト)>を8人の斜め前方、右と左にそれぞれ発動させる。

 

 それに呼応し、大地から石筍の柱が左右に1本ずつ、雄々しくそびえ立つ。

 

 それは人間の背丈の倍は高く、頑丈そうに突き立っている。

 

 

 

  「??」

 

 

 

 意味が分からないのは【雷精】の方だ。

 

 今のを自分への攻撃用として使うならまだわかる、だが、ただ目の前に出現させるだけでどんな意味があるのか…そこが分からない。

 

 それは指示を出したフレイラも同じだった、しかし、己の創造主に「そうせよ」と言われれば、それに従うのが被造物である自分の存在意義であり、自分を生み出してくれた神であり親でもある主に対する忠義だ。

 

 

 自分の疑問点など、後で解決できればいい。

 

 

 

 【雷精】は自らの能力により、油断なく宙に浮かび、様子をうかがう。

 

 すぐに戦闘に入ってもいいが、無策で雷撃を撃ちだしても、無駄に吸われてしまうだけ。というのは先ほどの戦いで分かってしまったことだ、ならばここは、相手が様子を見てくれている間に少しでも有利な情報を集めるしかない。

 

 そう判断して周囲を見回す。

 

 …何もない。

 

 そう、目の前には扉、扉の裏には土に覆われた区画があり、テーブルと、椅子のような物。

 

 それ以外には、今、目の前に突き出された石筍の柱が2本あるのみ。

 

 

 そこにどんな狙いがあるのかわからないが、得意の電撃が使えない以上、別の戦い方をするしかない。

 

 幸い、その為の条件は整った、今ならば「アレ」が発動するはずだ。

 

 そう結論を出した【雷精】は、不敵にニヤリと笑い、眼下の8名を視界に収めると、宙に浮かんだまま、大きく手を広げ、手の平を天に向けたままのポーズに入ると身に纏う電流の流れが一段と激しくなっていく。

 

 

 

(あれ…まずいぞ? もしかしてあのモードに入るつもりか? アレになられるとアイツらじゃ…ちょっと決め手に欠けるからな…今のうちに天使たちに攻撃を仕掛けさせるとするか…あのモードに入る前に1ターンの「溜め」がユグドラシルでは必要だったはずだからな…。)

 

「フレイ…無防備な今のうちに天使たちに突撃…いや、一体だけ一応残して、2体で【雷精】に攻撃を仕掛ける様、指示を出してくれ…。」

 

 

「ハイ…承知いたしました、マスター」

 

 

 了承の声と同時に、守護の地天使(エンジェル・ガーディアン・アース)2体が【雷精】に飛来、飛び掛かる。

 

 その天使の持つ剣が届く寸前、眩いばかりの電光が迸ったかと思うと、全員の耳に届く程、通りのいい音声が耳に届いた。

 

 

 

  <超力! 招来!!

 

 

 

 周囲一帯が、<範囲拡大化(ワイデン)>でも使った<閃光(フラッシュ)>に包まれたかのような…全てが真っ白の世界に包まれたその直後。

 

 ようやくその光も衰え始め、何事もなく目が景色を映し出した頃、守護の地天使(エンジェル・ガーディアン・アース)2体が光の粒子となって消えて行く瞬間を見てしまうことになる。

 

「な…なにが…?」

 

 それは誰が発した言葉だろうか…誰ともなしにその言葉が漏れて出た時、一人、ベルだけが「やはりそう出たか…」と理解できていた。

 

 

 眩く白い景色の中から現れたのは、先ほどまでの【雷精】とは少し見た目が違っていた。

 

 一番目に付く顔の部分には、額から伸びていた左右の蛾の触覚のようなものだけではなく(・・・・・・)、額から新たに一本、ツノのように触覚が真ん中から新しく伸びている。

 

 そして視線を少し下に降ろせば、肩の部分から胸にかけて、肥大した筋肉のような…

 

 体色そっくりに染めたブレストプレートのような…

 

 厚くなった胸板と思えばそう見えなくもないが、違う見方をすれば“胸部位防具(チェスト)”のようにも見えるナニかが胸部に変化を起こしていた。

 

 そんな見た目に変化した【雷精】に、ベル以外の者はある種の畏怖のような感覚を覚え始めていた。

 

 

 

 それは通称『超力モード』とプレイヤー達に呼称され、パッチを当てられるまでは誰もが恐れたスキル。

 

 『超力モード』状態となった【雷精】は、36LVという序盤の敵だと言うのに、その状態になれば、かなり上級の手段を取らなければ全て<返し(カウンター)>で、同じ威力のスキル効果、魔法、通常攻撃に至るまで攻撃を仕掛けた者の身に返されてしまう。

 

 返されるだけならまだいいが、返す方の【雷精】自身は全くノーダメージで、相手に<返し(カウンター)>で応戦をし、自分の番になれば自分からも攻撃を仕掛け、<逆転チェスト>というスキルを使って、あらゆる事象を解決済みのものまで含めて反転させる。

 

 ひどい時は攻撃の<返し(カウンター)>ではなく、今まで負ったダメージを「時を巻き戻す」ように<逆転チェスト>で、(攻撃されたという事実を、その時間前まで巻き戻すという名目で)回復してしまう事もあった。

 

 

 当初は、いつでも使用できた壊れ技だったのだが、プレイヤー達の悲鳴が、運営に津波の様に押し寄せ、「バランスブレイカーだ!」とか「ボスでもないのに倒せないってどういうことだ!」などの声が後を絶たず…、別にワールドボスでも何でもない、ただの雑魚的扱いだったため、仕方なくパッチが当てられることになり、『戦闘時、戦闘可能状態が最後の一体となった時が条件、効果時間は5ターン、その間は自主的な攻撃はせず、時間の巻き戻し設定は削除。』と言う風に変更されてからは、最初程の非難は寄せられなくなったという背景がある。

 

 

(落ち着いてる場合じゃない、みんなに知らせなきゃ、何も知らずに攻撃でも仕掛けたら全滅するぞ!)

 

 ベルは急いで<伝言(メッセージ)>の魔法をディーネに飛ばす。

 

『ディーネか?かなりマズイ状態だ、そいつに攻撃するのはしばらく止めだ! レッサー・アースエレメンタルと、守護の地天使(エンジェル・ガーディアン・アース)がまだ一体ずつ居る、そいつらで、時間を稼いでる間、ヤツに近づかないよう他の面々にも通達してくれ、それで、安全圏にまで下がって、待機だ!』

 

 

「はい、ベルさん、ではそのようにみんなには伝えておきます。」

 

 

 しばらく見て居ると、下がって安全圏にまで移動したのは7人。

 

 まだ一人、【雷精】のすぐ近くで残っている者がいる。

 

 遠目でもわかる、あの刀…つまりブレインだ。

 

 

『申し訳ありません、ベルさん…事情は説明したのですが、説得に失敗しました。ブレインさんは残って戦うそうです。』

 

 <伝言(メッセージ)>を送ってきたのは、エルフたちの中で、唯一その魔法を覚えていたルチルだ。

 

 

「はぁ…彼の事だ、どういう事情で残ることにしたのかは、ある程度予想は出来るが…、なんでそうなった?」

 

『ハイ、<返し(カウンター)>で、どんな技も攻撃も、魔法でさえ跳ね返すので、危ない存在になりました、効果が切れるまでは離れた方が得策です。と言ったのですが…。』

 

「どうせ彼のことだ、『そんなにすごい相手になったのなら、なおさら真っ向から挑む価値はある!』とでも言い出したんだろ?」

 

『申し訳ありません、まさにその通りです…、『精霊と天使がやられるまでは大人しく見ているさ、俺一人になったら、思う存分、自分の全てを持って挑ませてもらおう』…だそうです…。』

 

「あぁ、わかった、とりあえず、好きにさせよう…彼なら、別に致命的な魔法を使えるわけでもないから返されて困る展開にまではならないだろう……恐らくは『負のペナルティ』までは<返し(カウンター)>できないだろうしな…イヤ、どうだろうな…こっちの世界に来てそこらへんは変質している可能性はあるか…、とりあえず、2~3ターンなら多分、持ちこたえられるだろう。」

 

 

『わかりました、それではしばらくは様子を見守るということで、周知させるようにします。』

 

 

 通信が切れる感覚があり、目を前に向けると、ちょうど残った精霊が倒されるところであった。

 

 

 

 

 

 

「よぉ…調子はどうだ? 随分と楽しそうにしてるじゃないか?オレも混ぜてくれないか?」

 

 

 ゆっくりと【雷精】へと歩みを進めるブレイン。

 

【雷精】に変化はない、言語を使えるわけではないので返事を期待しての声掛けではないのだろうが…【雷精】はそれを「挑発」と受け取った。

 

 

 ブレインの方を見た【雷精】は、ブレインの持つ武器を真似る。

 腕を伸ばすと、雷の電流で構成された刃が手刀の先から、ブレインの刀と同じ長さだけ伸び、形状も同じで固定される。

 

 

「ぴゅゅぅぅ~♪ ずいぶん器用なまねができるんだな、嬉しいよ、存分に戦えそうだっていうのは…な、精々オレをがっかりさせないでくれよ?」

 

 自分の武器を真似た形状で挑もうとする目の前の相手が見せた芸当に口笛を以って感心したような言葉を返した後、ゆっくりとブレインは腰を落とす。

 

 

 すると、目の前の【雷精】も同じポーズで腰を落とす。

 

 正面から返り討とうとしているのが一目でわかったブレインが<領域>を展開、さらに<縮地>で距離を詰め…ようとした瞬間、目の前の雷精も同じ速度で一気に距離を詰め、ブレインの<瞬閃>に対抗するように稲妻の剣で交差…「キン!」という軽快な音を残し、そのまま膠着状態に入る。

 

 

「いいねぇ…この程度について来られないようじゃ挑んだ甲斐がないってもんだよなぁ?」

 

 そうブレインが軽口をたたいてる間も、剣と刀の応酬は止まらない。

 

 何度も、何度も同じ剣の速度、同じ威力で打ち返され、ブレインも相手の剣を迎え撃つように刀で、既に何合目だか数えきれない剣閃で打ち合っている。

 

 

<神速二段>!

 

 

 ブレインが得意の技を繰り出すと、それに応じて、【雷精】も、それを同じ動きで返す。

 

 自分の技をそのまま初見で返されるという対応をされ、その剣速に負けない勢いでブレインがその剣を刀で止める。

 

 

 さらにブレインが攻撃に転じた刀も、同様に【雷精】の<返し(カウンター)>で対応されるも、それが直撃していないのはブレインの技量の高さ故だろう。

 

 

 お互いに疾風のような速度での剣と刀との応酬を繰り返し、次第にブレインが押され始める、疲労するか、しないかの種族的な問題だ。

 

 「はぁ…ふぅ…、さすがに…しんどくなってきたな、だが…何となく突破口が見えて来たよ…次で終わらせる!」

 

 

 一度、攻撃を休め、刀を鞘に戻し、腰を落とす。

 

 すると【雷精】も、その隙に攻撃しようとはせず、ブレインと同じ行動を取る。

 

(やはりな…コイツは、さっきの叫びの効果…武技だかなんだかわからないが…それが切れるまでは…どうやらこちらの攻撃に対応することしか出来ないらしい…。)

 

 もうさすがに精神力が底を付きそうな感覚を覚えているブレインは最後の賭けに出る。

 

 今からしようとすることに対して、最後まで対応されてしまったら、もう次は無い。 恐らくは逃げるか…ジリ貧で、同様の攻防を繰り返しながら効果時間が切れるまで待つしか道はないだろう。

 

 その最後の賭けに出る為に精神力を振り絞る。

 

 初見の武技でも対応されてしまうのは体験済みなので、それは間違いないだろう。

 

(こっちの<瞬閃>にも<縮地>にも対応できたのは、きっとこいつの難度との差で、敏捷性に開きがあるせいだろう…あの武技ありきのお陰で同等の素早さで応じることが出来た…と、そんな単純な理由であればいいんだがな…。)

 

「問題は…、まぁ、それはこの賭けがどうなるか次第で答えは出るさ…。」

 

 気持ちを切り替え、腰を落とした状態で、鞘に納めた刀に全ての意識を向ける。

 

 まだ<領域>の効果は続いている。

 

 だが、相手に<領域>が出来ているような素振りはあまり見えない…真似できるのは【雷精】自身に向けられた行動、攻撃だけなのだろう。

 

 ならば付け入る隙はある!

 

 そう思い、わずかな可能性に賭けるのみ! …そう決心する。

 

 刀の柄に手をかけ、握りしめる。

 

 数千、数万で済むかどうかわからない程に振り続けたこの愛刀、握りの部分がすり減り、自分の握り方のクセ通りに固まった柄に力を込める。

 

「くらえ!<神閃>! 秘剣!虎落笛(もがりぶえ)

 

 ひとたび鞘から抜き放てば目で追うことは不可能な剣閃。それのさらに上を行く神速の一刀。

 

 更にそれを<領域>の効果により命中精度を極限まで引き上げたブレイン独自の武技。

 

 しかし、目の前の【雷精】は予想通り、狼狽する様子も見せずに同じ動作をブレインに繰り出す。

 

(そうだろうな…そう来るだろうと思って居たさ。)

 

【雷精】の稲妻の剣がブレインと同じ速度で、ブレインと同じ剣の軌跡を描き、頚椎に切りかかってくる。

 

 そこで、ブレインは、攻撃途中のその僅かな…刹那とも言えるタイミングで、自分に強化をかけ、神速の一刀を更に加速させる。

 

 

 

<能力向上>!!

 

 

 

 すでにブレインの攻撃はトレースされ、その動きを反射させることを決定し終えている【雷精】には、もうそれを更に真似るだけの容量は残されていない。

 

 戦う者同士の実力が拮抗し、全く差がない場合、いつまで経っても決着がつかないという事例はある。

 

 しかし、そんな中でもどちらかにほんの僅かな差、もしくはズレが生じた場合、あっさりと勝敗が付いてしまうことはよくあることなのだ。

 

 それは、心の迷いだったり、偶発的な不可抗力など要因は多岐に渡る。

 

 踏み込んだ際の小石を踏んだ程度のバランスのずれ…

 

 疲労による判断力の低下や、集中力の乱れ、剣の振りの乱れ。

 

 それらのあらゆる事象が生死を分けることは大いにある。

 

 

 だが、目の前の【雷精】にそれを期待するだけ無駄だろう。

 

 ならば、自分に変化を起こすしかない。

 

 ブレインはそう結論付けて、【雷精】に向けた刀に乗せたのは最後の勝機、残った力を絞り出し、振りぬいた。

 

 

【雷精】の剣が首に届く寸前、刀の速度が急に伸び、ほんの僅かの差でブレインの一閃が【雷精】の首を跳ねる。

 

 <能力向上>の発動により、瞬間的に引き上げられた能力が、ブレインの刀の振りの速度、技量、力、体の捻り…攻撃に必要な要素の全てが急速に…瞬間で引き上げられ、紙一重の差でブレインの刀の方が目標を先に斬りつけた。

 

 さらにブレインは、相手の首を跳ねた瞬間に、己の上体を反らし、かろうじて、【雷精】の剣が振りぬこうとした軌道から首を外し、皮一枚切られる程度で済ませ…「パチン。」と刀を鞘に戻す。

 

 

 

 

 それを見ていたベル、フレイラも、他のフォーサイトのメンバー達もエルフの三人も集まってくる。

 

「やったな!こいつ!まさか、一人で片づけちまうなんてよ…どこまで強いんだよ、お前さん。」

 

 ヘッケランが走って自分の事の様に勝利を祝う言葉をかけ、ブレインの肩を叩く。

 

 

「すごいな…この状態になってるコイツを、一人で片づけられるなんて…もう少し待てばこのモードも切れそうな時間だったんだが、その前に倒してしまったか」

 

(ユグドラシル時代、同レベル帯でも…下手をしたら10LV上のパーティでも「超力モード」は手こずる形態だったのに…)

 

「これでなんで雷精? 雷撃を使ってる時よりずっと今の方が厄介そうだった。」

 

 アルシェがポツリと素朴な疑問を、何気なく口から零した。

 

 

 自分もそれには同意だが、あのやたら厄介な種を生み出していた運営だ、これも何かのモデル、似たようなテーマでもあって、それを題材にして作られたのかもしれない…そう思いながらも

 

「まぁ、みんな無事でよかったよ、あまり電気ダメージを受けた者は居なかったみたいだね。」

 

 

「えぇ、おかげさまでね…でも、妙ね、私、一体倒してるはずなのになんの変化も感じられないんだけど…」

 

(確か弓で倒してたと思うからレンジャーだよな…そんなに高い経験点、必要なかったはずだが…、あ…そういえば首を跳ねても死んでないやつが一体…、…あれ?)

 

 

 不思議に思い、足元に転がっている首を見下ろす…すると首は何かを言おうとしていた…

(まずい、そういえば首を跳ねても即座に死ぬタイプじゃなかった!!)

 

 

 防御系の魔法を使おうにも、【雷精】の首は今すぐにも何かを発動させそうな勢いだ。なんらかの攻撃魔法?それともスキル?が発動するのは明らかだが、一発くらい直撃を覚悟するしかないか?と思いながら周囲に声をかける。

 

「みんな!今すぐに防御態勢を…」

 

 ベルが言い終わらぬ内に首だけとなった雷精が自分を中心に、周囲一帯を範囲にする最後の攻撃スキルを発動させた。

 

 

轟 迅 雷>!!

 

 

 全員が範囲に収まるまで待っていたのか!と思うも…その最後のあがきは発生することなく…、いや、発生はしたが、誰にも影響を及ぼすことはなかった。

 

 

 円形のドーム状に展開された光の中で、轟音が響き渡り、全周囲から膨大な雷が乱れ飛んだ景色は見えたのだが…誰にもダメージを与えることはなく終わった。

 

 

(確かに、発動はしていた…だが、どうしてだ?なんで誰にも効果がなかったんだ?)

 

 

 ベルが不思議がっている間に、行動を開始していたブレインが自らの刀を【雷精】の頭に突き立てる。

 

 そこで、体の方はさらにヘッケランが<猛火噴炎>を発動させ、【雷精】に自分の双剣を交差させた際の魔力を叩きつけ、派手に燃え上がらせていた。

 

 

「なんだったんだ?今のは…、何か起こったみたいだが…何も…なかったよな?」

 

「えぇ、不思議と…ダメージも何もないようですね…何が起きたのでしょう?」

 

「それって、何か…もしかして、これの影響かな?」

 

 そう言ってイミーナが出したのは、一つの宝珠。

 

 その珠の模様は雷模様で、一瞬でも同じ模様のままではなく、めまぐるしく…火花が飛び散るような、雷が荒れ狂っているような印象のモノで、見ているだけで何かの効果は宿っているように思えた。

 

 

「それって、もしかして【雷精】が落とした物かい?」

 

 手に取って、不思議そうに見つめるベル。

 

 同時に<道具鑑定(アプレイザル・マジック・アイテム)>を唱えた。

 

 

「いや…これは違うようだ、確かに雷撃系の属性を宿したデータクリスタルだが…魔法の防御に関して発動するタイプじゃない」

 

 

「そう…それは残念ね…、…で?どんな効果?」

 

 イミーナが、どんな魔力が宿っているのか気になる様子で、効果について聞いてきたので、簡単に説明をする。

 

「チャージ用の…キミらの言葉を借りると「宝珠」ってことになるのかな? 雷撃属性の魔力を戦闘開始時に100%にチャージしてくれるものだね、その上で敵から吸収した分も無駄にせずに余剰分として別枠でチャージしてくれる効果の方はすでに、アルシェちゃんの鎧には備わってるから…、コレの利点を挙げるとすれば、魔法詠唱者(マジックキャスター)じゃなく、雷撃呪文を使えなくても、あの装備に電力が勝手に蓄積されるから…、その能力を使いこなせるようになる…って感じかな? 戦闘でチャージした分を使い切っても、次の戦闘時には放っておいても元の100%に戻る…という仕組みになる。」

 

 

「え? じゃ~、それ付ければ私でも装備して使いこなしたりとか…出来るかな?」

 

 花が咲くようなというのはこのことか?というような笑顔で何かを期待しているイミーナがそう言って迫ってきた。

 

「あぁ、いや、不可能ではないと思うけど…、その鎧を装備したら、イミーナさんは「盗賊系」のクラスが無駄になるよ?きっと使えなくなると思うし…そうなると、盗賊スキルの方だって…」

 

 とりあえず、今アルシェが着ている鎧は、革鎧どころの騒ぎではない、装備したら間違いなく盗賊系クラスは意味がなくなってしまうだろう。

 

「そんなのどうってことないって! 罠外しとか、鍵開けとか、そういう時にだけ、この鎧を外しちゃえばいいんでしょ? アンダーアーマーは有効だし、素っぱだかになるわけでもないんだし?」

 

 食い気味に問い詰めてくるイミーナだが…本当にそれでいいのだろうか?

 

 最初はかなりイヤがっていたはずなんだが…それに、今は装着してる人って、アルシェちゃんだしなぁ…

 

「アルシェちゃん…どうする? 彼女はこう言ってるけど…?」

 

「うん、いいと思う、その話し合いはもう済んでるし、貸すだけならいいって言うことでイミーナには納得してもらってる」

 

「そ…そうか…、それじゃ…これ」

 

 そう言って、ベルはアルシェに鎧を装備させる際、後ろに弾き飛ばされた…最初に装備していた服やらなにやらを手渡す。

 

 さすがにその衣類はマジックアイテムではないため、自動的に装着できる設定は入っていない、必然的に、着替えの手間は発生するのだ。

 

 

「ぁ、じゃ~アルシェ、扉の後ろに行こう?そっちで着替えようよ! 男連中は来ないこと!いいわね!」

「じゃ~…行ってくる。」

 

 

 そう言って二人はそそくさと着替えをしに行ってしまった。

 

(そうすると謎は残るな…、あの時、アレが無効化されたのはどういった理由だ?)

 

 

 そう頭を傾げていると、ルチルが近くに歩いてきて、さっきの珠とは別種の…それでいて、巨大な骨を無理やり不器用に削って作られたような玉、それは女の子の彼女の手の平にすっぽり収まるようなサイズになっており、中心からは、闇色の…どす黒く紫っぽい光が大きくなったり小さくなったりしているのが透けて見える、まるで脈打っている風にも思えた。

 

「あの…もしかしたら、これの影響でしょうか?」

 

「ん??? それは?」

 

「これは、骨の竜(スケリトル・ドラゴン)が一斉に消えた時に、一個だけ落ちて来た物で、とりあえず落ち着いてから聞こうと思って居たので見せる機会がなかったんです…」

 

 

「そうか、それならこれの影響なのかな? これも鑑定してみよう。」

 

           ・

           ・

           ・

 

「うん、ビンゴだ…これだね…。」

 

「そんな凄い物なんですか?それ!」

 

「うん、これは骨竜の核石(スケリトル・コア)って名前みたいだね、このクリスタルの効果は、第6位階以下の魔法の無効化、でも回復や、バフなんかの自分の得になる魔法はちゃんと通してくれるらしい。デバフや、攻撃魔法なんかは当たっても効果はゼロ…その代わり第7位階以上のダメージとかはダメージ減少とか関係なくそのまんま通っちゃう、って感じだね。」

(こんな便利な物…ユグドラシルでもあったっけ?…Wikiの書き込みにも、当時はこんなの…どこにも書いてなかった気がするんだけど…、、まぁギルドに顔を出しにくくなってから、そっちの更新は追ってなかったからな…新たに追加されてたのを知らなかっただけかもしれないけど…)

 

(…でも、こういうのって本来はスキルには影響を及ぼさないはずなんだけど、アレは、スキルだからMPの消費はしないが、ダメージの計算自体は魔力を消費させることで消費分に応じたダメージ量の増加の効果があったはず……だから、『魔法』扱いとして処理されたのか?)

 

 

(ま…細かいことはいいか、こういう貴重なアイテムはどんな時でも手に入ると嬉しいし、心が躍るよな。)

 

 

「いいのを出してくれたね、ルチル、拾っててくれなかったら、大損する所だったぞ?」

 

 彼女の頭を優しくなでてやる、これがあれば、難度の伸び悩んでるロバーデイクさんの成長を促す手助けが出来る可能性も格段に上がったって事だ!

 

 頭の中でそう考え、補助役にディーネでもつけてあげればそう危ない橋でもないだろう。と一人、納得していた。

 

 

                ★★★

 

 

「さて、まずは簡単な方から片づけてしまおう…<上位道具創造(クリエイト・グレーター・アイテム)>」

 

 通常、現地産の材料を使っての武器、防具などの錬成や、道具作成なら、<道具創造(クリエイト・アイテム)>でも充分に用は足りた。

 

 だが、今回使う材料はユグドラシル由来の材料だと言っても過言ではない、その為<上位>でなければ、恐らくは無理だろうという結論に至ったのだ。

 

(ユグドラシル由来の武器、防具を最初から創り出すなら、魔法だけじゃなく鍛冶職の補助も必要だろうが…、今回はデータクリスタルを材料にして、アクセサリに仕上げるだけだし…金貨が減るだけで済むだろう。)

 

 これからの展開を軽く考え、魔法を発動させた。

 

(アクセサリの土台となる金属のレベルが50を超えると、鍛冶職の補助、もしくは鍛冶職を持つ人間でなければ作れないという条件が発生する…だからここはそれより低い20LV金属で充分だろう。元々骨の竜(スケリトル・ドラゴン)のレベルだって、そもそも20にも届いていないんだし…)

 

「そうなると…指輪とかだと『核石』のサイズ的に…なんだかなぁ…って気分だし…、それならいっそ腕輪だな…イヤ、バックルっていう手もあるか!」

 

 イメージの中で想像、構築させ、形を整えていく。

 

 決して、締め付けがキツくならないように形状としては三日月状の形で抑え、真ん中の部位は、広めの幅にしておいて、そこに骨竜の核石(スケリトル・コア)がハマる様に確定させる。

 

 金属の見た目としては黄色の風合いにして、黄金にも見えるようにしてみた。

 

 外見としては、どことなくクロワッサンっぽい印象だがこれも一風変わった感じでいいだろうと思いながら確認すると、球体が丸々収まるにしては、手首に接触する面が平らすぎる。

 

 半分にカットされてしまったか?どうせなら、その半分にカットされてる方の骨竜の核石(スケリトル・コア)も、無駄にしないように作成されたらよかったんだけどな。

 

 …などと内心ぼやいていると…その呟きに反応したように、新たに同じものが作られる。

 

 三日月状としてのバックルとしては、若干太さが細めになり、サイズも小さくなったようだが、その分、節約されて余った方の金属と、残っていた、骨竜の核石(スケリトル・コア)の半分がハメ込まれたもう一つの…全く同じ「バックル」が発生していた。

 

 

「あ…これ…やっちゃった?」

 

 

 と思って居ると、後ろから声が聞こえてきた。

 

 

「うお! なんだ? ベルさんの腰の袋…パンパンだったのに、急に袋がしぼんじまったぞ!」

 

「そっちのエルフさん達の袋の中もそのようですね…たっぷり入っていたはずが、すっかり空になってます。」

 

 

(あっちゃ~…そこまでのレアリティじゃないにしろ、やっぱりユグドラシル由来の材料だから、ユグドラシルコインが消費されて、作られるってことになるんだな…、覚えておこう。)

 

 

 

 ベルは創ったばかりの2つのバングルを持ち、フォーサイトの方へと合流する。

 

「すまないね、多分そうなるだろうと思って居たんだが、このアイテムを魔法で作る際、連動して、集めた金貨が、手数料と言えばいいのかな?作成の手間賃?として徴収されてしまったようだ。」

 

 

「はぁ? なんだよそれ、ずいぶんだよな…せっかく…って、いいや、これはベルさんが管理してくれって話でこっちがお願いしたんだからな。これ以上言うのは野暮ってもんだ。」

 

 

 いろいろ言いたいことはあるようだが、諦めたようにヘッケランがそう言ってくれる。

 

 

「まぁ、キミらだって質のいい武具などをオーダーメイドで作ってもらいたい時には、それなりの資金を対価に上等な装備をしつらえてもらうんだろう? それと同じと思って納得してくれると嬉しい」

 

 

「はぁ…しょうがねぇな、そう言われちまうと、こっちも何も言えなくなるな…『それと同じだ』って言われると『そうか?』って疑問もないこともないが…」

 

 理屈は解らなくはないが、どこか割り切れない何かを心中に残しているヘッケランに、着替えを終えたイミーナが上機嫌で戻ってくる。

 

「まぁ、いいじゃないのよ、こっちだってそれなりのモノ都合してもらって生存率が上がってるっぽいのは事実なんだしさ♪ ある程度は大目に見ようよ、どうせ、この場から外に出たら、持ちだせない代物でしょ? …その金貨ってさ。」

 

「おぉ、おかえり、イミーナ…って、なんじゃぁぁ、そりゃぁぁ、イミーナ、お前…えぇぇぇ??」

 

「へへ~♪ 驚いたっしょ? 私も装備した瞬間、驚いたのよねぇ…まさか、スタイルがこんなに変わるなんてびっくりよ。」

 

「いや、変わり過ぎだって! それ、ヨロイの形だけってワケじゃ…ないんだろ? その…中身の方も…そうなのか?」

 

「んん? なぁによぉ~、ヘッケラン、そんなに気になるぅ?」

 

 今まで見たこともない顔をして、どことなく嬉しそうな…自慢気な表情をしたイミーナが、ヘッケランの顔色を窺っている。

 

 そりゃ、ヘッケランだって男だ、そういうのに変化したら、気になるのは当然だろう。

 

 そう…何しろ、ハーフエルフとは言え、エルフの血を引いてるイミーナは良くも悪くも、とにかくスレンダーなのだ、女性らしい細い体つきは、とにかくそれに特化しており、余計な脂肪分など、森林生活での身のこなしの邪魔になる、という意味でも、エルフとしての環境的にも、種族的にも、そう変わっていった経緯もあったのだろうが…。

 

 それがマジックアイテム、その装備である、『ペロロン鎧』の効果によるものか…或いは製作者の想い、こだわりそのものが異世界に於いて、より見た目を華やかに具現化させるコトこそが『正義!』だと結論付けたのか…。

 

 出る所はちゃんと出て、引っ込むべき部位はキチンと引っ込んでいる、誰がどう見ても女性的な体形に変化していた。

 

 あまりの変貌ぶりに、今までの話の内容が吹き飛んでしまったヘッケラン、そして、「男ってどうしてそう…」という目でその様子を距離を置いて見ているエルフの3人。

 

 

「まぁ、これの下がどうなっているかは、依頼をこなして帰って来てから確かめてみたらどう? それまでは秘密にしておいた方がヘッケランも、色々、夢が膨らんでいいでしょ?」

 

 

「もぉ…イミーナ、その辺にした方がいい…そのやり取り、あまりいい目で見てない人もいる…。」

 

「ん~~、しょうがないわね、この辺にしときましょ、みなさん、お騒がせしましたぁ~。」

 

 

「よかったですね、ヘッケラン、予想外の展開で…こうなるとは思ってなかったのでは?」

 

「そりゃそうだろう、だれが素材のスタイルまで変わっちまうと思うよぉ!」

 

「せいぜい、可愛がってあげて下さい、装備を外したら元に戻った、なんて事が無いように祈らせてもらいますから。」

 

 

「…ロバー、お前、絶対にそれを望んでるだろ?」

 

 

 

「それはそうとさ、ベルさん、ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ、この鎧って変じゃない?」

 

「ん? どうしました? 変…とは?」

 

 

 イミーナが装備の点については文句はないようであるが…、他の人に説明しても理解してくれないだろうと思って居るのか、他の誰かではなく、ベルの方に話しかけてきた。

 

 

「珍しいですね、相談事をチームメイトじゃなく、私の方に声をかけて来るなんて…」

 

 

「いや、この鎧ってさ、私が着てから、ずっとなんかの呪文みたいの、唱えてるのよね…でも、全く意味が解らなくって…頭に直接響いてるからなのか、まったく異界の言語でも聞かされてる気分なのよ。 アルシェの時はそんなこと起きなかったって言ってたし、私個人に対しての評価なのかどうか?ってコトが気になっちゃって…」

 

 

「へぇ…それはそれは…」

(まさかペロロンさん、エルフとか妖精種限定で、変な音声データでも仕込んでたんですか…やめてくださいよ、もう…)

 

「えぇぇ…と、ちなみに聞きますけど、その流れてくる声って、なるべく忠実に言葉にして発声することはできますか?」

 

 

「えぇ…できるとおもうけど…なんの言葉の羅列なんだか、解ったらちゃんと教えてね?」

 

 イミーナも正直、自分に何を言われているのか気になっているのだろう、何かの注意喚起か、警告か、それとも良い意味での祝福とかなのか…、どんな意味が含まれてる言葉なのかがわからないと、どうにも気になるらしかった。

 

「じゃ、言うね?」

 

 と、気を引き締めるような表情を見せるイミーナに、自然とベルの方も少し緊張が走る。

 

 

「お願いします。」

 

 

 

「ひんぬ~ばんざい、ろりっこばんざい、てんねんそざいはほごたいしょう、すれんだーもきょにゅ~もびば、まんせ~、おさないからだもまじさいこう。」

 

 

 がっくりと、膝から崩れ落ちた…。

(なんて音声を仕込んでるんですか…ってことは、間違いなく女性専用装備ですよね、男性が着ようとしたら、拒否されるだけならまだしも、防具の内側、肌に接触してる面に直接、電撃でも流れるようになんてしてないですよね?)

 

「ど…どうしたの? やっぱり、何か、悪い意味でのお告げ?的な言葉??」

 

(いけない…なんとか平静を装わなければ…)

「いや、そういう意味じゃないですよ、ただ、こちらも相当心の準備をして聞こうとしていたものでね…肩透かしを食らったと言うか…そこまで警戒することは無いです、あまりの緊張感の無さに脱力してしまった、みたいなものだから、気にしないでください。」

 

(こんな言い訳で通じるか?…まぁ、いざとなったらペロロンさんの言葉を自分流に直して、翻訳して伝えるしかないな…これ。)

 

 

「そう? それならいいんだけど…結局、なんて言ってたの?」

 

 

「え?…あ、あぁ…あの、実は、ですね…『あの少女もそなたも我の所有者として認めよう、女性はこの世の何よりも大切な宝である。我の力でそなたらを護ることをここに誓おう。』みたいな意味の言葉をずっと繰り返してるんじゃないですかね。」

 

(単に生身の女性に着てもらって嬉しさ大爆発して…ってことを妄想して、その音声データ仕込んでたとしたら、何てことに労力割いてんだ! ってツッコんでやりたい気分だよ、録音データを装備にセットするのって課金が必要なんだぞ!)

 

「あ、でもいつまでもその言葉が脳内で響いてると、気が散っちゃいますよね、少し止められないかどうか、試させてください、アーマーの肩部分に触れてもいいですか?」

 

「あ、あぁ、どうぞ?」

 

 

 許可が出たので、そっと『ペロロン鎧』の肩当ての場所に手を当てて、意識を集中させる。

 

 そして、その鎧に直接、言葉を叩きつけるつもりで、声には出さず、念じるような要領で言いたいことをぶつけてやる。

 

 

「いい加減にしろ! その口、今すぐ閉じないと彼女らから引き離して、永久にアイテム倉庫にぶち込んで二度と陽の目をみせねぇからな!エロゲマニアが!」

 

 

「あ…声が収まったよ、わざわざ悪かったね、ありがとう、このお礼は、今度何かで返すからね」

 

「あぁ、そんなこと気にしないでいいですよ。こっちもその装備を渡した手前、心苦しかった部分はあったので…。」

 

 

「そう言わずにさ…これでも気にしてるんだよ? 今までずっと偏見の目で見ててさ、事故の所為でそんな姿になったんだって最初から知ってたら、あんな冷たい対応しなかったのにな…って、ね。 だからさ、せめて罪滅ぼしくらいはさせてよ。」

 

 

「そうですか? なら、何かで困ったことがあったら、お願いします。」

 

「そうだね、でもアンタが困る状況で、私が助ける場面ってどんな状況だろうね、想像がつかないよ。」

 

「それはそうかもしれませんが、そろそろ本題に移りましょう、実はイミーナさんがここに来る前、アイテムを新しく創ったんですよ。 それの効果がどんな風に反映されてるか鑑定しようとしてたところでしてね。」

 

「え? そうなの?すごいじゃん! どんな装備? 武器?防具?」

 

「いえ、ただのアクセサリですが、それなりにすごい効果が籠っていますよ?」

 

「へぇ~…、それが、今その手に持ってるモノ? それってなに?手にはめる物?」

 

「そうですね、腕輪みたいな物で、バングルって言うんですが…、宝珠を埋めようとした時に丁度、半分に割れたみたいで…2つ出来ちゃったんですよ、なので、どんな効果に納まったのか、確かめようとしてたんです。」

 

「じゃ~、早く確認した方がいいんじゃない? 私たちのことは後回しでいいからさ。」

 

「申し訳ないですが、そうさせてもらいます、これの効果がうまくそのままこのバックルに移っていたら、最初にコレを貸してあげたいのはロバーデイクさんですからね、うまく行けばかなりレベ…じゃない、難度アップが期待できますよ?」

 

「え? …私…ですか?」

 

 いきなり話を振られて素っ頓狂な対応になる神官オヤジ、…って言ってもリアルの自分と比べたら一回りも違わない、少し上のお兄さん、そんな年齢差でしかないのだが…。

 

「えぇ、これは魔法に対する防御が並外れているモノだからね…、とまぁ、くだらない話はひとまずコッチに置いといて、鑑定の方に移るとしましょう。」

 

(ちゃんとうまく創れているかどうか確認しないとな…。)

 

 二つのバングルを手の平に乗せ、再度<道具鑑定(アプレイザル・マジック・アイテム)>と、念のために…と、<付与魔法探知(ディテクト・エンチャント)>も同時に発動させた。

 

 あぁ…二つになったのはそういう…でも、それも当然か…これがそのまま2個になったら、こっちの世界の魔法合戦じゃ、無敵状態だろうからな、そうなるのも頷けるか…。

 

「どうしたんです? 何かおかしなことでも?」

 

 話を向けられた当人からすれば、アイテムの事もそうだが、近い内、自分の身に降りかかる可能性の高い話題に繋がるのだ、気にならない方がおかしいと言えるだろう。

 

 

「えぇ、この2つのバングルなんだけどね、通常は二つとも同じ人間が左右の手に、一つずつ、手首に装着する物なんだけどね、別々の人間が片手に一個ずつ…って使い方もできる、でもそうすると、効力が半分になるというデメリットのオマケ付きだ。」

 

「半分?」

 

 意味が分からないようだ、もう少しかみ砕いて説明する必要がある。

 

「この腕輪のような物はね、2つ装備していると第6位階までのあらゆる魔法を無効化させることが出来る上、自分を助ける…、まぁ強化魔法だとか回復魔法、そう言ったのは問題なく受け入れてくれるという優れモノだ。」

 

「それは…優れモノなんていう範疇には収まらないと思いますよ?それどころか伝説級と呼んでもおかしくはない…それほどの物でしょう!」

 

(ウチらプレイヤーからしたら、微妙アイテムなんだけど…第7位階なんて、割とすぐ習得できちゃうし、それ以下しか使えないプレイヤーなんて初心者とか新規参入組くらいのものだったしな…。)

 

「まぁ、それはその通りかもしれません、でも先ほど、話したように、この腕輪のような物、これを片手ずつに分けて、2人が装備した場合、効果が半分になる…つまり第3位階までの魔法を無効化するくらいしか出来なくなる。」

 

「おいおい、第3位階って、それでも充分すぎるじゃねぇか!」

 

「そうかい? アルシェちゃんの元師匠さんは、第6位階まで使える人だと聞く、その人と対抗できるか、それとも、手も足も出せずに完敗してしまうか…それは大きい差だとボクは思うけどね…。」

 

 

「それは…そうだろうけどよ…。」

 

(まだ納得していないみたいだな、ここらでもう一回、引き締めた方がいいかもしれない。)

 

「いいかい? 今言った第6位階って水準は、今度、ボ…キミらが行く遺跡探索をする場…あの中まで行けば、お遊び程度の位階でしかない。この腕輪を持ってても、良いところ通じるのは第2階層の途中まで…そこから現れる階層の中にいるそれぞれの領域を護る領域守護者、さらにもっと奥へと行けば最後の番人、次の階層への侵入を妨害しに来る『階層守護者』には歯が立たない、軽く第8、第9って位階の魔法だって使ってくる。…その時点で、こんなアクセサリの効果は、気休め程度ですらなくなってしまうんだ。」

 

 そこまで言って、ベルが顔を真剣なものにして、言い放った。

 

「あの場所は…いや、あの場所自体が常軌を逸している…ある意味異世界だと言っていい、実力をつけていて、つけ過ぎと言うことは無い、関係者の許しも得ずに侵入などして、金品など持ち去ろうなんて考えたら、間違いなくろくでもない未来しか待っていない場所だ。」

 

 

 その場の空気が凍り付く、さすがに言い過ぎたか?とベルが少し冷静になった頭で、もう少しハードルを下げるか?と思い始めた時…。

 

 

「わかった、もう、お気楽な態度で臨める場所だなんて認識は捨てる、それに…欲はかかない…、目の前の宝より、命が優先、生きて帰ってこそ、次もある、そう思うようにする。」

 

 

 アルシェが、他の面々も言えないようなことを代表して言ってのける。

 

 それも、ベルの言う事が真実味を帯びていたためもあるし、今となってはベルと言う人物はアルシェにとって恩人だし、妹にとっても同じだ、接してみて信頼できるということは肌で感じているからだ。

 

 しかもベルという存在が、自分たちを遥かに凌駕する存在だという認識を持っている中で、そのベルが「気を引き締めないと命に係わる」とまで言い切る場所。

 

 正直に言うと…そんな場所に行きたいとは思わないが、自分の最後の冒険だ。

 

 ワーカーとは言え、一度引き受けた依頼だ、それなら遺跡で身分不相応な財宝を持って帰らなくても、帰った時に後金がある。 それなら、財宝を漁って命を落とすより、生きて帰った方が何倍もいい。

 

 貴族を剥奪され家も捨て、世捨て人同然でただの村人になった自分。

 

 そんな自分にとって、最後の思い出となるだろう、チームとしての冒険、それをこなしてから、未来に歩みを進めたい、そう思うアルシェの心にもう迷いはなかった。

 

 

「絶対に生きて帰る!」

 

 

 それは改めてチーム、フォーサイト全員の共通認識になった。

 

 

 

          ★★★

 

 

「やってしまった…」

 

 只今、ベルは反省をしている真っ最中だ。

 

 いくら位階魔法に対する認識が自分とずれていたからと言って、あれは言い過ぎだったような気がしてきたため、「セピアが一番MPが底を付きそうだろうし、ブレインも精神力がギリギリだろう? そろそろ休みを入れよう。」

 

 と、無理やりな理由を付けて、自分は「少し休憩をしてくる」と言って、ついさっきブレインのチョーカーを作る際に、拠点作成のアイテムで立ち寄った場所まで移動して来ていた。

 

 もちろん、ベルはその小屋の中である。

 

 当然、自分一人だ。

 

「でもな…あの発言を聞いてると、どうしてもナザリックを侮って見られている気がして、正直イイ気分じゃなかったんだよな…だからついつい言葉が荒い感じになってしまったが…、いけないよな、その場の勢いであそこまで不安をあおるつもりじゃなかったのに…、本当にモモンガさんの精神の鎮静化って新しい特徴がうらやましいよ…。」

 

 

 微妙に自己嫌悪に陥っている至高の一人、ベルリバーが、出口の見えない迷路にはまり込んでいた。

 

 そこに、外のドアからノックの音が聞こえる。

 

「誰だい?」と返事をすると「私です…マスター。」と即座に返答。

 

「そうか…」と短く返事をして扉を開ける、この拠点作成系のアイテムは、こっちの世界に来てから、展開させた者、もしくは創り出した者自身がドアを開けないと、中にも入れないし、中に入ったら、その人が開けてやらないと、閉じ込められてしまうようになっているからだ。

 

「やっぱりキミだけのようだね、フレイ、安心したよ。」

 

「はい、きっとお一人になりたいのだと承知はしておりましたが、かと言って、御身を放っておくなど我が身にそのような無礼極まる行い、出来ようはずがございません! お邪魔にはなりませんから、どうぞ私をおそばにおいてくださいませ。」

 

「ふ…そうだな、そのように創ったのも他でもない自分自身なのだからな、断る理由は無い、好きにしたらいい。」

 

 自嘲気味にベルが笑みを浮かべた瞬間、フレイラがホッとしたような表情を浮かべる。

 

「安心しました…先ほどまでなにやら浮かないご様子でしたし…何か私たちが御身の気に障るようなコトでもしでかしてしまったかと、皆も心配しております。」

 

 その言葉に一瞬「?」マークが浮かび、確かめたくなったベルがフレイラに問いかけた

 

「…? みんなって」

 

「もちろん、アルシェ様、セピア様、ルチル様、ディーネ様でございます。」

 

 他にはいないのかよ! …と突っ込みたくなる衝動をグッ抑え込み。

 

 

「そうか…それにしてもよくここが分かったな、フレイ。」

 

 

「はい、マスターに関する私の『勘』には少々自信がございます。 多分こちらにいらっしゃるだろうと…」

 

「ただの『勘』かよ!」

 

 と、自然に…即ツッコんでしまい、わずかに苦笑を漏らす。

 

 

 ホンのわずかな間だったが、フレイラが自分の方を見つめていたかと思うと目を閉じて、胸に手を当てる仕草をして静かに話し出す。

 

「ホっと致しました。 ようやくマスターの笑顔を見ることが出来ました、今まで、こちらに来てからずっと何かを思い詰めているようでしたので…、冗談を弄するのはあまり得意ではないのですが…がんばった甲斐がありました。」

 

 そっとベルの座っているヒザに頭を預け、少しの間、穏やかな時間が流れる。

 

「そう言えば、そんな設定も文章で入れてたな…『冗談は得意ではないが、それで笑顔にするのは好きなため時折、微笑ましい行動に出ることもある。』だったか…」

 

「この身の全ては、一から創っていただいた…マスターから最初に贈られた私だけの宝物でございます。」

 

「とは言え、ただの「苦笑」なだけだったがな…」

 

 そんなことを言うベルリバーに、フレイラがそっとベルの腰に腕を回し抱き着くような仕草を取る。

 

 

「それでも良いのです。 マスターの気がほんの少しでも晴れてくれるなら…それが自嘲だろうと、苦笑だろうと…私は気にいたしません。 それにマスターは普段からあまりお笑いになりませんから…せめて私の前でくらいは、自分を装わず、そのままのマスターを見せてくださいませ。」

 

 

「そうか?…そんなにボクは笑顔を普段、見せていないか? この口だらけの全身でよく『笑ってない』とかわかるな。」

 

 

「茶化さないでくださいませ。 この身も、そして、我が心も…そしてなにより私を形作る全てに、マスターの想い入れが籠っております。 主の感情を感じ取れぬわけはありません。」

 

 

「そうか…こうして二人でゆっくり話す時間があると改めてよく解るな…驚くくらいにボクの好みが反映されている、まさに理想の全てだよ、フレイラ…。」

 

 

「ありがとうございます、マスター、そのお言葉一つで、身に余る喜び、光栄の極みにございます。」

 

 

「それはそうと、さっきは「冗談」の一言で片づけられてしまったが、本当になんでこの場所がわかったんだ?」

 

 

「気配でございます…、マスターはこっちに来てから、別空間という事に安心され、探知阻害の方ではなく、魔力隠しの方の指輪をされておいでだったので…それで気配をたどってまいりました。」

 

 

「あぁ、そういえば、そうだったな、そこはうっかりしてた、気を付けよう、この世界から外に出る時は探知阻害の方もちゃんと指に装備するようにしなくちゃな。」

 

 

「まだまだ時間はたっぷりございます。まだ彼らの特訓は始まったばかりで、こちらの時間で一ヵ月も経っておりません、焦る必要はどこにもないかと…」

 

 体を預けたままの姿勢で、ゆっくり言い聞かせてくれるように諭してくれるフレイラ。

 

(そういえば、『声は甘く、落ち着いたようなトーンで、彼女は無自覚で癒しを与え、活力を与えるとともに、嫌味のない言葉で「手の平で転がす」ように誘導することが出来る。』って設定も入れてたっけ…)

 

 

 しばらくそうしてお互いの沈黙が、気持ちの平穏を取り戻し始めた時、ベルの方からフレイラに言葉を掛けた。

 

「なぁ…フレイ、ちょっとだけ聞いてもらっていいか?」

 

 ベルに体をすっかりと預けたまま、静かに返答をする。

 

「はい、なんなりと…。」

 

 

「お前はナザリックのNPC達をどう思う?」

 

 

 問われた意味がよくわからず、ゆっくりと頭を上げ、ベルに顔を向ける。

 

「どう…とは?」

 

 

「お前も薄々はわかっていることだろうが、実はボクは、一回はナザリックを捨てた。ギルド、アインズ・ウール・ゴウンも…ギルドメンバーとしての名前は脱退せずに残してある…だがユグドラシルに行かなくなったことは事実、忙しかったとか…そんなのは言い訳としか聞こえないだろう…」

 

 

 まるで、贖罪のようにフレイラに言葉をかけていく、そのベルの言葉に決して否定の声は差し挟まず、ただジッと、自らの神が全てを言い終わるまで、『何が言いたいのか』を確認できるまでただ、頷いていた。

 

 

「他のメンバ-達も同じだ、リアルの世界の生活を選び、モモンガさんのようにずっとギルドと共に歩むことを心のどこかで『いつかなくなってしまうのに…』と冷めた目で見ていた部分はボクにもあった。

 

 それでも、結局ボクは自分をだまし続けることはできなかった。

 

 居なくなるなら、きっちり居なくなって、ギルドも脱退して、NPCのデータも、持ってるアイテムも全て処分してキャラデリすればそれでよかったはずなのに…自分では戻る勇気も持てずに、誰かがまた誘ってくれるかも…と、起こりもしない偶然をただ待っていただけの男だ。」

 

 

 そこまで聞いてもフレイラはただジッと主人を見つめ、姿勢を正して聞いている。

 

 端から見れば、怒られてる異形の者と、叱っている黒髪の女性。という構図にも見えたかもしれない。

 

 

「だから、正直に言うとナザリックに行くのが怖い、怖くてしょうがない…だから探知阻害の指輪も、モモンガさんに渡されたときは嬉しかった、これで少しは自分だとバレずにすむかもしれない…憎しみの目も…さげすみの目も…恨みつらみの声も…やり過ごすことが出来るかも…なんて思ってたんだ。

 

 ボクは…みんなが『至高の41人』だなんて崇めてくれるメンバーの中でも実力のあるっていう立場じゃない、ただ、運が良くて、みんなが支えてくれて、可愛がってくれたから…戦闘でも、誰かがフォローしてくれて、助けてくれたからこそ、あのギルドに居続けることが出来た。 ただそれだけなんだよ!!」

 

 

 すると、今度はベルの方が、フレイラをじっと見つめるような様子になって、すがる様に返事を求め始めた。

 

 

「お前たちは、「至高の41人」って存在は完全無欠、無敵で、絶対の存在、ナザリックのNPCの誰よりも強く、何でも出来て、全ての事象を見通せて、どんなアクシデントがあっても完璧にどんな危険も排除できる…そんなヒーローみたいな者達の集まりだと思ってるんだろ?」

 

 

 そこまでで、既にベルの声は涙声になっている、まるで母に甘える幼子の様に…。

 

 

「教えてくれよ、コキュートスや、シャルティアや…セバスにも勝てない…そんな「至高の存在」になんの意味があるって言うんだ…、モモンガさん一人が居ればそれでいいじゃないか! あの人は強い! PVPでだって、あの人を完全に圧倒出来てたのなんて、ギルド内でもたっちさんと、ウルベルトさんくらいだ…、

 

 二線級で戦って居るしかできなかったボクとは出来が違うんだよ!」

 

 

 ただただ、すがるようにして、フレイラの両肩に手を乗せ、頭の部分をムネに当て、自分の顔を見られ、失望されないような体勢で、今まで心に溜めていた。 必死に隠していた本音をさらけ出す。

 

 

「それがなにか重要なことですか?」

 

 

 たった一言、フレイラの温かみのある声がベルの耳に届く。

 

 その言葉を聞いたベルは、顔を起こし、今度はフレイラの顔を見上げるような姿勢になる。

 

 

「ナザリックの者達の中でそのようなこと、気にする者など、恐らくはおりません。」

 

 

 そう…なのか? と心の中で、その疑問が渦を巻く。

 

 

「そうです…私にとってのベルリバー様と同様、他の者達にとってもベルリバー様という存在は「至高の41人」の1人、その宛がわれただけの地位の名称以上の価値がある…きっとみんなそう思っておいででしょう…それに、ナザリックのシモベの者達の中で、至高の御方の1人が1LVだったら?という問いを投げかけたとしても、その忠義の心は変わることは無いと思います。

 

 そう言う意味では、シモベ達も、守護者の方々も…ベルリバー様が領域守護者、階層守護者の皆様より弱い、そんな程度の事で見限る者は一人としておりません…それどころか、もしそうならば、この身をもって、盾として死ぬことになろうとも、お護りするまでだ。と…より一層、やる気を出すかもしれません。」

 

 

「この身は、かの御方々の為にのみある…。」そういう認識は他の皆様にもおありになるでしょう。 私にとってはベルリバー様という絶対無二、唯一にしてワールドアイテムと引き換えにしてくれと言われても、それに応じる意思はありません、それほどの御方、それがベルリバー様、あなた様なのです。」

 

 

 ……しばしの沈黙…、そして、深く深く吐き出すような息、その後、静かに顔を振って、改めてフレイラの顔を見たベルリバーの顔に迷いはなかった。

 

 そんな風にフレイラには感じられた、ならばそれが正解だろう。

 

「フレイ、すまないな…、主らしからぬ弱い姿を見せてしまった、醜態をさらしてしまったな。」

 

「いえ、そのような…私のような者に、包み隠さぬ本当のお言葉を聞かせていただけたこと、私のことを信じていただけているが故のことと受け止めております、ならばその期待に恥じぬ働きを今後ともお見せしていければと…そのような過分な望みを目標としております。」

 

 

(ホント…どこまでが本心で、どこまでが設定に沿った言動なんだか…)

 

 

「そうか…、なら私から詫びることなど何もないな…私も、フレイに負けないように頑張らないとな。」

 

 そう言い、フレイラの頭に手を置いたベルリバーの表情が今までのどんな時よりも柔らかく感じたというのは、きっと彼女にしかわからない、二人の間にある絆の成せる業なのだろう。

 

 

「さて、ずいぶんと長居をしてしまったな、そういえば、アレの処遇はどうなった?」

 

 

 

「アレ? …でございますか?」

 

 

 

「ホラ、最後の一体になって、放置してしまった【雷精】だよ、セピアに首を蹴り飛ばされた方の…」

 

 

 

「あ、ハイ、それならまだトドメは刺していないのではないかと…ベル様が処遇をお決めになりますか?」

 

 

 

「そうだな…そのためには、またお前の力を借りたい、フレイ…頼めるか?」

 

 

 その言葉に、即座にナザリックNPC全員に徹底されている『礼』の姿勢を取り、ひれ伏すように畏まる

 

 

「承知いたしました。 ではそのように。」

 

 

「うん、では行くか!フレイ!」

 

 

「はい、どこまでもお供致します。」

 

 

 そう言って、外に出て、拠点アイテムを回収、みんなと合流する頃には、数時間前に言われていた通り、ブレインが1人で夕飯の準備をさせられ、(農村育ちの彼にすれば)豪華な野菜料理の数々をテーブルに、人数分広げてくれていた。

 

 

(せっかく、準備してくれてたんなら、食べないと失礼だよな、それに何げに楽しみなんだよな、こっちの世界に来ての野菜料理…自分が居たリアルの世界じゃ、野菜なんてものは口にする機会なかったからな。)

 

 

【雷精】のことは多分、みんな意識の外に行ってるだろうけど、食事しながら、話をしてみよう。

 

 

 ヘッケランの剣に炎の精霊が宿って協力してくれたように、ひょっとしたら交渉次第で【雷精】も、助けてくれるかもしれないしな…、最悪、条件付きの協力関係って言うのでもいいけど…

 

 まぁ、それは食後、その時考えよう。

 

 

 と気楽に考えることで、ブレインが作ってくれた料理に舌鼓を打つ、御方であった。

 

 

 

 

 

 




あとがき


リーン・フォース・アーマーについての説明。

アニメ版、第三期では、バーゲスト戦の際、ンフィーレアがゴブリン兵士3体に発動させていたシーン
がありましたので、当初は「範囲型」だと思って居ましたが、それだと「漆黒の剣」の戦闘シーンで、
ペテルだけにその呪文を掛けたという点が疑問に残りまして。

結論として、ユグドラシル魔法としては単体。

異世界の住人が魔法に手を加え、突き詰めて修行をすることで変化を付けることが出来る、と判断。

結果、ンフィーレアが天才なので、リーンフォースアーマーを範囲型に改良できたのだろうという
結論で、天使の使うリーンフォースアーマーは、単体発動ということにしました。


説明2

発動された<石筍の柱>

展開させた時は、雷撃避けとして、アルシェ以外のメンバーの隠れ場所にしようとしていましたが、
【雷精】の頭が予想以上によかったため、結局意味がなくなった、そんな残念な扱いとなりました。






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