…………あれ?これそんな話だっけ?
走る。
兎に角走る。
目の前を走るワンピース姿の美女を追い掛ける。
『指揮官、次の角を左に行かれると出口だよ!』
「オーケー、カラビーナ!」
『了解!』
目の前のエージェントが慌てて右へ。
…やや遅れて銃声が聞こえる。
『外したわ』
『グリズリーさん!?』
「大丈夫だ。まだ追える」
街の出口三箇所にライフルを配置する事で更に追い込み易くする作戦だ。
そこへ俺とAR小隊で追い込んで行き、万が一逃げられたとしても後方支援の為に街の警備へ付かせていた部隊の援護を受ける。
流石にこれなら、如何にエージェントといえど容易くは無いはず。
「伏兵か…!」
「逃さないぜ!」
加速する為に壁にグラップルを行う。
飛び上がり、そのまま壁を走り出し代理人を追い抜いた。
「
『あたいと指揮官の二人なら!』
「追い付け無い道理は、無いッ!!」
そのまま壁を蹴りエージェントに向かって飛び込む、が。
「それーー!あっ!?」
反対側から飛び込んでいたSOPMODⅡをエージェントが掴み、こちらに投げた。
顔面から衝突する。
「ぐほぉあっ!?」
「いったーい!!」
なお、俺の方が勢いが強かったのでそのままSOPを押し倒しながら転がっていった。
「ぐえっ」
SOPを抱き締めて向かいにあった壁に背中からぶつかる。
『背中はやめて!』
「すまん!…SOP、大丈夫か?」
「目が回るぅ〜…うん、指揮官は?」
「あぁ、大丈…」
…右手に、それほど大きくないが確かな感触。
やっちまったと思いながら慌てて手を離す。
「くそ、離されたか…行くぞ…っ、と、と!?」
身体が重くなる。
これは…。
『指揮官、時間切れだけど…』
「あー、くそっ。後でカラビーナがうるせぇぞ」
ポーチから予備の薬品を取り出す。
「SOP、先に行ってる。近くの仲間と合流して追ってくれ」
「わかった!」
右手の注射器をそのまま右の股に突き刺す。
すっかり慣れきってしまった感覚。
もう視界が赤くなる事も無くなった。
『効果発動!行けるよ!』
「Rady、set、GOoooooo!!」
ジャンプキットを全開にして走り出した。
『こちらM4!エージェントを発見!』
「良くやったM4!」
『こちらスカウトチーム、トーン!市街地の避難誘導の9割を達成しました!』
「流石だトーン!愛してるぜ!」
『し、指揮官!わたっ、私もです!!』
「えっ、どうした!?問題か!?」
『…………うぅ、何でもないです。M4アウト』
M4からの通信が切れる。
…記されたポイント近くの屋上に飛び移る。
…目の前に女の子が座っていた。
「オット失礼。君?外は危ないから、家の中で人形の様にお行儀よくしてな?」
「ねぇねぇ、それって私が人形に見えるってこと?」
「え?…君は………………あん?」
黒くて長い髪をサイドテールに纏めた、どことなく活発そうな子だ。
…いや、待てよ?
ファンデーションとかで肌の白さを誤魔化して…?
頭の中の手配書にばっちり合致した。
「おまっ、まさか
「ワオ!ビンゴ!S-12の指揮官は凄いのね!良い目をしてるわ!」
勢い良く立ち上がり、さっきまで口を付けていたプラスチックのカップを投げ捨てた。
「あ、こら!ちゃんとゴミ箱に捨てろ」
『指揮官!?そこツッコむところ!?』
「あ、ごめんねごめんね。出来たばっかりで綺麗なトコだもんね」
『いやあんたも素直ね!?』
「わー、すごーい。この外骨格喋ってる〜」
『わ、ちょっと、触らないでよ!』
「あー、君?いくら何でも警戒心なさ過ぎない?」
何だこのハイエンド。
フレンドリー過ぎない?
「おっと、そうだった。自己紹介がまだだったね。私は
『「えぇ…」』
俺とバンガードが二人揃って絶句した。
良いのか鉄血、こんなので。
「いやー、ドリーマーの奴が全然情報流さないから、新しい地区がどんな所か見てみたくて」
「お前らどんな神経してんだほんと」
「せっかく産まれたんだし、楽しいことしたいじゃん?」
「…一理あるな」
『指揮官!?』
「アーキテクト、せっかくの出会いだ。良かったらこの後でお茶でも」
「ちょっと、ウケるんですけど、鉄血の人形にナンパ?」
「フッ、何、美人に人形も人間も関係ないさ」
「何何〜?ドリーマーもエージェントもそうやって落としたの?」
「…あの二人には全く覚えがない」
何でなんだアレは。
『…指揮官?ちょっと、いい加減にしないと操縦権取るよ?』
「大丈夫だバンガ」
「……………何をしているのかしら、アーキテクト?」
「「…ヒエッ」」
鬼の様な形相をしたエージェントがそこには立っていた。
俺とアーキテクトは揃って縮み上がった。
え、どうすんだよこれ。
何か遊びに来た鉄血JK、アーキテクト。
ゲーガーがどっかで叫んでる模様。