気づいたら大自然 小心者の異世界闊歩   作:yomi読みonly

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前書き

すみません、証明プレートと前金の交換の描写はガッツリ省略させてもらいます。

 そんな重要でもないのでね…

お話は、フォーサイトが合流地点の手前まで来て、墳墓の外見を遠眼鏡で見てる
シーンから…

 さてさて、どうなりますやら…

 今回の話は多分、視点がコロコロ変化する事になるかと…

 読みにくかったら先に謝っておきます。


第48話 モモンの問いかけ ワーカーの選択

 そこは、ナザリック地下大墳墓をとりあえず一部分だけ見ることのできるくらいは離れた場所、少し小高い丘のような場所から筒状のマジックアイテム「遠視の筒眼鏡」でこれから踏み込むことになる墳墓を見ている1人の少女。

 

 アルシェが墳墓の遠景を見てどうしてもぬぐえない不信感、違和感とでも言えばいいのだろうか…うまくそれを言葉にできないモヤモヤとした何かが心の中で渦巻いて晴れてくれない。

 

「考えれば考える程、不思議…時代や背景が、この遺跡からは全く読み取れない…まるで、突然、ポンとココに放り込まれたような…よくわからない造形の像もあるし…読めない記号?文字?みたいなのも…、それに十字の墓標…見たこともない…あぁ、考えてたら頭が痛くなった……。」

 

 アルシェが頭を抱えるようにする仕草の横で、「遠視の筒眼鏡」を借りたヘッケランが代わりにそれを覗き、墳墓を見る。

 

 

「…となると、ますますあの「ベル」さんの言ってたことが信憑性を帯びて来ちまったな…、未発見の墳墓…未知の捜索…ありえない程の地下迷宮…か」

 

 

 考え込むヘッケランに副リーダーのイミーナが提案を持ち掛けて来た。

 

 

「考えるのもいいけど、リーダー? そろそろ集合場所に戻らない? そろそろ集まってきてる感じよ? 一番乗り…私たちだけだったから、挨拶に行っとかなきゃじゃない?」

 

 

「あぁ、ホントだ…そろそろ集まって来てるっぽいな…それにしてもそれなりの人数だな…よくこれだけそろえたもんだよ、依頼主様の財力には感謝かな…?」

 

 

 そうつぶやいて、丘の上から、下の方へと降りていくフォーサイトのメンバー。

 

 そこには壮々たるチームたちがひしめき合っていた。

 

 

「おぉ…、汝らも来たのか…伯爵邸に集合の筈だったというのに居ないから辞退したと思って居たのだが…どうやら現地集合は汝らだけのようだぞ?」

 

「うげ! そっか、そういう話だっけか…先に来ちまってたよ…前金ってまだもらえるか?」

 

「なんしゃ…ヌシらはまた、もらってなかったのか? またもらえるはすしゃ…行って来るといいんしゃないかの?」

 

「あぁ、老公もいらしていたのですか、お元気そうで何よりです。」

 

「おぉ…ヌシらもけん気にやっとるようて、なによりしゃ!」

 

 

「積もる話はまた後で! …では行ってまいります、イミーナ、みんなと交流を深めといてくれ!」

 

「ちょっとぉ~? 私に押し付ける気~? ヘッケラァァ~ン!!」

 

「まぁ、落ち着いてください、私がフォローしますよ」

 

「あぁ、そうね、ロバー、頼むわね…こういうの苦手なのよ…売られた喧嘩の方が何倍もマシよ…変な気を使わないで済む分、気が楽でさ…。」

 

 

「かっかっか、こりゃまた、けん気のいい娘っ子さんしゃの、血の気の多いのは嫌いしゃないそ?」

 

 

 なんて返事を返そうかと「あぅ…あぅ…」としてる所にロバーデイクが割って入ってくれた。

 

「すみません、老公、ウチのリーダーがせわしなくて、まともに相手もせず、自分の都合を優先するような真似を…」

 

 

 と言うと、老公も「気にするてない…」と気を使ってくれる。

 

 

「まぁ、現地に来てしまったのは汝らの落ち度だが、それが理由で前金がナシとはならんだろうな…何しろ、支払う予定だった分が残ってるのだから…問題ない…と我は思うぞ?」

 

 

 ワーカーチーム「ヘビーマッシャー」とワーカーチーム「ドラゴンハント」が2チームとも、先に顔を合わせることが出来たのは幸いだが、遠くに嫌な相手が居ることをイミーナもロバーデイクも見てしまった。

 

 それは、4人制のチーム構成という点では同じなのだが…、連れているのは見るからにみすぼらしい服しか着せられていない奴隷のエルフ3人を連れた金髪のクソ野郎!とイミーナ自身、忌み嫌っている存在である。

 

 その者の名はワーカーチーム「天武」のエルヤー・ウズルス

 

 遠目にして、視界に入れるだけでも目が穢れた気がして嫌だと言うのに、奴隷(エルフ)を連れてワーカーをしているという時点でもう彼女からしてみれば嫌悪の対象なのである。

 

 それはロバーデイクも同様のようで、あからさまな侮蔑の表情は抑え込んでいるものの、どうしてもポーカーフェイスと言うには程遠いひきつった笑みにするのが精いっぱいの様子だ。

 

 「あいつ、すぐ死んでくれないかしら…後ろから刺しちゃっても構わないんじゃないかな?誰も文句なんていうヤツ…いないんじゃない?」

 

 不穏当な発言をするイミーナを「私も気持ちは同じですが、ここは抑えて…」と制止にかかるロバーデイク…それを横目で見やるアルシェが、やっとそこで口を開いた。

 

「大丈夫、あのチームはどうせ、墳墓に入ってしばらくしたら消えていなくなる…そういう運命。」

 

「ア…アルシェ?」

 

 イミーナも一瞬、何を言うの?この子?という顔をする。

 

 それはまるで、アルシェがそれをするの?という印象を感じてしまうほどの内容を含んでいるように感じたからだ。

 

「なに? なにか変なこと言った?」

 

(ヴェールさんだって、「墳墓に入ってそれぞれ別行動をするまでは『天武』のふりをしなければならない」って言ってたから、消えていなくなるようにして、別の見た目に入れ替わるのよね…、あの装備も実際は〝幻影"を纏っているだけ、エルフの3人もそう…今はイミーナの暴走を抑えないと…あれは芝居なんだから…)

 

 

「え?いや…アルシェがそこまで表に出してそんなこと言うの意外だったからさ、ね?ロバー?」

 

「え? …えぇ、そうですね、何か思う所でもあるのかと思いましたよ。」

 

 

 

「…別に…思う所なら山ほどあるけど…それはわざわざ口にしなくても2人には通じるでしょ?」

 

(今は、その真相を口にすることはできない、それを口にしたらヴェールさんの足を引っ張ることになる…妹の恩人であるあの人にそれだけはしたくない…。)

 

 

(「イミーナさん? アルシェってあんなに過激な言い方、今までしていましたか?」)

 

(「イヤ、私も初めて聞いたよ、なんでだろ、いつもなら嫌な顔はするけど無口を通していたのに…」)

 

 

 そう、フォーサイトの中でエルヤーは、今現在、偽物が演じていること、そしてそれがヴェール・リバ-という存在だという事はアルシェしか知らない。

 

 チーム外で…ということならアルシェの妹の2人、それと、ジエット氏しか知らされていない。

 

 ヴェール自身があそこまで演技をしているのだ、こっちがそれを台無しにするわけには行かない…という謎の連帯感を生みつつ、両者ともに『天武』を偽物だとは思わせないように多少過剰なくらいの演技で、熱が入っていた。

 

 

「おぉ~い、やったぜ! 前金ゲットしてきたよ、良かった良かった。」

 

 

 と、戻ってきたヘッケラン…チームメイトの視線の先に居る存在を目にして「うげ…!アイツも居んのかよ!」と小さくだが、声に出してしまう程、露骨に嫌がっている。

 

 

 と思って居ると、そのタイミングで大きく何かを叩く音がした!

 

 音の発生源は視線の先に居たエルヤーだ、ヤツが一緒に連れているエルフの1人に対して、平手打ちをしたらしい…振りぬいた手を見て取ったヘッケラン。

 

 叩かれた為、地面に膝をついて、媚びるように謝罪を繰り返す奴隷(エルフ)を見て、舌打ちをするイミーナ…ふと見ると小さく、エルヤーの背中に向けて、卑猥な手つきで指を立てている。

 

 アルシェは(大変だなぁ…ヴェールさん、あそこまで演技をしなければならないなんて…)と同情の目を向けているが…ヘッケランからすれば、その目は同情と言うより(さげす)み…自分以下の存在を可哀そうな目で見ているようにしか見えなかった。

 

 

 

                    ★★★

 

 

 

 時間は少し巻き戻る。

 

 それは偽エルヤーが、奴隷風に装う気満々のエルフ3名を連れて、ベースキャンプに来たところからだ。

 

「はぁ~…やっと着きましたねぇ、みなさん、いいですか?今からは『天武』ですからね?それをお忘れなきように。」

 

 リハビリを兼ねて、既にエルヤーロールに入りつつあるヴェール、それでもまだ足りないと小声で指摘してくる3人娘たち…意外に彼女らはスパルタのようだ…芝居だと言っても手は抜かない!という熱意が伝わってくる。

 

 

「そんな注意勧告など、本物ならしませんよ? もっと「エルヤー様」なのだという自覚を持ってください」とルチル。

 

「僅かな疑念の可能性でも致命的なことになりかねないのですから…もっと『本物』らしく!」

 とディーネ。

 

「まぁ、ヴェールさんはアイツの口調や、言動なんか、一日も見てないんですからね、仕方ないと言えば仕方ないんでしょうけど?それらしくすることは重要ですよ?」と、緩衝材の役目を買って出ているセピア。

 

 

 そのエルフ3名は、器用に耳を折りたたむことで短く見せ、植物の蔓で作ったヒモ状の素材で括り付けている、その見た目なら幻を纏わせることで、途中で切れているように見せることも可能だった。

 

 服の下はちゃんと装備を整えているが、ちゃんと最初に会った時のみすぼらしい服を身に着けさせ、不自然な服のふくらみを隠すよう、その上に同じみずぼらしい服を幻で纏わせ、二重にごまかしていた。

 

 

 

「わ…私に意見をするつもりですか? 千年は早いですよ! え…エルフの分際で!」

 

 と、詰まりながらもそれらしく言うと、「そうそう、その調子です」とか「そこは詰まらずに言い切るところですよ?」だの…「80点! あともう少しですね!」と嬉しいんだか、嘆くべきなのだか…という評価を受けていた。

 

 彼女たちは女性ならではの演技力を活かし、表情はエルフの奴隷然としたオドオドしている表情。

 

 だが、その口から出てくるのは、今のような辛口評価である…遠目から見たらエルヤーがエルフを虐げているようにしか見えないだろう…

 

 ふと、NPCに神の如くプレッシャーを与えられてるアインズさんと、奴隷を虐げている芝居を強要されて、みんな(ワーカー連中)からの評価がこれから爆下がりすることを強要されることになったヴェール。

 

 どっちがツライ立場なんだろうな…と彼は1人、そんなことを考えていた。

 

「まぁ、すでに伯爵邸に<上位転移(グレーターテレポーテーション)>で、近くまで移動、集合しているので、前金の交換は無事に済んでますが…他のメンバーと挨拶しに行くのは気が重いですね…『エルヤーらしく』というのがこんなにも難易度が高いものだったとは…」

 

「ホラ、何言ってるんですか? 警戒が足りませんよ?不用意な発言は慎むように…!」

 

 と、オドオド顔で、角度的に見られない位置から蹴りを入れられた…痛くはないが精神的に来る(・・)ものがある。

 

「あなたたちねぇ…」

 

 と後ろを振り返っただけで、「も!申し訳ございません!申し訳ございません! もうしませんから! どうかお許しを!」と、周囲に聞こえるように私のエルヤー度を周囲に広めてくれている。

 

 ありがたいのはありがたいのだが、何もしてないのにいじめっ子に仕立て上げられてるような…そんな何とも言えない気分にさせられている。

 

 

 その時、どこかから「チッ!」という舌打ちのような音が漏れ聞こえてきた。

 

「バッチリですね…みんなもエルヤーさんが偽物だなんて疑っていないようですし、このまま行きましょう!」

 

 と、こちらもオドオド顔に年期の入っているセピアが遠慮がちな風を装い、イケイケな内容を口走る。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、しばらく他のワーカーチームとの会話をすることで、「ワーカー同士、うまくやりましょう」という内容を告げに行くだけなのに、異様に疲労が溜まっているような気がしている偽エルヤー…「これも墳墓内で、別行動をするまで…それまでの我慢!」と自分に言い聞かせて頑張っていた。

 

 他のチームと話をする際はエルフの3名は着いてこないということだ…いつもエルヤーは、人間同士での会話にエルフを混ぜることを極度に嫌うのだという事だ。

 

 面倒な性格だったんだな、そのくらいいいだろうに…とヴェールは思うのだが、それが本物の思考なら、それに沿うしかないな…と、1人で芝居を頑張っている。

 

 後ろから小声でダメ出しが来ない分こっちが多少、気が楽だな…と思うのは演技指導してくれている彼女達に失礼なのだろうが…と思って居ると、そこに丘の上に居たフォーサイトが下りてきた。

 

(あ、アルシェちゃんだ、ちょっと挨拶でもしておこうかな?フォーサイトのみんなも一緒じゃないか!)

 

 そう思って居ると、後ろで待機していたルチルから<伝言(メッセージ)>の魔法が飛んでくる。

 

「ヴェールさん、ダメです! フォーサイトのメンバーに話しかけないで、すぐに戻って来てください!」

 

 そういう切羽詰まった声が偽エルヤーの元に届いた為、ヴェールは、そのままワーカーチームとの会話を打ち切って会話が聞こえない程度の距離に離れてから、応答を開始する。

 

 

「どういうことです? 別に話すくらいは…」

 

 と言いかけた偽エルヤーにルチルが<伝言(メッセージ)>を被せて、釘を挿してきた。

 

 

「問題大有りだから言ってるんです! 接触は避けてください! バレたらおしまいなんですよ? ポロっと地が出たらどうするんですか?」

 

 

「わかりましたよ…すぐ戻ります、そこで待ってなさい!」

 

 

 

 

 

 

 そして、戻ってきた偽エルヤーに飛んできた試練の演技…それはルチルの指示で、彼女をみんなに聞こえるような大きな音で、派手に平手打ちをしろ!という物だ。

 

「そこまでしないでもいいんじゃないですか? なにも自分が痛い想いをする必要など…どこにもないでしょう?」

 

「まだエルヤー度が満ちていないようですね…本気でエルヤー度が完璧になられても困りますが…これはワーカーの他のチームに印象付ける為です! 必要なんです!やってください!」

 

 

「うぅぅ…女性に手をあげるのは正直、抵抗あるのですがね…」

 

 と、何気なくつぶやくと

 

「今はヴェールさんの意見を取り入れる場じゃないんです。天武としてのお立場をご理解願います!」

 

 と、前半はディーネ、後半はルチルが詰めよって来たため、ますます追い詰められてしまう。

 

(やれやれ、これではどっちが本当に主導権を握っている立場なんだか、解らないですね…)

 

 と、エルヤーっぽい言い回しで考えてしまう自分に自嘲しながらも決断を下す。

 

(要は叩いたように見えればそれでいいんだから!)

 

 そこで偽エルヤーはルチルの左頬に自分の左手の甲をそっと添える。

 

「なにしてるんですか? そんな程度では…!」

 

 その先を言わせることなく、偽エルヤーは、自分の左手の平に右手の平をぶつけ、思いっきり平手打ちをしたような音を高らかに響かせる。

 

 

 それにいち早く対応できたのはルチル…その音で偽エルヤーがしようとした真意を察知し、派手に「きゃぁ!!」と大きな悲鳴を上げ、地面に横たわる。

 

 

「はい! そこで心配そうな姿勢を取らない! 背筋を張って、自信満々で直立しててください!、そこで怒りに満ちた顔!」

 

 と、<伝言(メッセージ)>で、ツッコミが入ったので、反射的にその通りにした。

 

 

 後ろから誰かの「くそ野郎!」という声が風に乗って聞こえて来て、かなりしんどい気分にさせられた。

 

 

 聞こえない部分で「当時の戦士長と並ぶのは、剣の腕だけかよ…」ともつぶやかれていたのは彼には知る由もないことであった。

 

 

 

                    ★★★

 

 

 

「時間になりました。今回、我が伯爵家の依頼を受けていただき誠にありがとうございます。」

 

 

 その言葉から始まったフェメール侯爵家の執事の依頼内容の説明、改めてベースキャンプの警護を頼むことになった王国の冒険者組合から派遣されてきた冒険者の数、調査の為に許された滞在期間…などなど、必要な説明をし始めた。

 

 

 それまではお互いに「なるべくなら極力、話どころか顔も合わせたくない」と認識しているフォーサイトのメンバーと、「どうかバレませんように…」と接触を避けていた天武のメンバーは、これでお互いに説明などの方に集中できると、そちらの方に意識を向けた。

 

 

 大きく話が変わったのは冒険者が護衛について拠点となるこのベースキャンプを護るコトになったくらいだろう。

 

「それでは、用意しております野営場所までご案内いたします。 そちらの野営場所では金級冒険者の方々とアダマンタイト級冒険者の方一組の護衛でお護り致します。 しかし墳墓内には冒険者の方々は足を踏み入れない契約となっておりますので、その旨、ご理解いただき、決してお忘れなきようお願いいたします。 野営場所へは当家の馬車にてご案内いたします。こちらにどうぞ…。」

 

 

 ごく当然と先頭を歩いていく天武のメンバー。

 

 すぐ後ろにドラゴンハントのチーム

 

 次が、ヘビーマッシャー…最後尾がフォーサイトだ。

 

 

「なぁ、グリンガム…ちょっといいか?」

 

 ヘッケランが前を歩くヘビーマッシャーのリーダーに話しかける。

 

 

「おぉ…何事だ?」

 

「すまないが、うちらのチームと天武のチームとを違う馬車になる様にしてくれないか?」

 

 そう話を持ち掛けてきたヘッケラン達フォーサイトのメンバーを軽くチラ見してすぐ理解できたグリンガムは快くそれを引き受けてくれた。

 

「そうか…汝の不安、確かによくわかる、彼女が居るのではヤツが何をしでかすか…ヤツが何もせんでも彼女がどう動くか…そこらへんもあるのだろ? 承知した、天武のチームは我らのチームが引き受けよう。」

 

「悪いな…助かるよ。」

 

 

「遺跡調査という名目で集まった我らが、始まる前からいざこざを起こしては、無事に済むはずの依頼も難しいものとなろう…そのくらいは…」

 

 

 という言葉を言い終わらない内に、先頭を歩いていた天武のリーダーの声が聞こえてきた。

 

 その言葉は他のチームの誰もが耳を覆いたくなるような内容で、爆裂魔法でも投下されたかのような…それを聞いてる全ての者がそういう心境に陥った。

 

「金級冒険者程度で、拠点を護れるなど、本当にそう思って居るのですか? 探索して戻ってきたら、モンスターに占拠されていた、なんて私は御免なんですがね?」

 

(ごめんなさい、本心じゃないんです、後ろの子たちに言わされてるんです!)

 

 心の中で盛大に謝っているものの、表情にまではそれは出せないため、横柄な言い分にしか相手には伝わってない。

 

 それでも執事は、態度を硬化させず、柔らかい物腰でエルヤーに返答を返した。

 

「ウズルス様、でしたか?…ワタクシ共はそれに対しての心配は一切ないと判断しております。」

 

 さらっと言い募る執事に、一瞬、言葉を詰まらせたようなエルヤーだったが、何事もなかったようにすぐに言葉を返す様はまるで、予め用意されたシナリオを読み進めているかのようだった。

 

「それは、護衛の頭数に私たちワーカーも含まれていると? それなら理解できるのですがね?」

 

 わずかに目の奥に冷たいモノを宿したような表情をした執事が、エルヤーに負けじとそれを否定する。

 

 

「いえ、そういうことではありません、今回皆さまを護衛してくださる方に先ほども申しましたがお一組、アダマンタイト級の方もいらっしゃいます。 ご理解いただけるでしょうが、アダマンタイトという事は皆様より強い…まさかそれが分からないウズルス様ではございませんね?」

 

 

「ほぉ…私よりも強いと? それは聞き捨てなりませんね…」

 

 

 先ほどまで、エルヤーの言葉で憎々しげに目を向けていた金級冒険者の面々は、執事の返答で溜飲が下がったのか荷物を馬車に運び込む作業を再開させていた。

 

 執事がそう言わなければ、下手をすれば他のワーカーを巻き込んだ「VS冒険者」という目も当てられぬような刃傷沙汰になっていたかもしれなかった。

 

「では、ご紹介させていただきましょう! モモンさん!」

 

 

 

(………え? モモン…ガ、さん…じゃないの? モモ…ンって…)

 

 エルヤーの外見の中に居るベルリバーの意識が急速に疑問を浮かべていた。

 

 モモンと言えば、確か、モモンガさんの冒険者としての名前だったはずだ…「一体なにしてんの?」と言う気分になる。

 

 すると、馬車の中から漆黒のフルプレートに身を包んだ偉丈夫…フルフェイスの兜に覆われた顔をのぞかせた後、美女を伴い、馬車から軽やかに舞い降りた。

 

「何かありましたか? 名を呼ばれたので手を止めてすぐに参りましたが…?」

 

「いえいえ、ワーカーの皆様に「漆黒」のお二方を紹介させていただきたく、呼ばせていただきました、お仕事中の所、申し訳ありません。」

 

 執事も先ほどのやり取りで一矢報いることが出来て少し気が晴れたのか、さっき感じた冷気を含んだような雰囲気は霧散していた。

 

「モモンさん、こちらの荷物運びの方は私たちがやっておきますのでどうか、モモンさんはそちらのワーカーの方々と親睦を深めておいていただけますか?」

 

 すると、別の金級冒険者のチームも口々に同じようなことを言い始める。

 

「そうですよ、このような雑用は我々に任せて、リーダーであるモモンさんは、ぜひ、ワーカーの方々と、警備方針などについて、打ち合わせをしておいて欲しいのです!」

 

 

「そうですか…了解しました。 非才の身ですが君らのチームがそれでいいという事なら謹んでお受けしよう…だが、金級の冒険者である皆の方が私たちよりも数が多い、なのでメインで動くのは君らを主眼に置くべきだろう。」

 

 

「いや! 非才など!なにをおっしゃいますか! それに我らのリーダーたるモモンさんを差し置くなど…」

 

 

 と言って、遠慮しようとする金級の冒険者の言葉を手を上げることで遮り、モモンは自分よりも他の冒険者チームの立場を立てるべく、短い結論を告げた。

 

 

「いや、警備の方は君らの方をメインで頼む! 私達を有効に使ってくれ。」

 

 

 そう言って「ナーベ!」と呼ぶと、モモンは、ナーベを連れて、ワーカーたちの前にまで歩いてくる。

 

 

 ワーカーたちもその空気に飲まれていた。

 

 明らかにそこに立っているだけで空気が違う、その偉丈夫さが何よりも、聞いていた冒険者としての業績の全てが「真実なのではないか?」そう思わせるだけの重厚さを纏っていた。

 

「こりゃ…ギガントバジリスクがどうの…って話もあながちウソって訳でもなさそうだわな…」

 

 ぼそっと口に出したヘッケラン。

 

 それはグリンガムに教えてもらった情報。

 

 王国でのアダマンタイト級への異例のスピード昇格…そしてその偉業の数々…。

 

 目の前に立たれているだけなのに…押し潰されそうな息苦しさを感じる。

 

 

 そんな空気を知ってか知らずか…モモンがワーカー達をぐるりと見まわし…、良く通る声で全員に質問を投げかける…それはワーカーにとって当たり前すぎて、「なぜ改めてそんなことを?」と、耳を疑うような質問だ。

 

 

 

「君たちは…何故、あの遺跡に向かう? 組合に属していないキミらは危なければ辞退する道もあっただろう…何が君たちをソコまで駆り立てる? 未発見の遺跡では何が起きるかわからない…なのにそこまでする理由はどこにあるというのだ?」

 

 

 

                    ★★★

 

 

 

(かなり数…、減ったな…呼び出したワーカーチームでこちらが送り出したシモベを突破できたのはこいつらだけか?)

 

 と最初に思ったモモン…ことアインズ。

 

(数十チームは呼んだはずだが…一応、メッセンジャー兼、墳墓に入ってもいいかな?という基準を計る為、(ふるい)にかけるという意味でも必要であった存在を呼び出したんだよな…一応、わりと低位のレベルである集眼の屍(アイボール・コープス)の最低位、痛苦の怨嗟屍魂(スクリーチ・ボール・コープス)に留めておいたと言うのに…それでもまだ強かったか…まぁ、依頼する分の資金が浮いたと…いい方向に考えよう!)

 

 

 そう気分を切り替え、目の前に並んだワーカーチームを見て、気づいたこと。

 

 以前、ナザリックの玉座の間に呼んで、第九階層の客間とかで食事などをふるまい歓迎した記憶がまだ新しい、その時の1人、アルシェがその中に居るのを確認し「結局、来てしまったか…」と聞こえない程度の小声で、兜の中へとその言葉を漏らす。

 

 

(さすがに、墳墓に招き入れといて来た奴ら問答無用で全滅させるとか…、そんなことしてたら、また『DGNギルド』の汚名の再来だからな…こっちの世界でだってどんな強者が居るかわからないんだから…可能な限り、穏便に進めるべき…とは言え、盗掘しようだなんて者まで許すと思われては不愉快だ。 その時は私の『流儀』で相応の礼をさせてもらおう…)

 

 

 そう思いながらのその質問。

 

 その質問の重要さを真に理解しているのは、古くからのギルドマスターの人となりを知っているベルリバーが演じてるエルヤーだけ…あとのメンバーは、深く考えることなく発言している…。

 

 とは言え、フォーサイトの返答は、他のワーカーとは一線を画す答えで、モモンの方も「ふむ…そうか…そういう道もありかもしれんな…」とだけ短く答えていた。

 

 

 

 ベルリバーのみが知っていることだが、今、ワーカーの目の前にいる「モモン」と、かつてアルシェが歓待され、妹たち2人が『ともだち』として受け入れることになったゴウン様。

 

 その両者は、実は同一人物だという事を…。

 

 アルシェは、その時、気づいた…「モモン」という名前に…聞き覚えがあり、心当たりがあるという事に。

 

(そうだ、確かジエット君が言っていた、魔法学院時代、同級生として一緒だったチームメイト…その子の名前がたしか「モモン」だったはず…でも…、目の前の「モモン」さんはフルプレートの戦士…それに少なくとも第6位階以上の魔法も使える…はず…はずなのに…、魔法の波動が見えない?…隠しているの?それとも別人?……いや、そんな名前が複数居るとは思えない…ますます、目の前の存在が謎すぎる…。 警戒はしておいて正解だったかな…?)

 

 

 

 先ほどの質問に対して答えた言葉を自分で思い出す。

 

 リーダーが応えるべき場面だったのは承知してはいたが…「ベル」さんに警告されていた内容が心に引っかかっていたため、「墓荒らしの盗賊の一味」と思われたくはないチームフォーサイトとしては「ただの金もうけが目的の招かれざる客」では困るためだ…。

 

 だからと言って、目の前の「モモン」という人物にそれを言って、自分の未来が左右されることになるなんて、これっぽっちも考えていなかったのだが、それでも自分の偽らざる本心を伝えた。

 

 

「私たちはこれを『ワーカーチーム フォーサイト』最後の冒険にしたい! その最後の依頼は【未発見の墳墓の内部調査】! それ以上のことに首を突っ込むつもりはない…ワーカーは『=盗賊』ではない…金があったからと言って、持ち主が居るかもしれない場所でかすめ取るような真似は『ワーカー』としての名折れ! 最後を飾るにふさわしい冒険にしたい!」

 

 リーダーのヘッケランを差し置いて発言してしまったが、正直ヘッケランもどこかそれは思って居た部分はあったようで、「まぁ…俺らがこの依頼を最後にしようと考えてるのは全員一致の意見だ、その上でこの依頼を受けた、それは最後を飾るため…そこは変わらない…金目の物に目がくらんで命を落としたら、今回の依頼内容【墳墓内の情報】を持ち帰ることが出来なくなっちまう…それだけは避けなきゃな…『ワーカー(仕事請負人)』としては…。」

 

 と、言ってくれたので私も少しは気持ちが軽くなったように感じた。

 

 

 だが知らなかった。 …とアルシェは思う。

 

 

 まさかチームメイト全員で解散の意思まで固めてくれていただなんて…そこは今、聞くべきではないことなので、あとで落ち着いたらそのことについて聞いてみようと思った。

 

 

 自分たち「フォーサイト」より前、「ヘビーマッシャー」と「ドラゴンハント」のメンバーはすでに発言をしてしまった居た。

 

 

「もちろん、ここに眠っている遺跡のお宝だ!」…と。

 

 

 ただ一人、老公だけは「お老い先がみちかいいこの身しゃ…敢えて宝に執着する必要はないとは思うか…、持ち主か居ない…所有者なき置きみやけなのてあれは、話はへつとなるの…。」

 

 とだけ答え、モモンの中では「一応、保留…」という位置づけになっていた。

 

 

 最後まで発言をしなかった『天武』に目を向けたモモン…お互いの顔を視認し合う。

 

「キミらは…どうなのかな?」(待ってましたよ、ベルリバーさん!久々のナザリック!楽しんでくださいね)

 

「そう…ですね…、【墳墓の調査】という名目で受けた依頼でもありますし、当面はそれの一点に尽きるでしょう…ですが…人類にとって、この地に生きる我々全ての者(・・・・・・)にとっての脅威となる存在が居るとなれば…生きてその情報を持ち帰るのを優先すべきでしょうね…。」

 

(モモンガさん、この意味、伝わっててくださいよ? 一応、外見としてのコイツのロールプレイをしながら出来る、最大限の返答がこれなんです!)

 

 

 

 しかし、その言葉に違和感を持つ者は、ホンの僅かであった。

 

 エルヤーの人間性、認識…、(彼にとっての)常識…それらを充分に…嫌と言うほど思い知らされている3人しか、それに気づく者は居かなかったが…彼の出身地を知っている彼女らからすれば「一応、許容範囲」として収まっている返答だったので、特に何も言うことはなかった。

 

 

 他のワーカーの面々も薄々、噂としての情報レベルでそれは認知されていたため、確証のない情報であるが、その言葉はその情報の信憑性を強いモノとしていたので、その奥の「真の意味」に気づく者は居なかった。

 

『この地に生きる我々全ての者(・・・・・・)

 

 …それは「人」に限らず、人類種、亜人種、異形種、それぞれが諍いの無く、互いに忌み嫌うことのない、虐げることも虐げられることもない…手を取り合って進める世界、侵略も…することもされることもない…そんな世界を夢見ていた。

 

 この世界に来て初めて実感できた「大自然」。

 

 それを「人の持つ、飽く無き欲求、欲望」の犠牲にしてはならない…そう感じてしまったが為だ…。

 

 

「ふむ…みんなの言い分は理解した…くだらない(・・・・・)ことを聞いてしまったな…不愉快な思いをさせてしまったかもしれないが?」

 

 そうモモンが言うと、「とんでもない」とワーカー達からの返事が返ってくる。

 

 彼、モモンの言うくだらない(・・・・・)と言う意味を理解していたのはただ一人…その人は、ただ静かに「ご愁傷様…」と思うのみであったという…。

 

 

 

                    ★★★

 

 

 

「やめしゃ…やめ…こりゃ敵わんわい…降参しゃよ…」

 

 そう言い、負けを認める老公。

 

 それは少し前、モモンの噂を本物かどうか確かめたい、そう彼が言い出したのがそもそものキッカケだ。

 

「どうやって?」と言う意味の発言を返すモモンに対し、『手合わせ』と称した模擬戦を持ち掛け、「手加減はあまり得意ではないのですが…」と渋々了承を取り付けたと判断した老公は、初っ端から全力での攻撃を繰り出し始めた。

 

 それは、同じチームメイトも、他のワーカーチームも、一目瞭然の「殺しにかかってる」レベルの全力。

 

 なのに、それを難なくさばき、いなしてしまうモモン。

 

 全てを対処されてしまった老公に対してモモンが「さて、では今度は私の番ですね?」と言った所で「降参」の言葉を口にされてしまった。

 

 という流れである。

 

 

「降参? …いいんですか? これから本気を出すおつもりだったのでしょう?」

 

 モモンからすれば、さっきの攻撃は様子見レベルのモノという認識しかなかった。

 

 だから単純に手加減した攻撃を老公と呼ばれている老人が受けるなり避わすなりした後、本気の攻撃が来ると…単純にそう思っての発言だったのだが…。

 

「ひょっひょっひょ…老体をあまり酷使するものてはないわい…本気しゃよ…さっきのは正真正銘、ワシの全てを乗せた本気…それてもヌシにゃ~かすりきすをつけることすら至難のわさしゃと思い知らされたわい。」

 

「そう…ですか…?…」

 

 

 モモンとしては少しばかり釈然としていない様子だったが、老公らのチームメイトからは「老公の立場を想っての発言」(まだ本気じゃないのでは?)と受け取ったチームメイトからは、好意的な目で見られているようになったことに、モモンは気が付かないのであった。

 

 

 

                    ★★★

 

 

 

 ワーカーらとの話を終え、当初の仕事、馬車に荷物を積む作業に戻ろうと移動すれば、金級冒険者のみんなが既に済ませてしまったとのこと。

 

 仕事をさぼってしまったような気分に襲われたモモンからすれば、「申し訳ない」という一念しかなかったが、彼ら冒険者からすれば、モモンは憧れの存在である。

 

 その人が自分たちと共に、荷物運びをしてくれていた、それだけで今回は満足だった。

 

 だからこそ、彼が戻ってくるより早く、「なるはや」で仕事を片付けたのだ。

 

 それに対して頭を下げてくれる憧れの漢、そのどこまでも謙虚な姿勢にまた心の中の評価が上がる。

 

 

 もちろん、テントの方も彼らは設置してくれていた。

 

 

 かなり気を使ってくれたのだろう…本来、自分たち冒険者は今回、【護衛】という名目でココに来たのだ。

 他のワーカーらとも違う場所に野営はしているが、基本的に、護衛で共にいる彼らはワーカーらの近くに居なければならない…というよりそれが普通だ、そうでなければ「不測の事態」が発生した場合、即座に対処することが出来ない。

 

 であるのに…だ。

 

 

 モモンのテントだけは、護衛をしての金級冒険者たちのテントより奥まった場所、テント内で「ナニ」かをしていたとしても…容易には聞き取れないだろうくらいの距離を離して、設営してくれている。

 

 

 冒険者からすれば、冒険する為のパートナーとは言え、第三者の居ない二人きりのチーム。

 

 こういう事にもなれば、夜は…そういうことになってもおかしくないだろう。

 

 という認識の下、そこまで気を使ってくれたのだが、どちらにしろモモンとしてはありがたい、「ナニ」自体が無くなっている身体なので、「ナニ」をするわけでもないのだが、これから身代わりに入れ替わるのだ。

 

 

 特に疑われないで済むという点では、なによりありがたかった。

 

 

「ナーベ…私はナザリックに戻る…代わりは…そうだな、テンパランスさんのNPCであるグレータードッペルゲンガーに頼むとしよう…、少し演技指導をする必要はあるが…あの冒険者らの行動からするに、わざわざ邪魔をしに来ることも無かろう…、もし用事で来ることがあれば「用を足しに行った」とでも言っておけ…それで通じるだろう。」

 

 

「は! 畏まりました、モモン様!」

 

 そして、すぐにいつもの「跪く」姿勢。

 思わず、額に手を持って行ってしまった。

 

 

「モモンさんと言えと言ってるだろうに…、まぁ他に誰が居るでもないし…こんなとこに監視系の魔法なんて仕込まないだろうからいいか…。」

 

 

 と言って、<伝言(メッセージ)>でアルベドに連絡、テンパランスさんのNPCである楽団たちの中で誰でもいいから1人…という命令を出し、極力『黒歴史』とは顔を合わせたくないアインズは、その者に「モモン役」を交代してもらい、ナザリックへと帰還していくのであった。

 

 

 

「…さて…それではショータイム…いや、歓迎の宴の始まりだな…」

 

 

 

 そう零したアインズの声は、どこか気が進まないようでもあり…

 

 それでいて気だるいながらもやる気を出そうとする声のようにも…

 

 拠点を上げての初のイベントに少し高揚しているように聞こえる声音でもあった。

 

 

 

 




ようやっと、ここまで来ました。


この話を書くことを決めたそもそもの本題、そこにようやく入れそうです。


うまく彼らを活躍させられるだろうか…文才が追いつくか…それだけが気がかり。

がんばります!


毎度のことながらお世話になっております「忠犬友の会」様

誤字報告感謝です。
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