ーーここの指揮官は、ダミーに名前を付けている。
「……ん?おお、
リタ、と呼ばれた私はそっぽを向いた。
視界の端で指揮官がバツが悪そうに頬を掻いている。
変な人だ。
私のオリジナルと誓約関係にあると言っても、
「ジョージ」
そこへ、指揮官を名前で呼ぶ人形……私達の、オリジナルがやってきた。
「おう、リサ」
「ちょっと、ネクタイ曲がってるじゃない。しっかりしなさいよね」
「すまんすまん」
「ほら、直してあげるから動かないで」
「……サンキュ、リサ。愛してるぜ」
「そんなに言わなくても知ってる。その言葉は頻度減らして価値を高めて欲しいわね」
……オリジナルと指揮官がそれはもう朝っぱらからいちゃつき始める。
傍から見ている私にお構いなく。
自分の性格は自分が一番よく知っている。
我ながら相当めんどくさい性格をしているという事を。
だが……だが、アレは、何だ?
本当に私のオリジナルなのか?
実は別の人形なんじゃないのか?
「それじゃ、俺は行くわ。リタ、相棒を頼むぜ」
通り過ぎざまに頭に手を置かれる。
撫でられたらしい。
「気安く触らないでちょうだい!!」
「ははっ、すまんな」
指揮官はどこを吹く風で歩いて行ってしまった。
……オリジナルが私を一瞥する。
「何よオリジナル。言いたい事でもある訳?」
「別に。ただ……貴方のほうが、WA2000らしいわねって」
「……当たり前よ。私はWA2000のダミーなんだから」
ーーーーー同じ顔の人形が四人。
何故か倉庫に集まっていた。
赤み掛かった長い髪、タイトなスカートにネクタイ。
何もかも同じ……だが、髪を結んでいるリボンだけ、色が違った。
「……集まったわね」
「集まったわよ、私」
「やっぱり、アレなの?私」
「そうよ……指揮官と、オリジナル」
オリジナルはリサとして指揮官の傍にいる事を選んだ。
けど、私達は違う。
私達は、WA2000と言う人形のダミーなのだ。
「いくらなんでも腑抜け過ぎよ」
「そうよ、この前も朝から指揮官とベタベタして」
「昨日カフェで談笑してるのを見たわ」
「何よそれ、仕事してよね」
……
それぞれ、リリィ、リズ、リタ。
馬鹿馬鹿しい。
そんな話をしていたら、倉庫のドアが勢いよく開かれた。
思わず全員びくりと体が反応する。
「ここに居たのね」
ドアを開けたのは……オリジナルだった。
「オリジナル……」
「何の用かしら」
「用、ね。言いたい事があって来たのよ」
「な、何よ」
そういうと、オリジナルはにやりと口角を上げて笑った。
「羨ましいんでしょ」
「「「「……はぁ!?!!?」」」」
な、何を言っているのこいつは。
「な、何を言ってるのよオリジナル!」
「そうよ!何であんな八方美人女たらしなんて!」
「ば、ばばばば馬鹿なんじゃないの!?」
「私は殺しの為だけに生まれた女よ!?」
……ひとしきり騒いだ後、
……そうだ。
何を勘違いしていた。
目の前のオリジナルは
WA2000を捨てた訳じゃない。
「本当は指揮官が好きで堪らないくせに、素直じゃないんだから」
「な、なんの根拠があって!」
やめて、リリィ。
虚勢を張ったって一言で叩きのめされるんだから。
「根拠?簡単よ」
ああ、この先の言葉は全員予想出来た。
でもやっぱり悔しい。
こいつは、紛れもなく
「
「……で、こんな事に?」
「指揮官!頭撫でて!」
「ちょっと指揮官!こっち見なさいよ!」
「指揮官!手を握って」
「指揮官……一緒に居て」
結局、あの後WA2000タイプが五体ぞろぞろと執務室の指揮官の下へ急行。
「ええ。素直になってもらったわ」
「リサ……お前、ダミーが素の性格のままだったの気にしてたのか?」
「最近連携が取りにくいなって思ってたのよ。このままじゃいつか事故が起きる」
だから、と続けようとしたオリジナルの声を遮って
「「「「し、指揮官!私達も大好きだから!!」」」」
でも、オリジナルが変われたみたいに……
本日誕生日だったので自分が読みたい物勝手に書いてしまった感じがする。
ダミーがめっちゃ喋るしWA2000のキャラが完全に壊れてるけど、僕はこれが読みたかったので書きました。
こんな作者ですが、今後も読んで頂けると幸いです。