「お帰り、指揮官。…なんだ、いい顔してるじゃねぇか」
「久しぶりだなローニン。リフレッシュは出来たか?」
「ああ、お陰様で。嫁にも会えたしな」
「お前既婚者だったの!?」
S-12地区に帰還してすぐの事であった。
…4日ぶりとはいえ、なんだか懐かしく感じる。
「あー、そうそう。本部から人形が一体派遣されてる。詳しい話は社長から聞いてくれ。いつもの回線で出るってさ」
「?分かった」
久しぶりに使う司令室だ。
今日は副官を設定していないので一人である。
いつもクルーガーと通信している回線に繋げた。
ピー。
『…久しぶりだな、ベルロック指揮官』
「あー、その、何だ…お久しぶりです」
『…薬で頭でもやられたか?』
いきなり酷いことを仰る。
「…母から聞きました。過去に両親が世話になったと」
『大佐から聞いたのか。こちらも少尉…ジョン・ベルロックには世話になった』
「階級下だったのかあの人!?」
なんか、この間から驚きっぱなしである。
…一回り以上離れた上官を口説いたのか、親父…。
『何だ、知らなかったのか』
「いやそんな…俺が知ったのは退役後だったし…」
『まぁ良い。言葉遣いも私相手だけならいつも通りで構わん』
「は、はぁ」
『本題だが…査定だ』
「お」
最近久しく聞いてなかった借金の精算の話。
…いや、借金忘れてた訳じゃないぞ?
死にそうな目にあうのが多過ぎただけだ。
『戦果の話をするなら着任半年以下で非常に優秀な働きをしている』
「…素直に褒められててちょっとびっくりしてる」
『生産拠点一つにハイエンドモデル2体撃破、人的被害ゼロ。歩合制ならとっくの昔にお前の借金なんて返済してるだろうな』
「…で、グリフィンの給与形態は?」
『月給だ』
「知ってたよ!」
なので向こう10年はグリフィンの奴隷である。
悲しきかな。
『それで、だ。今回で借金の二割を返済した』
「イェェェェス!!」
机を思いっ切り叩いて天を扇いだ。
映像のクルーガーが若干引いてるが気にしない。
『こ、この調子で励んでくれ…』
「ありがとうございます!」
『…あと、報酬として新たに戦術人形をそちらに送った』
さっきローニンが言ってた奴か。
まだ顔わせしてないが、どんな人形なのだろうか。
『ただ、気を付けろ。私の下ではなく“委員会”から派遣された人形だ』
「…委員会?」
『話していなかったが、グリフィンもこの会社だけでやっている訳では無い…要するにスポンサーだ。彼らがお前の事を疑問視していてな』
「…新任の癖に戦果を挙げすぎていると?」
戦果挙げろって言ったのお前じゃん。
「不正を働いていないかの監視でって事か…」
『お前の場合、グリフィンにテロを仕掛けた雇われの前科もある。委員会には報告していない件だ。慎重にな』
「その事は俺とローニンしか知らないし、杞憂だろう」
自分からべらべら喋るなんて事はしないしな…。
自分語りは好きじゃないし。
そういうと、クルーガーは盛大に溜息を吐いた。
『…ジョンは、部隊の人間、人形問わずそれはもう口説いてな』
「何で親父の話に…」
『部隊の任務を親しくなった人形に漏らす事もあった』
「親父…」
だんだんアンタの人物像があやふやになって来たぞ…。
『断言しよう。お前は口説く』
「口説いた覚えは無い!!」
『…気を付けろ』
ピー。
通信が終了した。
…またこう、色々考えなきゃならん事が増えるなぁ。
「失礼します!」
凛とした声と共にノックがされる。
「入れ」
「ハッ!」
ジャケットにホットパンツ、サングラスが目立つ人形だ。
健康的な脚線美につい魅入る。
「君が新しく配属された人形だな?」
「はい!グリズリーマグナム、今日から貴方について…い、きま…す…?」
おや、何か様子がおかしい。
「…君みたいな端正な子にじっと見られるのもやぶさかじゃないが、挨拶くらいはしっかりやるべき…」
「…こんな所で何してるの!?」
「…は?」
グリズリーと名乗った人形が、目を見開いてそんな事を叫んだ。
「いや、待て、君とは初対面の筈だが」
「え?嘘、忘れたなんて言わないでよ…あんな情熱的な日々を一緒に過ごしたのに」
「…いやいや君みたいな子と過ごした覚えは無いよ?出来ればこれから…」
「やっぱりあの女のせいなのね!?私から貴方を掻っ攫った!」
…読めてきた。
グリズリーの目は俺を見ているようで違う。
まるで、俺を通して誰かを重ねているような…。
「でも大丈夫。私、新しい身体になったのよ?今なら貴方を満足させてあげられるわ…ハルカなんかより、ずっと!」
「…なんで、母さんの名前が」
ハルカ・ベルロック…旧姓は教えてくれなかったが、そんな名前一人しか知らない。
「ねぇ
「クソ親父がッ!!」
やっぱり親父の関係者じゃねーか!!
グリズリーは、俺を親父と勘違いして喋っている…!
「グリズリー、一旦落ち着いてくれ。君の言っている事に訂正をしたい」
「な、何よ…」
「俺は、ジョンじゃない」
「う、嘘…ねぇ、嘘よね?そんな、私が間違えるわけ無いじゃない!それはジョンの銃だもの!」
机に置かれたウィングマンを指さしてグリズリーが叫ぶ。
…親父、銃をそこら中に見せびらかし過ぎだろ。
「これは、俺の親父から貰ったものだ」
「…お父さん?」
「…初めまして、グリズリー。ジョン・ベルロックの息子の…ジョージ・ベルロックだ」
「む、す…こ…?」
グリズリーが、力が抜けた様に床に座り込んだ。
「息子…じゃあ…じゃあ…うぅ、うっ…」
…オイオイオイ泣き出したぞこの子。
「ぞんなっ、そんなぁぁ…っ!」
「ちょっ、グリズリー?」
「うわぁぁぁぁ…っ」
「落ち着け、落ち着いてくれ!な?」
「…指揮官!何事ですか!?」
騒ぎを聞き付けて勢い良く駆け付けたのは、GrG3だ。
…割と、指揮下の人形達の中でまともな感性をしている。
が、今回はそれが仇になった。
「指揮官…」
「うわぁちょっと待て!GrG3!君は誤解をしている!」
「ジョン!置いてかないでぇぇ!!」
「ちょ、やめっ、くっつくな!」
「…オジャマシマシタ」
「アッ待って!待ってくれ!待ってください!たすっ、たすけ、助けてくれぇぇぇぇぇ!!!」
なんだこの状況。
今日ほどアンタを恨んだ日は無いぞ親父…。
リクエストされた人形、グリズリーの登場でした。
先に行っておきます、本当に…申し訳ない。(土下座
グリズリーが好きな人には大分残念な仕様となっていました。
でも人形なら父親の時の知り合いとか出せるかなーと思ってた時にふと思い付いたネタなんです。
と、言う訳で親父から受け継いだ新たな負債、グリズリーをよろしく…。