冷たい刃の筈なのに、刺さっている箇所は熱い。
熱い、熱い、熱い。
「いぎ、ひっ…」
「あ、あっ、あぁ…」
刃を突き立てている人形…WA2000の表情が歪んでいる。
プロトコル…人類保護のプログラムが彼女を蝕んでいる。
左手で彼女を押し離そうとする、が。
そっと、手を握られる。
「ジョー、ジ、ごめ、私、こんな、こんな」
「これが、お前の、やら…なき、ゃいけ、ない事か?」
「わた、しが…やらなきゃ、いけないの」
「そっ、か、じゃあ、仕方な いか な」
上手く舌が回らない。
女を口説く時には良く回るのに、泣いてる相棒一人宥めることも出来やしないなんて…不甲斐なくて死にそうだ。
その間にも、WA2000の手は止まらない。
ある程度の深さまで刺した後、ナイフを抜き、そのまま投げ捨てた。
「大、丈夫、ジョージ。もし、死んでも、一緒に、逝っ、てあ、げるか ら 」
ぞぶり。
WA2000の指が、患部に、入る。
「あ”が、じ、しんでも、死んで や る か……!!」
歯を食いしばる。
相棒が何をしようとしてるのか解らない。
だが、必要に迫られなければこんな事するはずがない。
俺が信じなくて、誰がこいつを信じられる。
「信 じ、て …!」
「相棒ォ…ッ!!」
何かが、抜けた。
からんと床に落ちて、転がって行った。
その瞬間思考回路がクリアになり、
「あ、あぁあぁぁぁあのクソ野郎!!俺に何しやがった!!相棒に何やらせやがった!!クソッタレ!!」
怒りが沸き起こる。
俺の右肩に埋まっていた
「良かっ、た」
リサが、震える足取りで部屋の内線を取る。
…そのまま、倒れ込んだ。
「リサっ…うっ、やべ、血が」
先程激昂したせいで余計に血が抜ける。
リサに駆け寄ろうとしてそのまま隣に倒れた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」
「リ、サ、謝るの、はこっち だ 」
「取 られ、たく無かっ、傍に、」
「居る、ずっと、俺は、お前の隣に、」
廊下を誰かが走る音がする。
複数人だ。
「ジョージ!WA2000!!おい!しっかりしろ!」
「リージョン!急げ!!私はこっちを何とかする!!」
「ああくそ、戦術人形はこれだから嫌なんだ!僕より上手く刺しやがって!これならくっつく!!」
視界が段々暗くなる。
リサは既に目を閉じている。
「指揮官、指揮官!駄目です!起きて!」
「ジョージさん!ジョージさん!!生きて!お願い、お願いっ!!」
この声は、M4とトカレフかな。
また、泣いてるんだろうな。
「大袈裟だな、お前ら…」
「喋るなクソ野郎。そのまま刺されろ」
「もう、刺されたよ…」
「…後は何とかする。ちょっと寝てろ」
「そう、する」
結局、相棒に救われたみたいだ、俺は。
(辛いことさせたな…)
不甲斐無い自分のせいで。
一緒に奴を倒そうと誓ったのに。
そのまま、俺は意識を手放した。