No Answer   作:報酬全額前払い

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◆注意◆今回の話は完全なギャグである。前話までの暗い感じが好きな読者の皆さんはブラウザバック重点な。なお、今回の話に出てくる存在は全て架空であり、現実には存在しない。いいね?◆しよう◆



◆四◆最終話・奈落の落とし穴◆月◆

(これまでのあらすじ)

 

 

 マッポー都市・S03エリアにて突如発生したテッケツ・インダストリによる大規模なムーホンによって、元からマッポーめいた都市であったS03エリアは、たちまちアビ・インフェルノ・ジゴクと化した。

 

 地は焼かれ、多くのロボ・ニンジャは死に絶え、今となってはI.O.P.クランのロボ・ニンジャを見ることはない。代わりに台頭したテッケツ・インダストリクランのロボ・ニンジャ達に駆逐されてしまったからである。

 

 そんなS03エリアに、一体のI.O.P.クランのロボ・ニンジャが降り立った。全裸という豊満なバストを隠しもしない上に青少年のなんかが危ない格好である彼女は、そのまま周囲を見渡す。そして近くを偶然通りがかったマケグミ・サラリマンから衣服と靴とレインコートを奪うと、そのまま夜のS03エリアへ消えていく。

 

「アイエエエ!?」サラリマンの絶叫が響くが、誰も見向きもしない。マッポーの世であるS03エリアでは、路地裏でサラリマンが袋叩きにされるのはチャメシ・インシデントなのであるからだ。

 

 彼女の名前はウィンチェスター。テッケツスレイヤーとして未来から送り込まれたロボ・ニンジャであり、そのバストは豊満であった。

 

 

 

 第1部:殺伐都市S03より【ターミネート・レッド・ブラック】#1

 

 

 

「フゥー……」アクビを噛み殺しながら、薄汚い雲に覆われた空を見た。ネズミめいた色の雲からは、相も変わらず小便めいた雨がたれ流されている。放射能を含んだ実際危険な雨は、例え昼間であろうともウシミツ・アワーめいた暗さを齎す。まして今のような夜となれば、その暗さはスゴイ級にまで到達した。

 

 降り注ぐ雨は道路の至る所に水溜りを形成し、ケミカルな色彩で煌めくネオン看板の輝きを吸収してボディに悪い色を放っていた。深夜帯を迎えた現在でも街は眩しく、道行く人が途切れる事は無い。レインコートの端から窺える口元は真一文にきゅっと結ばれていて、何かに耐えているようであった。

 

 ウシミツ残業を終えたサラリマンを捕らえるために、所狭しと並んだ屋台からは湯気が立ち上り続けていて、そこから発せられる匂いが誘蛾灯めいて人々を店に連れ込まんとしている。「実際安く、実際美味い」「カロリー補充重点」「ヤバイ級の量」テンピープル・テンカラーズとコトワザにあるように、一つとして同じ謳い文句は存在しない。

 

 反対車線を幾つものビークルが通り過ぎ、道路に散在する水溜りを蹴飛ばしては夜の闇に消えていく。ふらりふらりと、何かに耐えきれなくなった者が道路の真ん中にへたりこんだ。雨音の中から聞こえる広告音声、換気扇の音、声。ここはS03。テッケツ・インダストリによって奪われた都市の、あまりに見慣れた光景だ。

 

 雨の静寂を塗り潰すように、表通りからはゴチャゴチャとした喧騒が絶えない。バチバチと火花を散らす看板の数々や、呼び込みの声。そしてケンカや銃声。それらは雨で音を抑えられて尚、存在感を示している。しかし、一つでも路地に入ってしまえば、そこには死の静寂が渦巻いていた。

 

 そんな喧騒の止まぬ表通りを、一台のヤクザモービルが走っていた。「タイクツだなぁハンター=サン」「私に言うなエクスキューショナー=サン」ヤクザモービルの窓の外に見られる光景に飽き飽きしながら、テッケツ・インダストリのエリートロボ・ニンジャであるエクスキューショナーは呟いた。

 

「オレ達はニンジャだぞ?なのにどうして、こんなサラリマンめいたサンシタ仕事ばっかりなんだ」ぶつぶつと不平不満を漏らしながら、エクスキューショナーはビンから直接サケを呷る。一回でラベルの一番上までの量を流し込んだエクスキューショナーのニューロンが僅かにひりつく。

 

「仕方ないだろう。こうした事を出来るニンジャも他に居ない」サケの臭いを車内に漂わせるエクスキューショナーに辟易としながら、ハンターはそう答えた。「使い勝手が良いってのはいい事さ。だろう?」「そうかもしれないけどな」エクスキューショナーは、やはり納得していない。

 

 エクスキューショナーとハンターは、テッケツ・インダストリに擦り寄ってくる暗黒メガコーポの、俗に言うカチグミ・サラリマン達による接待を受けた帰りであった。しかし、なぜ自分から出向かなければならないのか。そういうのは向こうから来るものだろう。

 

 幾つか存在する、イクラ・ドンブリを提供するチェーン店に入っていく疲れきった様相のサラリマン達を見ながらハンターは溜息を一つ。そして思う。外に歩くサラリマンと今の自分、一体なにが異なる?「ハラが減ったな」エクスキューショナーは呟いた。

 

「どこかの店にでも入るか?」ハンターは言う。「スシでなければ何でもいい」エクスキューショナーは返す。「おいおい、スシの何が悪いんだ」と更に聞けば、エクスキューショナーは嫌そうに言った。「毎日三食をスシだけで済ませてりゃ、飽きるだろうがよ」

 

 ハンターは熱狂的なスシファンであった。エクスキューショナーもスシは嫌いではないし、ニンジャ回復力を高める効能に命を救われた事は何度もある。しかし、いくらスシが優れたエネルギ補給食だからといって、三食それしか食べないとなると話は別だ。

 

 スシにニューロンを犯されたのではないかとさえ思えるハンターとのコンビが長いエクスキューショナーは、その大半の食事をスシで済ませる様になっていた。ヤンナルネ……と聞こえぬように吐き捨てる。

 

「分かった。明日はエクスキューショナー=サンの食べたい物を食べよう。だから今日はスシにしてくれ」それは妥協と言えるのだろうか。だが、ハンターからすればこれは最大限の譲歩である。

 

「…………分かった。約束だぞ」「もちろんだ。ユウジョウ!」「ユウジョウ!」そうと決まれば、と決断的速度でドライバーに声を掛けたハンターによって、ヤクザモービルの進路が変わっていく。

 

【テッケツスレイヤー】

 

【テッケツスレイヤー】

 

「……ン?」その異変に最初に気付いたのは、結局ハンターに押し切られる形で今日もスシを補給する羽目になったエクスキューショナーであった。彼女が憂鬱に外を眺めていると、ヤクザモービルが繁華街から外れていく事に気付いたのである。

 

「オイ。ルートが違うんじゃないか?」エクスキューショナーが運転手に問いかける。「ムッ、言われてみればそうだ。おいドライバー、ルートが違うぞ」ハンターも気付いたらしく、運転手の座るシートを小突きながら言った。

 

 運転手は言った。「すいません。でも、これでいいんです」「なんだと?」運転手から不穏なアトモスフィアが漏れる。何かが変だと直感が囁いたハンターの今の状態をかのミヤモト・マサシが見れば、インセクツ・オーメンと呟いた事だろう。

 

 一気に緊張感が高まるヤクザモービルの中。エクスキューショナーが懐に手を伸ばした辺りで、運転手はいきなりアクセルを踏み込んだ!「ヌオッ!?」ロケットめいて急加速したヤクザモービルは、一般モービルとモービルの間をすり抜けるように突き進んで行く!

 

 暴走するヤクザモービルは、いったい何処へ行こうというのか!?「止めろ!止めろと言っているんだ!」エクスキューショナーが荒げた声をかき消すように、運転手も叫ぶ!「このまま死になさい!イヤーッ!!」運転手はシートベルトを引きちぎったかと思うと、勢いよくドアをシャウトと共に蹴破って外に飛び出した!

 

 運転手を失った事で制御不能に陥ったヤクザモービルは、そのまま小さな回転スシ・バーに向けてカミカゼ・アタック!KA-DOOOOOOM……!突っ込んだヤクザモービルがハナビめいて爆発を起こす。

 

「「「「グワーッ!?」」」」ナムアミダブツ!突如ヤクザモービルにカミカゼ・アタックをされた回転スシ・バーに訪れていたサラリマンや老人達は、ヤクザモービルの爆発に巻き込まれて息絶えた。これも古事記に予言されしマッポーの一側面である。

 

 前触れもなく回転スシ・バーの周辺はアビ・インフェルノ・ジゴクと化した。犠牲となった彼らの中には多少邪な行為をしていた者もいただろうが、それでもこんな事をされる謂れはない!

 

 それにしても、この爆発の大きさでは直撃して生きているものなど……いや、待て!爆煙の向こうから何者かが歩いて来るではないか!煙が晴れてくるにつれて影が濃くなっていき、最後にその姿が現れる。二つあった人影は、エクスキューショナーとハンターのものだった。

 

 ロボ・ニンジャである彼女達に、生半可な攻撃は通用しないのだ。「酷い目にあった」「あの運転手はどこだ?」必ず見つけ出してインタビューしてやると意気込む二人からは殺意が漏れ出ていた。その濃さたるや、二人を一目見たヨタモノが「アイエエエ!?」と叫んでしめやかに失禁するほどである。

 

 そんな二体の上から、赤黒の殺戮者がエントリーした!「イヤーッ!」「グワーッ!?」シャウトと共に放たれたカラテが、ハンターの顔に突き刺さった!アンブッシュである!!そのままプロペラめいて回転しながら道路に吹き飛ばされたハンターに、通りすがりのモータルは悲鳴をあげる!「アイエエエ!ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」

 

「ハンター=サン!?貴様、何者だ!!」カタナを構え、アンタイニンジャチャカ・ガンを向けられた殺戮者は、その赤黒の装束を雨に濡らしながら両手を合わせてオジギをした。「ドーモ、テッケツスレイヤーです」

 

「ドーモ、テッケツスレイヤー=サン。エクスキューショナーです」エクスキューショナーもアイサツとオジギを返した。イクサに望むニンジャにとって、アイサツは神聖不可侵な行為と古事記にも書かれている。アイサツはされれば、返さねばならない。

 

 カミカゼ・アタックの余波でバチバチと悲鳴をあげた街灯が不規則に点灯し、その姿を一瞬照らす。常人には瞬きの間しか捕捉できなかった姿は、エクスキューショナーのニンジャ洞察力をもってすれば写真を眺めるように認識する事ができた。

 

 黒を基調に所々赤い。そして目を引くのは左肩に存在するテッケツ・インダストリのエンブレム。その上に赤い棒がクロスされていた。そのあまりにも冒涜的、かつ挑発的な装束を見れば、彼女の目的は自然と見えてくる。

 

「その冒涜的なデザインに、テッケツスレイヤーという名前……貴様は自分が何を言っているのか分かっているのか?」「無論よ。イヤーッ!」テッケツスレイヤーは踏み込み、チョップを放った!「イヤーッ!」対するエクスキューショナーは袈裟斬りにイアイド斬撃を繰り出す!

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャ洞察力が無ければ見ることも叶わぬ応酬が繰り広げられ、コンクリートが蜘蛛の巣めいてヒビ割れていく。

 

「一応聞いてやろう!貴様の目的を言え!」「テッケツ・インダストリを潰す。当然、あなたも潰す。そしてお仲間も潰す。全てのテッケツロボ・ニンジャを潰す!」「そんな戯れ言を真顔でのたまうなど、やはり狂人か!イヤーッ!」エクスキューショナーは踏み込みながら横薙ぎにイアイド斬撃を繰り出す!

 

「果たして戯れ言かしら?」しかし、テッケツスレイヤーはそれを跳躍で回避し、そのまま空中で回し蹴りを放った!ワザマエ!「イヤーッ!」「グワーッ!?」側頭部を蹴り抜かれたエクスキューショナーは、地面に強く頭を打つ。「イヤーッ!」テッケツスレイヤーは手と足を休めない。「グワーッ!?」倒れている人を見たら追撃を入れろとはS03エリアの常識であるが、これは正しくその通りの状況である!

 

「イヤーッ!」BRATATA!エクスキューショナーが咄嗟にトリガを引くと、アンタイニンジャチャカ・ガンからロボ・ニンジャにすら致命傷を負わせられる重金属弾が吐き出された。しかし、いかに威力を持とうとも当たらなければ意味が無い。

 

「ヌウーッ……」だが、掠りもしなかったその攻撃はテッケツスレイヤーの猛攻を弱める働きをした。その隙にエクスキューショナーは体勢を立て直す。そしてカタナを構えた。「怖いかクソッタレ。当然だぜ、イアイドー20段の俺に勝てるもんか」「なら試してみる?私だってカラテ25段よ」

 

「イヤーッ!」その挑発に乗るように、エクスキューショナーは横薙ぎにイアイド斬撃を繰り出す。しかし、おお!なんたる事か!テッケツスレイヤーは上半身をアーチめいて逸らしながらブリッジ回避をしているではないか!

 

 これはエクスキューショナーのウカツであった。相手がジュー・ジツの使い手であり、その間合いに既に入ってしまってるのならば、カタナを捨ててカラテとアンタイニンジャチャカ・ガンで勝負するべきだったのだ。

 

「イヤーッ!」そしてブリッジの姿勢から勢い良く足を振り上げ、バネ仕掛けめいた勢いでエクスキューショナーのアゴを蹴り上げ粉砕する!「アバーッ!?」ゴウランガ!あれは伝説のカラテ技!サマーソルトキックである!

 

 空へと打ち上げられたエクスキューショナーに追撃の手が迫る。テッケツスレイヤーは吹き飛ばされたエクスキューショナーの背後に回ったかと思うと、がっちりと羽交い締めして逃げられないようにした。この間、僅かに0.2秒!「イヤーッ!」

 

 そのまま頭を下にして落下し、エクスキューショナーの頭部を杭打ち機めいて地面に突き刺した!これはジュー・ジツの禁じ手、アラバマオトシ!サマーソルトキックからアラバマオトシに繋げられるなど、なんたるワザマエか!

 

 今の連携だけを見ても、テッケツスレイヤーがジュー・ジツに精通している事を窺い知る事ができるだろう。「アバーッ!?」そして連続して二つものヒサツ・ワザを喰らったエクスキューショナーは耐えきれなかった。

 

「サヨナラ!」「エクスキューショナー=サン!?」ようやく復活したハンターが悲痛な声を挙げるが、その時には既にエクスキューショナーは爆発四散した後であった。エクスキューショナーが使っていたアンタイニンジャチャカ・ガンがハンターの足下にまで滑ってくる。「次はアナタよ、ハンター=サン」死刑宣告めいた言葉がハンターに告げられた。

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 そこまでを読み終わったネゲヴは、無言で冊子を閉じてそれを机の上に置いた。

 そうしてからソファの方を見れば、ソファの上で声を殺して笑いながら痙攣している指揮官の姿がある。

 

 たった一ページで噴き出し、二ページ目であの有様だった。

 

「なにこれ、ふざけてるの?」

 

「ぶふっ」

 

 大昔のカルト的な人気を誇った何かをアーカイブから発掘した59式が真似て創作した、テッケツスレイヤーと題されたそれ。

 

 今は机の上の一冊しか無いそれは、後々S03地区で広く読まれる人気作品になるのだが、この時点ではまだ先の話である。

 




すまぬ……過去に挫折した私だと、この程度のテキストカラテが限界なのだ。続き?無いよ!だから誰か続き書いて。

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