【完結】借金から始まる前線生活   作:塊ロック

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鉄血工廠攻略作戦から一週間。
前線基地にやっと落ち着きを見せた。

そんな中、ジョージから発表があった。


休暇発令通知

「と、言う訳で職員の皆に休暇を出します。一週間」

「「ウォォーっ!!」」

 

ある日の前線基地にて。

まとめて…は流石に無理なのでスタッフ達を少しずつ休暇を出して何とかリフレッシュしてもらうおうと言う考えだった。

 

「指揮官、すまんな…俺まで休み貰って」

「何言ってんだローニン。お前一番大変だったしな…元部下の結婚式なんだろ…そう言えばそいつの事俺知ってる?」

「え?ああ、あんときの二人…WA2000に手を出そうとしてたヤツだよ」

「へえー………嘘だろ!?アイツが!?」

 

勿論人形達も休みを出している。

と言っても部隊ごとだが。

 

「…?指揮官さん?指揮官さんの休暇はいつ何ですか?」

 

ちょうど副官を頼んでいたKar98kから質問が来た。

 

「俺?いや、流石に指揮官が開けたら駄目だろ?」

「「は?」」

「ヒッ」

 

ローニンとKar98kに凄い睨まれた。

なんでや…。

 

「お前、一番大変だったとか言ってたくせに自分はまだ仕事する気か?死ぬぞ?」

「指揮官さん?働き詰めじゃ身体が保ちませんよ?」

「い、いや…しかし」

「指揮官さん?」

「ジョージ?」

「…はい」

 

急遽俺の休みが作られる事になった。

…まぁ、仕方ないよなー…。

 

「馬鹿じゃないの?」

 

そんな話を基地に備え付けられたラウンジで相棒…先日綺麗さっぱり修復されたWA2000に話したら、そう言われてしまった。

 

「ご最も」

「それにしても、休暇ね…私も一度本部に帰らないといけないし」

「あー、MIA出されてたしな…」

「…えっ?そうなの?何それ、私帰る場所ないじゃない」

「なんだと…」

 

そうだった。

人形のMIAは捜索されない…なので、既に彼女は居ないことにされている。

 

「じゃあ、ウチの人形になるか?」

「…そうね。それが良いかもしれない…ううん。()()()()()()()()()()()()()()()

「イヤにハッキリ言う」

 

WA2000が真剣な表情で俺を見る。

こういう時は大抵曲げるつもりのない事を言うときだ。

 

「ジョージ·ベルロックと言う男はWA2000(わたし)商品価値(せいのう)の一部だもの。貴方無しは考えられないわ」

「…そっか。じゃ、改めてよろしく…相棒…じゃ、ないな。もう」

「ふふふ、よろしく…指揮官。違和感あるわね」

「お互い様だ」

 

改めて握手…ではなく、示し合わせた様に拳を合わせた。

結局、こう言った距離感がお互いに心地良い。

 

「で、休暇どうすんのよ」

「そうだな…一度、実家に顔出そうと思ってる」

「前に言ってたわね…片田舎に母親が喫茶店開いてるって」

「そ。現状報告の為にな」

「ふーん。それで、護衛どうするの?」

 

WA2000に指摘されて言葉に詰まった。

…別に、自分の身は自分で守れるし…。

 

「付けないとか論外よ。ドリーマーのとこにいた時散々貴方のこと聞かれたから目を付けられてるのは確実よ」

「何だよそれ初耳」

「本当に色々聞かれたわ…別に黙ってても良かったんだけど…ハッキングされて、痛覚が倍増されてて、」

「…それ以上は言わなくて良い」

 

肩を震わせていたWA2000の頭を優しく撫でた。

…普段気丈に振る舞う彼女の電脳に、やはり拷問の出来事は焼き付いてしまっているらしい。

 

時折思い出しては俺の所に来ていた。

その時は何も言わず、ずっと手を握ってやっていたが。

 

「…ごめん」

「気にするな」

 

しかし、バックアップがあるならそこまで記憶を戻した方が良いのではないだろうか。

トラウマを引き摺って戦う姿は見たくない。

 

「嫌」

「…何で」

「嫌なものは、嫌なの」

「…しょうがないな、本当にお前は」

「んんっ、ちょっと宜しいですか?」

 

後ろから咳払い。

何事かと思い振り返れば、Kar98kが仁王立ちしていた。

 

「カラビーナ、どうした?」

「指揮官さんの護衛については是非私にと」

「カラビーナが?個人の護衛ならハンドガンタイプが適任だと思うんだが」

「甘いですわ指揮官さん!私はこの基地で最もレベルの高い人形でしてよ!私なら指揮官さんを守り抜く事ができ…」

「レベルで話をするならトカレフが一番高いぞ」

「何ですって!?」

 

カラビーナと話していると、表情がころころ変わり愛らしく感じる今日この頃。

得意げな顔をしていたと思えば急にショックを受けたみたいな顔になる。

 

「あー、トカレフね…あの子確か90近く有るんじゃないかしら」

「アイツはダミー4体連れてたし確実に90以上はあるな」

「がーん!!」

 

苦笑しながらWA2000と顔を見合わせた。

 

「貴方の部下も、中々個性的ね」

「可愛いだろう?」

「…相変わらずね」

「う、うー!な、ならこの方はどうなんですか!?」

「…私?」

 

カラビーナがWA2000を指さした。

…同じライフル同士、何か感じるものがあるのだろうか。

 

「WA2000は…今74だっけ?」

「今は75ね。貴方が居なくなってからちっとも上がらなくて」

「そうなのか?」

「がーん…!?」

 

あ、崩れ落ちた。

カラビーナはそのまま俯いて床にののじを書き始めた。

 

「う、うぅ…私の、指揮官さんのご実家にお邪魔する計画が…」

「話聞いてたのかよ」

「こうなれば指揮官さんの寝込みを襲うしか…!」

「俺の目の前でそういうこと言う?」

「指揮官さん!今夜お邪魔します!」

「許可取れば良いってもんじゃないぞ?」

「私、初めてなのでどうか優しく…」

「駄目だトリップしやがった」

「この子…大丈夫なの?その、色々…」

「まぁ、何だかんだ優秀だから…」

 

WA2000に憐れまれてしまった。

戦闘も事務仕事もこなせる戦術人形って意外と貴重なので助かっている…。

扱い難いといえば扱い難いが、それなりに制御もできているのでいやはや。

 

「…まぁ、その辺はくじとか、話し合いで決めようか」

「それが良いと思うわ…トカレフが無難だと思うけどね」

「…お前は?」

「私?…指揮官がどうしてもって言うなら、かな?」

「何だそれ」

 

俺の休暇も中々騒がしい事になりそうだ…。

 

 




世間だとGWが終わってしまいましたが、ジョージ達はこれから休みです。

…しっかり休めるかは、護衛の人形次第…。

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