気づいたら大自然 小心者の異世界闊歩 作:yomi読みonly
まず初めに感謝の言葉から始めさせていただきます。
安定でいつも至らない部分をフォローしてくださる「忠犬友の会」様、52話でも修正ありがとうございました。 皆様の尽力のお陰で気付かなかったり、もっと相応しい字にする必要に気づかされることは作者としてありがたい限りです。
とりあえず、やっと53話からナザリックを巻き込んだ、お騒がせのイベントが始まることになります。
不詳の身ではありますが、皆様に楽しんでもらえるような作風に出来れば幸いです。
追伸:やっと発売しましたオバロ14巻!
読んでたら新しい武技とかあったんで、武技大辞典の項目読んでるアインズ様
のセリフ、一部改変…というか武技ひとつ追加しちゃいました。
ヘッケランの腕の傷が無事、完治したことを見たフレイラは「これで安心していいわ」と声をかけ、イミーナの背を優しくさすってあげている。
「ありがとう…ありがとう…。」
そう繰り返すイミーナは、今まではそれどころじゃなかったので思い浮かばなかった疑問を一つ、フレイラに投げかける。
「あの…フレイラさんはなぜ、ここに? ここにはワーカーしか入って来られない筈…」
その言葉を聞いたフレイラは「あぁ…」と短く納得する言葉を発した後、イミーナに問いの答えを返した。
「お忘れでしょうか? 私は黒装束を身に着けることで、誰の影にでも、何の陰にも潜むことが出来ます…ということで、影に潜んで中まで入ってくることが出来た…ということですよ?」
「それで…、フレイラさんは…その、ワーカーになられてるというワケでは?」
「違いますね、ワーカーが『自称』ということで、『本人がそう思って居ればそう。』という定義があるのであれば、それになることもやぶさかではありませんが、それは主人の意向を聞いてからでしょうね。」
「…と言うことはやっぱり、あの人は「ベル」さん…ということ?」
横で静かに聞いていたアルシェがフレイラに訊ねてきた。
フレイラはわずかに笑みを浮かべ…
「そうですね、私にとって「主人」と言えるべき方は世界中で…ただお一人。ベル…」
と、そこで何かを言いかけ、口をつぐむと…わずかの逡巡の後、続ける言葉を付け加えた。
「ベル=カゥワ=スズリバー、その人だけなのですから。」
★★★
「ようやく会えたようだな…侵入者よ…お前は他の有象無象とは一味違うようだが…お前には聞きたいことが山ほどある…そういう意味でもこうして相まみえる瞬間を心待ちにしていたよ…」
支配者であるナインズが、遥か頭上の貴賓席らしき場所よりもさらに上、支配者に相応しい最上段から眼下を見下ろし、満を持して現れた黒髪の勇者に向かって言い放つ。
「それは喜ばしい限りですね…このような強大な…難攻不落と言っていい拠点を支配する超人…いや、神と呼んでも差し支えないほどの力あふれる貴方のような方にそう評価してもらえるとは…、こちらには心当たりはないのですが…お聞きしたいこととはどのような事でしょうか? あぁ…失礼、私は『ベル=カゥワ=スズリバー』と申します、お見知りおきを…。」
ベルと名乗った、見るからに剣客の姿である仮面の者が支配者に対して返答した、そこには以前から目の前の存在の力量を知っていたのかと勘繰りたくなるような物言いが含まれていた。
ナインズと名乗るアインズ・ウール・ゴウンの近くに控えていたデミウルゴスが、その言葉を聞き「やはり…」という表情をする。
(何かの間違いかと思いこもうとしていましたが…どうやら先ほど、侵入者がトラップにかかる瞬間をモニターしている最中、たまたま見えていた画像の中のあの映像…、あの瞬間の姿が本物であれば…間違いようもなくユグドラシルで存在していた種族…それの異形種の中の一つということになりますね…実力のほどまでは分かりませんが…警戒しておくべきでしょうね…。)
御方に万が一にも傷を負わせるわけにはいかないと決意を新たにするデミウルゴス。
どうやら他の守護者たちはそのことには気づいていないようで、どこか強者が弱者に対して「絶対の余裕」を以って見下している様な雰囲気を感じる。
(私がしっかりしなければいけないようですね…統括のアルベドまでが余裕の姿勢を崩していないとは…)
「先ほども言ったようにお前には、聞かねばならんことがある…、その上で処遇を決める事としよう。」
「これは…、支配者というだけあってさすがの貫禄ですね。 まるで言葉自体に重みが乗せられているようだ…しかも理知的で話し合いの余地まで設けてくれるとは…侵入者に対する態度としては温情あふれる姿勢と言わざるをえませんね。 …きっと永き時を過ごしてこられたのでしょう…正に上に立つべきお方だとお見受けします。」
(さすがにここまで持ち上げておけば、NPCたちも悪い気はしないだろう…己の主を評価しているのだから…問題はやり過ぎるとわざとらしさが前面に出て、おちょくられてると思わせる可能性があるくらいか…)
その言葉を聞いて、デミウルゴスは思った。
やはりこの男は油断ならぬ存在だと…、あそこまで言われれば、主と言えども軽々に処罰を下すことなどできない、御方は意味もなく殺害に及ぶことを良しとしないお人柄。
その上で、あのような言われ方をされれば尚更、極刑に処すなどという言葉が言いにくくなる。
そこまで計算の上で言葉を選んでいるとしたら、相当の食わせ者であることに疑いの余地はない。
「ではまず聞こう…あの老人は何処へやった? 確か監視下に入れておくので見逃してほしい…であったか? 別に弱者の中でも最底辺の人間ごとき一人見逃したところで然程の事でもないが…、先ほどの写真一枚で、我らからの追及が無くなるなどとは思っていまい?」
(疲れるな~…どんなシナリオがあってどういう流れに持って行けばいいかがわからないから、こっちとしては手探り状態なんだけど…、ベルリバーさんの機転に期待するしかないよなぁ~…。)
「えぇ…今は誰かから知らぬうちに不意打ち等で命を落とさぬよう、安全な場所でかくまっておりますよ? 完全に御身の名において絶対の安全を保障して頂けるというのなら…すぐにでも無事な姿をお見せいたしますが?」
軽い調子で核心に至ろうとする仮面の剣客、それに対して、ナインズもむざむざ思い通りにさせるわけにはいかないようで、相手を牽制する。
「それを保証すること自体は、我らの財宝に手を付けてない者であらばどちらでもいいのだが…、「それ」を認める事が我々にとってのメリットに繋がるとは思えないのだが? お前の監視下にある盗人ども一味の一角、老い先短いとはいえ老人一人見逃すに足るメリットが我々にあると言う証明を示してほしいものだが? それはどうするつもりだ?」
(すみません、ベルリバーさん、これ、自分がいつもNPCたちに要求してることなんです! これを言わないと絶対にこっちが疑われちゃいそうなんで…せめてここはクリアしてください、お願いします!)
内心でそう謝罪をしながら、言葉を操る支配者、その堂々たる余裕は見る限り、狼狽している風には見えない…ガイコツなので表情などないというのが幸いしているのだが…。
それに対してベルの方も用意しておいた代替案を持ち掛ける。
「それについてですが…、このご老人を見逃して頂ければ、この老人の命1つ以上の価値ある資料をそちらへ提供する事が出来ます。それは、この地で、この地の人間が、この地独自の発展を遂げた『武技』なるものの…今現在、現状で確認できる全ての種類の武技を記した手帳…それと引き換えにして頂きたい。」
「な!…なんだと?…」
「どうでしょうか?もし、お許しいただけるなら、その原本となる物を今すぐに進呈させて頂くことも可能ですが」
「それほどの価値がその老人にあるというのか? こちらからすればそっちの方が割に合わないという気がするが? 現状において存在している…表舞台で確認されている武技の全てが記されているというのなら明らかにその資料の方が上ではないか?」
「それはその通りなのですが、この資料には…欠点もございまして、完全無欠の参考資料という訳ではないのですよ…残念ながら…」
「ほぉ…それならばまだ納得も出来ようというものだ…聞かせてもらおうか…その欠点とはなんだ?」
「はい、今現在、表舞台に…明るみになっている武技は一通り説明されてはいますが…記載されているのはその武技の名前、そしてそれが攻撃の武技か、防御のか…身体強化系か…といった種類の記載、更にはその武技を使用すればどのような結果が表れるのか…しか書かれておらず、どんな相性が合えばその武技をおぼえやすいのか…何レベルで、習得可能となるのか…またはその手順は…?といった事柄は一切記載されていないのです。」
「ふむ…ならばその老人一人とつり合いが取れると言われれば否定する材料はないな…相応と言うべきか…」
「ならば、その資料となる手帳、その現物がこちらとなります。」
そう言って、いつものように懐に手を入れる風を装い、中からアイテムボックスに手を入れ、その手帳を引きずり出す。
「アウラ…それをこちらまで持ってこい、よもやアレが偽物で、私の近くに来るための口実…、近くに来た途端に襲って来るとは思えんが…念のためだ、本物かどうか確かめたい、受け取って私の元まで持ってくるのだ。」
「ハイ! ア…、ナインズ様!」
そうして最初こそ、舞台上でマイクパフォーマンスをしてフォーサイトの紹介をしたアウラだが、支配者が上に戻った際、共に上段の方へ一緒に戻っていた。
その為、再び舞台の方へと軽やかに飛び降り、手帳を受け取ると、そのままナインズのそばに持ってくる。
「はい、ナインズ様、お持ちしました、こちらとなります!」
「うむ、ご苦労、アウラ…では読ませてもらおう…」
ナインズも、手持ちのマジックアイテムを持ち出す。
それは、片目でかざして見ると、どのような文字も翻訳して読めるようになる魔法のメガネだ。 それを取り出すと手帳を見る…。
間違いない、ハムスケが覚えた基本の『斬撃』
ガゼフが使用した「戦気梱封」「即応反射」「流水加速」「六光連斬」
クレマンティーヌも使っていた「超回避」「疾風走破」「不落要塞」「能力向上」そして「超向上」
漆黒の剣のリーダーが使っていた「要塞」
(え?…ウソ…「重要塞」なんて武技もあるの? みたことないんだけど!)
他にも珍しいのを挙げれば、老公と手合わせした時に彼が使用した「竜牙突き」「白竜牙突き」「青竜牙突き」などなど…誰が使った物か分からないが、他にも数限りない武技の種類まである。
面白いものなら、『オリジナル武技の作り方のガイダンス』などという記載まであった。
「ふむ…面白い…これならば、この地の武技なるもの…、それら一通りの対策を練ることも可能となろう。それは正にナザリックにとって財産とも言える知識…、見事だ、これを我らの物にしてもいいというのであれば、先ほどの老人の命、『お前の監視下』という条件は付くが、それでいいのなら好きにするといい」
「ありがとうございます、この地の支配者、ナインズ様…それに加えまして、まだ一つ、これは附属品と言いますか…付録とでも言いましょうか…その手帳を受け取って頂けるのであれば、もう一つ、御身に有効に使って頂きたい者も御座います。
「ほぉ…まだなにかあるというのか?それはなんだ?」
「はい…それは…その手帳の記載者、本人でございます。」
「まさか…それは…、連れてきているのか?」
「はい…先ほどのご老人同様、丁重に保護下に入れておりますが、その者は現在意識を手放してる状態、明け渡した後は、お好きなように…脳髄から情報を引き出すも良し、尋問で聞き出すも良し、<
少々、芝居がかったような仕草と言い方だが、スラスラと出てくる選択肢の数々にデミウルゴスも少しだけ、その状況を連想し、興味深い気分にさせられる。
「素晴らしいな…見事の一言だ! その記載者を明け渡せるのならそれは私にとって…いや、ナザリックにとっての大きな力と成り得るかもしれん、そうなればそれは交渉以上の価値をもつ、言うなれば「恩」と受け止めてもいいかもしれん!」
(なんかすごいな…ベルリバーさん、こんな短期間でここまでの成果を持ってくるなんて…武技の内容か~…あとでゆっくり読ませてもらおう!)
そこまでで話が一区切りつき、「武技大辞典」の存在で「メンバー達の写真の追及」のことをすっかり忘れて上機嫌になってしまっている支配者のそばまで来たデミウルゴスが静かにナインズに語り掛ける。
「ナインズ様、少々よろしいでしょうか?」
「ん?どうした? デミウルゴス…。」
「私からも、あの者に聞きたいことがございますので、少々お時間を頂いて宜しいでしょうか?」
(う…何か感づかれたか?デミウルゴスは変に頭が切れるし、深読み凄いしな…とりあえずお芝居ロールは続けながら、現状維持を優先しておこう…。)
「珍しいな、デミウルゴスが率先して人間などに聞きたいことがあるなどとは…まぁ、いいだろう…ただし、向こうが何かしらの手出しをしない限りは、こちらも決して危害を加える事はならん…それがダメージを伴う方法であれ、そうでない方法であれ…いかなる手段でも…だ、分かったな?」
「は…かしこまりました、至高なる御身よ…。」
そしてデミウルゴスは、軽やかに宙に身体を投げ出すと、背中から悪魔としての翼を生やし、仮面の剣客が立つ、その場へと優雅に下りて行った。
★★★
(うぅ…デミウルゴスが下りて来たぞ? どうする?…でもここからが本番だ、踏ん張りどころだぞ? 怪しまれず…かつ、こちらの有利に話が進むように誘導しなければならない…デミウルゴス相手に通じるか?…えぇい! 通じなかったら通じなかったでそれまでだ! どうせ、そういう可能性ありきでここまで来たんじゃないのかよ!)
少し不安感に苛まれながらも、己を激励し奮い立たせるベルリバー。
そんな感情は、仮面によって遮られていることに少しの安堵を覚えるも…デミウルゴスと舌戦を展開しなければならないプレッシャーに押しつぶされそうになる。
しかし、それはほんの序盤だ。
この千載一遇の機会を活かせなければ、今後の自分の理想を作り出すことなどできない。
その為の重圧にならいくらでも立ち向かっていくつもりでここに来たんだ!と思いを新たにしていると、優雅に目の前の悪魔は地に降り立ち、そしてわずかにこちらに興味深げな視線を向けて来る。
しかしそれは好意的なモノではなく…あくまで観察対象…実験動物や、昆虫をケースに閉じ込めて生態を観察するような目に似ている…そうベルリバーには感じた。
「これはこれは…申し訳ないですが、あなたはこの地の…支配者様ではありませんよね? 失礼ですがどのような立場の人なのか、お聞きしても?」
(一応、知識として覚えてはいるけど、初見で見ず知らずの人間が知ってたらおかしいもんな…ここはまず外堀から埋めていかないと…ですよね? ぷにっとさん!)
「あぁ…これは失礼…大変に興味深い個体に見えたのでね、観察するような目を向けてしまったようで失礼をしたね…私はデミウルゴス。このナザリック地下大墳墓に於いて、防衛時の作戦責任者を任されている者だよ…。」
そう背中をわずかに前へと倒し、優雅に腕を胸の前に持ってくる所作。
こちらに敬意を払って居る様に見せる動作だが、恐らくはそれはこちらを油断させるため、決して「認めて」その態度になったわけではないだろう。
デミウルゴスは背筋を伸ばし、両腕を後ろ手に組んでこちらに目を向け、こう切り出した。
「ところで、あなたには…、私の方からどうしても聞きたいことがありましてね…。」
(…来た!…そうだよな…あの場から穏便に引き上げてもらう口実とは言え、あの写真を見たら、そりゃ背後関係を疑ってみたくなるよな…)
「単刀直入に申し上げますと…あなたの正体など、正直私にとってはどうでもいいのですよ、本当はね…」
(あれ? 予想とは違う言葉がデミウルゴスから出て来てるぞ? 正体の事、聞かれるかと思ったんだけど…)
「私が知りたいことはただ一つ! あなたは…いえ…『あのお方』とどういった関係だったのです! よもや、写真だけ奪い取ったなどという事は無いのでしょう? 『あのお方』が弑されることなど考えられませんが…、もしそうならあなたの評価も少し改める必要がありますからね。」
(「あのお方」…か、デミウルゴスがそう言うということは…きっとウルベルトさんのことだろうな…っていやいや!それはダメだろ?それを口走ったら、いきなり関係者だってバレるだろうし…わざわざ自分からネタバレとか…絶対にダメなやつだし!)
「…『あのお方』とは? 一体誰の事でしょうか?」
ベルと名乗った目の前の男がしらを切って居るのか、本当に知らないのか…、恐らくは前者だろうとあたりを付けているデミウルゴスはその「茶番」に対して、表情を崩さず思案する。
(やはり、そこには食いついてきませんか…ここでポロっと漏らしてくれれば儲けものだったのですが…まぁその程度は見破ってくれないと少々興冷めな展開だったかもしれませんし…なら次の手に移りますか…)
「もちろん、至高なる御方々のお一人、ウルベルト・アレイン・オードル様その御方に対してですよ…。」
眼鏡をクイっと持ち上げる仕草をして、わずかな時間の沈黙…そこでベルリバーはどう返答するべきか悩む。
(さて…ここですぐ答えるのはあまりにも軽率だな…外部の人間という設定で「今は」来ているんだし、ここでバレたら、そもそもサプライズにならないしな…まだ勘付かれる訳には行かない…か。)
「ウルベルト…さん?、あ…いや失礼、ウルベルト様…、でしたか…それは写真のどのような位置におられる方でしたか? 外見の特徴だけでも…何色の方か言って下されば私もどの方だかわかりますし、それに関しての情報が思い出せるなら…」
(ふむ…やはりそこは引っかかりませんか?…それとも本当に知らない? …いや、それならば発言が引っかかりますね…、こちらの世界の人間ならば名前の構成は「名前」が最初で、最後が「姓」…、つまり家名の部分、いきなり見ず知らずの対象を名前呼びにするというのはどうにもひっかかります、そうなるとアインズ様のように、始めに「姓」が来る国、もしくは場所の生まれという仮定が成り立ちますが…)
「山羊の頭をした、黒づくめの姿で写っていた方ですよ、何色の服も装着していない…ローブ姿の御方です。」
「あぁ、何色のも着ていないお一方でしたか…それならやっとわかりました、あの人?方?のことですね。」
(敢えて「服」と呼称しましたが、それに対しコスチュームなり、スーツなり…独自の名称などが出てくればもっと確証は得られたのですが…、これ以上の深い追及は難しいでしょうか?…まぁいいでしょう、とりあえずの確認は取れました…この世界…現地民である可能性は限りなく低い…その結論だけでも良しとしましょうか。)
「申し訳ありませんね、それは先祖…祖父の祖父、そのまた祖父からの遺産でしてね…どことなく背景の印象とこちらの雰囲気が似ていたので見せてみたら、好感触だったのには驚きましたが、こちらの関係者の方々に渡せてよかったですよ、これで祖先も浮かばれるでしょう。」
(素性となる部分はやはり隠しますか…、それだけ古いモノならば、もっと素材的に色褪せていてもいいはず…あれは見た限り、新品同様に保存状態が良かった、それだけ古い時代からの物ならそれなりの痕跡はあるはず…なのにも関わらず…知らぬ振りをするということは…)
「そうですか…ならば…こちらも対応の方法を変えましょう、貴方…元々この世界の住人ではありませんね?」
(う! …気を付けていたはずなのに、いきなりバレた! なぜだ?どこでしくじった?)
「やはり…即座に否定はしなかった…そして、答えに詰まった所を見ると、「神人」の線は消えましたね。」
(しまった…カマを掛けられたか? それとも確信があっての発言か…? どっちとも判断がつかなかったな…さすがは悪魔、話術はお手の物…ということか…。)
「ふふ…、やはり、悪魔の知能には及ばなかったようです…、さすがに駆け引きで悪魔を出し抜けるとは思って居なかったのですが…、話し始めて5分もしない内に何かしらの手がかりをつかまれるとは…ね。」
(とりあえず「神人」ではないと言う、その点については否定はしないでおこう…、肯定も否定もせず…とりあえずデミウルゴスの流れに任せ、そこから打開策を見出していくとしよう。)
「となると…プレイヤーですか? 何が目的です? こんな場所まで無傷で潜入できるなど…本来ならばありえないコト、あなたには転移の罠で第6階層までの直通コースは開けていなかったはず…なのにここに居るという時点でおおよそ、現地住民ではないだろうとは思って居ましたが…私の予想は外れてなかったようですね。」
「それに関しては否定もしないが、肯定もしないでおくよ、その答えは君らの実力で私をねじ伏せて聞き出すといい!」
デミウルゴスの眼鏡の奥の宝石の瞳がギラリと光った感じがした。
「正気ですか? たしかに第6階層まで無傷で来られたというのはなかなかにお見事、と言わせていただきますが…その程度で我らに、しかも貴方お一人で全員を相手に生き抜く自信があるとでも?」
スキル、魔法などの手段無しでの純粋に力勝負であれば「デミウルゴス相手なら」と言う点については負けない自信はあるが…それでは自分がここまで来た意味がない、そんな事がしたかった訳ではないのだ、と思い自分を奮い立たせる。
「いや、さすがにそれは無いでしょう…敵の本拠地に来て最強の者達を相手に命のやり取りをして、生き残れると思う程、自分を驕ってはいないつもりです…、私が提案するのは…試合形式の…、言わば特殊なルールを正式に設けた上で、それを遵守することを前提としたPⅤP…いや、この場合、PVN…と言うべきかな?」
「ほう…ならば、試合形式という事は、そちらからも何名か出場する…という事でしょうか?」
「そうなるかもしれないし、今はまだ自分の意見をそちらに伝えたいという段階でね、私の言い分を受け入れてくれるようならば、出場選手についてはその時点からこちらで話し合うことになる、まぁ最低でも5人は確保できるだろうが…最悪の場合、2人という可能性も起こりうるかもしれない…まずはそちら側が受けてくれるかどうか…まずはそこを上の立場の方と相談してみてくれないかな?」
「…なるほど、まずはこちらがその条件を飲むかどうか…その上で、細かいルール決めはそれからのことだと…? まぁ、イイでしょう。 こちらも私の一存では決めかねる案件です。 一度、戻って、御方と相談してみましょう。」
デミウルゴスはくるりと、背を向け、バサリと翼を広げ…、そして瞳だけをこちらに向けるような横顔を見せながら、こちらに問いかける。
「一つ…これは先程のようなお互いの腹の探り合いではなく、純粋な質問です、はぐらかすようなことがあれば…この話自体を私の全力で以って叩き潰し、提案自体を破棄する流れに持って行くつもりです…なので貴方の本当の言葉が聞いてみたい…」
こちらへと、優しげだが…しかし内には真剣さを滲ませる言葉の力強さを感じさせるデミウルゴスが、そのまま視線のみをこちらに向け、僅かな挙動の変化も見逃さない気迫を感じさせている。
「なんでしょうか?」
「その前に…、このナザリックでは、今や、以前と違い防衛機構が整っています。侵入者の素行、行動の全てを見逃さぬように<
そこまで伝えたデミウルゴスが小声でベルにだけ聞こえる程度の声で語り掛ける。
「先ほどのあなたの「老人は保護している」という言葉を信じるとするならば…ですがね。」
その言葉を聞き、「見られていたか…」と冷や汗が浮かぶ、まだギルメン本人か…それとも別人かを疑っている状態だろうか?
それとも本物だと見破った上で、デミウルゴスの独断でこのようなことを?という疑問が浮かぶ。
そう考えるも、アインズさんの話では一部不安なNPCは居るということだが、デミウルゴスは決してそのような暴走をするタイプではない、感情ではなく理性を重んじるタイプ。
一か八かの勝負などする男ではない…ならば、どんな質問をしようと言うのか…?
「聞きましょう…なんのお話ですか?」
「貴方にとって、ウルベルト・アレイン・オードル様とは…?」
それは短い問いでありながら、彼の全てを乗せた言葉だと言うのは理解できた。
もし今後の不安要素となるなら…創造主の敵となる様なら、恐らくココで排除されるだろう。
試合上の手違いという名目で、始末されるかもしれない。
恐らくは、今の質問に特殊な効果を乗せ、真意を看破するための手段でも講じているのかもしれない。
デミウルゴスにとって、それだけ重みのある質問、今後のナザリックの方針を転換する必要性があるかどうかの重要な内容である、聞き逃し、見逃しがあってはならない部分だからそれは当然だろうな…とベルリバーもそう思って居た。
(仕方ない…ここで変に誤魔化して、ここに来た全員の命を危険に晒す訳には行かないもんな…どうせ正体を見られているなら…、それをアルベドにも伝えていないということなら…それは彼の中で、〝裏切り"のレッテルを張られかねない、ギリギリの部分なのだろうし…こちらも、相応な態度で応えるしかないだろうな…。)
「そうだね…、高い…どこまでも高い目標だったよ…いや、違うな……、ボクの憧れだった、と言った方がいいかな?目標と言うと聞こえはいいが、そこまでたどり着ける素質は自分には無かった…だからどこまでも高みを臨んで、見上げていただけさ…、その場に、隣に並べるなど…そんな風に思い上がれるほど、安っぽい存在じゃなかったからね…ウルベルト・アレイン・オードルという人物は…孤高を好み、どこまでも己の理想に殉じていた人だった…いや、きっと今でもそうだろう…あの人の心根はずっと変わらないはずさ。」
ずっとこちらに向けていた瞳を前へと向け、視線を外したデミウルゴス。
「そちらの真意は受け止めました…どうやら今の言葉にウソ、偽りはなさそうですね、ならばこちらも、先程伝えた言葉を実行に移すとします…、御方にその旨、伝えるとしましょう。」
そう言ってバサリと翼をはためかせ、上へ上へと飛び上がって行った。
★★★
「なるほど…あの者は、そのようなことを提案して来たか…面白そうだ…どこまでこちらの守護者達に食らいついて来られるか…見ものだな…アルベドはどう思う?」
「は…恐れながら、あのような下等生物風情…私たちと渡り合えると考えているだけでも、思い上がりも甚だしいかと…、ニンゲンなど、一刀の下に切り伏せて終わりに出来るかと思われます…手加減をして負かす方が…よほど力加減も難しいかと愚考いたしますが?」
「ふむ…そうなるとアルベドとしては受ける価値もない…そう思って居るという事だな?」
「はい…至高なるアインズ様の意見に異を唱えるつもりなどは御座いませんが…あまりにも下らない提案で、受ける価値もないかと…。」
「そうか…コキュートスはどうだ?」
「御方ニ私ノ意見ヲ申シ上ゲルナド、不敬カトハ思イマスガ…、私トシテハ、チカラノ差ヲ見セツケルノモ時ニハ必要ナノデハナイカト…。」
「なるほど、それも一理あるか…アウラとマーレはどうだ?」
「あんな弱っちそうなのと戦うなんて…それ以前に気迫を叩きつけただけで勝負がついちゃいそうで、本当に戦いになるの?って部分が心配ですかねぇ~?」
「あ…はい、ボクも…お姉ちゃんと、その…同じ…です。 ボクの魔法を…広範囲に一度出しただけで…終わっちゃいそうな気がします。」
「シャルティアはどうだ?…シャルティア? おい!シャルティア!?」
どこか、心ここにあらずに言った雰囲気のシャルティアであったが、今まで向けていた意識から視線をナインズの方へと戻し、慌てる様に、問い掛けに対しての反応を示した。
「あ…ハイ! 失礼いたしんしたアインズ様…少々考え事をしておりんした。お見苦しい所をお見せして申し訳ありんせん。」
「珍しいな…何か気になるところでもあったか?」
「いえ…、あそこにいるチームの一人、ハーフエルフが着てる装備、どうにも気になりんす…特にこれといって脅威には感じていんせんが…目が離せないような…不思議な感覚に襲われていんす…油断はならないかと…それ以外は特に…何も感じんせん…、やり合ったとして…あっさり決着が着いてしまうでありんしょうねぇ」
「そうか…私も、あの装備には何か引っかかるものを感じてはいるのだが…それが何かは思い出せぬ…シャルティアもそう思って居るとはな…。」
しばらくアインズは考えた後、それぞれの認識をまとめ、思案の中で多数決を取っていく。
(シャルティアは戦っても戦わなくてもどっちでもよさそうだな。装備に興味があるという事は、話をさせる機会を作るという点で、その申し出は受けてもいいかもしれない。
コキュートスは武人として、戦いを挑まれれば、逃げるわけには行かないだろう、ということで「〇」…だな
アウラとマーレは、戦う価値もない…という認識っぽい、となるとどちらかと言えば否定派…か。
デミウルゴスは…提案を持ってきた時点で、そこまで否定的でもなさそうだ…なら「△」か…
それでアルベドは無論「×」となる…。)
そこまで考え、アインズは×と考えてる意見が2票…と数える。
△が1票
受けてもいいしどっちでもいいが1票
受けるべきが1票
ここまで考えてみて、思う。
「賛成」が1
どちらかと言えば…「賛成でもいい」が1
△は、どちらでもないとして、
「反対」が2…
(…ということは真っ二つに割れてしまったな。)
「意見が真っ二つに割れてしまったようだが… 2:2という状況に…、どちらにも偏らない意見が1か…」
「アインズ様…そうなりますと…ここまで来れば、アインズ様の一存でよろしいかと…。」
恭しくデミウルゴスがそう告げてきた。
「そうか? …ここで私が「是」と言えば、「否定派」の意見を潰したことになろう…その逆もまた然りだ…それでお前たちは構わないのか?」
「とんでもない! アインズ様のご決定に異を挟む者など、このナザリックにはおりません! アインズ様のご決定こそが、ワタクシ共の総意…なんなりとご決断くださいませ!」
「そ…そうでありんす!! わらわも決してアインズ様の決定に異存などありんせん!!」
「私達も同じです! アインズ様が一言、「戦ってこい」と発してくださればその意向に沿うのが守護者としての私達の存在意義です!」
「は…はい…ボクも…そう、思います!」
「マサニ…アインズ様ハ…タダ一言、勝ッテコイ! ソウ仰ッテイタダクダケデ、我々ニハ充分ナ理由トナリマス!」
「そ…そうか…、ならば…皆、着いてこい…詳しい話は、下で待っている発案者の下に行かんと細かい話し合いなど出来んからな。」
そう言いながら、骨の玉座からスックと立ち上がるとイミテーションのスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを振るい、漆黒のローブをはためかせ、<
★★★
「ヘッケランは大丈夫そうか?」
ベルが話しかける。
「まだ駄目そう…傷は治ってるけど、まだ意識が戻らない。」
どうやら、ここに運び込むまでにずいぶんと血を流し過ぎたようだ、失血による気絶状態の為、すぐに戦闘に参加できる状態で無いのは、こうして見ているだけでも明らかだ。
「そうか…、なら、どうする?どうしてもと言うのなら、3人はヘッケランのそばに居て、私達とは無関係を貫いてくれても構わないぞ?」
「さっきのやりとり、一応、聞き耳を立ててたけど…アンタらだけで戦うつもり?」
さすがはレンジャーのイミーナだ、後ろに居てもデミウルゴスとの会話はしっかり聞いていたらしい。
「まぁ…ボクは単純に…難度を基準にするなら、これから戦う誰とも同じステージに立っているからね、不安なのはフレイラだ…彼女は難度で言えば、150ピッタリ、やつらのちょうど半分という事になる。それがネックかな…?」
フレイラが沈痛な面持ちで謝罪の言葉を言い始めた。
「申し訳ございません、ベル様…私の力量が足りないせいで、主である御身に無用の心労を掛けさせることになろうとは…、不甲斐ない我が身を恥じ入るばかりでございます。」
今にも土下座をしようとし始めたフレイラの肩に手を置くことで辛うじて押し留め、膝を折ることで目線を彼女に近づけて語り掛ける。
「いいかい?フレイ…今の言葉は決してキミを責めている言葉じゃない…、単純に守護者の前に出して無事で済むだろうかという親心のようなものだ…それに、お前をそのように生み出し育てたのはボクだ…そこに不満などあるはずないだろう?」
そう言って、彼女の中の、自身を責め苛む想いを払拭してから再度、言葉をかける。
「それにだ…以前にも言ったと思うが、ボクはお前に「純粋な戦闘力」や、ボクを護る為の「盾」として身を呈することを求めたわけじゃない…だから無茶だけはしないと約束してくれ。」
わずかに、瞳に潤んだものを浮かべながら、頭を少し下げたフレイラは感謝の言葉を告げる。
「どこまでも至らぬ我が身に温情溢れるそのようなお言葉、真に痛み入りまして御座います。」
感涙の雫であろうか、ホロリと目頭から滲み出たそれは鼻筋を通り、ポトリと地に染みを作った。
「それなら、私の浮遊する盾の出番もあるんじゃない? 少しは護りの役に立てるかもよ?」
歩み出てきたのはイミーナだ。 どうやらすっかりその鎧はお気に入りらしい。
「それはいいが…その盾も、最後の戦いまで無事とは思えないよ? 守護者の一刀で切り伏せられる可能性もあるし…、まぁ数日もすれば元に戻るだろうが…護りの役がイミーナ頼みと知られれば真っ先に標的にされる可能性もある…キミらフォーサイトの一人一人が「難度100」に辛うじて到達したとは言え…その3倍の相手だ。 危険だよ?」
一応、危険に対しての認識が低く見積もりすぎていた場合の為に、再度「危ない」という言葉を伝えるが
「ここまで来て危険じゃない場所なんてないんでしょ? うちのリーダーをボロボロにしてくれたお礼は少しでもお返ししておかないとね?」
と、心に結論はすでに出しているイミーナだが、少し肩に力が入りすぎ、幾分、気負い過ぎている気もする。
(少し、緊張の度合いを緩めてやるか…あまり張り詰めすぎてもイイ事はないだろうしな…)
「違うだろ? 「うちのリーダー」じゃなくて、「私のヘッケラン」の言い間違いじゃないのか?」
仮面越しだが、確かにわかるその軽口は、イミーナにダイレクトに届いた。
「な…! 違うったら! そんなんじゃないってば! 変な勘違いしないでよね!」
(よし、これで少しは気負ってる度合いも軽くなっただろう。)
と安心していると、小柄な少女がベルに向かって歩み出る。 アルシェだ。
「ベルさん…私も、チームメイトとしてリーダーの雪辱を晴らす…いいでしょ?」
一瞬、思考が停止する。
できれば彼女には安全な位置に居てもらいたい、妹たちの為にも彼女は生き残るべきだと思って居たからだ。
「いや…アルシェちゃんは妹さんが帰りを待っているんだろ?わざわざ危険な目に遭いに行かなくても…。」
そう言って止めようとするも、彼女は軽く、自分の腕を持ち上げた。
そこには自分が「お守り用」として預けた腕輪が装備されている。
「それを使うつもりかい? 言っておくけど「お守り」以上の破格の効果や防御力、攻撃の幅の広さなんて機能はないからね?」
「それでもいい…私はまだ、あの時ベルさんが教えてくれた合い言葉、まだ使ってないから…ここで使っておきたい」
(…まぁ、カテゴリとしては全身鎧だけど、作りとしては着ぐるみだし…下に50LV金属の金属糸を編んで作った衣服の上に着込む感じになるかもしれないしな…そうなれば、元々の守備力より数値的にはマシになるだろうけど…それでもコキュートスの武器だとバッサリ切られちゃいそうだよな…。)
「まぁ、わかったよ…そこまで言うなら止めないけど…妹さん2人が待ってることをくれぐれも忘れないでくれよ?」
「うん、わかった!」
「あ、そうだ、ロバーデイクさんはそこでヘッケランが目を覚ますまで付き添っててください、後ろの壁沿いにまで下がれば、攻撃対象にはならないでしょう…。」
そう告げて、後ろに下がってもらおうとする。
万が一にも、こちらの戦いに巻き込まれ、範囲魔法で命を落とされても困るのだ。
「では、試合形式の戦いが始まるまでは見守らせてください、開始の合図が終わったら下がるとしましょう。」
自分だけ安全圏でのうのうとしている気分になれないのだろう。
それが最大限の譲歩だというのは、目の力強さで判断できたので、それ以上は譲らないだろうな…と理解したため、「それでいいよ」と言うに留めた。
(これで、ボク、フレイラ、アルシェ、イミーナの4人か…、あとは空白の一人分…とサブメンバー支援回復オンリーの役目としてあと一人…っていう感じでルールの際、提案しておこうか…?)
「あ、そうだ、約束のアイツ、今のうちに吐き出しておかないとな…」
そう言うや否や、腹の位置に突如、ぽっかりと大きな口が開いたかと思うと、ボトリと…ナザリックの者達に背を向けた状態で、ある人物を吐き出す。
そいつは、先程の話し合いの際、自分で捕えていると明言した、「武技大辞典」の執筆者、奴隷売買の売人をしていた男、その人である。
今まで、ずっと腹の中で「捕獲」状態だったこともあり、すっかり深い深い、熟睡モードになっており、吐き出された現在も目を覚ます様子はない。
(さて、この分なら向こうさんに手渡す場面でも目を覚ますことはないだろう…。)
★★★
「ふむ…どうやら間違いはないようだな。」
こんこんと眠り続けているその男をナインズ・オウン・ゴールに引き渡すと、<
その後、身柄の拘束の方はマーレに任せるようだ。
(あの子なら、ドルイドの低位階魔法で拘束することくらいたやすいだろうから適任だろうな…)
「アルベドよ…そいつの目が覚めない今のうちに、王国から拉致してきた者らを監禁してる部屋に入れておけ…あそこなら一般人が多数派だから寄ってたかってなぶられることはあるまい…生き残りはニグレド達が助けた赤子、少年少女ばかりだからな。」
「はい…委細、承知致しました、ナインズ様。」
深々と頭を下げたアルベドが、拘束されたままの男をひょいと肩に担ぎ、闘技場を後にする。
「さて…ベルとやら…これで、先程言ったように君には、返すべき「恩義」を感じている形になった…ならば『恩』は返さねばならん、なんなりと望みを言うがよい。」
(最初からボクからの要望は一つだけですよ、モモンガさん…)
「少し、先程ここにいるチームの方々とも話したのですが…、試合形式で、お互い戦力を出し合い、互いに決めたルールに則って戦う、そして勝敗は互いのHP残量で判断して、先に1割を切った状態になった時、その者が敗北したということで命のやり取りは無し…という条件ではどうでしょう?」
「ほぉ…面白い提案だが…本当にそれでいいのか? 私は常に相手の意思を尊重し、何度も確認を取ることはしない主義だ。 それは…それが相手の本心だと心から信じたいからだが…「恩義」の返礼という形で無事に地上に帰りたいとは思わないのか?」
こちらの意図を読み取ろうとでもしているかのように眼窩の赤い揺らめきが色濃くなる。
それでも、ベルリバーの中の意思、そしてフォーサイトの面々の覚悟は変わらなかった。
「お申し出、真にありがたいと思います、そう言っていただけるのは確かに魅力的な提案ですが、生憎、先程、そちらのデミウルゴス殿と名乗る方と約束事をしておりましてね…、しかも持ちかけたのはこちらの方でして…、悪魔との約束というものは可能な限り解消しておかねば後が怖いですからね、生きて帰って即、行方不明…なんて目には遭いたくないもので…こちらの価値を認めさせることが出来れば、「ただの盗人」から「それなりのワーカー」という評価に格が上がる可能性を引き出せるのでは…と思って居るので…その機会を頂きたいのです。」
「ふむ…そうか…そちらがそう言うのであれば…、もはや何も言うまい…ならば、その「試合」という形式で進められるPVP…それを行う上での細かいルールなどを決めようではないか…そちらから『こうしてもらいたい』というルールが有れば、提示してもらいたい、それをどの程度こちらが受け入れるかどうかは、こちらに任せてもらえると嬉しいのだが?」
「わかりました。 ならばこちらからの提案を、そちらの皆様で検討していただき、修正案をこちらに提示…それを見て、納得できるのならば、そのまま試合の流れ…、もしまだ融通してもらいたい要綱が残されている場合、細かい決め事をお互いに誤解のないよう話し合う…という形でどうでしょう?」
「ふむ、そうだな…お互いにルールを設定する時点で、理解に差があり、認識に誤差があっては後々弊害となろう…その言い分を受け入れようと思うが…デミウルゴスの方はどうだ? なにか異論はあるか?」
「いいえ、何も御座いません…例え向こうの提示したルールがどのようなものであれ、我ら階層守護者が事に当たるのであれば、むざむざ敗北するような醜態をさらすことなどは無いかと…」
「なるほど…、ということだ…後はデミウルゴスと話し合って決めると良い…最終的にどうなったかというルールについては最後に私に見せてくれれば、私が公正な審判役となろう。」
「ア!…いえ、ナインズ様を判定役などと…了承致し兼ねます! 御身は貴賓席で勝敗の流れを見ていただくことが何より肝要かと存じますが…?」
慌てて、主の意向を思いとどまらせようと進言する悪魔の言葉に鷹揚に頷いた支配者は、それでも…と言葉を返す。
「いや…デミウルゴスよ…、その気持ちは確かに嬉しいが、このような催し事はナザリックに於いてそうそう起こりうる展開では無いことはお前も解ってる事だろう? ならば、最前列の席でかぶりつきの観戦を楽しみたい…その気持ちもわかって欲しいという物だが…」
そこまで言葉を紡いだ後、僅かの間、何かを考える仕草をして、支配者は次の言葉をデミウルゴス始め、守護者各位に言い聞かせるように告げていく。
「なに、心配は要らないとも、試合中、審判に攻撃するような不埒者は、それだけで一発退場となろう…それだけの権限はあると思うが…どうだ?」
「マサニ…勝敗ヲ決スル勝負ノ場ニオイテ、見届人ニ危害ヲ及ボソウトスル者ナド、ソノ場ニ相応シク無イ者ト思ワレマス。」
「う~ん、試合とか勝負の取り決めっていうのにはさっぱりなんだけど、コキュートスがそう言うんならそうなんだろうね、なら私は異論はないよ?」
「は…はい、ボクも…お姉ちゃんに賛成です!」
「まぁ、まだどんな勝負方法になるかもわからないのだ、我々に不利なことにはならぬと思うが…向こうも勝負を申し出る以上、卑怯な手には出まい…もしそうであるなら「恩」の件は返上する可能性もあること、心しておいてもらいたいものだな…。」
相手に釘を刺すような視線を向け、ベルを見据える墳墓の支配者、そしてその視線を向けられたベル自身もその「圧」を受け止めて了承の言葉を返していく。
「えぇ、もちろんです、こちらが試合を申し出る以上、一方的に負けるのは本意ではないし、そちら側の皆さまを蹂躙できるなどと思い上がっているつもりもありませんからね…精々、善戦できるようにしたいものです…それでは、こちら側のルールを私の『メッセージボード』に記載して行きますので…修正箇所などあれば、手を加えてくれて構いませんよ? その時はこちらにも変更した部分は教えてもらえたら幸いです。」
「ふむ…その言い分、最もだな…こちらは問題ない…そうだなデミウルゴス。」
「はい…おっしゃる通りかと…」
そして、お互いの実力を最大限に発揮できるような流れで進めたい両者の間に於ける勝敗の判断、反則の設定など…多岐に渡り、話し合いを設けることになった。
ようやく、大舞台の準備が始まりました。
今から、どんなルールで戦わせることにしようかと頭をひねっております。
とりあえずは、先鋒役は第一~第三階層守護者のあの方からでしょうかね…
イミーナの鎧に興味惹かれていたご様子ですし。
初っ端から、ベルリバーさんの苦戦が予想される…アンデッドなのに回復手段
が3種類もありますからねぇ~
<大致死>に、スポイトランス…それと<
さてどうしましょうか?