気づいたら大自然 小心者の異世界闊歩 作:yomi読みonly
新年度になりまして、初の更新です。
ひとまずはやっとつり合いが取れるようになってきた二人の戦いがどのように進んでいくのか…生温かい目で見守ってやってください。
様子見のコキュさんがどのあたりで手加減なしの攻撃を繰り出すようになるのか…
書いている自分もそこらへんが楽しみではあります。
「さて…と、それではそろそろウォーミングアップは終わりの頃合いかい?コキュートス…。」
今までとは違い、ベルと名乗るベルリバーが4本の腕を使い、感触を確かめるようにしながらコキュートスに声をかけた。
「ホォ…ソチラカラソウ問イカケタト言ウ事ハ…ソロソロコチラモソノツモリデ臨ンデモ良イト…ソウ受ケ止メテ構ワナイノカ?」
少しだけだが先ほどより声に弾みが出てきている。
コキュートス自身もそう出来たら…と言う心が無かった訳ではないが、望もうと叶わぬ現実もあると言う事実を受け止めることも必要か…と思っていた矢先に、急速な実力の向上を果たした者が今、目の前にいる…「その現実」に喜びの震えが沸き起こっていた。
自分の力を引き出してくれる相手が侵入してくる日は来ぬものか…と頭をかすめる日が無かったと言えば嘘になるものの、それを口にしては敬愛する至高なる御方々、それに自らを創造してくれた主や、今もなお君臨し、我らを導いてくださっているアインズ様にも失礼になると思い直したりもしていたのだが…
「フフフ…デハ少シダケダガ…ドレホド出来ルヨウニマデ上リ詰メタカ…見サセテモラウトシヨウ!」
コキュートスはそう言うなり、振り上げる仕草もかすんで見える程の速度で断頭牙を振りぬき、ズン!という音を響かせるように地面に突き立たせていた。
そしてそれは、先ほどまでベルが立っていた位置。
攻撃されたベル自身もまた、負けない速度で回避行動、<縮地・改>を用いて体の位置を立ったまま身動き一つすることなく横にスライドさせていた。
「フム…先程マデトハマルデ別人ノヨウナ動キダナ…ソレナラバ今マデヨリズット楽シメソウダ!」
「お気に召していただけたようで幸いです…ですが、ここまでにさせていただいた以上、こちらとしても欲が出てしまいましてね…貴方の親父様には遂に一度も勝つことが叶わなかった身、せめて息子である貴方に勝つことで、彼への返礼とさせていただきましょう。」
今しがた、復活したばかりのレイザーブレードの切っ先をコキュートスに突きつけ、宣言をした。
それもわざと「親父様」という言葉を付け足すことでそのあとの反応も確かめてみるという意味も含めている、そしてその反応はコキュートスにとっては劇薬の如く、即座に現れることとなる。
「ナ!…ナゼ!オ前ガソノ御方ノ事ヲ知ッテイル!オ前ハ本当ニ至高ナル御方々ノ『補欠』的ナ立場デアッタト言ウコトカ!!」
(補欠? …あぁ、そういえばそんな制度を作ろうって申し入れたことあったな、運よく賛成派が多かったから採用されたけど、あの『補欠制度』が無かったらギルド内の機密を外に漏洩するのを防げたかわからなかったよな…。)
「そういえばそんなこともあったっけ」という懐かしい思い出に僅かな間ひたりながらも思考は止めることなく口を開く。
「ふ…まさか貴方からそのような言葉を問いかけられるとは…ですが敢えて言わせてもらいましょう、言葉での語らいにどれほどの意味があると思いますか?何をもってそれを真実と受け止めます?「それ」をどう受け止め、何を信じるか…それは貴方次第ではないでしょうか?コキュートス」
「ソウカ…言葉デノ申シ開キナドタダノ無粋…ソウ言ウコトカ…ナラバ甘ンジテソノ言葉…受ケテ立ツトシヨウ!」
コキュートスはゆっくりと腰を落とし、上体を前かがみにさせ、己の武器を体の側面に位置させる。
見て解るように「溜め」を作っているようだ。
(あの構えは…たしか。)
「モハヤ、ソコマデニナッタオ前ノ実力ヲ侮リ、中途半端ナ攻撃手段デ応ジテハ対峙シテイル相手ニモ武人トシテノ『礼』ヲ失スル。 …デアルナラバ、コノ技デ応エルシカアルマイ!」
次第にコキュートスの身体に纏う闘気のような空気が濃密なものとなり、まるで可視化されたような風にも見えていく。
そして、コキュートスから発せられている冷気と闘気が交じり合ったような独特な『気』が一定に圧縮されたかと思うと、背中にゆらりと…剣に炎をまとわせた憤怒の化身が現れる。
(まずい! …さすがにあれは何かで対処しないと、体一つで受け止めるにはダメージがでかすぎる!)
ベルリバーとしての経験で、それが何の技かを察した瞬間に、行動を移す。
自分の手持ちの技で対処するには「回数制限」のある技で対応するしかないが、それでもこの技をしのぎ切れるか?と言われれば、正直『どうだろう?』という懸念が無いわけではない。
ならば、確実に同じ火力、同じ威力で相殺できるくらいの『何か』で対応するのが何より理想的。
(それなら、今更、迷う必要などあるまい…ならば、少しでも力を蓄えさせてやらないと…だな。)
コキュートスが気を溜めている今しか手段を講じる時間はない、とばかりに、最初の一手を投じる。
「
第6位階に相当する魔力系魔法であり、第7位階魔法「
すさまじい吸引力で幾数本もの雷撃が天空から降り注ぎ、唸りをあげるような轟音を響かせる落雷が、目に見える勢いで吸い込まれていく。
そして消えた瞬間、次の行動に移した。
「出でよ雷精!契約に従い、お前の力を全てこの身に宿らせ、わが力となれ!」
そう言葉に出した瞬間、胸部に埋め込まれた精霊石が煌々と輝き、同時に頭上に蒼き体、その身の周囲にバチバチと弾ける雷撃を纏わせ、全身に「稲妻」を表すギザギザのマークがデザインとして刻まれている存在が現れ、ベルの首の後ろから吸い込ませるようにその身を同一のものとさせていった。
『わが身、わが力、かつての契約に従い、御身の刃、御身の盾、御身の力と成りて応えん!』
その力が、自らの身に宿ったと確信したと同時に、最大で、最強の技の名を宣言し、体現せよと意識で声をかける。
「<超力! 招来!!>」
(とりあえず、『超力モード』には入れたが…ユグドラシルでの5ターンというのは、こっちではどのくらいの時間なんだかな…「あの修行場」での異空間ではユグドラシルに即したターン制の戦闘だったから判断が楽だったんだけど、こっちでは多分、一定時間過ぎたら消えるのだろうが…問題はその時間が来たら即座に消えるのか、それとも前兆があるのか…その違いだけでもあるのとないのとでは雲泥の差がある。)
体に冷気と闘気を纏わせるコキュートスと対照的に、全身に電流を纏わせるような状態となったベルが互いに対峙し、両者ほぼ同時に蓄えていた力を一気に開放した。
<
<
★★★
離れた場所から見ていたフレイラが危険を察知した。
それは過去の体験からではない、所謂「ケモノの勘」とでも言うべき、根拠は無いが、確信はある。そういう類いのモノだ。
両者とも同じ姿勢から、鏡写しで体現したかのような全く同時の奥義の準備態勢。
それを見たフレイラがアルシェに告げた。
「アルシェさん、あれは危険です、あれこそ、防がなければならない脅威です。」
「わかった。」
発したフレイラも、アルシェも決死の覚悟である。
ついさっき、ちょっかいをかけただけで死にかけたのだ、互いに死力を尽くして戦おうとしている二人に割って入ろうものならどうなるか…その結果は想像に難くない。
(さっきはギリギリ第6位階魔法だったから打ち消せはしましたが…、今度はきっと一段上の位階魔法で攻撃してくるはず…そうなればわが身を盾にしてでも…)
そう決意したフレイラが、アルシェの操る浮遊盾に<不可視化>をかける。
<透明化>で無く、<不可視化>にしたのは理由がある。
<透明化>は透明になるだけで実体が消えるわけではない為、周囲に光源でもあれば、影が発生してしまう。
それに対して<不可視化>は、そもそも実体があろうが無かろうが、影が出ようが出まいが『不可視』、つまり見えなくさせるための魔法であるため、こっちの方が遥かに使い勝手は良いからという理由だ。
これで、課金アイテムや装備品の効果で視力強化をしていない限り、見破られることはないだろう、と考えての方法だ。
そのままのコキュートスの“視界の広さ”は甘く見ていいものではないことは、生み出された際に予め意識の中に書き込まれていた「常識」の範囲内で理解できていたせいもある。
「ありがとう…。」
短くアルシェが礼を告げると、見えない状態の浮遊盾が数枚飛んでいく。
一枚はコキュートスの<
残された3枚でやりくりするしかない。
見えない状態ではあるが、イメージで盾の形を変えていく。
そしてわずかなら、寸法や大きさも変化させることができる為、コキュートスにしようとしている手段に即した大きさへと調整をしながらどんどん距離を詰めていく。
(お願い! 間に合って!)
焦る気持ちを抑えながら、確実に防げるような手段になるように、失敗の許されない「横やり」を構築していった。
★★★
<超力招来>の発動と共にその身に起こった感覚。
本来は雷精は敵キャラであり、特殊な条件を満たすことでNPCとして作ることも可能だったという話は聞くが、プレイヤーとしての種族で使えたという情報はついぞ聞くとは無かったため、『精霊として身に宿す』という手段ができるということを初めて雷精から聞かされた際は驚いた、だが実際にそうしてみるとパッチを当てられ、修正された状態での【通称:超力モード】ではあったが、力押しで来る相手には特に有効だった。
レベルが36という低レベルの雷精であるにも関わらす、敵からの攻撃をカウンターで返す際の攻撃力は相手によって変動する仕様は健在だった。
そのため、こういう時の為にこの手段を温存していたのだ。
そして今、火が吹いた『不動明王撃』は、互いにぶつかり合い、お互いを相殺し合うかのように見えた。
しかし、そこでコキュートスに変化が表れる。
構えの姿勢から攻撃に転じる際、腕の関節、腱を伸ばそうとした瞬間、まるで伸縮が不可能なように固められたかような状態になり、充分な勢いで振りぬくことが「途中から」できなくなっていたのだ。
「ナンダ!コレハ! コノヨウナコト、今マデ起キタコトナド!!」
瞬間的に何が起きたか理解できないものの、それでもクラススキルにより、一瞬だがある程度のダメージを減少させる効果を発動させる。
一日に2回しか使えない強力なスキルだが、使いどころは見極めなければならない。
相手も『不動明王撃』を使えたことは予想外であったが、それでも多少の攻撃力の違いはあってもどちらも直撃するようなことになれば、ダメージを受けることは免れない。
そう、それが例え、
不十分な勢いのままでも、不発よりは出した方がいいと判断したコキュートスは、そのままで『俱利伽羅剣』を振って撃ち出した。
十分に勢いが乗って襲ってくる『不動明王撃』と、不十分なままで撃ち出された『不動明王撃』では必然的に勢いが乗った状態での『不動明王撃』の方に軍配は上がる。
コキュートスの攻撃を飲み込み、打ち消し合った結果、残された余波の明王撃がコキュートスを襲う。
「ヌォォォ!!!」
とっさに腕を出し、防御の姿勢を取る。
ともすれば、腕の1本くらいは覚悟するしかないか。
そうも考えていた。
しかし、腕は落とされることは無く、その代わり、重い音が腕から外れ、ゴトンと見えない何かが地面に落下したような音がした。
コキュートスにももちろんダメージは発生しているが、それよりも今はダメージよりも正体不明の音の正体だ…とばかりにその音がした辺りを踏みつけた。
コキュートスの体重を乗せた踏みつけ…。
ベキリ!という音を立てて、その役目を終えた板状のなにかが、見えない状態から見える状態へと移り、コキュートスの目にも映りこんだ。
それは、少し前に自分が<
(コレガ、私ノ腕ノドコカニ影響ヲ及ボシタトデモ言ウノカ…)
それを操る者は遥か後方にいる。
その者へと目を向けると、武器を持っていない方の手を突き出して、その相手へと告げた。
「言ッタハズダナ…、戦イノ場ニ踏ミ込ムナラバ手ハ抜カナイト!!」
コキュートスが魔法の準備に入る。
しかし、その相手はベルではない。 ベルの後ろの向こうに居る者に狙いを定めていた。
ベルは現在展開させている【超力モード】の待機で待ち受けている状態だ、そのため、コキュートスの挙動に何の反応も今は示せない。それに反応…『自発的な攻撃行動』に移ろうとすれば、それは【超力モード】の解除を意味する。
一度解除したら、「一定時間が過ぎるまで」再度展開することは不可能となる、コキュートスが本気で攻勢に出るようであれば、解除したことが命取りになりかねない。
(アルシェちゃんのことはフレイラに任せてある、いざとなれば…仕方ないか、だがどうにもならないと見届けてからだ)
そう判断して「待ち」を維持することを選んだベルに対して、コキュートスは魔法を発動させる。
<
コキュートスから第7位階の魔法の発動が成される。
フレイラは、狙われるのは自分ではなくアルシェの方だと確信していた為、すぐに振り向けた。
そうすると、アルシェの足の下に、巨大な氷柱の先端が地面から盛り上がるように急速に持ち上がってきている。
その勢いはわずかな迷いも許されず、地面からとがった先端が見えたと気づいた時にはアルシェの股下にまで届こうとしていた。
「アルシェさん!!」
思いきり地面を蹴った後、アルシェを突き飛ばす。
虚を突かれ、なぜ突き飛ばされたのかまだよくわかってない表情のアルシェを救えたことを悟ったフレイラが安堵の表情を浮かべたのも束の間、入れ替わるように「アルシェが居た場所」を刺し貫くように全体が姿を現した<
「う…うぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
失われてしまった右腕の、引きちぎれた傷口を左手でかばいながら、うずくまるフレイラ。
「あ、あぁぁ、フレイラさん、フレイラさん!!」
心配してそばまで近づこうとするフレイラが残された左手を突き出し、アルシェの足を止めさせる。
フレイラが左手でとっさに取り出した、課金アイテム。
主人であるベルリバーが持たせてくれた3つの内の一つ、「第6位階までのあらゆる魔法を封じ込められる」効果のある〝ガラスで出来たような見た目の三角錐〟それをアルシェの足元に叩きつけ、粉々に砕け散らせる。
すると、砕けた破片が周囲に散りばめられ、それと同時に発動した魔法でアルシェが包み込まれると、周囲にドーム状の光が現れ、ドーム内に居る限り、あらゆる「魔素」を必要とする効果を拒絶する空間が形作られる。
『<
デメリットとして、時間経過による魔力の回復も妨げてしまうが、その反面、魔力が介在するあらゆる効果を打ち消すことのできる空間、「魔素」がゼロの場を作り出し、範囲内の者を「あらゆる魔法から」守ることができる。
しかし、<
しかし、今回のような<
「しばらく…その中に居てください。<
しかし、それには致命的な欠点があることも、アルシェには気が付いていた。
「でも…それには“両腕”のどちらのバングルもそろってないと第6位階の魔法は打ち消せないはず、左腕だけだと第3位階まで!」
「それは、内情を知っているアルシェさんだから…持ち得ている知識です、それを知らなかったなら、さすがのコキュートスさ…さんでも、うぅぅ…防いだ私がここに居ればおいそれとは使えないはずです。」
「わかった、これ以上、もう迷惑はかけない、これ以上フレイラさんを傷つけさせるような真似はもう私にはできそうもない…。」
アルシェから見れば、フレイラは居るだけで実力の違いが判る相手であり、太刀打ちできそうもないと感じられる相手なのだ、そのフレイラを事も無げにここまでできる相手では、これ以上のちょっかいをかけたら、自分の身はおろか、フレイラさんにも迷惑がかかる、そう思うと、言われた通りにおとなしくしているしか手段はないと思い知らされたのだ。
「何カノ手段ヲ講ジタカ…ナラバ私カラノ行動ハ、モハヤ通ジナイ…ソウ考エテオイタ方ガイイダロウナ。」
そうコキュートスが考えていると、後ろを振り向けないベルリバーの横に、ボトリと上から落下してきた何かが、視界の隅で確認できた。
横目でチラリと見ると…、一瞬、体が硬直した。
認めたくはない…だがそれは自分がいつも見慣れていたもの…自分の創り出したNPCの「右腕」
それの肘から先が空高く舞い上げられ、今ベルリバーのすぐそばまで飛ばされてきたのだ。
フレイラ…の腕…右腕…うで…うで…うで…
頭の中でその情報だけが埋め尽くしていく。
そして、その情報が脳内に染みわたり、現実のものとして認識した瞬間、何かがぷつん…と静かに弾けて切れた。
「コキュートス…やってくれたようだな…」
それはどよんとしたような瞳、さらにはその奥に狂気にも似た仄暗い火種が徐々に燃え盛り始めていた。
「戦イノ場ニ居ル以上、命ノ…」
「そんなこたぁ、どうだっていいんだよ!」
今までとは打って変わったような口調の変化に一瞬、コキュートスの言葉が止まる。
「お前はなー! この俺が苦心して作り上げた理想の形に傷をつけてくれたんだ!それを薄ら笑い浮かべて黙って見ていられるほど、こっちゃ人間出来てねぇんだよ!」
今までの
感情に任せたままの発言で、意識してのセリフでは無い為、彼自身も「俺」という一人称を使っている自覚は無いかもしれない。
それ程に、今彼の目に映ったこの光景は、彼にとって許しがたいものでしかなかった。
ベルリバーにとって「フレイラ」という女性はNPCという存在以上の「何か」であった。
ユグドラシル時代、起動を認可されることなく、「動くマネキン」状態のNPCとしてのフレイラの挙動すら見た事がない彼からすれば、この世界に来て、ギルド長に「専用NPCの起動」を特別に許してもらえた後、現実として目の当たりにし、さらに会話もし、初めて接した「生きているNPC」としてのフレイラは、他のプレイヤー以上に強い情念を宿してしまう結果へとつながった。
それが今、抗いがたいほどの激情となり、御しきれない感情の奔流となって爆発したのだ。
「オ前ト話ヲシテ時折、不思議ニ思ッテイタコトダガ…オ前ハ、彼女ノ事トナルト口調モソウダガ…内面ノ方モドウヤラ荒ブリヤスイヨウダナ。」
「あぁ、そうさ!これは俺の個人的な事情だ! 一方的な感情でお前を打ちのめす!」
「ホォ…オ前ガ?私ヲ倒セルト?」
「あぁ…今まではずっと自分の罪滅ぼしのつもりで相対してきたが…アイツの身体に傷を付け、苦しませる存在が目の前に現れたのなら、容赦はしない!」
そう言い、ベルと名を偽るベルリバーが<武技>の発動という名目で現したもう一対の両腕。
その〝両手首〟にはめていた、『途中で鎖の切れた枷』のようなモノを引き抜いて、中空に出来た暗闇の中へと仕舞う。
それと同時に、一気に今までのとは違う空気が表れ始め、コキュートスでさえ一瞬緊張が走るような感覚にとらわれた。
「コ…コレハ…」
「今までは下手に芝居して見抜かれたりしたら…武人としてのお前は「私ヲ侮ルカ!」とでも思って憤りを覚えるだろうと思ったからな、自然と実力に差ができるアクセサリを隠して装備することで上手く演出をする必要があったんだが…、しかしそれを気にする必要はなくなった。」
ベルが務めて怒りを抑え込むことで、なるべく理性的に話が通じるように、そしてすでに沸点を迎えている感情を爆発させるための『溜め』を行いつつ、説明をしていた。
更に【超力モード】は、自主的に『攻撃行動』に移らなければ、途中で体勢を変えたとしても、効果は維持されている。
もしもその最中に相手からの攻撃があれば、即座に反撃ができるようになっているというのは検証済みだった。
なので、ベルからはまだ自発的な攻撃行動はとっていない。
この会話も、攻撃行動ではない訳だから、解除もされていないので、効果時間は継続しているはずだ。
…ならば、と答えを導き出す。
「これで、わかったろう? 今までの私とはまた一段階上に移ったことに…。」
そして「ジャリ」という音と共に、自らの足の位置をわずかに変え、今までと違う姿勢に移った。
「お前は『今の』俺の家族とも言える大事な者に傷をつけた! ならばこれはその傷をつけてくれたお前への「復讐」と取ってくれても構わない! あくまでこれからすることは俺の自己満足だ!」
そうコキュートスに光の剣を向け、告げると、上側の左腕は光の剣を持ち、コキュートス側に少しだけ斜めに傾けて構える。そして、上側の右腕には刀を持ち、いつでも攻撃に対応できる態勢に移った。
「今から30秒だ…その30秒の間はお前の好きなように攻撃するといい、スキルの攻撃でも何でも…どんな手を使ってでも打ち込んで来い!すべて叩き落してお前に対する意趣返しとさせてもらおう!」
その時、ベルリバーの頭にピコン!と何かが反応した。
まだコキュートスからの本格的な攻撃行動は見受けられない。
ならばまだいいか…と自分の中の意識を覗き見る。
〝『家族の為の復讐心』を確立しました、リンクされている発動条件の一つが解放されます。〟
なんのことだかはっきり言ってわからないベルリバーは、「まぁいいか…」とだけ結論付け、全神経をコキュートスに向け直した。
★★★
「ピピピピ!ピピピピ!ピピピピ!」
時を告げるアラームの音が響く。
これは「30秒」という時間の指定を聞いた審判であるアインズが“進行役”として通常の時計機能付きのリストバンドを操作して、時間ピッタリに設定し、制限時間を超えて攻撃し続けるようなことが無いように…という条件で『挑戦者側』であるベルの提案を、至高なる墳墓の支配者である主審が採用した。
そういう体裁が必要かとアインズが判断したための、一連の流れである。
(それにしてもベルリバーさん、どんな手を使って【超力 招来】なんてレアな能力を手に入れたんだ? あれってユグドラシルの敵キャラである確か…『雷精』とかってやつが使ってた能力だよな…プレイヤーが取得できるスキルには公式なガイドにも【超力 招来】は載ってなかったはずなのに…無事にこのイベントが終わったらどんな手を使って入手したのか聞いてみよう。うん!それがいい!)
そんな風に考えている支配者の思惑などとは関係なく、当事者同士の流れは進んでいく。
「マサカ…ヨモヤ、私ノ行使デキル全【明王撃】ニ対応スルドコロカ…寸分タガワズ同ジ威力デ相殺シテシマウトハ…」
「それで終わりか…コキュートス!お前なら明王撃に頼らずとも、他にいくらでも攻撃手段はあっただろうが!<
問いかけるベルに対し、コキュートスは「フシュゥ」という短い冷気を吐き出し、回答を口にする。
「考エガ無カッタ訳デハ無イ…全テノ明王撃ガ発動スレバ、ソノ後【五大明王撃】ガ相手ニ襲イカカル…ダガソレハ、カルマ値ガマイナスデ無ケレバ意味ガ無イ…私ハマイナスデハ無イカラナ…オマエガ「マイナス」ノ方デアレバ…トイウ僅カナ光明ニ賭ケタノダガ…ドウヤラ賭ケニハ負ケテシマッタヨウダ。」
そういう事情なら分からなくは無いな…とベルリバーも納得した。
お互いに同じ威力、同じ効果を放つ技を出し合えるなら、互いに【五大明王撃】を打ち出し合えば、その効果は相手に直接あらわれる、コキュートスはカルマが「中立」に位置しているから、効果は出ない。
その代わり、戦っている相手が「マイナス」に傾いているカルマであれば、即座に効果が表れてしまう。
「なるほど、お前も戦いの中で経験を積み、最適な手段の模索を導き出せるようになってると言うことか…さぞや、この墳墓の支配者も鼻が高いだろうよ。」
しかし、ベルリバーの中の炎はまだ消えてはいない。
だがその瞬間、体の内側から湧き出ていた【超力 招来】の効果が失われていく感覚に気が付き始めた。
(やはり…この世界での戦闘では10秒程が1ターンに相当すると見ていいようだな)
その身に残心を残し、攻撃を終えた後でも油断なく構えを解かないコキュートスを相手に【超力 招来】がどれほどの心理的効果を上げたか、それはこれからどう反応してくれるかにもよるが…せめて腕の1本くらいは切り飛ばさないと、気が済まない。
狂気の中に踏み込んだような意識の中、不意に空腹感を覚える。
自らの内側から「ハラガヘッタ…」「タベタイ…ナンデモイイカラ、クイタイ。」「タリナイ、モットホシイ」そんな声が訴えてきている気がする。
だが、今はそっちに意識を持って行かれるわけには行かない、最優先は同じ目に遭わせてやることだ。と意識を強く持ち、内側からの声を振り払う。
(コキュートスの弱点は炎系の攻撃…普段なら完全耐性でも備えているだろうが…今はルールによって完全耐性未満の装備で挑むことを定義づけている…ならば、こうする方が効果的か…)
そう思い立つと、<
これで、光の剣と、炎の剣、さらに第八位階の属性を魔化状態で付与させることにより、戦闘中ならば何百ターン分の時間が過ぎようと効果が失われることは無い。
それに加え、「風車のベルト」としての
腕に着けていた『枷』も外したので、今ならばコキュートスにも負けない実力に成れている自負はある。
だがそれが確定しているのは「力」と「技」に関してだけだ。
それ以外がどの程度上がったのか、どこまでコキュートスに食らいついていけるのか…
それだけが懸念材料だが、今はその不安を差し引いても、思い知らさなければ気が治まらない。
ならば…と思い至る。
せめてコキュートスの動きを事前にある程度読むことができれば…と。
その為の目が欲しい、そう感じた。
その瞬間、再び、脳内にピコンという音が聞こえた。
意識を向けるという作業にもそろそろ慣れて来たので、瞬間的に把握できるようになっていた。
〝26の秘密として備わる機能、エレクトロアイ及びマトリックスアイを起動します。〟
そう認識した次の瞬間、目の前の光景はガラリと一転する。
コキュートスの身体がまるでレントゲン画像のように体の内部情報まで見通せるようになり、かつ僅かな光や熱でもわかるようになる。という視覚自体に変化は表れたが、まだ何かが足りない気がする。
何故なら、見た限りコキュートスを視界に収めた色は全身が真っ青なのだから。
そこでベルリバーは自らの腹の中に居るエルフ達にも声をかけた。
「みんな…少し力を貸してほしいんだけど、大丈夫かな?」
(はい!大丈夫です、何かお力になれることがありますか?)
「あぁ、すまないけど、3人で順番に交代しながらでいいから<
(はい、わかりました…でもベルさん、大丈夫ですか?さっきから…その…今のベルさんちょっとだけ、怖いです…)
「ん? あぁ…心配させちゃったかな?大丈夫だよ、キミらが居る限り、人間らしい心まで浸食などはさせたりしないさ」
(そうですか、それならいいのですが…くれぐれもその…気を付けてくださいね?ワタクシ達は、いつも通りのベルさんで居てくれればただそれだけでいいのですから…。)
「あぁ、わかったよ、ルチルもみんなも…心配してくれてありがとう…だが、譲れない一点だけはボクの好きなようにさせて欲しい…力を貸してくれるかい?」
(まっかせてください!いつでも準備オッケーですから!いつでもズドンとやってやりましょう♪)
「あぁ、それじゃ、<
とだけ体の中に告げると、目に映る世界が再び違うものへと変わった。
コキュートスの体の中は変わらず、内側の状態を示している。
温度表示も真っ青で、目に映る表面温度も同様だ。
だが、そこに熱源視覚化で、微細な温度の違いも、色の変化で見て取れるようになった。
(よし、これなら、動かそうと力を入れる兆候を見せれば、温度が多少変化するだろう、それが動く前兆となる。)
目線を外さずにいたコキュートスを目の前にして、ベルリバーとして芽生えた感情を初めてコキュートスに吐露することに決めた彼の宣告が始まる。
「これからは、こっちの番だ、邪道の戦いをどこまで凌ぎきることができるかな?」
「ムゥ…、ナラバ今度ハコチラガ受ケル番トイウコトダナ、良カロウ…イツデモ来ルガイイ!!」
武器を構え直したコキュートスを相手に、目の前で垂直ジャンプを試みた。
土煙を残す強い踏み切りから、姿が消えるかと思えるほど瞬間的に、音だけを残して姿が見えなくなり、気が付くとその存在は遥か上空に位置していた。
(行くぞ!ルチル!)
(はい!ベルさん!)
彼女の持つ杖、自分が貸し渡した「ヤドリギの杖」、それに魔法を使用するたびに魔力の残滓を養分として吸わせ、杖に纏わせた分の全ての魔力を一度に発動させる。
<
強化状態に及んだ身体能力を活かし、上空80mを超えた位置から直下に魔法を発動させ、コキュートスに直撃させる。
うまくいけば「暗闇」状態にして視界を奪うことも不可能ではないが、恐らくレジストされてしまうだろう。
(次はいよいよ、二人の合体技だ、セピア!)
(アレですね!任せてください!)
彼女ら3人娘だけにわかるように短く告げると、セピアにも貸し出している「コメットロッド」が最大の威力を発揮させた。
パワーレベリングの為に修行させていた異空間での戦闘で試してみた結果得られた隠された裏技。
セピアが第三位階の「
そして、そのタイミングで、ベルリバーも魔力を消費させることにより、第四位階~第七位階までの「朱い大彗星」へと変化を遂げた。
しかも、杖の効果により、第四位階以上の消費は、MP消費が半分になる。
だが、杖の仕様により、第四、第五、第六、第七…とそれぞれ個別に消費させることになるので、コストとしては普通に第七位階魔法一発分と比べてトントンか、多少足が出てしまう程度となってしまう。
しかし、今のコキュートスは<
「「コメットインパクト!」」
「朱い大彗星」となった際の落下スピードは、「彗星」が落ちる際の実に3倍の速度に相当する。
第七位階として使用できるのは一日一度きりなので、コメットロッドの最大の切り札をこの場で使ってしまったことになる。
あとは、第一位階から第三位階までの彗星なら、回数に制限はなく魔力が続く限り使用が可能。
その場合だけは、第二位階のみを選択、第三位階のみを選択して…という感じの魔力消費で済む親切設計だ。
そして、その直後、「朱い大彗星」の落下と合わせるように、上空80m以上の位置から、頭から後転をするような行動をし、そのまま空中でそれを高速回転させ、体当たりをしようと試みる。
(これはドリルアタックとは別扱いになるだろうが、どんな技が反応するかな?)
すると、高速回転が軌道に乗った辺りで、脳内に再び「ピコン」と音が発生した。
〝摩擦熱の発生に及ぶ高速回転により26の秘密の一つ、レッドボーンパワーが発現しました。〟
〝レッドボーンパワーの発現に合わせ、レッドボーンリングが使用可能となります。〟
頭の中に『使用しますか? Y/N 』
そんな選択肢が浮かんでいる感覚を覚えたので、そのままYESと選択すると、まるで業火に包まれたように変化し、そのまま、「朱い大彗星」の落下直後でダメージを受けているコキュートスに追加ダメージを与えることに成功した。
「グ!グォォォォォ!!」
ダメージを立て続けに受け、苦悶の声を上げるコキュートスの目の前に降り立ったベルリバーは、ここでもう一押しが必要かと判断する、コキュートスの防御と魔法防御は相当高い、この程度ではそこまでダメージは受けては居まい、そう思ったからだ。
「これで決めさせてもらうぞ!コキュートス!
その声と共に、腰の「風車のベルト」が淡い輝きに包まれる。
「吹き飛ぶがいい!
「風車のベルト」から解放された全ての風力がうなりをあげて吹き荒れた。
それは絡み合う龍の如く2本の竜巻が、一本の縄のようになり、コキュートスを飲み込んで「し」の字を描くように天高く、2本の竜巻に翻弄され、堅牢な甲殻装甲が悲鳴を上げるような音を立てて、打ち上げられていく。
武人であるコキュートスは「地に足をつけて」という姿勢を最も好む。
足場がしっかりと確立されて居ないと自身の精神も揺るぎやすいものとなる。
その為、普段から浮わついた精神で居てはならないと戒める為、宙に浮かぶという手段に出ることも無い。
それが今回は仇となり、空中で体勢を整えることもできず、天井まで打ち上げられ、激しく叩きつけられたその後、抵抗らしい抵抗も出来ず、姿勢を保つことも難しくなり、今度は落下していく。
出来ることと言えば、ダメージ減少の為の、1日2回しか使えない大ダメージ用のスキル、それの最後の一度を使用するくらいだ。
このスキルの効果は一瞬だが、攻撃のエフェクトが長い時間に及ぶのであれば、その分効果も延長される。
それを現在進行形で発動させているが、どこまでダメージを抑えられるか、自分でもどこまでの被害が出るのか想像もできない攻撃だった。
そしてそのまま、ダメージ減少の効果が適用された後、地面に叩きつけられるが、ここでもその強固な鎧が仇となる。
これが弾力や柔軟性のある装備なら違っただろうが、コキュートスの皮膚とも言える甲殻装甲はとにかく硬い、その硬さのまま地面に高い位置から叩きつけられれば、その衝撃は身体の内部にもダメージを与えることとなる。
「グフォア!」
周囲に荒れ狂う風の乱流をもたらした2本の竜巻が消えると共に、「風車のベルト」から淡い光が失われていく。
(これで、3時間の使用不能か…だが、さらなる追撃で、こいつを仕留めきる!)
そう強く決断すると、また「ピコン」の音…、もうすっかり聞きなれてしまった。
〝追撃の意思により26の秘密の技の一つ、火柱キックが候補にあがりました〟
〝主となる対応クラス『モンク』系の職業を取得していません。〟
〝対応策を検討、「キック」を「
〝26の秘密の一つ、改訂技、『火柱
その瞬間、右手に持っていた「無銘一刀 宜振」に纏わせていた
(これは…HP消費系の技か…ならグズグズはしてられないな…)
「くらえ!火柱
コキュートスの腕の甲殻装甲の継ぎ目、黒く露出した細い部分に狙いを定め、一番防御力の低いだろう場所にそれをお見舞いするべく、「ズバン!」という音と共に、炎の化身となった刀が、コキュートスの上段の右腕を斬り落とした。
それと同時に、ベルリバーの残されているHPが一気に半分に減ってしまう。
(持続するだけでも継続ダメージ、さらに一度の攻撃で残りHPの半分を消費…か)
「まだだ、まだ終わらせない! <流転三斬>!」
エルヤーのオリジナル武技、彼の力量では初見殺しとしての一度きりしか発動できない大技で、しかもカウンターでのここ一番でしか、(恐らく精神力の消費という面もあったのだろうが…)そう何度も使うことが出来なかったようだが、今の自分にそれは関係ないだろう。
攻撃の技として使用して、流れるような三段攻撃で、残されていた上段の左腕、そして、下段の両腕も切り飛ばし、コキュートスの四腕を全て奪っていった。
残されたHPの48%がまず一段目の攻撃で24%へと減り、二段目の攻撃で12%、最後の三段目の攻撃では、とうとう残りHPは継続ダメージにより、5%へと減じてしまった。
それを察知したのだろう、ルチルとデーィネが二人で治癒魔法を使用してくれたおかげで、敗北条件であった一割を切る。という局面は即座に回避され、現在は残り21%にまで回復されていた。
(これでトドメだ!)
大きく振り上げた業火の刀と、光の剣をそのまま切り下そうとしたその時、まるで自分の腕を後ろから絡め取られるような感覚に突然襲われた。
四本の腕を失ったコキュートスでは、自前で回復の手段はない。
尻尾の攻撃や体当たり、足蹴りなどの手段はあるだろうが、武器戦闘を得意とするコキュートスでは、その攻撃手段では大したダメージも出せないだろうとベルリバーは判断して、彼は後ろを振り返った。
★★★
「な…なんですか…これは!」
慌てているのはフレイラと同様に、近くにいるアルシェも、声が出ないほど驚愕していた。
何故なら右腕が飛ばされた際、頭の中に響いた音がして、「リンクされている発動条件の一つ〝右腕の喪失〟が解放されます。」という声が自分の脳内に流れ、それからしばらくして「リンクされている発動条件の一つ〝家族の為の復讐心〟が解放されます。」という声まで聞こえ、次々に理解不能な現象に見舞われた。
だが、脳内で声が響くという現象だけで、別段何かが起きるという風でもなかったため、気にも留めていなかったが、自分の主が、自らのHPを犠牲にしてまで、業火に身を焼きながら修羅のように戦う姿は、そのまま倒れて、命まで失う危険を孕んでいるように見えた。
『止めなければ…』
そんな心境になるものの、アルシェのことも放り出していくことなど出来はしない、だが主のことも止めなければ、このままだと本当に自分の想像通りになってしまうのではないか…そんな危機感に苛まれた。
『ここからでも届く〝主を止めるための手段〟さえあれば…』
そう思うも、そんな装備は今持ち合わせていない。
そんな風に思い悩んでいると、上部の両腕、下部の両腕の4本を斬り飛ばされた階層守護者のコキュートスに今にもトドメを刺そうとしている我が主を目にした瞬間に、心が焼き切れる程の勢いで離れている主まで意識を飛ばすイメージで、「ダメェェェェェェェ!!!!!」そう叫びながら訴えかけた。
それが現実のものとなってくれればこの身さえ厭わない!そう思いながら…
その瞬間、フレイラの吹き飛ばされた右腕に突然の変化が訪れる。
まず、失われた右腕にまるで「8」の数字を形にしたようなデザインの硬質な武器とも防具とも判断の難しい部位装備。
見る人が見れば落花生の殻のようだという感想を持つ者もいるだろうが、その概念を持てる者は、この場には居ない。
そしてその「8」の数字を具現化したような部位装備の頭の部分に「?」をそのまま金属にしたような形の「鉤」と呼ばれるモノが発生しているが、フレイラの中にはそれに関しての知識もない。
だが、そんな戸惑いに関係なく、先ほどの『身を焦がす程の望み』を叶えるべく、それは唐突にベルリバーの方に向かって撃ち出された。
止め方もわからない彼女がためらっている間に、撃ち出された『鉤』の根本にはLV金属製の糸を編んで作られた縄が括り付けられており、右腕の「8」の字ともその縄は繋がっていて、今にも2本の剣を切り下そうとしていたベルリバーの両腕を絡め取っていたのだ。
(そうです、ここで今この不可思議な現象の検証をしている暇など無いのでした。今は最優先すべきは主の身の安全、それ以外は全て後回しにします!)
意識をそう切り替えたフレイラは、ベルリバーの両腕に絡ませたロープを引き絞り、振り下ろさせないようにグッっと腕を引きながら声を張り上げた。
「いけません!それ以上続けられては! 私ならばこの通り、何も問題などありません!どうかお怒りをお鎮めください…そのままでは貴方様のお身体が…、どうかおやめになって下さい。」
それを後ろに振り返り、見ていたベルリバーの腕に握られていた剣から炎が消え去り、その身を焦がし続けていた業火も、静かに消えていく。
「フレイラ…お前…本当にか? 無事なのか? 腕の方は?その右腕は?」
オロオロしながらフレイラへと近づいていく、その彼の中にはもうコキュートスへの関心などどこかに消えてしまったかのように一瞥もせず、歩みを進めている。
「えぇ、私が『止めなければ』と…そう強く願っていたら突然…なぜこうなったのかは私にもわかりませんが…これについての詮索、検証は後にしましょう。」
「そうだな…うん、確かにその通りだ、今はそれよりもこっちだな」
そう言って、フレイラに近づこうとする際に拾い上げた右腕を彼女に手渡した。
「ありがとうございます。 これは後程、治癒魔法で治してもらいましょう。」
「ソウダナ…ソウシテモラウ方ガイイ」
ベルリバーの後ろには、上下の両腕を失ったコキュートスが静かに立っていた。
「まだ続けるか?」
短く問いかける。
もうそこには先程までの狂気じみた気配はわずかにしか残されていなかった。
「イヤ、モウヤメテオコウ、ドノ道、腕ガ無イママデハ得意ノ武器ヲ持ツコトサエ出来ンカラナ…見事ダッタ、ベルトヤラ…オマエ自身ハ邪道ト言ッテイタガ、ソコマデ高メテイルノデアレバ、ソレハ正真正銘、オマエ自身ノ実力以外ノ何物デモナイ、潔ク私ノ敗北を認メルトシヨウ。 良イ戦イデアッタ!」
その発言が飛び出したことにより、審判役のアインズ。
今は「ナインズ・オウン・ゴール」と名を偽っている墳墓の支配者が勝ち名乗りを代行する。
「では、これにて勝負あり! 勝者は挑戦者!ベル=カゥワ=スズリバーとする!」
ここに、正真正銘、最初から最後まで次鋒戦を初めから戦い抜いた両者の勝負に決着がついた。
(ようやく一勝か…、残す所はやっとあと一勝すれば…って感じだけども…次は、姉の方か?それとも、姉と弟のコンビか…どっちが来るか…だな。)
そんな風に思案しながら、戦いにくそうな相手との今後の戦い方にも思案を巡らせる至高の御方の一人、ベルリバーであった。
みなさん、どうだったでしょうか?
今回はシャルティア戦の際の反省点から、なるべくスピーディな展開を心掛けた結果、前後編の構成でなんとか収められることとなりました。
ひとまずは新年度になって最初の更新でコキュートス戦の決着がついて安心しています。
フレイラの変化についてですが、みなさん思い描いてくださってる通りの装備です。
無論、それ以外も完備させております、なにせ、その装備を作った人が作った人なので、その点は全く妥協しておりません。
その装備をフレイラに装着させているお話もアップ済みなのですが、第何話なのか…探してみるのも面白いかもしれませんねw
問題は「どこまで」を完備させるか…ですが…
一応、スーツの方も、準備してあってデザインに手を加えた『パワードスーツ』として準備しようかと…そんな風にも思っております。
あ、そうそう、今回の捏造設定の方も書かねばなりませんね。
・ギルド「アインズ・ウール・ゴウン」の補欠制度
・
・不動明王撃以外の【明王撃】をコキュートスが使え、五大明王撃をも使いこなせること。
・大ダメージをかなり減少させることのできる1日2回しか使えないスキルを持っている。
・<透明化>と<不可視化>を別の魔法として扱う内容設定
・<
・<
・能力制限の代わりに経験値増大の効果の首輪がアクセサリ扱いで、手首にも装備可能という設定
・<
・<
・<
・<
・現地世界のエルフに<
・書籍版の<無闇>をこの作品でだけ<
・コキュートスが飛行を嫌う性質、もしくはしない、という設定。
・「キック」という技を「
以上、「なんとなく設定山盛り」のタグ通り、ホント、捏造設定だらけ…
全部挙げてみると、ホント好き放題書いてしまってます。
くがねさんは読まれてないでしょうが、心の中でお詫びいたします。