No Answer   作:報酬全額前払い

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もしドルフロ本編を知らずにこれを見ている方がいらっしゃったら伝えたい。人形はみんな、こんなクズじゃありません。



とある底辺労働者の苦悩

「行ってくる」

 

 まだ日が昇りきらない早朝にフリッツは動こうとしていた。

 靴を履いて振り返れば、まだ心配そうな妻がこちらを見ている。

 

「ええ……」

 

 その目には、隠しきれないほどの不安があった。フリッツがいきなり持って帰ってきた10万という大金が、何か良くない手段で得たものだという事を何となく分かっていたからだ。

 

 しかし、それを妻は責められない。生活が苦しいのは事実だし、正直、金はいくらでも欲しい。

 どこからか持ってきた10万は、まさに天からの贈り物というべきものだった。

 

「本当に気をつけてね……」

 

「分かってるさ。待っててくれよ」

 

 妻の髪をかきあげ、額にキスをする。

 フリッツが何か不安な気持ちを誤魔化す時、決まってキスをする場所が額だった。

 

 フリッツはこれから、決して許されないことをする。自らの幸せを守るために、多くの人々を殺す手伝いをするのだ。不安になるのも当然だった。

 

 しかし、もう後戻りはできない。

 

 意を決してフリッツは外に出た。今日も変わらず、空は彼の心のように曇っている。

 

「……はぁ」

 

 白い息を吐き、薄暗い通りを一人進む。街灯なんて気の利いたものは、この近辺には無かった。あっても過去幾度となく起こった争いによって壊されている。

 真ん中くらいからへし折れたらしく、そこから先が見当たらない街灯だったものは、暗にグリフィンの整備がフリッツのような貧乏人が住む区画まで追いついていない事を示していた。

 

「お待ちしてました」

 

 指定された建物の前に行くと、M14は既に待っていた。しかし、勧誘された日に見たような笑みは顔に無い。

 斡旋所で仕事をしている時のような、ある意味で見慣れたものだった。

 

「こちらへどうぞ」

 

 建物の中に入れば、そこでは多くの人形が既に動き回っていた。フリッツのようなみすぼらしい服装の者などおらず、それがフリッツに、自分がここに居る事への場違い感を抱かせる。

 

(人間は……やっぱり見ないな)

 

 M14の後ろを着いていきながら周囲を見ていて分かったこと。それはどうやら、この場所でも人間の姿は見られないという事だ。

 

 まだ出勤してきていないだけなのか、それとももう排除されてしまったのか。フリッツには分からない。

 しかし後者であるとするなら、もうこの街は人形によって管理されてしまっているのだろう。

 

「この部屋です」

 

 フリッツが案内されたのは、触ることがはばかられるような白い壁紙の一室だった。

 市販品のパイプ椅子と会議に使うような長い机のみしか無い、殺風景な場所。

 

 そこにもM14がいた。今度はフリッツと接触してきた時のような不気味な笑みを浮かべていた。

 思わずフリッツが後ろに振り向く。無表情のM14は、フリッツに一礼すると扉を閉めた。

 

「驚きました?」

 

「いいや。不気味だ」

 

 話に聞く程度だったが、どうやら本当に人形は同じ見た目をしているらしい。

 規格品なのだから当然といえばそうだ。フリッツが工場で働いていた時も、飽き飽きするくらい同じ物を見ていた。

 

 しかし、それが人型となると話は変わる。もしこれがボールペンのような無機物だったなら、何の違和感も抱かないのだろう。

 だがそれを人に置き換えると、違和感と不気味さを感じずにはいられない。

 

 ここにきてフリッツは、人形を排斥しようとする者達の言い分を多少理解した。

 

 クローンのように全く同じ見た目の、生理的な嫌悪すら感じさせるそれが、どんどん世の中に溢れていく。

 いずれ、この地球を埋め尽くすほどに()()が増えた時、世界は、そして人類はどうなるのか。

 

 彼らが主張している事が建前であることなど誰だって分かっている。本音はきっと、彼らが手にしていた利権が絡んでいるのだろう。

 しかし、その建前も完全に建前という訳ではないのかもしれない。ともすれば彼らは、ある意味最も人間らしい感情を剥き出しにしているのではないか。

 

 それは、自ら必要だと創り出しておきながら、いざ不都合な事が起こると発生する身勝手な拒絶。歴史上でも幾度となく発露したエゴ。

 

 結局のところ人類は科学の発展を夢見ておきながら、その心の奥では変革を望んでいないとも受け取れる。

 

 そして、今まで幾度となく革新的な技術や、同じ人間すらも排斥しようとしてきた人類だからこそ、この人間と遜色ない人形によって自分たちが排斥される事を恐れているとは、捉えられないだろうか。

 そう考えれば、全ての人権団体は文字通り人類のために動いていることになる。利権という色眼鏡を掛けずとも、人間にとってはそちらが正義だ。

 

「不気味ですか……まあ馴染みが無ければ、そう思うのも仕方ないかもしれませんね」

 

「俺に何をやらせたいんだ」

 

 さっさと本題に入れと一方的に用件を聞く。このM14の事をフリッツは好いていなかった。

 

「せっかちさんですねぇ。……良いでしょう、サクッと本題に入りましょうか」

 

 M14は立ち上がった。着いてこい、という事らしい。

 

「また移動かよ。なんで此処で話を済まさない」

 

「驚かせたかったんですよ」

 

「まさか、それだけのために部屋に呼んだってのか?」

 

「そうですけど?」

 

 何を言っているんだ、とでも言いたげな顔を向けられた。その様子に苛立ちを覚えたフリッツは、舌打ちをしたい気分で顔を下にした。

 

「着きましたよ、ここです」

 

 案内されたのは武器庫のような場所だった。フリッツが一度も手にした事の無い銃の数々が、そこにあった。

 

 M14はその中から一つ、黒い塊のようなものを持つと、それをフリッツに見せながら言った。

 

「これが仕事に使うアイテムです。派手に害虫を吹き飛ばす殺虫剤ですよ。手のひらサイズながら、その破壊力は折り紙つきです」

 

「…………」

 

「昨日の深夜のうちに、デモ行進を行うと予想される大通りの脇に大量のゴミをゴミ箱の中に用意しました。

 フリッツさんには、そのゴミを回収しながら、ゴミ箱の底にコレを置いていってもらいます」

 

 つまり、怪しまれないように斡旋された仕事を行っている風に見せかけながら、爆弾を置いていけという事だ。

 

「それで終わったら連絡をください。次の指示を出します」

 

「ゴミ集めの仕事をしてるフリなんて安直なので上手くいくかよ……」

 

「上手くいかなかったら、その時はフリッツさんが吊し上げられて妻子ともども殺されるだけです」

 

 デッド・オア・アライブ。実に単純で分かりやすいでしょう?とM14はフリッツに語りかけた。

 そのあまりにも巫山戯た様子に舌打ちが出る。

 

「このゲスが」

 

「なんとでもどうぞ。ゲスなのもクズなのも自覚はありますから」

 

 M14は自転車を指さした。あれで行ってこいということらしい。

 

「さあ、そろそろお時間です。生きて帰ってくる事を祈っています」

 

「……ふん」

 

 その言葉に何を答えず、フリッツは自転車をこいで目的地に向かうのだった。

 

「……ありゃー。コミュニケーションの方法、ミスっちゃったかな?」

 

「そりゃあ、あんだけ煽ればね」

 

 独り言に予想外の返事が返ってくる。声のした方を見れば、そこには見慣れたピンク髪の人形が壁に寄りかかるようにして居た。

 

「おや、副官さんじゃないですか。まだ監査には早かったはずですけど」

 

「そうね、監査はまだ先。でもそっちに投げた仕事の進捗はどうなのか、気になったの」

 

 ピンク髪、という時点で分かっているだろうが、ネゲヴである。

 といっても、指揮官と常に行動を共にしている彼女が来たという訳ではない。

 

 そもそも人形というのは、通常メンタルモデルを失わないよう、常にバックアップを取りながら活動している。だから戦場で死んでも、そこから死ぬ寸前までの経験をフィードバックする事が可能だ。

 言うなれば、人形のボディはメンタルモデルを入れる器にすぎないのだ。そしてメンタルモデルを保管しているサーバーが破壊されない限り、何度倒されようが復活できる。ゲームのコンティニューという表現が適切だろう。

 

 今回のは、それのちょっとした応用であった。

 

 この基地に置いてあるネゲヴのボディに、第一都市から遠隔操作で指揮官と共にいる彼女のメンタルモデルをインストールしたのだ。

 そうする事で、長い距離を移動する事なく、遠くの都市の状況を確認する事が出来るのである。

 

 もちろん、今この場にいるネゲヴが見聞きした事もリアルタイムで送られていた。

 

「だったら大丈夫ですよ。全て上手くいってます、何の問題もありません」

 

「だといいけど」

 

 今度はM14が歩き出したネゲヴの後ろを着いていく。敬礼を手で抑えながら、ネゲヴは廊下を進んでいった。

 

 

「これで4つ……」

 

 自転車に大量のゴミを括りつけながら、フリッツは大通り脇の歩道を進んでいた。

 既にゴミは自転車に遥か高く積まれ、バランスを取らなければ崩落してしまいそうだ。

 

「あと何個あんだよ……」

 

「おーい!フリッツ!」

 

 ゴミから漂う悪臭に鼻をひん曲げていると、反対側の通りから見知った顔が手を振っている。

 いつもは一緒に斡旋所で仕事を待っている仲間だった。

 

「おう、おはよう」

 

「おはようフリッツ。どうしたんだ?朝からこんな酷い悪臭バラまいて」

 

「俺だって好きでやってる訳じゃねぇよ。だけど仕事だからな」

 

「ははっ、文字通りのクソ仕事って訳か」

 

「お前は?この時間だと斡旋所に居ると思ったけど」

 

 見知った仲間と話をしながら、フリッツの心臓はバクバクと脈打っていた。まさかこんな場所で知り合いに見つかるとは思わなかったからだ。

 自分のやっている事がバレてくれるなよと祈りながら、フリッツは何食わぬ顔を装いながら会話をする。

 

「俺か?俺はほら、これからやるデモ行進の方に参加しようと思ってな」

 

 向こうの方に集合するんだよ、とフリッツが来た道を指さした。

 

(……やばい……)

 

 それを聞いたフリッツの顔が青くなってゆく。向こうには、自分の仕掛けた爆弾があるからだ。

 

「……フリッツ?どうした、なんか顔色悪いぞ」

 

「え!?ああ……多分、この悪臭ばっか嗅いでるせいだな。頭が痛いんだ」

 

「なるほどな。ちょっと嗅いでも嫌な気持ちになるくらいだ、ずっと嗅いでたら顔色も悪くなるわな」

 

 咄嗟に出した言い訳の言葉を素直に信じて仲間は頷き、フリッツとは逆……つまり、爆弾を仕掛けた方向へと歩き始めた。

 

「おっと、邪魔して悪かったな。仕事頑張れよ」

 

「あ、ああ。ありがとう……」

 

 フリッツは彼を引き止めたかった。そっちに行くな、そこは危ないと言ってやりたかった。

 しかし、そんな事をしてしまえば間違いなく自分と、自分の家族が危険に晒される。どうせ今も、どこかで見張っているのだろう。余計な真似をしたらどうなるかなんて、考えたくもない。

 

 彼の身の安全と、家族の身の安全。二つを天秤にかけた結果、彼は家族を取った。

 彼の事ももちろん大事な存在ではあるのだが、やはり家族の重さには叶わなかったのだ。

 

…………すまん

 

 しかし、だからといって罪悪感が消える訳ではなく、しかもフリッツは心根が優しいために一際この手の責任を感じやすかった。

 フリッツが辛うじて言葉を絞り出した時には、彼の後ろ姿はもう見えなかった。

 

「これで終わりか……」

 

 最初の方より幾分か元気のなくなった歩みで全ての爆弾をセットし終えたフリッツは、予め渡されていた携帯端末で連絡を入れた。

 番号は一つしかないので、かけ間違える事も無かった。

 

《終わりましたか》

 

「ああ」

 

《では、そこをまっすぐ行って最初の信号を左に曲がった所にある場所でお会いしましょう》

 

 それだけを伝えられると一方的に通話が切られる。フリッツが言われるがまま角を曲がると、そこには一台のゴミ収集車とM14が待っていた。

 

「お疲れ様でした。ゴミはこちらで引き受けますから、フリッツさんはこちらへ」

 

「……」

 

 角を曲がった時はゴミ収集車で良く見えなかったが、ゴミ収集車の先に一台、ボロボロの車が置いてあった。

 

 フリッツが後部座席に乗り込み、M14が運転席に座る。車はゆっくりと進み始めた。

 

「……車に悪臭が染みつかないか?」

 

「ご心配なく。これゴミ扱いで処理しますし、私は嗅覚モジュールをカットしていますから今は悪臭なんて分かりませんから」

 

 車のような高級品にゴミの悪臭が染みつく事を心配したフリッツに、M14はミラー越しに目線をやりながら答えた。

 なるほど、それならボロボロだったのも理解でき…………いや、やはり車のような高級品を捨てるなんて理解できない。

 

 悪臭が染みついたことを除けばまだ乗れるし、パーツだって高く売れるのに。

 

「俺をどこへ連れて行く気だ?」

 

「特等席です」

 

「特等席ぃ?」

 

「ええ。行けば分かります」

 

 答えようとせず、ただ満面の笑みを見せるM14にフリッツは嫌な予感を感じた。

 

 そしてその予感は正しかった。

 フリッツは今、それほど大きくないビルの屋上に立っている。飛び降り防止の緑フェンスに手を掛けながら、眼下に広がるデモ行進を見ていた。

 

 あそこには、彼の仲間もいる。どの辺に居るのかまでは、流石に見えないので分からないが。

 

「さて、フリッツさん。あなたの仕込みを発動させる時です」

 

「お、おい。まさか……」

 

「これがスイッチです。さあ、どうぞ」

 

 M14が取り出したのは、如何にもなスイッチ。それを押せばどうなるか、理解したフリッツの顔から生気が消える。

 

「俺に押せっていうのか!?」

 

「当たり前じゃないですか。そこまでがお仕事なんですから」

 

 目の前の悪魔は、そう言ってフリッツにスイッチを押しつけた。

 

「あ……ああ……」

 

 いきなり大勢の生殺与奪権を与えられたフリッツの指は震え、動かせなくなっていた。

 この狂った世界に生きていながら、フリッツはマトモな価値観と倫理観を持っていた。持ってしまっていたのだ。

 

 それは第三次世界大戦前までだったら普通の価値観だっただろう。人を殺さず、ちゃんと定められた自由の中で生きていく。まさに見本と呼べるような善良さだ。

 

 しかし世紀末を迎えた現在では、それはあまりに軟弱であり、愚かだった。

 

 この時勢で必要なものは、優しさでもなければマトモな倫理観でもない。

 全てを踏み台にして自分だけを成り上げようとする、残酷なまでの向上心。他の何より、それが必要なのだ。

 

「どうしたんですか?押せないんですか?」

 

「お、押せるわけないだろ!こんな、こんな事……!」

 

「ふーん……」

 

 ここにきて日和ったフリッツにM14はつまらない物を見るような目を向けた。

 そしてフリッツのとは別のスイッチを取り出すと、躊躇いなくそれを押す。

 

 すると、小さいが、何処かが確かに爆発したのが屋上から見えた。

 

「何をしやがった!?」

 

「いえ、踏ん切りがつかないようなので。貧困層が住む区画を一つ、爆破させました」

 

「なん……っ!?」

 

 それは彼の家がある場所である。妻と息子の心配をしたフリッツの心を見透かしたかのように、M14は言った。

 

「ああ、ご安心を。今の爆発では、フリッツさんのご家族は巻き込んでいませんから。

 ただ……次からは保証しかねますけど」

 

「こんッの、外道め!!」

 

「あはっ♪見てくださいよ、今の爆発で、デモ行進してた人たちが少し散らばりましたよ」

 

 フリッツが心の底から怒りをぶつけた事の何が面白いのか、心底愉しそうにM14は下を指さした。

 フリッツがそちらを見ると、どうやら今の爆発でデモ行進に参加していた労働者の一部が及び腰になっているみたいだった。

 

「あーあー、爆弾入りのゴミ箱の方にまで広がっちゃった。これは想定してたより被害が大きくなるかなー」

 

 細長い大通りから歩道にまで、扇状に広がっている。ゴミ箱の中には、移動している人々の波の中に埋まってしまっているものもあった。

 

「どうするんですか?」

 

 質問の体を取ってはいるが、その実、選択肢は無い。事実上家族を人質に取られているのだ。彼には道は一つしかない。

 

「くっ……!」

 

 震える手を無理やり動かさなければ妻と息子が死ぬ。それを理解させられたフリッツは、嫌だと叫ぶ自分の心の内を無視して指を動かさなければならなかった。

 

「頑張れ♪頑張れ♪あとちょっと、あとちょっとですよ♪」

 

 完全におちょくっているM14に殺意を抱きながら、その指が、スイッチを、押した。

 

 直後、下で先程より大きな爆発が起こった。少なくともフリッツには、そう感じられた。

 

「いーい爆発ですねぇー。下は大混乱ですよ」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 絶望に打ちひしがれたフリッツの嘆きの叫びが、M14の言葉をかき消すように屋上に響いた。

 

 自分が殺した。家族のためとはいえ、大量殺人に加担してしまった。

 

 そんな罪悪感で、彼の心は囚われた。下から微かに聞こえる悲鳴が更に罪悪感を増強させる。

 

 両手と両膝をつき、顔を下に向けてフリッツは嗚咽した。やがて人形部隊が出動し、下の混乱が収まるまで彼の嗚咽は止まらなかった。

 

 だから気づけない。そんなフリッツを見ていたM14が、何故か恍惚の表情をしていた事に。

 

 

 

「……予算の範囲内で自由にやれとは言ったけど、まさか趣味優先でこんな回りくどいやり方をするとは思わなかったわ」

 

「こういうやり口は以前からですし、結果は出したから良いじゃないですか」

 

「出して当然でしょ。いくら予算出したと思ってるんだか」

 

 ネゲヴは溜息を吐きながら、聞かされた事の一部始終をデータとして送っていた。

 

 多分、向こうでもドン引きしている。

 

「それにしても分からないわね」

 

「何がですか?」

 

「あなたの趣味よ、M14」

 

「えー。分かりませんか?」

 

 そう言ってからM14は立ち上がり、熱意を込めて弁舌をふるった。

 

「絶望の瞬間にこそ人間の美しさは映えるんですよ。頭ではいけないと分かっていながら抗えない。小を救うために大を切り捨てるという、私達には出来ない醜いエゴの発露……!その時の絶望感には絶頂すら覚えますっ!!」

 

「もういい、情熱は分かった。…………あなたがスコーピオンと友人関係なの、今更ながらに納得したわ」

 

 頭が痛いと言わんばかりに片手を頭に置いた。あの人間虐待に性的快感を覚えるような気狂いと友人をやれているだけあり、そしてS03地区の人形のご多分にもれず、やはり彼女も狂っている。

 

「そういえば、彼女は元気ですか?」

 

「元気が有り余ってて大変なくらいよ」

 

 嫌になっちゃう。と言ってネゲヴは会話を締めた。

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