気づいたら大自然 小心者の異世界闊歩   作:yomi読みonly

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前書き

とりあえずブリタさんとブレインの確執(一方的にブリタが警戒してるだけですが)の方は、他のメンバーが墳墓編を展開中にカルネ村内で解消されてる感じ。




探索 大墳墓編
第47話 いざ!合流の地へ!


 ここは、ナザリック地下大墳墓

 

 いよいよ、本日の夕方、陽が暮れてから…アインズ個人の気は進まないながらも始まってしまうイベント。

 

 「ワーカーホイホイ」

 

 ナザリックの名を世に知らしめるための布石として、ワーカー連中を墳墓内に侵入させる計画

 

 その為のトラップの設置やPOPモンスターの出現レベルの調整など、かなり大規模に変更させていた。

 

 それは、ここ、ナザリックに於いて、未だかつてない程の「低難易度」に設定し直され、金貨を消費させる系のトラップは全てロック、発動しないようにした上、第一階層の表層、棺が並んでる区画(もちろんその一帯も棺を開けた際のトラップなど全ロック、発動不可にさせている)より先一帯、そこより一つ下に下りるまでは 、出現モンスターもLV10未満のアンデッドしか出さないように、とか…。

 

 他にも、通路上の転移の罠も発動を停止させ、可能なのは扉を開けて部屋の中に入った行動がトリガーになる非消費タイプの転移装置のみなど、細かい設定、設置位置の変更、早い内から極刑の対象を絞り込むため、棺の中に金品や、最高でも「上位」ランクまでの武具を撒き餌に敷き詰めておいた。

 

 それをわずかでも持っていこうとでもしようものなら、最低でも「殺す」ことは確定事項となる。

 

 という仕組みだ。

 

 そんな最終チェックをデミウルゴスとアルベドを交え、アインズを含めた3人で墳墓内を見回り、自動で涌き出るスケルトンなどで、罠にかかってもらったりして、不備がないかの最終チェックを確認していた。

 

 

「どうでしょうか、アインズ様…あらゆる可能性を考えた上での配置、お気に召していただけたでしょうか?」

 

 

 改まった物言いでアルベドがアインズに意見を求めていた、それも、そもそもアインズがトラップの調整具合を確認しておきたい…と言い出したことが発端である。

 

 

「あぁ、お前たち…もちろんデミウルゴスのしていることもそうだが、私の方にお前たちの仕事ぶりを疑う気持ちなど全くない…、それは最初に言っておかねばならん、そのことは頭に入れて置け。」

 

 そばに居た悪魔も、守護者統括もその言葉に打ち震え、背を曲げ恐縮する姿勢を取る。

 

「しかしだ…私が気になっているのは、今までナザリックのトラップの起動をせずにここまで…、いや、違うな、より正確に言えば、この草原にナザリックが転移してから「侵入者に対して」発動するトラップの効果になんらかの変質が起きていないか…そういう可能性の調査は今までしてこなかったが為、念のため、調べたくなったという事なのだよ。 あまり自分を卑下しないことだ…お前たちの働きも頭脳も…ある意味で言えば私以上とも言えるのだ…自信を持って然るべきだぞ?」

 

 

 今まで、転移という事件による「トラップ効果の変質の可能性」などと言う、想像だにしていなかった事に考えが至る主人に驚き、尊敬の念を新たにする2名…。

 

 昔からなんでも綿密に、敵のデータや、戦い方など…細かいところまで自分で理解しなければ気が済まないというのは「鈴木 悟」時代からの悪いクセだよな…と思いながらも、なんとかナザリックの頭脳の内の2人に対する言い訳がうまく行って安心する支配者をよそに忠誠心は日に日に急上昇を見せていて留まるところを知らないのは、ある意味、自分が蒔いている種が発芽…またはある意味自業自得…を地で行っていることに全く気が付いていないのは本人ばかりなり…なわけなのだが。

 

 NPC達がそう思わざるを得ないほどの説得力のある言い訳を常にしているアインズだからこそ、それが「心からの言葉」だと信じて疑わない彼らからすれば、自らの主であり総まとめ役でもある神たるアインズ…その口から出される言葉なら、それは疑いようは無い為、ますますアインズの首を真綿で締めるような結果へと続いていく。

 

 

「おぉ…考えてみれば正に、転移という事象が起き、毒の沼地から草原に転移するというありえない現象、それがナザリックの罠にも影響を及ぼしていないという保証はどこにもございません…まさかそれを失念していたとは…このデミウルゴス、一生の不覚でございます。」

 

(いや…「一生の不覚」…って、お前、悪魔なんだから寿命なんかないだろ!)

 

「いやいや、私だって、最近まで思いつかなかったのだ、違う立場だったら、私よりお前の方が先に思いついたかもしれないぞ?多忙を極めているデミウルゴスだからこそ、そこに考えを寄せる時間すら与えてこなかった私の方にその責はあろうと言うもの…それを責めてしまってはひいては私自身が仕事を割り振った監督責任を問われることになろう…違うか?デミウルゴス?」

 

 

 そう言われた悪魔には、その言葉に反論する言葉が浮かばない、そう言われてしまえば「自分が思いつかなかった」それ自体が、自分の能力が足りなかったのではなく、トップの責任だ、という慈悲深い言葉だと受け止めるしかない何よりの言葉であったからだ。

 

「ありがとうございます…不詳の身である私のような者にそのような温情あふれるお言葉…このデミウルゴス、感涙の極みでございます。」

 

「あぁ、よせよせ、そのような問答をしている暇はあるまい? 時間は有限だ、もうすぐここに招く「お客様」に対する歓迎の準備はしっかりとして、心行くまで楽しんでもらわねばな…、お前たちからの礼の言葉はそれからでも良い、気の早い客が招かれに来るより前に仕上げておかねば、我々の名にも響いて来よう。」

 

 鷹揚に言葉を紡ぐ主人に「まさにその通りだと思われます、アインズ様」とアルベドも同意見のようだ。

 

 

「まぁ、今まで見た感じ、これと言って異常が生じている様子はない…この分ならまず歓迎の趣向としては…ん?」

 

 

 アインズが、言葉の途中で何かに気を取られたように中空に目を向ける。

 

 アルベドもデミウルゴスも釣られてそちらを同様に見るが、そこには当然、何も無い。

 

「アインズ様、どうかなされたのでしょうか?」

 

 デミウルゴスが恭しく尋ねて来る。

 

 

「あぁ、いや、すまないな、こちらの事だ、この分なら趣向としては問題なく進みそうだからな…ここから先はアルベドの主催で色々と準備しておいてもらおう、デミウルゴスは、罠の効果に以前と変化があったりした場合に備え、そばに控えていること、私は、用を思い出した…少し自室に戻る。  何かあったら知らせに来るように。」

 

 

「は! 畏まりました、アインズ様!」

 

 

 2人がそろって礼の姿勢をとる。

 

 これが外に出る、だったり、少し席を外す、なら供の物を…と言いだす所だが、自室であれば「ギルドの指輪」で一足飛びなのだ、自室にはエイトエッジアサシンもいる、なんの不安があろうか…2人は、アインズが姿を消すまで、その背中を見守っていた。

 

 

 

                    ★★★

 

 

 

「さて、それじゃ、迎えに行くとするかな…<伝言(メッセージ)>」

 

 アインズはこめかみ辺りに指を当て、「これからそちらに<転移門(ゲート)>を開く、開いたらこちらへと繋がるので、入ってくるといい。」そう言うと、回線を切り<転移門(ゲート)>を開く。

 

 

 その闇の扉に半身だけ体を入れてみたアインズは、背中側はナザリック、前面部はナザリック地表部というかなり異次元な状態にいた。

 

 

「しばらくだな、フレイラ、さっそくで悪いが、私の手を取れ…、そこで話をしよう」

 

 

「申し訳ございません、御身の手を煩わせることになった上、お目通りも叶いましたこと、正に恐悦至極に存じ奉ります。」

 

(きょうえつ? なんだって? あとで調べておこう…)

 

「イヤ、何もそこまで堅苦しく考えることは無い、先ごろ、お前の言っていた要件とやら、落ち着く場所で聞かせてもらおう…。」

 

 

「は、それでは、失礼させていただきます。」

 

 

 ナザリックの真なる支配者、その者の手を取り闇の扉を通る。

 

 

 すると、自分が移動したのは、自分が目覚めた主の部屋と似た部屋の造り、しかし明らかに違う内装や、インテリアの数々、そしてベッドの位置の違いなど…、一目見て理解する。

 

 

「これは、アインズ様の御部屋…私のような末席の者に足を踏み入れる許可をくださるとは…これ以上ない誉れにございます。」

 

 

「あぁ、いやいや…その辺でいい、自室に呼んでまで感謝されては私の方が「どこなら大丈夫なのだ?」と考えねばならなくなる…守護者たちの目もあるしな…、まぁエイトエッジアサシンには口止めをしているので、余計な心配はいらんが…背景だとでも思えばそこまで気になるまい。」

 

 と、そこで話をすることを説明された御方は自らのベッドに腰掛けられ、聞き入ってしまうような支配者としての凛々しいお声を出される。

 

 

「それで? そのポーションとやら、見せてもらおうか? どのようなものが出来た?」

 

「は…こちらにございます。」

 

 

 アインズは手渡されたポーションを見て一言。

 

「今度は透き通るようなヤツか…しかも薄ムラサキとピンクの混合色…面白いな…ピンクに近づいたという事は少しはユグドラシル成分が強まったという事か?」

 

 

「いえ、製作者の話では劣化は止められないとのこと、回復の度合いも青のポーションより多少は上…程度だと言っておりました…ですが作成に於いて使用した器具、材料、素材など全ては現地産100%で作れる品だという(よし)にございます…」

 

「…ん~~…改めて聞いてると、どこか時代劇じみた物言いが時折出て来るな…それは製作者…ベルリバーさんの影響か?」

 

 

「わかりません、私の「せってい」なる物がどのような文章で書かれていたのかまでは…しかしたっち・みー様や、あまのまひとつ様などからは性格に関して手を入れられた記憶はございませんので、恐らくはそうなのであろうと…」

 

 

 そこまで話していると、急に立ち上がられた御方は私の肩を揺らして、今までと違ったお声で問い詰めに入られてしまった。

 

 

「たっちさんとあまのまさんがなんで、今の話で出て来るんだよ! 話してほしい、フレイラ…お前とたっちさん、あまのまさんとはどのような関連があるんだ?」

 

 

「……(この御方も我が主と同じ…我々の為にと必死にご自分を偽って…いや、我々の望む姿を演じようとして下さっている…なんという懐の深さか…本来の自分を出せないなど、どれだけお辛いコトか…)少々、お時間をいただきますが、よろしいでしょうか? 私が知る範囲の内容を語るだけでも時間はかかると思われますが…」

 

「あぁ、そんなことどうでもいい! 今は二人の事だ、それを教えてくれ!」

 

「は!承知いたしました。」

 

 

 

                     ★★★

 

 

 

「さて、今日もたんまりドロップ品は集まったことですし、私の部屋でたっちさんとあれやこれや言いながら作った品々…あの子に着けて上げましょう」

 

 

 そう言いながら、ベルリバーの部屋の扉を開けるあまのまひとつ…彼のカニの爪のような手で、どうやって開けているのだろうか…と思う者も居るかもしれないが、彼は鍛冶職、カニの手では不可能な事も容易にこなせる、それも元々は種族の特徴としては、ある意味コキュートス同様、4本の腕があるためだ。

 

 4本の内の上腕、それがカニの爪のような武骨な…それでいて攻撃の際はいかんなくその威力を発揮するあまのまひとつの自慢の武器であり、信頼できる腕でもある。

 

 そして下腕の2本は細かい作業が出来る様にと、ちゃんと人の腕のような細い腕…つまりそっちの方で鍛冶仕事の方はこなしているのだ。

 

 必然的に、そっちの細い方の腕でドアノブを回し、開けた。という事になる。

 

 

「毎回、私にカギ開けの役をさせるの辞めてもらえませんか?これでもリアルでは私、法の番人なんですからね」

 

 そう言って扉をくぐってきた二人目、クラン時代リーダーを務めていたという話を「私」の前で何度も聞かせて下さった至高の御方々のお一人、たっち・みー様がまたいらして下さった。

 

 

「そんなこと言って、たっちさんだってこの計画を出したとき、割とノリノリだったじゃないですか?」 

 

「それは、私の力が及ばなかったあの一件が未だに私の中から抜けてくれないからです…あの時…るし★ふぁーさんが「反対」の方に入れなければ…いや、あまのまさんもあの場に居てくれれば…と何度思ったことか…」

 

「それを言わないでくださいって…だからこうして私も協力してるんじゃないですか!私だって、その場に居れば諸手を挙げて賛成票に入れましたよ! ヒーロー好きを自負する漢の名に懸けて! …でもそれが出来なかった…その場に居合わせることが出来なかった謝罪ですよ。これは…。」

 

 と、うなだれ、申し訳なさげにしている「あまのま」が「たっち」に首を向け、一つ問いを投げかける。

 

「それに少しとは言え、共有資産であるギルド保管用の素材まで使うほど、自分を責める必要あるんですか?」

 

 と、あまのまが言えばたっちも反論する。、

 

「あまのまさんだってわかるでしょ? 僕らが餞別として彼に贈ったあのベルト…どんな意味が込められているか…その上で彼がそうとは知らず…でしょうが、NPCとして選んだ…「ジャガー種」、これを生かさなくてどうします?」

 

 その言葉にあまのまの方も首を縦に振り、肯定の意を示した。

 

「まぁ、それは私も同意です、ある意味これは私たちの勝手な暴走、夢を実現化したい、妄想した場面が本当に起きるなら…という認識で勝手にしていること…他人の造ったNPCに無断で手をかけるなんてこと、許されはしないでしょうが…、そこはブレーキ役のたっちさんがいるから安心して「この子」に自分の想いを託したりできるんでしょ?」

 

 

「まぁ、そうですね…彼もどうやら人獣種(ライカンスロープ)の種族を最大限に生かしたかったんでしょうね、そういう種族レベルを取っていることからも頷けます。」

 

 

「私たちがしてイイのは、この子の装備に、本来託されていなかった僕らの想いを乗せてあげること、そしてこれが活かされる日がいつか来てくれるように願う事だけ…まぁ、NPCな訳ですし、このまま、『彼』が来なくなったら、その意味もないんでしょうけどね…でも僕は信じますよ、「この子」がココに居る限り、『彼』はきっとまたここに戻ってくる…『彼』は「この子」を置き去りにはしない…そう信じたいんです。」

 

 

 …そう、どこか遠くを見るような視線を宙に泳がせながら語るたっちに、あまのまひとつも同調の言葉を返す。

 

 

「そうですね、それはワタシも同意ですよ、たっちさん、この前は半獣化した時の両腕にウチらが駆けずり回って素材を集め、精魂込めて作成したこの装備にふんだんにデータクリスタルスロットを拡張させてまで作った「シザースガントレット」…あれを付けるところで終わったんでしたよね。」

 

「そうです…そこで今回はこれ! このヘルメットですよ、これを…こうして…こう。」

 

「おぉ…そうしますか…それで、その白の<聖印(ホーリーシンボル)>部分の色を、特殊効果のある光でエフェクト付けて関連付け…ということですね。」

 

 

「そうです…「この子」は〝あのベルト"を装備する『彼』をサポートするために作られた、それなら、そういう存在なりの装備はこれしかないでしょ?」

 

 

「あぁ、だから「シザースガントレット」にあんなに拡張スロット作って、クリスタルあんなにぶち込んだんですね? やっとわかりましたよ…あれらの効果の意味が…と言うより銃とかドリルの時点で薄々は予想してましたけどね…」

 

 

「いつか、『彼』が、「この子」の半獣化フォームを見て、驚いてくれる日が来てくれること、楽しみにしていましょう。」

 

 そこであまのまひとつが、たっち・みーに思い出したように問いかける。

 

「じゃ~、この前…録画機能まで使って、音声仕込んだデータ、あれもそのヘルメットに仕込んだりしてるんですか?『彼』がウチらからのメッセージを見られるように…?」

 

 

「あぁ…あれはおまけ…ですね、彼がそれに気が付いて、見てくれるならそれが一番いいんですが…さすがにあんな無茶なトリガー条件は満たされることは無いでしょう…「この子」…NPCですからね、可能性があるとすれば、ソコの違和感に気が付いて、色々試行錯誤してくれればもう一つのスイッチを押してくれるかも…という僅かな可能性にボクらの想いを乗せておきたい、そのくらいですよ」

 

 

「本当にワタシ達って、酔狂ですよね…他人のNPCに…しかもサービス中に起動するかどうかも不透明な【作品】にこんな思い入れを突っ込んじゃってるんですから…。」

 

 自嘲するようにあまのまひとつが笑顔のエモーションの後、苦笑のエモーションもたっちに向けてうかべる。

 

「そこは一応、自分の中で線引きはしてますよ? さっきあまのまさんはギルドの資産に手をかけたって言ってましたけど、それは違います。 これはワタシ達二人が個人的に、他のギルドメンバーが居ない時に「拾った」素材のみを使って、作り上げた装備の数々…これらの材料自体はギルド資産から抜き出したりしてないでしょ?」

 

 

「まぁ、たっちさんがそう言い張るんなら私もそうだという事にしておきましょう。 …でもこれって不法侵入ですよね? いいんですか? 法の番人さん?」

 

 

「あ、それを言いますか? それを言うなら、私はあまのまさんが悪事を働かないように監視する役目ですから…目を離す訳に行かないでしょ?」

 

 

「ぷっ! 相変わらず、そういう「自分に対しての言い訳」をするの、上手じゃないですよね、たっちさん…。」

 

 

「そんなことどうでもいいでしょ? それより…これで…今日でこの子に私たちの望みを託す作業は済みましたね…。」

 

 

「えぇ…、たっちさんも、本当に娘さんの為に?」

 

「はい…娘の心臓に疾患が見つかりましてね…かなり重い状態です…遊び半分でユグドラシルにログインできるのも、精々があと一度が限度でしょう…嫁にもこっぴどく言われていますし…そろそろ引退の時期…なんでしょうね。 その時はみんなに別れを…いや…せめてモモンガさんにだけはちゃんと別れを言わなければいけないとは思いますが…娘の件はモモンガさんとは関係のないこと…余計なことでモモンガさんが悩んだりしないようにそこは伏せるつもりです。」

 

 

「そうですか…たっちさんがそう判断したのならいいでしょう…それなら私も、近い内、自分の持ち物、アイテム、鍛冶道具なんかも全部、自作NPCの【鍛冶長】に預けておくとしましょう。」

 

 

 

「え? あまのまさんまで何言ってるんです? あなたまでそれに付き合うことはないじゃないですか? 楽しんでてくださいよ!」

 

 

 たっちが叫ぶ、あまのまひとつ、彼を誘い込んだのは自分だ、ヒーローを熱くメンバーに語っていた時に通りすがりの彼が「その話、ワタシもそう思いますよ、あれは傑作ですよね!」という出会いがしらの遭遇が、ギルド入りになるきっかけとなった。

 

 

 それからはずっとギルドのみんなの装備を作る手伝いをしたり、夢の装備を作る為、またはたっち・みー打倒を果たすための武器を創りだしたい…等々、そんなギルメン達のための武器、または防具を作る手伝いもしてみたり…そんな彼は絶対にギルドに無くてはならない存在の筈だ。

 

 だからこそ、ここで自分に付き合わせるような形で辞めさせるわけには行かない。

 

「何を言ってるやら…ですよ?たっちさん、ワタシは、あなたが居たからこそ、ユグドラシルの真の楽しみに気づくことが出来たんです、あなたが居ないなら、ここにいる意味なんてないですよ。」

 

 

「あまのまさん…」

 

 

「それに、たっちさんが居なくなったら誰が私のヒーロー談義を熱く語るところ、真に理解してくれると言うんです? モモンガさんなら話には付き合ってくれるでしょうけど…困ったような顔されるのは本意じゃありませんよ…。」

 

 

「じゃ、どうされるんです? ギルマスには…家庭の事情?または仕事の関係だとでも?」

 

 

「そうですね…深く聞かれたら…言い訳くらいはさせてもらいますが…本当の理由は言えませんね…それこそモモンガさんに失礼な言い分ですから…」

 

 

「そうですか…モモンガさんは…いつまでここに居てくれると…、あ、いや、その話は止めておきましょう…今そんな話をしても意味は無いですしね…」

 

 

 そんな会話が遠くなっていくのを「起動されてない状態」の私が、記憶に焼き付けていることには…当の二人は気が付いていないのでしょう…そのまま、扉を閉めて出て行かれたのが…私がたっち様と、あまのま様をお見かけした最後のお姿となります。

 

 

 

 

 

 

 話し終わった後もしばらくの沈黙…かなり重い空気がその場を支配する。

 

「そんな…たっちさん…あまのまさん…そんなこと、一言も言ってくれなかったじゃないですか…何でです…それを聞いたら悲しませるからとかですか? それとも…ギルドマスターとして心もとなかったからですか…本当のことを聞いたら失望するとでも思ったんですか? そんなに信用がなかったとでもいうんですか?」

 

 

(あぁ…至高なる御身が…心を痛めておられる…私は…私はどうすれば…御方の為に、私が出来ること…)

 

 

 背中を丸め、頭を抱え、下を向いたまま己を責めるような言葉を繰り返し、出口のない迷路に迷い込んだかのような御方…その心中、いかばかりか…自分に出来ることなど、至高なる方々と比べたらホンの小さいことしか出来ないが…せめて少しでも心の救いとなるのなら…

 

 そう思い、不敬かとも思った、そんなことをして叱責をされるかも…そうも思ったが、それでも…この身が滅ぼされることになろうと、己の身にしかできないこと…そう考えると、思いつくのはその行動しか思い浮かばなかった。

 

 

 うずくまるように体を丸め、頭を抱え込み、ひたすらに自分を責め続ける御方の頭を抱き寄せ、胸の内で包むようにする。

 

 一瞬、ピク…と動かれたようだが、それも一瞬の事だ、数秒もすると落ち着かれたのか、お言葉をかけて下さったその声は、いつもの声に戻られていた。

 

「ありがとう…フレイラ、お前のお陰で少し気持ちが楽になった、まさかベルリバーさんのNPCであるお前にそこまでしてもらえるとは思って居なかったぞ?」

 

「至高なる御身、モ…いえ、アインズ様が心を痛められる必要など、どこにもありません…、御方々は、アインズ様のことを(おもんばか)っておられました…誰よりも慈悲深く、心のお優しいアインズ様だからこそ、聞かせるべきではないと…そう思われたからかと思われます…私のような矮小な身で、至高なる方々の心の内、その全てを理解しきるなど…到底かなうべくもありませんが…、まずそれが絶対間違っているなどということは無いかと…僭越ながらそう考えております。」

 

 落ち着いた様子を肌で感じたフレイラは、す…と体を離し、すぐにまた跪く姿勢に戻る。

 

「うん…そうだな、あの二人は、決して人を、同じギルドメンバーを侮って見るような人たちでは無かったな…それに気づかせてくれたこと…礼を言うぞ、フレイラ。」

 

「もったいないお言葉…過分なまでのお言葉…痛み入りましてございます。」

 

 

「やはり、お前はベルリバーさんが第一だからか、それとも彼がそうあれと作ったからなのかは知らないが…他のNPCとは少し温度差があるな、もちろん悪い意味ではないぞ?良い方の意味でだ。 私も必要以上に身構えなくて済むというのは、ある意味では気が楽だ…、それはそうとポーションの話であったな…すまないな…話が脱線してしまっていた。」

 

 

「いえ、私が不用意なことを申し上げてしまったが故の過ち…我が身を以って謝罪させていただきます、それで足りなければ…この命を以って謝罪を…」

 

 という言葉を言い終わらぬうちに至高の御身はその言葉を遮る様に、ご自分のお言葉を割り込ませることで制止に入られ、差し止めてこられた。

 

「良い! その必要はない! フレイラ=ルアル=アセンディア、お前の罪の全てを私は許そう…そもそもお前に罪などない…私が聞かせろと命令したのだ…それなら責任の有無は私の方にこそある…それをお前に擦り付けたのでは上に立つ者として私は失格となってしまおう…もう一度言う…お前に罪は無い。 それを心に刻んでおけ。」

 

「は! 心優しきお言葉…我が身に余る寛大なお心に感謝いたします。」

 

(やっぱりどこかでNPCの忠誠心は残っているのか、要所要所で他の皆との態度とダブって見える時があるな…)

 

 

「それにお前の命は私の一存でどうにか出来るものではあるまい、お前の命はベルリバーさんの為にこそある、ならば、その命は「彼」の為に使え! 私のような者の為に命を散らすような真似などは絶対に許さん、それを心しておけ!」

 

(ただポーションを届けて説明をするだけのお使いで「なんでNPCが自殺するようなことに?」なんて問い詰められたらどうするんだよ!「ごめ~ん、テヘペロ」じゃ、済まないんだぞ!)

 

 

「さて、100%現地産という事だが…、どのようなものになったのか見させてもらうとするか…<上位道具鑑定(オールアプレイザルマジックアイテム)>」

 

 しばらく動きが止まっていたかと思うと、「ふむふむ…なるほど?」と呟きが漏れる。

 

 

「たしかにこれは面白いな…先ほどの説明の通りのようだが、隠された効果もあった。劣化速度自体は青のポーションとそう変わらないが…<保存(プリザベイション)>の魔法をかければその効果は永続化される…つまりは青のポーションの様に期間限定の<保存(プリザベイション)>をかける必要があり、効果期間が切れる前に飲み切るか…そうでなければまたかけ直すか…などしなくても一度の<保存(プリザベイション)>で完結する…条件としては微妙だが…最終的には劣化しなくなるという点ではユグドラシルポーションに近く、だからと言って効果は青のやつと基本的には変わらない…だが、魔力の高い者が使ったり振りかけたりする場合と、魔力の全くない者が使ったりする場合では違う効果が表れ、魔力の高い者が使った方が回復量が上がる、という点は面白いな…。」

 

「いかがいたしましょう?我が主からは、これを市場に出せば普通のポーションより価値は上、価格もそれに応じて高く設定できるため、1割の見返りでも数が出回れば、より多くの利益につながるだろうというお話でしたが…?」

 

 フレイラがそう伝え終わると、アインズは少し何か考え込むようになり…少しして結論を出す。

 

「うむ、これは市場に出すという点については賛成だ。 …だが今すぐ、どこで…という許可は出せん! これを下手に世に出したりすれば、それだけ影響も大きいだろうが反作用…つまり抵抗勢力との軋轢も大きくなろう…これは、あと少し待て…それまではカルネ村内でのみ、臨床実験、言い換えれば村民全てに抵抗感がなくなるまで…、認識が広まるまでは村外には出さないように徹底させよ。 …どの都市、街、国で広めるかは後々、伝えることにするが…それまではくれぐれも外に情報が洩れるようなことにはならぬように厳命する!」

(あとでナザリック内にもそのこと、みんなに伝えないと…、とりあえずその先のことは保留だな…。)

 

 

 

                     ★★★

 

 

 

「はぁ~~…のどかだねぇ~…」

 

 思いっきりのどかな時間を満喫しているヘッケラン、それを咎める者は居ない、誰しもが同じ感想だったためだ。

 

 

「まぁ、気持ちはわかるがな…、だが気を緩めすぎじゃないか? 護衛としてここにいるんじゃなかったか?」

 

 ブレインがそう注意をしたが、ブレイン自身も少しはあの空間から解放されて少し気が抜けている部分はある…が、その目も、感覚も…周辺を警戒することに終始させていて、ヘッケランの様にだらけている雰囲気は無い。

 

「……結局、戦闘の最中、一度もコレは効果を現さなかったけど…どうやったら発動する…? ベルさんに聞いておくべきだった…。」

 

 アルシェが自分の腕に嵌めている…ベルからもらった腕輪を見つめる…その腕輪の輝きは変わらずに見とれてしまいそうな程だが、ずっと何も起きないと不安にもなってくる。

 

 どうすれば効果が出るのだろうと…そしてどんな効果が込められているのだろうか…という不安もあった。

 

「まぁ、いいじゃないの…あの人が渡してくれた物なら、効果はちゃんとしてるんじゃない?」

 

 通称「ペロロンアーマー」を装備しているイミーナからすれば、すっかりこの鎧にも抵抗感はなくなっていた。

 

 攻撃力は申し分なく、自分のイメージ通りに盾は浮遊して勝手に動いてくれるようになる、一度動けば何もイメージしなくても勝手に防御に回ってくれるのだ、便利以外の何者でもない。

 

 何もない時は、アルシェがしてたように、浮遊盾をウエスト部分に密着させることにより、露出してる見た目を隠す役割もさせている。

(装備中は、憧れだったそのままのスタイルに固定されてるみたいなんだもん…外したくない気分なのよねぇ~…)

 

 

 他のワーカーチームと比較しても、これは自慢の一品だろう、これを見た他のチームの反応が楽しみだ、と思って居るのはまだ口に出していない。

 

 

 そんな中、いち早く異変に気付いたのは緊張感をすっかり手放し、荷馬車の荷台に体を投げだし、空をのんびりと見上げていたヘッケランだ。

 

「なぁ…おい、みんな、アレ…なんだろな? わかる奴…いるか?」

 

 ヘッケランが何かを見つけたように天を指さした。

 

 馬を操る必要のあるンフィーレア以外は全員が空を見上げた…すると、空高く、ポツンと黒い点が見える…それは次第に大きくなっていき…いや、大きくなっているのではない。

 

 こちらに近づいてくるようだ…近づいてくるにつれて見えて来たもの…それは黒い点ではなくボール状の黒い物体、その中に苦悶にのたうち回るような表情の顔、それが何人分だというのか…数えきれない程に入れ代わり立ち代わり「表情たち」が表面に現れ、消え、そしてまた現れ…を繰り返している様が見て取れた。

 

「ありゃ~…なかなかの相手だぞ? やべぇ…非実体のモンスターだ…魔法の効果や武具じゃなきゃ通じない相手じゃなかったか?」

 

「えぇ、確かそうでしたね…アンデッドの知識は広めにしてありますが…なかなかお目にかかれない存在です…。」

 

 

「どんな名前だか…憶えてるか?」

 

「確か…「痛苦の怨嗟屍魂(スクリーチ・ボール・コープス)」ですね…」

 

「みんな…戦えるか?」

 

「えぇ、問題ないわ」

 

「こっちも…大丈夫…。」

 

「なら、先手必勝!ですね!」

 

 

 フォーサイトのメンバーとブレインは荷馬車から降りて戦闘態勢へと移る。

 

 

 しかし、そんなフォーサイト達を眼下にした黒い球体状のモンスターは、全周に断末魔のような数多の表情たちをびっしり張り付かせながら、多重ステレオサラウンドのような聞き取りにくい声で警告を発してきた。

 

 

「聞け!愚かな人間どもよ! 我は先ぶれである…」

 

 

 すると、別の苦悶の表情を浮かべている顔からも言葉が発せられた。

 

 

(「どうやら向こうは私たちに時間をくれるようです…ホラ、ヘッケラン、行きますよ?」)

(「あ、悪いなロバー…。」)

 

 

「寿命も短く、刃が体を突き抜けただけで生命が尽きてしまうひ弱な人間達よ…その身で、これから先、汝らが踏み入ろうとする地は死地である。」

 

 

(まだ時間はあるようですね…)

(「では、ブレインさんも…支援させていただきます、これをどうぞ」)

 

(「あ、俺にもしてくれるのか、悪いな…感謝する…。」)

 

 

 そして、また違う悲鳴をあげるような大口を開けた表情も叫ぶ。

 

 

「その死地に踏み入る資格があると自負するのであれば、我を倒して見せよ! 勝利でその証を立ててみせるのだ…。」

 

 

(「まだ時間はあるようです、それなら護りを固めましょう、<魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)><聖なる救い(ホーリー・サルベイション)>」)

 

 

 更に、怨嗟のような表情をありありと見せる表情は最後の警告を出した。

 

 

「戦いの中で勝ち目がないと理解したなら逃げよ、我らは追わぬ、敗者の証として…このようなコトをした依頼主を恨むが良い!」

 

 

 それを最後に痛苦の怨嗟屍魂(スクリーチ・ボール・コープス)も戦闘態勢に入る。

 

 上空の…まだ射程の遠いと思われる位置から精神をかき乱すような、耳を覆いたくなる絶叫が響き渡る。

 

 

 しかし、異空間で難度を上げ、レベルアップしているメンバー達は抵抗(レジスト)に成功していた。

 

 

「こいつは長引いたらまずそうだな…早めに決着をつけるぞ! イミーナ!」

 

 

「えぇ! 任せて!」

 

 

 その鎧の効果で電流の迸る弓と矢を作り出し、雷撃の矢を放つ。

 

 

 すると第4位階魔法<雷電(サンダー・ライトニング)>の効果を宿した雷矢が痛苦の怨嗟屍魂(スクリーチ・ボール・コープス)に直撃するとともに、その魔法特有のエフェクト、天から地に落とされた稲妻が、直撃した痛苦の怨嗟屍魂(スクリーチ・ボール・コープス)に対して、追加ダメージを与える。

 

 それは宙に浮かんでいる、若しくは空を飛んでいるモンスターのみに通じる追加ダメージだ、地上の敵の場合は、そういう効果は表れない。

 

 ギャァァァァ… と、ダメージが通った痛みに苦痛の表情を浮かべた敵は反撃を試みる。

 

 

「やるな…人の子の分際で…、それではこれではどうかな? 恐慌(スケアー)!」

 

 

 向けられた対象はイミーナだ。自分に攻撃を届かせた存在に対象を絞るのは仕方ないと言えた。

 

 

「ぅ…うぅぅぅ…」

 

 

 次第に彼女の様子はおかしくなっていく、どうやらこれには抵抗(レジスト)を失敗した様子だ。

 しばし呆然となり、次第に身動きが取れない程の恐れに囚われているようだ。

 

 

「<獅子の如き心(ライオンズ・ハート)>」

 

 ロバーデイクから支援魔法が飛ばされる、すると効果が表れイミーナの心はもはや、何の影響も受けていない。

 

「ありがとうロバー! 助かったわ」

 

「いえいえ、それも役目ですからね、気を付けましょう」

 

 

「こっちも忘れてもらっちゃ困るぜ?<空炎斬>!」

 

「こいつも喰らいな! <空連斬!>」

 

 

 

 ヘッケランとブレインが、いまだに宙に浮かび、剣の届かない位置にいるモンスターに攻撃を仕掛ける。

 

 異空間での戦闘を通じ、手に入れた力をふるうヘッケランと、そして自力でその域まで到達するに至ったブレインが、共に闘気を剣に宿し、その気を剣の刃並みに研ぎ澄まし振りぬく連撃を見舞う、するとそれは直線で最短距離を通り、ヘッケランの飛来する炎の剣閃と同じタイミングで、痛苦の怨嗟屍魂(スクリーチ・ボール・コープス)に到達、その3連撃はダメージを与えるには充分だったようだ。

 

 相手は傷つき、更にその傷口を炎で焼かれ、アンデッドの弱点である炎により、第4位階の雷撃並みのダメージを受けてしまう。

 

 何故なら、ヘッケランの双剣にはロバーデイクからの神聖属性が付与されているため、炎のと両方のダメージがが上がっているためだ。

 

 

「対策を取ってないモンスターなら弱点はやっぱり効果的なようだな。」

 

 とヘッケランが言うと…

 

「だが、これで終わりじゃないぞ?気を緩めるな!」

 

 横で警戒を緩めないブレインの檄が飛ぶ。

 

 

 

「なるほど、その地に至らんとする力は身に着けているようだな…だが、その程度で得意になるなよ!<負の闇域(ネガティブ・ダーク)>」

 

 

 フォーサイト達の周囲を闇が支配する…それと同時に<負のダメージ>がメンバー達に継続ダメージとなって襲いかかり、徐々に体力も奪う。

 

 

 体が重くなるような…行動にぺナルティでも負ったような感覚に囚われ、痛みも増している感じさえする。

 

 

 闇の中に全員が囚われ、時間が来るか術者を倒さない限り、決して消えることのない深き暗黒が全員を蝕んでいく中、上空で高らかに笑う痛苦の怨嗟屍魂(スクリーチ・ボール・コープス)

 

「ハッハァ! 思い知るがいい矮小な人間どもよ! 闇の牢獄で弱り果てるがいい!」

 

 

 そんな中、不敵な声で立ち向かわんとする1人の声が、闇の中から痛苦の怨嗟屍魂(スクリーチ・ボール・コープス)に届く。

 

 

「勝ち誇るのはまだ早いんじゃないか? 笑うのは相手の死に様を確認してからがいいぞ?」

 

 という声の直後、その声は技の名前を叫ぶ。

 

「<疾空瞬閃>」

 

 

 闇の空間がまだ展開されている為、何がされているのかわからない痛苦の怨嗟屍魂(スクリーチ・ボール・コープス)が何が起きるのか見ていると、発声と同時に「パチン」という小気味良い音が聞こえたかと思ったのと同時に痛みが走る。

 

 

「悪いな、こっちは<負の属性>の攻撃には耐性があるもんでね…この程度なら、行動に制限などは受けないさ」

 

 

 「う…おぉぉ…!!」

 

 

 痛みの為、大きくバランスを崩し、少し落下するものの痛苦の怨嗟屍魂(スクリーチ・ボール・コープス)はなんとか体勢を保ち、浮かぶ姿勢を維持する。

 

しかし、その位置はもうブレイン達の頭の上くらいの高さまで高度を落としてしまっていた。

 

 

「おのれ! おのれぇぇぇ!!」

 

 

「そっちは痛みに耐性はないみたいだな…アンデッドなのに痛みはあるか…、難度が低いからってことかもしれないが…?」

 

 

「お前は…お前は何者だぁぁぁ!!!」

 

 

「俺かい? 俺はしがない風来坊さ、今はとある村で、これから名を上げることになるだろう指揮官の下に就いている…そんな程度のただの剣客さ…名乗る程のもんじゃない。」

 

 

 そう言うと、ブレインは腰を落とし最後の攻撃の体勢に入った。

 

 無言で、武技を連続発動させ、<呪われし(カースド)>のクラスに共通する特性、<負の属性>を乗せた攻撃(それはアンデッドなのでカットしてあるが…。)に、力任せに近い重攻撃を通常攻撃と同じ扱いで出せるようになったダメージによる、ブレイン得意の更なる連撃、そして、その身が振るう刀は「非実体」にもダメージを通し、更に「神聖属性」でもある。

 

 もちろん、命中率が爆上がりする<領域>も展開中だ。

 

「くらえ!<連斬 虎落笛(もがりぶえ)>」

 

 

 通常の虎落笛(もがりぶえ)の攻撃に、更に逆側からの虎落笛(もがりぶえ)を加え、左右からの頸部切断に特化させたブレイン独自の武技、それをアンデッドである敵に放つ。

 

 切断する首はないので、即死効果はないが…、それでも2度の同時攻撃によるダメージの積み重ねは大きい。魔法の武器ではないが、荷馬車を降りた際、ブレインもロバーデイクに<武器神聖化(ホーリーウエポン)>の魔法をかけてもらっている。

 

 魔法効果による<神聖>効果と、武器由来の<神聖>の攻撃が重なり、アンデッドにとっては致命的な二連撃となった。

 

 

「みごとだ…その実力であれば…最低限での実力はあると判断した…行くがいい…死が待つ終焉の地に…」

 

 

 そう言うと、痛苦の怨嗟屍魂(スクリーチ・ボール・コープス)は崩れ去り、そこにはすでに何も残されていない。

 

 

「俺らが倒さなきゃいけないのにブレインが倒しちまったのかよ…、お前が認められてどうすんだ? カルネ村に戻るんだろうが?」

 

 闇の魔法からやっと解放され、なんとか体が動く程度には回復したヘッケランがツッコミを入れて来る。

 

 

「まぁ、それはそうなんだがな…、あの魔法の影響下では、お前たちの支援は期待できないだろうと思ってだったんだが、余計なお世話だったな…でも無事で何よりだ…、あんなのがゴロゴロ出て来る場所だ、気を付けて行けよ?」

 

 そう言って、ポンとブレインがヘッケランの肩を叩く。

 

「あっちに見える…まだ遠くだが…あのテントがいくつも見えるアレ…あそこがお前らの行くところなんだろ? 俺はこれでカルネ村に戻るとするよ…あ、ンフィーレアさんちょっといいかい?」

 

 

 

「あ、はい?なんでしょう?ブレインさん」

 

 ンフィーレアが、荷馬車から降りようとしているが、それを止めてブレインが口を開く。

 

 

「あぁ、下りて来なくていいですよ…そこからちょっとヘッケランに<炎の矢(フレイムアロー)>を一発、撃ってやってくれないですか?」

 

「えぇ? 当たっちゃっていいんですか?」

 

「まぁ、とりあえずやってみて下さい…な?いいんだろ?ヘッケラン?」

 

「あ、そういう事ね、ありがとさん、ブレイン。」

 

 

「今回、出番がなかった私もそれには協力する…どうせ準備してて撃てなかった<炎の投げ槍(フレイムジャベリン)>がまだ戻してないし、これで消しても魔力の無駄だから…」

 

 

 

「???」

 

 何がなんだかよくわかってないンフィーレアだが、会話の流れからするとヘッケランにとっては嬉しい事らしいのは確実に感じ取れていたンフィーレアは、自前の魔法の準備に入る。

 

 

「行きますよ?ヘッケランさん!」

 

「あぁ、いつでもいいぜ? 村長代理さん!」

 

 

 こんなやり取りを終え、<空炎斬>で消費した炎の魔力分以上の回収ができた愛刀を腰に携え、やっと視界に、集合場所が入る位置…徒歩圏内にまで来られた一行は一路、重い体を引きずりながら…<負の属性>の効果が、キャンプに至るまでにはどうか体から抜けますように…と願いながら、歩みを進めるのであった。

 

 

 




あとがき

アインズが、たっちとあまのまの顛末を聞き、頭を抱えてる際、フレイラの取った行動は、アインズには予想外であり、全く「女性に」耐性の無い鈴木 悟の残滓を残すアインズからすれば、あれは大ごとである。

「ちょ? なに?これ…、え? ムネ?…胸…ちょぉ~~~? フレイラさん、何してんの? 近い、ちか…ちかぁぁぁぁ!!!えぇぇぇぇぇぇ~???」

 なんて思ってる内に、いつもの緑の光に包まれ、精神の動揺が鎮静化されたので、いつもの状態に戻った、という状況になりますが、そこらへんは…賢明な読者様方なら読み取ってくれたものだと思い、描写は省きました。


・ブレインの強さ

異空間で難度が上がっているのはもちろんですが、首に巻いてる「経験値アップのための首輪」の方の効果はすでに失われています。

 失ったというより、異空間から外に出る際、彼はそれを装備し直し、ステータス低下の効果を初期化しており、現状、身体能力は元通り。

 しかし、装備はしたままなので、データクリスタルの「攻撃と敏捷が+10」の効果のみ有効。

 さらに帝国騎士のレイナースさんも【重爆】の異名があるように攻撃力が他の職業より上がりやすいという設定だと判断して、ブレインも同様、攻撃力自体が凄いことになってます。(<能力向上>も使用したらもっと上がるはず。)

 それに次いで、負けない程の素早さに器用度…。
(<領域の>効果も手伝っているのでしょうが…)

 カルネ村での「斬り込み隊」の「隊長」の座はそう遠くないでしょう。

ちなみに、一番低位の移動武技、<疾風加速>、それをブレイン、ヘッケランは両者共に取得しており、ブレインはそれに加え、<縮地>も身に着けています。

 攻撃の時は、それで切り込み、下がるときは<疾風加速>

 そんな流れで彼は戦っております。

 ヘッケランは<軽戦士(フェンサー)>なので、素早さは命綱。
 <疾風加速>は必須の戦い方になる予想。
 武技<回避>も持っているので、戦い方も身の軽さを活かした戦い方になる予想。


・ちなみに「たっちさん」のカギ開けの点ですが…

彼は元クランマスターなので、各部屋の合いかぎを持っている上、NPCの設定や、修正などに使う「専用ツール」なども所有しているという設定の下、ストーリーが描かれています。

なので、罠とか鍵開けの技能は彼にはありません。

混乱させてしまった読者の方がいましたら、ここでお詫びいたします。
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