気づいたら大自然 小心者の異世界闊歩   作:yomi読みonly

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いつもいつも、至らない私に誤字の指摘などしてくださる読者の方々に改めて感謝をさせていただきます。

つい先日アップした話では、ホンの数時間も経過しない内にお二方も指摘してくださった方が居て、感謝感激です。
(その前にちゃんと確認してアップしろという声もあるでしょうが…)

早く書き上げたものを読んでもらいたい、という気持ちが先行して、よくよく調べずにアップしてしまうのは悪い癖ですね。

 そんな愚作を読んでくださる皆さま、ありがとうです。


第50話 老公の処遇

 それは、舞台の時間が少しばかり巻き戻り、チーム全員が3つに分かれる十字路に出てしまった場面から始まる。

 

「さて、では我らはこの先、正面の道を行こうと思うが、汝らはどちらに進むつもりだ?」

 

 これから、自分たちの待つ運命を知らず、さっきスケルトン軍団を蹴散らしたばかりのヘビーマッシャーが、十字路を正面方向に先行すると言う。

 

 

「そうか…俺たちは…そうだな、それじゃ、右の方にでも行こうか?どうする?みんなはどっちの方が良いと思う?」

 

 ヘッケランが、自分は右に行きたいと思うけど、と…他のみんなにも意見を聞こうとするあたり、ワンマンではなく、チームの意見を重んじようとしているのだろう。

 

「そうですね、リーダーがそう言うのなら右でもいいと思いますよ?」

 

「私も、別に反対する理由はないわね…知らない場所なんだし、未探索なんでしょ?どっちに行ったって、危険なのは同じなんじゃない?」

 

「アルシェはどう思う?」

 

 ヘッケランがアルシェにそう問いかけた時、アルシェの頭の中で通信がつながる時のコール音のような感覚があった。

 

「ちょっと待って。」

 

 アルシェは短くそう言うと、視界に『天武』のエルヤーを収める。

 

 大っぴらに見ているとバレない程度に、目をそっちの方に動かすと、エルヤーもこめかみに指を持って行っている。

 

 やはりこれはベルさんからの<伝言(メッセージ)>だ。

 

「はい…、ベルさん?どうしました?」

 

「ちょっと心配でね、一応もう一度言うけど、ここのお金や、旗、武器、防具、彫刻など、例えそれが石ころの1個でも持ち帰らないようにね? …それと合言葉、ちゃんと覚えてるよね? 以前教えた、腕輪の強制起動させる時の合い言葉。」

 

 

「えぇ…もちろん…でもあれ、本当に言わないとダメ?」

 

「そんなことはないと思うけど、この前まで居た異空間でも、自動発動しそうなタイミングだったはず、って場面は何度かあったのに、起動する気配がなかったからさ、気にはなってるんだよ、だから一度、言葉で未起動状態を解除させる必要があるのかもしれない…と思ったんだ。」

 

「そ…そう…わかった、気に留めておく…ところでベルさん、これってお守りって言ってたけど、一度使ったら消えちゃう使い捨ての…って事は…ない…?」

 

「あ、そっちの心配してたの? 大丈夫、何度使っても大丈夫さ。戦闘で表面が損なわれることがあっても、一度解除して、また装着し直せば元通りになってるはずだから…そういう仕様にしてあるはず…だからね。」

 

 ベルからの言葉で、やっと安心できたアルシェは「危険になったら使わせてもらう」とだけ伝える。

 

 そうするとベルからも返事。

 

「一応、言っておくけど、多分POPするモンスター程度ならびくともしない素材で出来てるんだけど、それ以上に強い存在相手だと厳しいかもしれないから…その点は気を付けて…基準は難度で言うと150までだ。」

 

 

 ベルさんがそこまで言ってくれるなら、多少は無茶しても浅い階層までは多分大丈夫だろうと判断して「ありがとう」とだけ言って、通信を切る。

 

 

「アルシェ、ベルさんからか?なんだって?」

 

 

「気を付けて、だって…心配性だから。」

 

 アルシェがそう言うとヘッケランも「あぁ、あの人そういう人だよな」で済ませていた。

 

「さっきの話だけど、私もどっちでも構わないと思う。」

 

 その言葉でフォーサイトの行く道は決まった。

 

「じゃ~ウチらは右に行くとするよ、老公は墳墓の入口付近で別の通路がないかどうか調べてくれるって言うし…こっちも10%払わなきゃならないんだしな…探索開始だ。」

 

「ダメ…この場所で、この墳墓内にあるものは、石一個でも持ち帰るべきではない。それは前にも言ったけど、それはきっと命を縮める行為。」

 

 アルシェは知っていた。

 

 この墳墓の複数ある入口の内一つ、自分たちが入ってきた場所の正面に、見覚えのある紋章の旗が高々と壁に掛けられていたのを…あれは、恩人の一人、ゴウン様の頭上にあった紋章と同じ絵柄だった。

 

 ならば、きっとここには主人が居る。

 

 所有者が居る場所で、お宝を奪おうなど…それはワーカーではなく盗人だ。

 

 貴族を捨てたとはいえ、山賊や、盗賊のマネをするほど落ちぶれていない。と内心で思って居るアルシェは、まだ確証には至っていないため紋章の事はまだ仲間には伝えていない…

 

 その「確証」とは、その紋章が恐らくはゴウンさまに関係する誰か、もしくは所属する組織、またはどこかの国家?という線もありうる…だけど、個人ならまだしも国家とかであれば、王国からのクレームなど比べ物にならない処罰が下される可能性もあると、その恐れは無いとは言い切れないので、すでに何度目かになる忠告をした。

 

 ヘッケラン自身もそれは頭の中にあるが、いざ同業の他チーム達がお宝を得て「ウハウハ」状態で居るのに、自分たちは何も得ずに…、実質なんの土産も自分に対するご褒美もナシで、危険な遺跡を進んでいるという状況に「少しくらいわからねぇって」という気持ちが起き始めている。

 

 イミーナもそれは同様のようで、少しくらい…という認識になりつつある為、イミーナはロバーデイクが、ヘッケランにはアルシェが付き、それを制している状態だ。

 

(それにしても、ベルさんからの腕輪、この宝石の中にある紋章は、あの旗の紋章とも違った…もしかしたらあの玉座のある通路、あそこに並んでいた旗の中で同じ模様があったかもしれないけど…1枚1枚はさすがに覚えていない…それに腕輪をもらったのはカルネ村に入ってからの話だし…)

 

 

 と、一人で思考に陥っていると

 

「それでは私たちは勝手にモンスター共を狩り殺して回って来ようと思いますので、お先に失礼しますよ?」

 

 

 そう言って、フォーサイトとは別の方向に進んで行く『天武』のメンバー。

 

「とっとと行ってモンスター共に殺されちまえ!」

 

 そう小声で口汚く罵るイミーナ、彼女はまだ『天武』のリーダー、エルヤー(本物)が依頼の途中で命を落とし、その遺志を受け継いだベルさんが、姿から形、声から挙動まで芝居していることなど夢にも思って居ない。

 

 それを知っているアルシェの目から見れば、やはり…と思う事。

 

 それはこの墳墓に来てからモンスターを「狩り殺したい」そう言いながらも、今だに1体に対してもそれを行っていない。

 

 先ほどのスケルトンが複数体出てきた時も「私はイヤですよ?あんな雑魚、みなさんで充分でしょう、私にとって役不足すぎて剣を振るう気にもなりません。」

 

 そう言って、動こうともしなかったし、金塊はもちろん、金貨の山を見ても「帰りでいいでしょう?深部に進むのに自分の荷物を重くしてどうするんです? 身軽なアンデッドに追いつかれないよう身軽にしておいた方が得策ですよ?」

 

 と、途中まではエルヤーらしい口調ではあるのだが、明らかにこの墳墓内でいざこざを起こしたくない、余計なもめごとを持ち込んでほしくない。

 

 

 そう言ってる様だった。

 

 

 噂で聞いている「エルヤー・ウズルス」なら深く考えず、目についた金貨は懐に収めエルフにはわずかでも与えないという行動ばかりだという話が一般的の様だったが、今はそうではない。

 

 この墳墓内に入ってからの行動を見てもエルフはもちろん何も得ていないのは変わらないが…、エルヤー自身も金貨一枚、武器一本持って行こうとしないのだ。

 

 明らかに自分が持っている武器より上等の、魔法が込められていそうな武器があったにも関わらず…だ。

 

 

 アルシェは迷う、なにか言葉をかけてあげるべきだろうか…?

 

 でも下手なことを言って身内に、真相がバレることをベルさんは嫌がるかもしれない…そう思うと、どうしても素直な言葉を選ぶことはできなかった。

 

「精々、アンデッドの<火球(ファイアーボール)>で吹き飛ばされないようにすることね。 あなたのワーカー人生がここで終焉を迎えないことを祈ってあげるわ…。」

 

 

 すると、エルヤーはアルシェに対して振り向き、こう返す。

 

「あなたのようなおチビちゃんに心配されるほど落ちぶれてはいないつもりですが…その忠告自体はありがたく受け止めましょう…確かに範囲魔法に巻き込まれたら大変ですからね…そこまで開けていない通路でそんなことがあれば…それは尚更ですからね。」

 

 そう言いながら、背中越しにヒラヒラと手を振って去っていく。

 

 イミーナが苦々しく「素直に礼の一つも言えないのかよ、クソ野郎!」

 

 と、だんだん彼女のガラが悪くなってくる。

 

 きっと次に会うときは違う姿になってるんだろうな…そう言えば、新しいチーム名、どうするか決まったんだろうか…?

 

 そこも聞くの忘れちゃってたな…。

 

 と、思うも、「とにかく無事で居てくれれば、どんなチーム名でも…」と誰にも聞こえない程度の独り言をつぶやいたタイミングで、エルヤーが背中越しに振っていた手を一瞬だけ、握り拳にして親指を立てる仕草をした。

 

 多分、あれは「大丈夫、心配するな」

 

 そう言ってくれているような気がして、少しだけ心が温かくなっていた。

 

 

「では行こうリーダー! アイツの言ってたように深部に行くのに荷物で動きが遅くなっては本末転倒! 漁った宝で身動きできなかったではエルヤー以下! それは避けるべき。」

 

 

 そうアルシェがヘッケランに言うと、「アイツを引き合いに出すかよ…わかったよ、行きますよ!」

 

 

 と半ばヤケになっているようだった。

 

 

 

                    ★★★

 

 

 

「さて、人目は無くなりましたね」

 

「そうですね…ヴェールさん。」

 

「お疲れさまでした…気を抜かずよくここまでできましたね。さすがです!」

 

「いえいえ、それもみんなの協力があったればこそですよ。」

 

 

「さて、それでは、幻を解除しましょう。」

 

 そう言って、彼女たちの幻影を破棄させ、本来の装備姿に戻してあげる。

 

「もうそのみすぼらしい服、着ていなくてもいいでしょう…」

 

 そう言って、インベントリに突っ込んで、封印することにした。

 

 彼女たち自身が「必要」だと言い出せばまた出すことに抵抗はないが…それでも、好き好んで思い出させるような真似はしたくなかった。

 

 彼女たちは身なりを整えながら、耳を折りたたむために括り付けていた細い蔓を解き、元のちゃんとしたピンとするエルフの耳に戻していた。

 

 

 

「さて、それでは私も…」

 

 と言って、エルヤーは自分の髪色を黒に変えていく。

 

 それはエルヤーではなく、ヴェール自身のスキルによるもの。

 

 この世界に来てスキル効果が変質してしまい、バフ効果ではなく、主に変装がメインの使い道になってしまった能力。

 

 以前、出会った、「エルヤー」の奴隷売買の際の業者の売り子だった奴で、趣味で「武技大辞典」なるものを自作で作っていた、それだけならまだいいが、フレイラを不快な目で、勝手な妄想で暴言を吐いてくれたため、胃の中で「捕獲」状態でずっと眠らせている男のデータを呼び出した。

 

 どうやら異国からの移住者とかだったのか、この付近では珍しく黒の髪だったのを覚えている。

 

 自分だって、元々は日本人、髪は黒なので、こっちの方が気分的に落ち着くような気がしていたため、その色にした。

 

 金髪もキライじゃないようにはなっているが、エルヤーにつながる要素はなるべくなら消しておきたいというのが本音である。

 

 髪型自体はエルヤーそのものであるが、色だけは黒塗りに変更し、アイテムボックスから引っ張り出してきたモノ。

 

「嫉妬する者たちのマスク、アニバーサリーエディション」である5周年を記念して配られた…「5年連続でクリスマスにボッチだったで賞。」を送られたような不名誉な装備品、もちろん効果などは何もない。

 

 ただ、額に刻印されている真っ赤な「V」の字だけはわりとお気に入りだった。

 

 それを装着する。

 

「じゃ、これでエルヤーのマネはしないでもういいよね? やっと自分に戻れた気がするよ。」

 

「えぇそうですね、私達も素のままで居ていいなんて、ワーカーするようになって初めてかもしれません」

 

「そうね、人目を気にしないでおおっぴらに振る舞えるなんて夢でしたから…。」

 

「ま、街中とか往来では今だって『いつもの目』で見られちゃうから、身内限定みたいなものだけど?それでも違いますよね?」

 

 3者3様に嬉しいという感想を持ってくれているようで何よりだ。

 

 自分には大きな影響力などない(と思い込んでいる)為、市場のエルフの奴隷制度の撤廃など、自分には手の届かない問題に思えているが、今は目の前で救えたこの3名の笑顔だけは守っていたい。

 

 そう思うのだった。

 

 

「ところでヴェールさん? その名前のままで活動するおつもりですか?」

 

「ん~~…そうだね、名前は変えようと思っているんだけどね…でも知り合いにはちゃんとボクだってコトわかってもらえる範囲の名前にしたいんだよね…はぁ…これで何度目の改名だ? …まぁいっか…。」

 

 

「そう言えば別の地に行って冒険者なり、ワーカーなり、どっちをするにしても別のチーム名の方がいいって話は以前にも言ってましたけど…決まりました?」

 

「あ、そうそう候補はあるんだけど、感想を聞いて見たくてね、聞いてもらってもいい?」

 

「あ、考えてはあるんですね?聞かせて欲しいです!」

 

 少し考え、以前アルシェちゃんが提案してくれたチーム名を試しに言ってみた。

 

「あ、ヴェールさん、それ、その使い方間違ってます。」

 

「え? そうなの?どこらへん?」

 

 

「バーニッシュというのは確かに、『研ぐ、磨く』を意味しますけど…それは物質に対して、紙とか石とか、刃物ですとか…そういう「物」に対して充てる言葉で、爪とか牙、と言った肉体にある部位に磨きをかけるのには向かない表現なんですよ?」

 

 

「そ…そうか…表現的にキライじゃなかったんだけど…じゃ~どうするか?」

 

 

「あ、それなら「突き立てる」はいかがです? 命名「突き立てし牙!」いかがです?」

 

「ん~~、カッコイイ感じだね、アルシェちゃんには悪いけど、後で事情は説明して謝っておこう。」

 

 

「それじゃ~新生チーム「突き立てし牙(スタッグドファング)」活動開始ですね!」

 

 

「おぉ~~!! パチパチパチ!」

 

 と口に出しながら4人で手を叩き合う、彼女達はハイタッチもしていた…どこでそんな文化覚えたの?とは、頭に浮かびはしたけど聞かなかった。

 

 

 人目がないからいいけど、コレ、墳墓内で展開されるノリじゃないよな…。

 

 

 同じ感想、心境でパネルを見ている至高の41人の頂点、ギルドマスターその人から、(なにやってるんだよ!ベルリバーさん!思いっきりくつろいじゃダメじゃないですか!)と思われていることには気づいてすらいなかった。

 

 ちなみに隣に立っているアルベドも、その光景を見て不快感をあらわにしているのだが、彼女がどんな表情をしているか…、アインズには気付くことが出来なかった…。

 

 

 

                   ★★★

 

 

 

「それで、これからの行動の方針は?」

 

 問いかけてきたセピアに、差し当たっての第一目的を告げる。

 

「これだけ時間を使えばあの十字路から人はいなくなってるだろう、だから、元の道を戻って、これから地表霊廟へと向かおうと思う。」

 

 

「え? 逃げる…って訳じゃないですよね? 何をしに行かれるのですか?」

 

 ディーネが行動の意味が理解できていないようで、エルヤーの考えを少しでも理解しようとして目的について知りたがっている。

 

「あぁ、あのご老体の様子を見ておきたくてさ…多分、予想通りなら、今頃、大ピンチになってるんじゃないかって思ってね」

 

 

 

「え? あの人たち、それなりに強そうでしたけど…ほら、モモンさん?あの人との戦いの時も一方的な攻め具合だったじゃないですか?」

 

「まぁ、そうなんだけどね…(本当は理由は違うんだけど)強そうなチームから先に潰しておいた方が、この墳墓を支配する存在からすれば当然の行動だとは思わないかい? しかも彼のチームは今…単独で地表部近くに居る、他の援軍は見込めない…なら、その絶好のタイミングを見逃すことはないって気がするんだよね。」

 

 

 実は今、まさにその通りで、そのチームの目の前には、階段の上から見下ろすようにメイドの服を身に纏った5人の美女に進む道をふさがれている場面だったのだ…だがまだ自己紹介の最中、ということはベルリバーも予想していなかった。

 

 

「という事で、見に行ってみて、問題なければそれでいいし、何かあれば助けに入ろう、なにせあの老人は、率先して宝を漁る気はなかったようだし、状況次第では助けられるかもしれない。」

 

 

「まぁ…そういうことなら? 見に行くだけ見に行ってみましょうか?」

 

「あ、そうそう、もしかしたら、そこには余裕で難度150超えのバケモンが複数体いるかもしれないから…ちょっと体の中に入っててくれる? 強そうじゃなかったらすぐ外に出して、チーム名の名乗りを一緒に上げようよ」

 

 

「あ、それいいですね! チーム名の名乗り! 一度みんなでやってみたかったんです!」

 

 

「なら決まりだね…あ~~~ん」

 

 と大きく口を開けると、もはや何の抵抗もないのか3人が列を作って歩いて口の中へと進んでくれた。

 

(信頼してくれるのは嬉しいけど…もう少しこう…リアクションとかない物かな? まぁ話がスムーズでいいけどね。)

 

 その陰で、アインズはアルベドにそれを見られないように…と、必死に注意を引いて、コトが済むまで見せないようにするのに苦労していた。

 

 

 

                   ★★★

 

 

 

「コロシマショォォ…」

 

「…殺すべき。」

 

「ただ殺すだけではつまらないわ、ありとあらゆる痛みを与え続けた上で『死なせてくれ!』と頼んで来るまで苦しめましょう。」

 

 

 ベルリバーが、姿をいつもの姿から変え、嫉妬マスクのレアな方を身に着け、顔でバレないようにしながら、地表部までもうすぐ…という所でそんな声が聞こえてきた。

 

 

(やっぱりか…まさか、本当に各個撃破を狙って来ていたとは…、一応見に来てよかったよ。)

 

 

 そこにまで来た時点で、急ごうとするも、自分はユリとルプスレギナの声しか間近で聞いていなかった。

 

 そのため、今の3人の声はそうではなかったので、消去法で言えば、ナーベラルはモモンと一緒だからここにはいない。

 

 ユリは確かカルマ値が「善」だったからあんな言葉は使うまい…とすると他の3名か…

 

 中でもソリュシャンはヘロヘロさんの創った中でも(ヘロヘロの個人的趣味と言う点で)最高のNPC

 

 索敵、探索系のスキルを取得しているクラス構成だったはず、迂闊に近寄れば感知されてしまう恐れがある。

 

 ならば…<捕食者の隠密>

 

 本来はエサ場に展開している罠に獲物がかかるまで…その近くで、じっと気配を押し殺す為のスキルなのだが…これは、隠密のまま移動出来るほど高性能ではない、これを使うと身動きが取れなくなるのだ。

 

(セピア…聞こえるか?)

 

 

(はい、何かありますか?お手伝いですか?何しましょう!)

 

 

 嬉しそうな声で声を返してくる、そういえば腹の中に居る間、こんな風に助けを求めたことなんて今までそんな多くなかったもんな。

 

(お前の装備している「風迅の外套」の効果で風の空間をボクの周囲だけに展開してくれないか? 足音を極力相手に悟られないように消しておきたい…さすがに動き出せば気配は消すことまでは出来ないが、足音が出ないだけでも、「前の敵に集中」している最中なら、意識の外から不意を打てるかもしれない。 そうなれば警戒して、挙動が「様子見」から入ってくれるかもしれないからな)

 

 

(あ、はい、では周囲の空気を集めて、ヴェールさんの周囲だけに球状にして包む感じにしますね…これなら足音は球状の気体の中のみに響くので、外には漏れない筈です。)

 

 

(あぁ、ありがとう、セピア。 もしこれから敵でエルダーリッチとかに出くわした時は、敵をこの球体で包みこんで、中を真空状態にしてみたら面白いぞ? 詳しい説明すると面倒だからしないが、多分炎の爆裂は起きない可能性が高くなる。)

 

 

(わっかりましたぁ~!! 覚えておきます!)

 

 

「さて、それでは行きますか!」

 

 球状の気体に包まれ、発する音の全ては、その球体の中で完結するので声に出しても外に漏れることはない。

 

(ベルリバーは気づいていないが、自分の周囲に展開して空気の対流を起こし、球状の中で音が完結できるということは「気配」の方も、外に漏れ出ることなく、空気の対流と共に気配も滞留することになるのだが…まだそのことには思い当たらず、当分は気付かないこととなる。)

 

 

 自信をもってプレアデスたちの近くに(一応警戒しながら)歩いて行くのだった。

 

 

 

                   ★★★

 

 

 

「ありゃ~…こりゃ、まずいっすねぇ…」

 

「これは…コキュートスさまもびっくりですわ」

 

「…これ程とは…思っても居なかった……」

 

 

「それにしても弓を持ってるスケルトンアーチャーの目の前で<飛行(フライ)>を使うとか…何考えてたんッスかね?」

 

 

「多分…、空から<ファイアーボール>でも落としたかった?…のかも…でも、弓を持つ相手の前で宙に浮かぶとか…悪手…。」

 

 

「そうね、射抜かれて地に落ちて、今は身動きできないみたいだし…息はあるようだから、あとで食べさせてもらえないかしら…」

 

「ズルイィ…タベルナラ…ワタイモホシイィィィ~~。」

 

 などと、明らかに観戦モードのような口ぶり、どうやらプレアデスは戦闘には参加していない様子だ。

 

 あと少しで、ジャンプすれば頭を超すことが出来るか?と言う所で、その時間はないことに気付かされる。

 

「ア、トウゾクモ、タオレタ…」

 

「こりゃ~、勝負あったッスねぇ…」

 

 と少し残念そうだ、もう少し善戦してくれると思っていたのだろう…一体ナニと戦っているというのか…?

 

 

 やっとすぐ後ろに立てたが、即座にユリに気付かれた。

 

「ルプスレギナ! すぐ後ろに邪魔者よ! 乱入などさせないようになさい!」

 

 

(やべ! さすがに不用心に近づきすぎたか…そういえばユリは見た目からは解らないけどアンデッドだったっけ?生体感知でも使ってたか?…あ、でも徒手格闘特化だったよな、魔法の心得はそんなでも無かったはずだし…なんでバレた?)

 

 

 実は、モニターを見ていたアインズがさすがにあそこまでプレアデスに近づかせるのはアルベドの見ている前でだと何も行動に移さないのは不審がられるか?…と心配になって<伝言(メッセージ)>を飛ばし、ユリに警告をしただけという事情だったのは、エルヤーに知ることはできない内容だ。

 

 

 

「おっと! ヤベ!見つかっちまったよ!」

 

 空気の対流をセピアにお願いしてキャンセルしてもらい、声を伝わるようにしてもらう。

 

 ここまで来たら、対話が出来ないのはキツすぎるからだ。

 

 ルプスレギナの武器である長柄のメイスのような武器が降りぬかれる寸前、頭上を飛び越し体を翻しながら、階段の中断、わずかに足場を確保できる場所に着地する。

 

 

「何者です? この墳墓には、ワーカーと言われる侵入者しか居ない筈ですが…今回、黒の長髪という特徴は一人も心当たりがありません…名を名乗られてはいかがです?」

 

「ボ…ぁ、いや…私ですか? そうですね…私は…ベル…「ベル=カゥワ=スズリバー」と申します、長くなるのでお気軽にベルさん…と呼んでいただければ幸いです。」

 

 

 少しユリの眉がピクリと上がる。

 

 何か思う所があるようだが…、そのことより重要な件を優先することにしたようだ。

 

 すぐに、自分のよく見てきた、NPC時代の表情、わずかに口角が上がり、笑顔に見えるもどこか無機質っぽい顔に戻り、問いかけを再開する。

 

 

「一体、何者でしょう? ワーカーでないなら、早くここから…あ、いえ、そうもいきませんね、この場所に居る以上、内部の情報を外部に出す訳には行きません。 ナザリック・オールド・ガーダー! その死にぞこないの老人相手は1体を残して、この黒髪を相手にしなさい!」

 

 

「その必要はないよ、こちらから下に降りて行こう。」 

 

 

 ヒラリと階段から飛び出し、体を空に舞わせると、落下しきる前に<浮遊(レビテート)>の魔法を展開。

 

 地面から数cm手前で軽やかに着地。

 

 絶体絶命か…と諦めかけていた老公に話しかける。

 

「ご老体…ご無事ですか?」

 

「おぉ…ヌシは何もんか知らんかの…、助勢は大変うれしいか…二人て何とかなる相手しゃない、お前さん、早くにけるんしゃ!」

 

「そうも行きませんね…これでも、一応あなたに死んでもらっては困る可能性が少しばかりあって、死なれると都合が悪いのですよ。…多分…。」

 

 

「囲まれながらおしゃべりとはずいぶんと余裕ですね…、かかりなさい!」

 

 ユリの号令で、7体のオールド・ガーダー達が一斉に攻撃に転じる。

 

 全部で8体だが、先ほどの命令が効果を残しており、老公に剣を持ったナザリック・オールド、ガーダーが張り付いているため、それ以外はベルの方に注意を向けている。

 

 

(ごめん、セピア、ちょっと聞かれちゃまずい言葉、叫ぶから、3秒だけまた音の遮断、お願いできるかな? 今度も自分の周囲のみね?)

 

 とお願いすると、さっきと同じ空気の対流が巻き起こる。

 

 

「風…ですか? 妙な魔法を使うものですね…でも威力が少々足りないようですが?」

 

 

(ご心配なく…これは攻撃用じゃありませんから!)

 

 空気の対流の中で返事をするも、その音は外に漏れることがない。

 

 ユリ側からは、口が動いているのは見て取れるが、内容が聞こえてこない、それをみて音の遮断か…と思いいたるも、ここで音を遮断しても何の意味があるのかわからない。

 

 

 (どっちにしろ、体内のエルフの3人には聞かれちゃうけど…まぁ、彼女達には意味がわからないだろうから、聞かれても問題ないだろう。)

 

 そう判断して、服の中、懐に手を入れたベルは、服の中でアイテムボックスを起動、その中でショートカットですぐに手に届くように設定しておいた武器を素早く引き抜く。

 

「久しぶりの出番だ! 頼むぜ! 天ノ魔(あまのま)ぁ…ブレェェェェ~~~ドォ!!!」

 

 この武器は発声の声量が…というより気合で、威力に差が出るのは転移直後に実験済みだ。

 

 あらん限りの声を張り上げ、叫ぶと同時に、「握り」だけの(つか)の先に添えた手を滑らせる。

 

 すると、まるでその手の平から発生するかのように、光り輝く剣が現れた。

 

 その剣はブレードと言う割には少し細身だが、長さはバスタードソード並み、その輝きはユリでさえ、一瞬、目を見開いてしまうほどのモノがあった。

 

「そ…それは…?」

 

(サンキュ! セピア、もう大丈夫だ! ありがとう)

 

(なんで今のを隠したがったのかよくわかりませんけど、なんでです?かっこよかったのに…。)

 

(あ、そう? ありがとう、でも色々と事情があるのよ、これがまた複雑なのが…ね)

 

 体の中の3人に答えるようにしながら振りぬいた一閃。

 

 その動きだけで直接、近接戦を挑もうとした約半数、3体が黒い靄の様になって消える。

 

(『ダイナミック』を使わなくても、20レベル弱の相手なら普通の攻撃で充分だからな…。 神聖属性が入ってるし…。)

 

 

「お!なんか面白くなってきたっすね! ワックワクしてきたッス!」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ? どうするの…アレ…?私が食べちゃってもいいのだけど?」

 

「でも…あれ…、あの仮面…、以前私たちがかぶっていたものに近い?…」

 

「ハイハイ、おしゃべりはそこまでよ、あの存在は今まで相手にしてきた者達とは次元が違います、しっかり戦い方を見ておきなさい。」

 

「「「「はーい」」」」

 

 

 

 

「さて、一気に3体葬ったから、あとは剣持ちが2体に弓持ちが2体か…剣持ちの一体はご老体が足止めしているからいいとして…次は弓…かな?」

 

 武技<縮地>!

 

 一気に弓を持つオールド・ガーダーとの距離を詰めると、矢を撃ち出す前に、構えていた弓ごと胴体を真っ二つに切り裂き、次の1体を<空斬>で攻撃、神聖の光で焼かれたオールドガーダーは、弓持ちが2体共、黒い靄になって消える。

 

(やっぱり、本物のエルヤーの<空斬>が弱かったんじゃなくて、使い手の技量、若しくは対応するステータスの数値が低かったんだろうな…ちゃんと「ナザリック・オールド・ガーダー」に通じたし…ガチビルドじゃないと言ってもレベル100の攻撃だもんな、5分の1以下のヤツに耐えられるはずもないか…。)

 

 

 

 そんな感想を持っていると、すぐそばまで来ていた剣持ちの最後の一体であるナザリック・オールド・ガーダーがベルに襲い掛かってくる。

 

「遅いよ? その程度じゃ…ね」

 

 そう言って横に剣を薙ぐ。

 

 それだけで、その一体の方も黒い靄になって消える。

 

 

 

 残るは老公の相手をしている一体。

 

「ご老体、私が代わりましょう、どうか私の後ろへ…。」

 

「おぉ…すまんの…そろそろこの老いほれにはキツくなってきたとこてな…」

 

「では少し休憩していてください、お怪我はありませんか?」

 

「あぁ、少ししゃか、もらってしまったわい、またまた動けるかの…」

 

 

 そうは言ってるがツラそうだな…見るからに憔悴しているのが分かる…。

 パーティメンバーがこんなになっちまったら、そりゃ落ち込みもするか…。

 

(ディーネ、済まないがキュアの魔法を使ってくれないか?一番低い位階のやつでいいから。)

 

(はい、ヴェールさん、了解です。)

 

 手の平に光が灯ってきたあたりで、その手の平を老公の身体に触れさせた。

 

「<軽傷治癒(ライト・キュアウーンズ)>」

 

 

「おぉ…おヌシ、回復魔法も使えるのか…なかなかしゃの……これでまた寿命が伸びたワイ。」

 

 

 

「さてさて、この辺でそろそろ引いてくれないかな? こっちも別に全滅させたくて参加したわけじゃないんだ」

 

 今までので7体葬ったので、現在、ナザリック・オールド・ガーダーは剣を持っているのが一体残っている。

 

 

 

 耳を疑うような表情をした後、ユリは戸惑いながらも答えを返す。

 

 

「ならなぜ、首を突っ込んできたのです? そこのチームは我らが主のセンスがどうかしているなどという暴言を吐いたのです! 許されていいはずがありません!」

 

 

「…なるほどね…それは確かにひどい物言いだな…、お前たちが腹を立てるのも解る…殺したい程、思い知らせたいという感情もな…わからなくはない…だが…それは、この老人も同様か?」

 

 

 意図せぬ言葉が投げかけられたことにより、ユリの眉が先程と同じように吊り上がる。

 

 

「あなた如きにボ…私達の何がわかるというのです! 口から出まかせも大概になさい!私たちの…気持ちなど…お前たち風情が本当に理解出来るなど…、勘違いも甚だしい! 恥を知りなさい!!」

 

 

 どうやらその言葉は、彼女達の中で全員が同意見のようだ、烈火のような表情を浮かべ、こちらを睨みつけてくるような感情がうかがえる…並みの者であれば、その10の眼光だけで、退散ものだろう…。

 

 

「ふむ…、そうだな…、確かにどこの誰ともわからぬ輩に、「良く解る」などと言われては…、素直に命乞いをされた方がまだその言葉を信じられるというもの…か、仕方ない…「気持ちが分かる」という証拠を提示するとしよう。 これを見ればキミらも、その言葉が一時しのぎの姑息な言い分ではないと理解してくれるだろう。」

 

 

第1位階自然の獣召喚(サモン・アニマル1st)

 

 

 己をベルと呼称したその若者が魔法を唱えると、地面に魔法陣が輝き、一羽の鷲が現れる。

 

「さぁ、これをあの階段の上の女性に届けて来てくれ。」

 

 静かに差し出された物を嘴で挟み、飛び立つと、言われたようにユリに対して羽ばたいてゆき、ソレを届けに来て、再びベルの元へと戻っていく。

 

「どうだい? それを見ても、まだ私が「君らの気持ちが理解などできぬ輩」と決めつけられるかい?」

 

 

「こ…これは…これは、なんで…なんでこの方が、いや…このお方が…この…方々が…」

 

 

 わなわなと言う表現がぴったりだという感想をベルが持ってしまう程にユリからの動揺は計り知れない。

 

 それはそうだろう、それは一枚の写真、それは木枠で覆われ、部屋の一角に大切な思い出として飾ってあってもおかしくない形で、かつてあった「その時間」を切り取ったまま、ユリの手元で現実として突き付けられている、それは彼女たちにとって…、一番触れて欲しくないコトであり、一番理解してほしいコトでもあった。

 

 

 ユリは今、それを差し出してきた若者が…、恐ろしいとさえ思っていた。

 

 

 なぜなら、これを持っているという事は、この方々と交流があったという何よりの証…ひょっとしたら、この中に、その若者自身も居るのではないか?と僅かな望み、可能性、そうであってほしいという願い…ありとあらゆる感情が、願望が…渇望が…激流となって、5人を蝕む。

 

 

 彼女が持っているのは、大切な思い出を残したいと思う者であれば誰もが一度はしたことがあるだろう…その想い出の一瞬を切り取った『写真』それを木枠の中に収め、透明な板で色褪せぬように覆い、机の端などに飾ったりする…そんな一品。 …端的に言えば『写真立て』だ。

 

 

 それが確かに…実際の出来事だと良く解かる者達がそこに写っているが故、その反響は大きい。

 

 

「なんです! ユリ姉さま、ここに…ここにいらっしゃるのは…ヘロヘロ様…ヘロヘロ様ではありませんか!」

 

「ア…アインズサマ…マデ、ナゼ…ナゼ、ナゼェェェ!!!」

 

「ユリ姉さま、この中に…やまいこ様!やまいこ様がいらっしゃるじゃないッスかぁ!!」

 

「ウルベルト様も…いる。」

 

 

 それはベルリバーの中でも大切な想い出の一枚。

 

 ユグドラシル時代、みんなでワイワイ言いながら、くだらないことばかりをやって、みんなでふざけ合っていた頃の…他愛ないことで盛り上がっていた時代。

 

 その時の1ページをスクリーンショットで切り取り、画像データを加工して、ユグドラシル用のインテリアアイテムと合成させた物。

 

 その写真に写っているのは総勢で9名

 

 

 ギルドマスターのアインズ。

 

 ワールドディザスターのウルベルト。

 

 当時は、今のブラック企業に就職する前で、割と時間があってよくログインしていたヘロヘロ。

 

 ベルリバー。 

 

 やまいこ。  

 

 ぶくぶく茶釜。

 

 ペロロンチーノ

 

 ブループラネット

 

 餡ころもっちもち。

 

 

 

 写真の中には、表情こそ変わらないものの、ポーズからして全員が楽しんで写真に写っているのだろうことはうかがえる。

 

 そして、至高の御方々がお召しになられている衣装、これは見たことも無い物、まるで全身スーツとも言えるような服で、それぞれが違う色を身に纏っている…。

 

 

 中心に…、赤い色の全身スーツを首から下に着込み、真ん中でポーズを決めているアインズ様。

 

(アインズ自身は、リーダーなら赤は絶対でしょ!という多数の意見に流され、仕方なく着ているが、本当は<ブラック>が良かったと、とうとう言えなかったというのは後でベルリバーがアインズに零された愚痴である。)

 

 

 そして、アインズを中心に、頭上に飛び上がり、天空に向け弓を構えているパープル色の全身スーツ姿のペロロンチーノ

 

 某少女戦隊ものの影響を受け、「パープルも入れよう!パープル!それは外せないでしょ!」と言い出した騒ぎの発起人というのは皆に知れ渡っているのだが、そのことにペロロンチーノは気付いていない。

 

 

 

 アインズのすぐ隣、左側にはピンクの肉棒をアバターに選んだぶくぶく茶釜…もちろんスーツもピンク。

(アイテムの外装の影響で、首から上はピンクの肉棒だが、首から下は普通の人間っぽいスタイルで統一されてしまっている。)

 

 

 アインズの反対側のすぐ隣はブラックのヘロヘロ…それはブラック企業だから、という事ではなく、本来、ウルベルトが候補に挙がっており、黒と言えば「悪」のウルベルトさんでしょ?と、全員一致の意見で多数決されたのだが、本人の絶対拒否の姿勢により、仕方なく古き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)のヘロヘロが着ることになった。

 

 のちに決めポーズでだけなら…と参加した写真が出来上がった時、受け取ったウルベルトが…「やべぇ、オレ、こいつらの長官っぽくねぇか?」とつぶやく程の出来だったのは彼の黒歴史だろう。

 

 

 ピンクの茶釜のとなりは、いつも「かぜっち」と呼び、彼女をリアルでもユグドラシルでも親しく交流していた餡ころもっちもち。

 

 彼女は出来れば餡子らしく黒が良かったけど、先に黒が決まってるなら、私は白餡で…! ということでホワイト。

 

 ブラックであるヘロヘロの隣にはノリノリで、参加したブルー役のブループラネット。

 

 ヒーロー系には造詣は深くないが、青なら是非、協力しよう! という事で<ブルー>

 

 ホワイトの横にさりげなく立っているのが「やまいこず・フォレストフレンズ」繋がりで『やっぱりやまちゃんは緑っしょ?』という事でグリーン。

 

 ブループラネットの横には、一番端っこでやまいこと鏡合わせのようなポーズで立つベルリバー。

 

 彼としては、ヒーロー系の話題にはついていけないことの多い自分でも、こうして誘ってもらえること自体が嬉しいから、何色でもいい、という姿勢だったので特に不満はない。

 

 それを着た時、「カレーが良く似合いそうですね」と、ペロロンチーノから言われた時は何のことかわからなかったが…さんざん調べていたら、やっとそういうことか…と理解できたという裏話もあった。

 

 

 

 

「それを見て、私の言葉にウソはないと思ってくれるなら、このご老人を私の監視下で、引き取らせてもらいたい…、それに最初の話に戻るが…その「許されない発言」をしたのは、このご老人本人かい?それとも、言わせた原因がこのご老体なら、それは仕方ない、私も殺されても仕方ないだろうと思える部分もある、その上でもう一度…、重ねて尋ねるよ? 本当にこのご老人が『言った』のかい?」

 

 

 

 ユリは悩む、この写真を持つという事は、このナザリック、ひいてはギルド、「アインズ・ウール・ゴウン」に何らかの形で関わった可能性もある存在であろうことは確かになってしまった。

 

 それならば、先ほどの『気持ちはわかる』という言葉だってウソでも、一時しのぎの言い訳でもなく、本当にそう思ったという真実を語ってくれたのだろうという認識に落ち着き始めていた。

 

 だが…御方の命令は絶対、「侵入者の盗賊どもを抹殺せよ!」という指令が今回、自分たちがココに来た理由なのだ。

 

 その上で、問われた言葉…そもそもこの老人自体は確かにナザリックを貶めてもいないし、暴言を吐いても居ない。

 

 その言葉を吐いたのは盗賊、先ほど、雷撃のハンマーで潰し殺したばかりだ…、そういう意味では暴言に対しての天罰は済ませたとも言える。

 

 

 だが…それでも、こいつらは「侵入者」であり、このナザリックの財を平気で漁っていく盗賊、野盗、落伍者(スラム)どもと言ってもいい輩だ…殺してもいいはずだ。

 

 

「とりあえず、ここで引いてくれるなら、その写真は進呈しよう…ここの主にも必要があれば見せてあげるといい…と言うより、ここで時間を浪費してていいのかな? 状況が変わったら報告し、判断を仰ぐことも時には必要なんじゃないかな?と私は思うが…? それとも…進むことも出来ず、下がることも出来ずに、このままここに居るのが、キミらの忠義だとでも言うつもりかい?」

 

 

「う…その言葉、真実ならば、確かに報告の必要がありそうです…、確かに当初より状況は大きく変わりました、これは報告の必要アリと判断します…みんな、ここは撤収しますよ?」

 

(あれ?いいんすか? 死んだヤツら回収してアインズ様のとこに連れて行く予定だったんじゃ…?)

 

(そうね、でもそれは後回し…どちらにしろ、あの死体をどうにかするには、埋めるか、燃やすか、生き返らせるか…しかない。 普通の手段では生き返らせることもこの地の人間には至難の業らしいから…そいつらでは、葬るしかできる手段は無いでしょう…そうなれば、この地、ナザリックは我らの支配下…自分の領地で勝手に埋められたモノを、掘り返して何か問題あると思う? 処分することになっても、それは処分する時期が早いか遅いかだけ…結果は同じ…それならアインズ様に判断を仰ぐのが優先と考えます。 だから、見逃すのではなく、一度保留…そういうことよ、ルプー?)

 

 

「あ、そういう事なら、確かに問題ないっすね! そいじゃ…ありがとう、黒髪のお兄さん! これは大切にさせてもらうとするッス!」

 

「くれると言うなら…本当に持って帰るだけ…返してと言われても、もう返さない…。」

 

「あなたの正体については後回しにします、次に会う時まで命は大切になさい。」

 

「アインズサマニィ、イイツケルゥゥ…」

 

 

 そして、静寂が戻ったその場で、やっと安心できたのか、緊張を解いた老公その人から、感謝の言葉がベルに届いた。

 

「若いの…あんた強いのぉ…最盛期のワシもあんたとくらへたら、『月と長虫(ワーム)』くらいに弱かったんしゃの…」

 

「いえいえ、お気になさらず、まずは素顔をお見せ出来ない非礼、お許しください、時期が来るまでは、どうしても、身分が明らかにされるわけには行かないのです。」

 

「あぁ…かまわんよ、命を助けられたんしゃ…、アンタが何者たろうと、ワシャ、構わんよ…さっそくワシを監視下に置いとくれ…、あんたの近くの方か安心しゃ…」

 

 

「えぇ、それでは、私の仲間の元に行くとしましょうか…ちょうど、そこの物陰に隠れてもらってますので…、先ほどの交渉がうまく行かなかった場合に備えていたのですが…うまく行ってよかったですよ」

 

(もちろんウソですけどね、適当な物陰を見つけて、そこに体の前面だけ入れて角で前面部を見せないようにしながら、仲間を吐き出すとしましょう。)

 

 

 そうして、吐き出しているシーンは、プレアデスの報告を受けているアルベドもアインズも、その写真に目を奪われていたので、気づかれることはなかった。

 

(もちろん、アインズもその時の記憶が鮮明に蘇り、恥ずかしさで『感情抑制』が働くくらい動揺してしまったのは言うまでもない。)

 

 

 

 




あとがき

前の話で誤字、脱字の指摘をしていただいた、忠犬友の会さま、そして対艦ヘリ骸龍さま、教えていただきありがとうございました。

前の話の方でも、修正後に編集で、お礼はかかせていただきましたが、重ねてこちらでも御礼申し上げます。

とりあえず、老公は無事に生き残れました。

あの作品って槍系武器の武技使いってほとんど出てきてないんですよね…だからもったいなく感じてしまって。

きっと、後々の就職の際にはその技能が高く買われることでしょう。
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