グリフィンの指揮官に支給されるコートは、とにかく目立った。
赤いんだよ、びっくりするほど。
あと俺赤ってあんまり好きじゃなかったんだよな、前まで。
今は赤って聞くと相棒が出てくるからそんなに嫌いじゃない。
話が逸れた。
今、俺はS-12地区市街地を一人で歩いている。
護衛も付けず、だ。
これにはちょっとした訳がある。
「あっつ…」
「あ!指揮官さんだ!今夜も私シフト入ってるんです!絶対来てくださいね!」
開店準備を進める店の前を通り過ぎると、そんな声を掛けられる。
一瞬で表情筋を引き締める。
「やぁステファン。今夜は君が彩ってくれるのか。それじゃ、楽しみだ」
「やーね指揮官さん。相変わらずなんだから」
「でも、悪いけど今夜は来られそうに無い…またね」
「今度は絶対来てよー!」
さて、奴さんはいつやって来るのか。
…お、こっちの区画は初めてくるな。
「…こんにちは」
振り返る。
この区画に人影は無い。
「こんにちは…代理人」
「何…?」
ウィングマンを素早く抜き放ち、インカムに一言。
「ビンゴ!」
『了解!ドロップシークエンススタンバイ!』
建物の隅から、いつぞやのワンピース姿が現れる…表情は前と違い、険しい。
「ベルロック…まさか、張っていた?」
「どうだかな」
「ならば、またの機会に…」
「逃がすと思うか?」
代理人の背後に、何かが高速で落下する。
『タイタンフォール!あたい、参上!』
「これは、強化外骨格!?」
「私達もいるぜ!」
両側に建つ建物の屋上から、4つの影が飛び降りてくる。
M4、M16、AR-15、SOPMODⅡがそれぞれ光学迷彩マントを脱ぎ捨てた。
「AR小隊…最近報告が無いと思えば、こんな所に」
「こんな所とは心外だな。ようこそ代理人。俺達の街へ…歓迎しよう、盛大にな」
ーーーーーー時間は少し遡る。
久しぶりにクルーガーからの直電があった日だ。
特別に嫌な予感がする。
『最近ハイエンド討伐に精が出ているようだな』
「お陰様で。あといくらなんだ?」
『残り300万と行った所だ。この制度を提示してから三ヶ月でこのスピードとは恐れ入る』
「褒めんなって」
残り300万!
そう聞いて飛び跳ねそうになるのをぐっと堪える。
「指揮官さん…今までで見たことないくらいひどい顔してます」
カラビーナから何か言われた気がするが気にしない。
『今回連絡したのは他でもない。ハイエンドモデルの侵入事案が増えている件だ』
「侵入?」
『ああ。最近になって、グリフィン傘下の市街地で鉄血のハイエンドらしい人影が確認されている…らしい』
「えらく曖昧だな」
クルーガーが言い切らないとは珍しい。
『視認情報としてしか上がっていないからだ。確証が無い』
「噂が独り歩きしてるような物か…」
でも、確かに俺もエージェントとドリーマーに遭遇している。
…あれ?グリフィンの警備体制ってガバガバなんじゃ。
『そこで、担当区を持った貴官にも報せておくべきだと判断した』
「社長自らとは痛み入るね」
『それだけではないがな。ジョージ指揮官。いや、ジョージ。お前なら判別が付くだろう?』
あ、嫌な予感がする。
「それは、何故そう思った」
『ヤツの息子だからな』
「嬉しくねぇ!!」
『お前なら必ず口説く。それしてどれだけ誤魔化そうが女の顔を見間違える事は無いだろう』
変な信頼のされ方をしている。
解せない…。
「順当かと」
「なんか君今日はやけに冷たいね」
「…最近、指揮官さん構ってくれませんもの」
「カラビーナ…」
『ゴホン、それでは頼んだぞ』
しかし、厄介な事になるな、これは。
グリフィン市街地に鉄血ハイエンドが来るって何なんだよ(真顔)
と言う話へのアンサー回。
解決できると良いな…あ、ちなみにギャグパートだよ。
喜べ。代理人とほのぼのだぞ。