しかし彼女の様子は寝起きとは思えない程に饒舌で情熱的だった。
…右肩を愛おしくなでながら。
「くひっ、ひは、ははははは!!!」
鉄血のネットワークを経由して、新たなボディにデータを全て取り込み、最適化の後に起動。
しかし、私の頭の中はエラーデータが満載だった。
「あああはああははは、痛い、イタいイタいイタいイタい!!」
無事な筈の右肩が痛む。
口の中いっぱいに鉄の味が広がっている。
しかし不快感は無い。
あるのは、
狂気の笑みで右腕を抑えている。
「ひひっ、あはははは!!ジョージ!ジョージ・ベルロック!!やってくれたな!!」
楽しくて仕方ない。
久し振りに感じたこの高揚感。
遊んでいたとはいえ、
「…ドリーマー、ここで起きたと言うことは破壊されたと言う事ですね」
「あっははは…あー?エージェント?何してるの?」
「再起動した上位モデルが居ると連絡を受けたので見に来ただけですよ…」
テンションが変わらず高いドリーマーに呆れ顔でエージェントは返した。
「エージェント!そうよ、エージェント!教えなさい!」
「…は?」
「ジョージ・ベルロックについて洗いざらい喋りなさい!喋れよ!」
「貴女、最前線のはずれに行っていたと聞いていましたが…会ったのですか?彼に」
「会った!会ったとも!そして殺られた!手を抜いていたとはいえ私が!」
「やられた…貴女が、ですか?」
「そう!そうだとも!私の右腕を持っていった!」
ああ、思い出すだけで甘美な瞬間だった。
私を貫いた瞬間の勝ち誇った顔。
その顔を蹂躙したいと思ってしまった。
他でもなく、自分の手で、あの男のすべてを奪い、潰し、絶望させたいと願ってしまっている。
「…好きにしてください」
「?あの男はお気に入りだったんじゃ?」
「私を前にして生き残った…ただ一度だけ、ですが。ただの偶然ですよ」
「なら、二度目三度目とされたらもう夢中だな!あはははは!!」
「…は?」
「一度は偶然!二度なら必然?三度は運命!!くっひひひ!!私を前にして三度生き残ったらお前の右腕を貰うからな!!」
「…一度電脳を点検した方が良いかもしれませんね、ドリーマー」
「次はどうやって会ってやろうか!エージェント!お前この前凄い気合入れてめかしこんでたな?アレなんだよ?教えて?教えろ!教えてください!」
「なっ!どうしてそれを…誰も居なかったはず…!?」
「まさかあの男に会いに行ったのか!?何だ二度目じゃないか!エージェントはラスト1回じゃないか!」
「はぁ…ほどほどにして下さいね…エルダーブレインに影響の無い程度に」
そう言い残し、エージェントは去った。
残されたドリーマーは一人、嗤う。
「次はどうやって会いに行ってやろうかしら。お馬鹿ちゃんをけしかけてあげましょうか?それとも特大の爆弾を贈ってあげようかしら!」
この感情に名前が付けられない。
でも、次に会う瞬間をまだかまだかと全身のパーツが叫んでいる。
喰らいついた肉と血の感触を私は求めていた。
「ウフフ…ねぇ、ジョージィ…何もかも…私が奪ってあげる…♪」
こんなに楽しいのは、いつぶりだろうか。
とある場所での出来事。
また変なやつに目を付けられたなこいつ…。