気づいたら大自然 小心者の異世界闊歩   作:yomi読みonly

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皆さま、お待たせしました。

次鋒戦、コキュさんとベルさんの対決が始まります。

とは言っても、両者とも舞台上にはまだ上がっていませんので、まずは舞台が完全に整うまでの顛末から始まる感じではありますが…。

 部隊を整えるまでにまるまる一話分使ってしまうとか…今回は序章扱いなので、そうなっても許していただければと…多分そうなる可能性はあるかと思われます。



第59話 次鋒1 コキュートス VS ベル (序編) 

 「ふむ…そうか…たしかにそれはそうであったな、ならばどう?…うむ…そう思うか、なるほど?」 

 

 支配者が突然の<伝言(メッセージ)>の魔法に対応している。

 

 送ってきた相手は目の前の対戦相手である「ベル」と名乗る存在からだ。

 

 どうやら、選手の入場について詳細を決めるのを忘れていたようで、この場になってようやくソコに気づいたようだった。

 

(これだから、下等生物という者は…愚物だというのです…ここまでアインズ様が主導権を向こうに譲ってくださっているというのに…一度で決められない程度の頭脳しかないとは…)

 

 すぐ横に「統括」として控えているアルベドが表情にこそ出さないものの、内心で苛立ちを募らせていた。

 

(慈悲深い御身だからこそ、許されているのだという「立場」というものを弁えず、理解も出来ない輩の相手をなさっている心中はいかばかりか…)

 

 そうやって、対戦相手に心の中で愚痴をひたすらに展開している中、支配者と相手との通話が終了したようだ。

 

「すまんな、皆、待たせてしまったようだ」

 

 通話を切り、こちらへと至高なる御方が「謝罪の言葉」を口にするというシモベとして仕える立場の自分たちには過ぎた心遣いをしてくださっていることに申し訳なさが募る。

 

 

「いいえ、これは全て、一時(いちどき)に全ての事項を取りまとめる能力すら欠如していた相手方の責任!御身がお謝りになられることなど露ほども存在いたしません。」

 

「そうでありんす、これらは全て頭の巡りの悪い低能な下等生物のせいでありんす!御身のせいではありんせん!」

 

(おぉ~い、その言葉、後々になって後悔することになるんじゃないか?ネタバラしが済んだ後、2人そろって自責の念に堪えかねて九階層のBarラウンジで飲んだくれたりしないでくれよ?シャルティアはともかくとして…アルベドがそうなったらデミウルゴスとパンドラしか運営面で他に頼れる存在居ないんだから…)

 

「ま…まぁ、そう言ってやるな、そもそもはルールを決めるその場に居た私もそれは「相手が理解しているもの」と判断してしまったが故のミスだ、低能さという側面で言えば、相手に自分と同等の頭脳があると決めてかかってしまった私にこそ大いに責任があろう。」

 

「「いいえ、そのようなことはござい()せん」」

 

 二人で同じような言葉を同時に言いつのった直後、前の方で立っていたデミウルゴスが呆れたように話し出す。

 

「いいかげんにしないかね2人共 そもそもニンゲンのような下等な存在がナインズ様と同じような領域にまで到達出来てないということは今更、論議するまでも無い事だと思うがね…『ナインズ様の責任ではない。』そんなことは言わなくても誰もが認識を共有している当たり前のことではないかと私は思うよ?」

 

(う…やめてくれ、小卒の自分にそんな頭脳なんてないよ! 学歴とかならよっぽどベルリバーさんの方が上なんだから、あの人…中学まで行けるくらい頭よかったし経済的に恵まれてた方だったんだぞ?うちら下層の民衆の中では…)

 

 とは思いながらも、「自分はもう人間じゃなくなってアンデッドだからなぁ」というどこか冷めた考えがあるも、デミウルゴスの言い分に、失っているはずの胃がキリキリするような幻痛を感じそうになる。

 

「そ…そうでありんしたね、取り乱してしまいんした…アルベドも落ち着いたようでありんすね。」

 

「え、えぇ…お蔭様でね、わたくしとしたことが…とんだ醜態を晒してしまい申し訳ありませんでした。」

 

 

「う…うむ、アルベドの謝罪、素直に受け取るとしよう、皆に罪は無い。  …それで、話は戻すが…」

 

「「「「「はい!ナインズ様!」」」」」

 

「今回、お互いに、相手側が先に出てきてくれるものだとばかり思っていて、無駄な時間が発生してしまった、相手側からすればその分MPの自然回復の時間が取れたという点では「無駄な時間」ではなかっただろうが、今後、そういう不測の事態を回避するため、次鋒戦は相手側から闘技場に進み出てくれるそうだ。」

 

「ナルホド、ソレデハ、コチラハ相手ガ出テ来テカラノ出陣ト言ウ事デヨロシイノデショウカ?」

 

「いや、それでは一方的にこちらが相手に不利を強いてるようで心苦しい、「恩義」としての『返礼』と銘打っている以上、多少の融通はしてやりたいと思っている、ということで、中堅戦では勝敗に関わらずこちらから闘技場に現れるように提案しておいた。 その代わり副将戦は相手方が先に出てきてくれるそうだ…、無論、大将戦は再びこちらから…という流れになる…。」

 

 そこまで言ってから、守護者たちがまだ聞く姿勢であるのに気付いたアインズは、思い付きでアドリブを展開させた。

 

「これは私から提案したことである! その流れで皆も周知徹底し、事に臨むように!」

 

「「「「「ははぁ!!」」」」」

 

(そう言わないと「下等生物ごときが至高なる御方に対して~~~…」とか言い出しそうだもんな…あとは何とかしてくださいよ?ベルリバーさん。)

 

 

                    ★★★

 

 

「大丈夫?イミーナ? 何かあったら言ってね?体が動かない間、私が身の回りの世話をする。」

 

「あ………りが……と、ア……ル…シェ……」

 

「無理に話さない方がいい、今はしっかり休息をとることが先決。」

 

 二人が会話をして居る所にナインズとの通話を終えたベルが二人の下にやってきて問いかけた。

 

「やはりまだしばらくはかかりそうだな、不便なことがあったら助けられるかもしれん、何かあるか?」

 

「か………く、……もの………を。」

 

 途切れ途切れながら話しているのもかなりしんどそうだ。

 

「わかった、書く物だな…あとは…指は動かせるか?ペンを使うにはどうしても指が動かなくてはどうにもならないだろう?」

 

「う………うご………か、……ない。」

 

 それを聞いたベルリバーが思案にふける、何かいいアイテムはないだろうかと…と思っていると、他人で試していない機能があることに気付く。

 

 ユグドラシルでの隠された機能…と言う程、気の利いた物じゃないが、無料コインとして広く浸透していたユグドラシルコインでの買い物で手軽に買えていた日用品で、「オートライティング」という『ペン』があった。

 

 それは、コンソールを呼び出し~の、仮想キーボードを呼び出し~の、キーを打って…という手順を省きたいというアーコロジーの上流階級の怠け脳をしてるヤツらに(もっぱ)ら受けの良かったアイテム。

 

 首の後ろに接続端子を植え付け、ユグドラシルのゲームとの紐づけを依頼する際、料金を上乗せして脳内ニューロンに改造を施し、特殊な手間を省くことも可能な(もちろんユグドラシル以外、私生活でも有用であった)為、人気はあったのだが、下層階級の者たちからすれば、どう逆立ちしても手術費用など工面できないくらい高価な代物だったため、ベルリバーはその手術は受けていない。

 

 だが、単純にペンとしての機能は普通に使えていた上、手術を受けている者なら手を使わずにペンを自動で動いているかのように脳からの指示で動かしたりもできるアイテムだった。

 それと、ベルリバーがこっちの世界に来てから時々使う「ホワイトボード」にも似た『メッセージボード』。それを組み合わせられないか?と、いつだか実験をして立証が出来たこともあったな…とイミーナの姿を見て思い出せたのだ。

 

 メッセージボードだけに関して言えば、向こうでは、そんな手間をかけなくてもコンソールのキーボードで打てばよかったので、深く追求したことは無かったが、それで単純に「文字を書く」のにも有効だったのはこっちの世界に来て、(思い付きで試して)知ったことだ。

(もちろんインクなどは全く必要がない)

 

 

 ユグドラシルではキーボード使用が当たり前だったため、使用頻度は多くなかったが、手書きのメッセージを書いたり、値札のPOPのように気の利いたデザインを外部ツールを使わず、手書きで使えたり、自分の絵をリアルで描くのと同じように描けるというのは割と使いやすかったのだ。

 

 今となってはプロのマンガ家となったホワイトブリムさんなんかは、デジタルの画像ソフトより手書きの方が〝デザインをする際〟という一点に関して言えばこのペンアイテムを愛用していた、細かい部分の装飾などを描くのにはそっちの方が使いやすかったのだとか…。

 

 なので、人によってはそれなりに使い道のあった「オートライティング」という『ペンアイテム』

 

 ボクの場合は、その名も「ディス・イズ・ア・ペン」とした。

 

 それをイミーナに手渡し、同時に「メッセージボード」も貸してやり、簡単な使い方を教えていく。

 

 すると、予想通り、MPは遺伝しなくても魔法の構築方法をイメージ出来るイミーナならば…と思っていたのがビンゴだった。

 

 口で説明しただけだったのに、簡単にそのペンを浮かべることができ、手を使わずともメッセージボードに文字をかけるということにひたすら感動している。

 

 言葉にすることは今は難しいが、ボードにしっかりと「ありがとう、助かった」とお礼を言ってもらえた。

 

(自分が使っても宙に浮かべたりとかはできないからな…それはきっとユグドラシルの仕様がそのままこの世界に引き継がれ、「自分には使えない」という状態で固定してしまったんだろう…寂しいが、身体が動くようになったら、返してもらおう)

 

 そう思いながら、なんとはなしにイミーナの様子をうかがっていると…。

 

『鎧を脱ぐからアルシェが私の代わりに使ってちょうだい』

 

 と書き記している。

 

「何を弱気なこと…そんな要望は受け入れられない!」

 

〝私はもうダメだから〟

 

 そういう意味で言ったのだと思ったのだろう、アルシェがそれに拒否の反応を示す。

 

 すると、イミーナがその下に再び文字をすらすらと書き連ねていく。

 

「私を『鎧を着せたまま』寝かせとくつもり?意外に装備したまま寝てるのはしんどいんだけど」

 

 という意味の言葉で伝えている。

 

(こっちの世界は便利だな…、会話は自動で翻訳されるし、文字なら読む程度であれば<言語読解(リードランゲージ)>でどうにかなるからな…あとは自分が書けるようになれば課題はクリアできるんだが…)

 

「そういうことなら、頭の中で装備が「パカーン」と自動で各種パーツが外れて、離れる感じをイメージしてごらん? 今のキミならできると思うよ?」

 

 ベルが寝ているイミーナに対してそう言うと、しばし目を閉じているイミーナ。

 

 次の瞬間、ベッドの賭け布団が『ボフッ!』と膨れ上がったかと思ったらベッドの下へとパーツ分けされて身体から外れた「ペロロンアーマー」がボトボトとこぼれている。

 

「とりあえずさ…体が動かないんじゃ、どうしようもないし、動くまでの間、アルシェに返しとくからさ、この鎧に最初に気に入られたのはアルシェなんだし、使い方もある程度わかるでしょ?」

 

 と、文字を書ききったところで、「ちなみに、これ、消すのはどうするの?」とコッチに聞いてきたので、すすっと、手の平で画面を横にスライドさせてやる。

 

 すると今まで書いた文字が一瞬で全部消えることに一同が驚愕している。

 

「この消去方法は、誰でも出来るから空いてる人が代わりにやってあげてよ、って言っても2人は動けないから、アルシェちゃんか、ロバーさんかになるんだけどね。」

 

 と言うと、ロバ―デイクさんが近寄ってきて、快く了承してくれた。

 

「ヘッケランがベッドにいるなら、私もそばにいる必要があるでしょうし…もののついでですからね、私でもそのくらいはさせていただきますよ。」

 

 横でそのやり取りを見ていたアルシェちゃんがぼそりとイミーナに声をかけている。

 

「イミーナの言いたいことは分かった…なら、動けるようになるまでの間、これはまた使わせてもらう。」

 

 そう言うと、今まで地面に落ちていたペロロンアーマーのそれぞれのパーツが喜び勇んで、アルシェちゃんに縋りつくかのように「カシャ! カシャカシャン!! シャキーン!」とでも表現できそうな勢いで装着されていく。

 

(この鎧、本当はインテリジェンスアイテムとかなんじゃないのか?…って言ってもユグドラシルでそんな気の利いた仕様で作成できるデータクリスタルなんてなかったんだけどさ…あまりにも高性能すぎるのは…作成者の趣味が濃厚に残ってしまってるからなのか?)

 

 じつは、先程の説明を聞いていたアルシェが「着る時もそれは応用できそう」と思い付き、イメージしてみた所、思い通りにいっただけ。という事情はあるのだが、そこまでは予想外だったようだ。

 

 ベルリバー自身わずかに呆けたような時間が流れた…それは数瞬のようにも数秒のようにも感じたような不思議な体感時間の間、後ろから声がかかる。

 

 今まで、何も指示していないのにも関わらず、じっと黙したままで付き従っていたフレイラだ。

 

「マスター、次の対戦の際、誰を供回りとしてお連れになるかはお決めになられましたか?」

 

 その声で、「は!」と我に返ったベルリバーが振り返り、その質問に答える。

 

「うん、まだ次に出てくる相手が誰かわからないから、決めかねてるんだけど…一番レベルの高いフレイ?キミが来てくれないかな?」

 

「は!お望みとあらば、どのような場所であろうと全力でお供いたします。」

 

「すまないね…フレイには一番、しんどい役をやってもらう流れになりそうだ…」

 

 申し訳なさそうに告げるベルリバーに対し、フレイラからの返答は明瞭な意志のみであった。

 

「それならばご心配はいりません、どのような役目を与えられようと、それを成し遂げ、成就させるためにこそ私たちは生み出されました。 御身の為であればどのような難関であろうと突破するための活路くらいは切り開いてご覧に入れましょう。」

 

「そうか…すま…、いや、これは『ありがとう』と言ってあげるべきかな。感謝するよ。」

 

『すまないね』そう言おうとしていたベルリバーは、それは違うな。と思い直して感謝の言葉へと切り替える。

 

「とんでもございません!感謝の言葉など…私どもは御身に尽くすべく創られた者、この身が擦り切れようと尽くして果てることこそが本懐、そのような心遣いは不要にございます。」

 

 彼女自身、階層守護者に挑むというのがどういう結果になるかは覚悟しているのだろう。

 

 創造主から常々、「命は無駄にするな」「その身を盾にしようなど考えるな」「剣として、盾として…そのような目的でお前を創った訳ではない。」そう言い聞かされているが、そのような甘えた考えでは、自分の身すら長くは守れないだろう。 それが肌でわかるからこそ、普段から止められている言動と決意に及ぶ発言をしたのだ。

 

 それこそ、自分一人が生き永らえ、創造主が死してしまうことなど…それこそ「生き恥」という自覚があるからだ。

 

 その言葉に対して、創造主も今回は何も言っては来なかった。

 

 生半可な立ち位置では、対抗することすら難しいだろう実力者ぞろいなのだから、今回に限っては「そんな考えは持つな」とは言い切れなかったというのがベルリバーの内心で抱いていた焦りでもあった。

 

(もっと戦闘向きの装備、持たせてやってれば良かったよな…、作成時の『あの時』じゃまさかNPC同士を戦わせる可能性なんて考えても居なかったし…、しかも自分の娘と階層守護者が…だなんてな…。)

 

 自嘲気味に口元を歪ませ、戦いの舞台へと歩みを進めようと…くるりと体の向きを変えた直後、再び後ろにした方から声がかかる。

 

「待って! どうか私も連れて行ってほしい…。」

 

 その声に驚き、後ろを振り返る。

 

 見なくてもその声は聞き間違えようもなかった相手だが、確認せずにはいられなかったのだ。

 

「アル…シェ、ちゃん?」

 

 出来れば「妹2人」を村に残して戦地に挑むことになった彼女を危険な場所に立たせるつもりはなかった。

 

 万が一にもPOPモンスターに傷つけられないように『お守り』まで持たせたくらいには万全を期したつもりだったのに、その彼女自身が死地に向かおうとしている。

 

「いや、アルシェちゃんにはこの後、手伝ってもらうことがあって…」

 

 と言おうとしたベルに対し、アルシェからの決意が迎え討つ。

 

「言わせない、ベルさんの魂胆は見えている、思い通りになんてさせない。」

 

 

 一瞬、何を言われたのかピンとこなかったベルが、言いよどんだ瞬間を狙ったように、矢継ぎ早の言葉が浴びせられた。

 

「私の身を案じてくれているのはわかる、妹たちが天涯孤独に陥らないように心配してくれているのも嬉しい…だけど、メンバーが2人もやられて、私だけのうのうと構えてるわけにはいかない!イミーナとヘッケランの仇は私が撃つ!」

 

(いや、敵を討つって言ったってまだ二人は死んでないしな…イミーナだって、敵にやられたんじゃなくて装備品の効果で、あぁなってるだけだしさ…それを言ったらイミーナの仇は自分ってことになるんじゃないか?)

 

「仲間がやられて、頭に血が上る気持ちは自分にも良く分かっている気持ちだと思うよ?アルシェちゃん…でもね、仇を討つっていうことはだ…相手に返り討ちに遭うって事態も想定しなくちゃダメだ、相手だって無抵抗で居てくれるわけじゃない…相手を討とうとする者は、その相手から討たれる覚悟も同時に持ってなければいけないんだ…その覚悟も無いうちはそれを認める訳にはいかないよ?」

 

 努めて冷静に振る舞い、なんとか理詰めであきらめてもらおうとするも、すでにその領域を軽く超えてしまっているアルシェには、熱を冷ますのには不充分だったようだ。

 

「かまわない、私が居なくなったとしても妹たちが「友達」として選んだ存在が2人もいる。 きっと私がどうにかなっても、そのうちの一人は絶対に力になってくれる!」

 

(二人…か、それって、ネムちゃんと、アインズさんのこと言ってるんだろうな…、でもこの場でそれを言い出すってことは、今回の墳墓の支配者が実は「アインズさん」本人だってことは確証には至っていないようだけど…さてなんて言おうか…?)

 

「自分の身内を他人任せにしてもいいのかい? その頼れる「友人」だって今はそうかもしれないけど、彼女たち二人が成長して一人前の女性になったら、どう変わっていくか…それを見極めていくというのも、残された親族であり、血のつながった…たった一人の「姉」としての責任じゃないのかい?」

 

 なんとか思いとどまってほしい一心で、そう問い詰めるも、悩んだのはほんの一瞬のこと、すぐに表情を引き締め、覚悟の瞳に移る。

 

「私は、妹の選んだ「友達」を信じる! 私はずっとあの子は人見知りで引っ込み思案だと思ってた。 …でもそれは違った、あの子の『瞳』に移っていたもの…それはその人らの本質、それをこの前初めて教えてもらった…だからその子が「友達」として選んだなら、きっと間違いはない。」

 

(完全に「妹を他人任せにする」という考えは認識してない感じだな…知らないぞ?あの人友達想いなのは確かにそうだけど…自分を遺して先立たれるのは嫌うだろうから、大人になったら「寿命の存在しない種族」とかに変えられても、責任持たないからな?)

 

「まぁ…あらゆる場面で、その「友達」におんぶにだっこ状態なのは気にかかるが、決心は変わらないようだね…、でも気を付けることだ。 …『友達だろ?』と言って頼ろうとすり寄る性格が一度根付いたら…その性根を改めるのはそうそう簡単なことじゃない、だから、軽々に命を捨てるような真似はさせないよ?」

 

 

 その言葉をどう受け取ったのか、アルシェは「ありがとう、今はそれでいい」とだけ返し、共に歩き始めた。

 

 ベルが歩きながら、こめかみに指を持って行ってる事には、まだアルシェは気づいていなかった…。

 

 

 

                    ★★★

 

 

 歩きながら<伝言(メッセージ)>の魔法を使い終え、通話を切ったベルリバーはなんとか不安材料を取り除くための舞台が整ったことに安堵していた。

 

 正直、自分が戦闘向けとして作成したわけじゃない50LVのNPCを共に戦いの場に赴かせることになった点についてはかなり心配であったが、一応クレリックのLVは10、霊媒師(ミディアム)のレベルも合わせても15には満たないが…それなりに回復職と、死霊術の使い手としてこの現地基準で考えるとしたらそれなりの実力はある。

 

 ユグドラシルでは魔法専門職なら1レベル上がるごとに3個呪文を覚えるシステムだったからクレリックなら10LVだと30個。

 

 その代わり、フレイラが取得している精霊加護闘士(シャーマニック・ウォーリア)は、ある意味特殊で、1LV上がるごとに魔法なら2つ、そしてスキルかアビリティかを『通常の手段で得るスキルレベル等とは別に』1つだけ選んでレベルに即した能力を得るという変わった性質があった。

 

 なので、精霊加護闘士(シャーマニック・ウォーリア)がLV10だから呪文は20、スキル、アビリティが専門技能10。

 

 サラマンダーや、雷精の精霊力を吸い上げた能力のソウルスティーラーがLV6

 これも魔力系の職業であるものの精霊加護闘士(シャーマニック・ウォーリア)同様なので魔法数が12

 そしてスキル、アビリティが、ソウルスティーラー専用の技能で6個取得している。

 

 アルケミストと作成者(プリペアー)は戦闘向きじゃないからひとまず除外するとして。

 

 精霊加護闘士(シャーマニック・ウォーリア)自体は精霊術の使い手で精霊使いでもあり、信仰系の魔法詠唱者の側面も持っている。

 

 その為、信仰系の魔法を突き詰めるか、信仰系はそこそこで、精霊系魔法を取得するか、そこが悩みどころだった。

 

 内訳で言えば、フレイラの能力を現地基準で判断すると…。

 

 信仰系の魔法がクレリックLV10(LV8~第二位階)、信仰系であり、かつ死霊術使いでもある霊媒師(ミディアム)が3LV(第二位階)、そこに精霊加護闘士(シャーマニック・ウォーリア)の信仰系が多少加わったとして、せいぜい14LV分相当、位階としては第二位階を満たして、ギリギリ第三位階があるかどうか…ってところだ。

 

 だが、魔法数としては30+9+α(アルファ)となる。少なくとも40個の魔法数では、信仰系魔法詠唱者としては7LV刻みだから14LVだと第二位階相当。

 

 魔法専門で鍛え上げてきた神官と比べると、魔法数40程では、第二位階を修行中の人間、第三位階に手が届きそうなレベルの魔法数である。

 

 

 魔力系の魔法詠唱者としては、ソウルスティーラーの12個、アルケミストと作成者(プリペアー)は両者とも3LVしか取得してないので、まだ戦闘向きな魔法は持ち得ておらず、主に作成系と補助系魔法がメインとなるが、敢えて魔力系というならば3LVが2種、9+9で18個。

 

 ギリギリ10LV相当の魔法詠唱者と同じ魔法数となる程度、レベルでは14に届かないので、第二位階の修行中冒険者とほぼ同レベル。

 だが精霊加護闘士(シャーマニック・ウォーリア)を計算に入れると話は変わってくる。

 

 

 精霊加護闘士(シャーマニック・ウォーリア)は精霊使いである。

 召喚魔法を使って呼び出すことも出来るが、その場合は呼び出せるのは信仰系に属する精霊のみ、対して霊媒師(ミディアム)のクラススキルを併用するならば、『憑依』という手段を用い、自身の身体能力を上げる。

 

 『憑依』という手段に限定させる精霊なのであれば魔力系に属する分類となり、計算も変わってくるのだ。

 

 信仰系でありながら、魔力系でもあり、戦士のような専門職には及ばないが戦闘もできる。

 

 仮に精霊加護闘士(シャーマニック・ウォーリア)の信仰系の部分を四割、精霊を憑依させる系統に特化させた魔法を六割という割合にするならば、「信8:魔12」という計算になって、最終的には…。

 

 暫定的なザックリした計算ではあるが、

 

 信仰系魔法 (最低でも)30(クレリック)(ミディアム)(S・W)=47

 

 魔力系魔法  30+12=42

 

 魔法の数だけで言えば89となり、通常の魔法詠唱者の7LV刻みを基準とするなら第三位階魔法は5つ覚えている計算になる。

 

 魔法詠唱者が特化で鍛え上げ、魔法を覚え続けた場合、100の魔法数に達するのは34レベル。

 現地の基準で言えばそれは『難度99』を超えたと見ていい。

 

 

 現状、フレイラは職業LV37でありながら、魔法の数が圧倒的に足りていないのだ。

 

 

 結果的に、フレイラの使用できる位階魔法は、信仰系がクレリック10+霊媒師(ミディアム)3+精霊加護闘士(シャーマニック・ウォーリア)4と仮定するなら17LV相当。

  

 普通の信仰系魔法詠唱者でも第三位階を9個程は覚えている計算となるのにだ。

 

 

 対して魔力系は「ソウルスティーラー」の6LV(LV2~6は第二位階)

 「アルケミスト」の3LV(第一位階)

 「作成者(プリペアー)」の3LV(第一位階)

 そこに精霊加護闘士(シャーマニック・ウォーリア)の6が加わると、計算上は魔力系が「18LV」という結果になって、魔法の数は42。

 

 レベルの7刻みごとに位階が上がるならば、この「仮定」での計算だとフレイラは第三位階は魔力系が4LV分の8つ、信仰系を3LV分の6つ覚えていることとなる。

 

※ 結果的にフレイラの場合

 第一位階 魔力系:20  信仰系:21

 第二位階 魔力系:14  信仰系:20

 第三位階 魔力系: 8  信仰系: 6

 

 という具合になるわけだ。

 

 フレイラの場合、魔力系の魔法の中でも第一位階だけだが「錬金魔術」も覚えている。

 

 それには基礎的な能力と、呪文…そして魔力的な補助も含めて錬金術士としての心得、そして特殊技術(スキル)等も含まれる。

 

 どちらにしても第三位階魔法の修行中と大差はないレベルだし、魔法の数も本職と比べれば圧倒的に少ない。

 

 だがそれは、純粋な魔法詠唱者と比べればの話だ。

 

 フレイラには、仮にも戦闘ができるという強みがある。

 

 魔法自体は使えないが「双手拳士」というクラスも(1LVだが)取得しており、普段の生活でも「アイアンスキン」が常時発動型(パッシブ)スキルなので、現地人の通り魔くらいでは刺し傷すら通らないのだ。

 

(他にも「コック LV1」もあるが、これは戦闘の役には立たない)

 

 身に着けている和風の着物風装備も、ユグドラシルでは50LVのプレイヤーが持っていても不思議じゃない程度のレアリティの防御力は備えさせている。

 

 しかしその装備が無かったとしても、こっちの世界の通常の武器ではフレイラには傷すらつけられない。

 

 それが例え、総アダマンタイト製の武器であってもだ。

 

 無論、人獣種(ライカンスロープ)ですらない「獣人」などという現地種族での爪や牙攻撃程度では傷もつかない。

 

 ユグドラシル基準では

・ 最下級(ノーマル)  N (店売りダガー、ソード、メイスなど)

・ 下級(ノーマル+)  N+(敵のドロップ品素材から作る材料で鍛えた店売り装備の上級版)

・ 中級(ハイノーマル)  HN (ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトなど)

・ 上級  (レア)    R (HNをドロップ品素材から鍛えた上級装備)

 

 ここまでのレアリティの武器までならどんな種類の武器でも傷はつかない。

(R未満のグレードでも銀で作られた武器であれば(種族由来のペナルティとして)ダメージは通ってしまう危険はある。)

 

 

 …魔法で身体強化したとしてもそれは変わらず、武器に直接魔力を付与させたり、炎や氷属性などで攻撃属性を変化させた場合はまた別の話になるが…。

 

 

 そんなことを取り留めもなく考えていたベルリバーは、改めてフレイラの戦力が現地世界で共に行動する分には英雄級前後で扱われる程度で済んでいることに安堵していた。

 

 …とはいえ、ここ、ナザリックではそれではさしたる脅威にはなりえない。

 

 身を護れるかどうかも怪しい。

 

 それを見越して、第六位階までの魔法攻撃なら大丈夫なように対策を与えてはいるのだが…その基準もこの大墳墓では微妙過ぎるラインだというのはとにかく不安だった。

 

 

 さすがにモモンガさんに<伝言(メッセージ)>を送って事情を説明した時は背後や周囲にNPC達が居たせいだろう、支配者ロールしてる声のままだったから、対戦相手の情報も聞き出すことはムリだった。

 

 カルネ村で夜通し話をした時には「各階層ごとに順番に出すように話を進めてみますよ」と言ってくれてたのは覚えているが…NPC達がどう反応してくるか…、ギルメンの提案をバッサリ切り捨てるようなことは無いと思ってはいるけど…モモンガさんから確定の報告がないのが、すごく不安だ…ついネガティブな思考をしてしまいそうになる…。

 

 順当通りに行けば、コキュートスが相手の予定だけど…

 

 リアルでもよく言われたもんだよな、穴沢のやつに…「予定は未定であって決定では無い!」だったか…都合が悪くなると良くそう言ってたよな…アイツ。

 

 ホント、今考えてみるとアイツとの思い出は嫌なことばかりだ。

 

 落ち着いて考えてみると、アイツ…裏で暗躍してる集団の仲間入りをしたいがためにボクを利用して…わざと致命的な情報を握らせた上で、自分の価値を認めさせるために闇討ちに…って算段だったのかな?

 

 そうだとしたら、モノの見事に引っかかった自分がバカみたいだ…まぁでも、ウルベルトさんならあの情報、うまく活用して『美学の無い悪』を打ちのめしてくれてますよね?

 

 

 なんてことを考えながら、闘技場の中央へと歩みを進めると、闘技場の貴賓席、その最上段から飛び出し落下してきた小さな影、おなじみになってしまったアウラだ。

 

「さて、みなさん、お待たせいたしましたぁ! 次に我々階層守護者に挑もうとやってきたのはこの命知らずの3名!」

 

 アナウンス用のマイクを手に、実況は続けるアウラ。

 

 内心で「腹の中にまだ外に4人程いるけどな」と思っているが口には出さない…ヘアスタイルはエルヤーのまま、外見は人間の状態、黒髪に擬態して見た目を誤魔化しているベル。

 

「今回も、てこわいのかててきそうしゃの」

 

「私たちは、安全にサポートできるんですから、しっかり展開を見極めなければいけませんよ?」

 

「言われなくてもちゃんとわかってるから大丈夫、ベルさんに最後に覚えておくように言われた呪文も準備万端だよ!」

 

「セピアは放っておくと、攻撃魔法しか覚えないんですから…最後の魔法も、ベルさんが言わなかったら別の攻撃魔法、覚えようとしていたんでしょ?」

 

 などと、ちょっと意識を向けただけで、腹の中で打ち解けた会話がなされていた。

 

 老公も、この戦いが落ち着いたら、身の振り方を考えてあげないと…だな、武技とかで自分の持ってない種類のを覚えているのって、やっぱり経験の深いこの人じゃないと使えないのとか結構ありそうだし…

 

 前回のシャルティアとの戦いで、一度だけうまくいった「紅竜牙突き」。

 

 あれは、なんとか身体反応を反射的に合わせることが出来たから、なんとか同時発動に間に合ったけど…意識しなくても普通にそれが出来るようにしなきゃ、コンマ何秒かの遅れが勝機に大きく響きそうだからな…必ずしも全部勝つ必要はないんだけど…せめて自分が言い出した2回くらいは勝っておきたいよな。

 

「そして、今回、迎え討ちますのは階層守護者の中でも、武器戦闘に於いて最強を誇る、この者!」

 

 とアウラがアナウンスした瞬間、ゴゴゴゴゴ…と入場口から、格子状の障害が上へとせり上がり、奥からライトブルーの甲殻を輝かせ、冷気を吐き出しやって来る、2足歩行の蟲としか言えない異形の者が姿を現す。

 

「な…なに?あれ?」

 

 さすがのアルシェちゃんも少し気圧されてるようだ。

 

「正直、気ハ進マヌガ…女子供トハ言エ、戦イノ場ニ赴イタ以上、手ハ抜カン! ソレデモ挑ミタイノナラバ…ドコカラデモカカッテクルガイイ!」

 

(さすがに武人としての性格を色濃く設定されたコキュートス、挑まれるのなら迎え討つ、か…、とりあえず3人は多すぎるとかイチャモンを付けられなくてよかったけど…守護者ならその程度の誤差、問題にはしないか…ひとまずはルール通り「相手側の承認」は得られたものと判断しよう。)

 

                    ★★★    

 

 

 そして、遅れてやってきた、審判であるナインズ。

 

 その後ろから、名目上は副審であり、ナインズの身辺警護の役目としてそばに控える形となったマーレ。

 

 その二人の立ち合いの下、ベルサイドの3名は、それぞれの持つことになる課金アイテムをフレイラ、アルシェの2名に3個ずつ手渡し、それを審判である支配者にも確認してもらった上で問題なし、と判断される。

 

 

「では…双方、準備は整ったようだな…では……始め!!」

 

 

 人間形態のまま、2本の腕で挑むことになるベルリバー。

 

 対して、4本の腕だが、武器は2つ、白銀のハルバードを持ち、逆側には目を見張るような輝きと、刀身に纏わりつく神秘的な眩さとが備わっている、見るからに業物とわかる一品とを装備した偉丈夫。

 

 武器という観点で言えばベルリバーも「シェイド・ベール」から取り戻した「無銘一刀 宜振」

 

 そして、反対の手には初めから使っていた「天ノ魔ブレード」

 

 手数と言う点では「無手」の状態である腕が2本あってフリーであるコキュートスの方が、余分な行動を不測の事態などにも対応させることが考えられるため、どんな状況下でも甘く見られる相手では無い。

 

(確か、コキュートスの持ってるのはコキュートス専用にと建御雷さんが熱心に作ってた断頭牙か…あと反対の手にあるのは、懐かしいな…ナザリック攻略の時に使ってた「建御雷六式」か…)

 

「本来ナラバ、四本ノ腕スベテニ武器ヲ装備スル所ダガ…ドウヤラソレダケノ相手デハナサソウダ…ナノデ、二本デ相手ヲサセテモラオウ。」

 

 対峙しているベルからしたら、ある意味複雑である。

 

 コキュートスと自分が並べる実力か?と問われたら正直そこまで自身の評価は高くない。

 

 しかし、2本の武器…つまり自分と同じ立場まで下りて来て、装備の武器の数すら手加減されるというのも気分的に微妙なのだ。

 

 一応、男としてのプライドというものもある、これは戦闘で実力を可能な限り示すことで「自分の評価は誤りであった」とコキュートスに認めさせる必要はある。

 

 と思うも、それと同時に本気にはさせない内に決着はつけたいという欲もある。

 

 決して全勝が必要な訳では無いが、モモンガさんには自分から提案を持ちかけたのだ。

 

 「2勝して、ナザリックに帰還します」と…。

 

 言ってしまった手前、「2勝出来ませんでしたが、帰還させてください」とは言い出しにくい。

 

 先程の戦い、先鋒ではMPの続く限り、回復が可能+直接攻撃でも多少のHP回復も出来るシャルティアと持久戦ともなれば相性は絶望的だったので、すでに1敗が決定している。

 

 次の戦闘ではアウラ単体なのか、それともマーレも参戦するのかが今のところは読めない。

 

 副将はデミウルゴスかアルベドか…どちらかだとして、大将が判断に困る。

 

 モモンガさんが直接、自分と戦おうとするとは思えないけど…もしそうなったらモモンガさんは自分がナザリックに帰還することを拒絶してるって可能性も…と一瞬だけ頭に浮かぶも、それを頭を振ることで否定する。

 

 アルベドは防御特化ではあるけど、自身で回復の手段は無いことも無いんだよな。

 

 だが、シャルティアと比べると回復の度合いは凶悪なほど段違いに低い。

 

 防御特化とは言え、極振りではない、魔力の数値もあるにはあるが、シャルティア程は高くないのだ。

 

(問題は騎獣を召喚されて、それに乗る事での攻撃力上昇に攻撃手段の多様化か…そうなったら厄介なコトこの上無いんだが…まぁ、今はコキュートスが相手だ、とにかく自分の持てる力をありったけ出せる相手だ、なにしろあの建御雷さんの嫡子みたいなものだからな。)

 

 結局、PVPで一度も圧倒して勝利することの出来なかった目標だった存在を思い出す。

 

 そして、その面影を目の前のコキュートスに重ね、両手に持った武器を構えて、宣言をした。

 

「それではその評価、少しでも改めてもらえるように努力しましょう、「武人」のお相手をさせていただくのは誉れと言える又とない機会でしょうからね。」

 

 

 一瞬の静寂がその場を支配し、ブシューという音と共に冷気を吐き出したコキュートスがその静寂を破る。

 

(コノ男…。)

 

 コキュートスの、目の前に居る相手への警戒がわずかに上昇する。

 

 初めて相対した相手で、アウラの紹介でも自分の言葉にもどれにも発した覚えのない「武人」という言葉。

 

 少なくとも今まで会って来たどの相手よりも観察眼…洞察する力は強そうだと認識を改める。

 

 しかし、それだけだ。

 

 自分の本気を全力でなりふり構わず振るえる相手か?と言われればまだ未知数だ。

 

 決して相手を侮ることはしない、至高なる御方も「侮るのは良くない」と常に言っておられることは自分も解っている為それはしないが、だがそれを理由に相手を必要以上に叩きのめす必要は無いとも思っている。

 

(共ニ高メ合エルヨウナ相手ガ居レバ、アルイハ全力デ戦エルノカモ知レヌガナ…)

 

 人間で言えば自嘲するような仕草で、「ギチギチギチ…」という音を鳴らしながら目の前の男に意識を向ける。

 

「デハ、改メテ…名ヲ、聞カセテモラオウ。」

 

(そう言えばシャルティアの時も名乗るのってするの忘れたな…まぁいっか、シャルティアもその辺、気にしてなかったみたいだし…)

 

「事情があって、ワーカーとしての名しか今は明かせませんが…ベル=カゥワ=スズリバー…参りますよ?」

 

「ソウカ…ナラバ今ハマダ深ク詮索ハスマイ…ナラバ『ベル』トヤラ…イザ!」

 

「えぇ…尋常に。」

 

「「勝負(ショウブ)!!」」

 

 そうして、静かに両者の立ち合いは始まるのであった。

 

 




はい! ということで、いよいよ次話から、本格的に戦う話に移行できそうです。

ちょっといつもより文字数が少なめですが、それは戦いの場が整うまでのことなので、微妙に物足りない感は与えてしまったかもしれませんが…。

ベルさんはとりあえず、今は偽名で通してコキュートスが必要以上に手を抜かないように…その気になれば本気を出してくれやすい状況を整えるためにあぁしています。

 どうしても自分が超えたい相手、超えたかった相手、その面影を見ている間は、きっと何とかして自分が納得できる成果を挙げられるまで甘えた戦いはしたくないんじゃないかなと…自分の中のベルリバーさんはそんな人だったりするので、私の作品内ではそういう人物像だと思って下さい。

でも純粋に武力のみでの戦いで、最後までそうするかどうかは…状況次第でしょうね。
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