目が覚める。
目に入ったのは一面の白。
…と言うよりさっきまでいた実験室だ。
え、何、俺気を失ったまま放置されてたの?酷くない?
「お目覚めですか?指揮官」
「トカレフ…おはよう。寝起きに君の顔を拝めて幸先が良い」
「指揮官。そこに座ってください」
「え?あ、ああ」
バンガードは黙っている。
と言うか電源が落ちている様だ。
上に設置してある硝子の向こうでは、忙しそうに人が走り回っている。
パワーアシストが効いてないので外骨格が物凄く重い。
それでも何とか上体を起こす。
…トカレフから拳骨を落とされた。
人形のパワーで繰り出された拳は、ヘルメットを外した俺の頭に見事に命中する。
「ぐえっ」
「馬鹿っ!馬鹿、馬鹿馬鹿っ!指揮官は大馬鹿です!!」
「トカレフ…?」
「何回同じ事繰り返せば判ってくれるんですか!?何回命削れば気が済むんですか!いい加減にして下さい!」
トカレフの方を向こうとする…また殴られた。
痛い。
「私達がどんな気持ちでボロボロになってる指揮官を見てるか分かってるんですか!?どんな気持ちで貴方の手当てをするか想像した事あるんですか!?」
「…すまない」
「お願いだから、もうやめて…」
泣かせてしまった。
また、泣かせてしまった。
彼女に依存されてるのは知っている。
そんな彼女の前で何度も命を賭けている。
「また、私の指揮官を目の前で亡くさせる気ですか…」
「…ごめんな」
「謝ったって許さな…」
「ほんと、ごめん。でも性分なんだ…指揮官失格だな」
トカレフの手を引いて、そのまま抱き寄せる。
白い髪がさらさらと流れる。
「…こんなんじゃ許しません」
「どうしたら許してくれる?」
「許しません」
「今日はこっちに泊まらされるらしい。夜、街に行こう…夜景の綺麗な店の予約をとってある」
「……………」
「後は皆のお土産を買いに行こう。付き合ってもらえないか?」
「……………本当に、狡い人」
「幻滅した?」
「…する訳、無いじゃないですか…こんな優しい人」
「ははは…ほら、涙を拭いて。可愛い顔が台無しだよ」
「すぐ調子に乗るんですから」
「俺は悪く無い。可愛く産んだ製造者を恨むんだな」
「もう…!」
トカレフが俺を振り払う。
…身体が重いのでそのまま倒れる。
その様子に、可笑しそうに彼女が笑った。
俺も釣られて笑い出す。
「勿論基地の皆さんに報告しますからね」
「見逃してくれない?」
「駄目です。皆さんから怒られてください」
「トカレフ、そこを何とか」
「だーめっ。ジョージさんはもっと痛い目見てください」
「そんなぁ」
いつものやり取りに戻る。
何とか、機嫌直してくれたのかな…。
『それで、いつまで貴方達の戯れを見せられればいいの?私達』
「いや、終わったならさっさと解放してほしいんだけど」
『休憩は終わり。もう一本行って頂戴』
「日に二本はヤバいって言ったよな!?」
『…冗談よ。スタッフに脱ぐの手伝ってもらって。そしたら解散』
なんとまぁ、心臓に悪いこと。
お互いに顔を見合わせてまた笑った。
「指揮官、行きましょう」
「そうだな…予約の時間まで、デートしよう」
トカレフちゃんに説教されるけどやっぱり調子は変わらないジョージ。
お前そういうトコだぞ。