「指揮官指揮官、聞きたいことがあるにゃ」
ある日の執務室。
本日の副官はIDWだ。
「その書類なら要らないからシュレッダーかけといて」
「はい…ってこれじゃないにゃ」
「聞きたいこと?言ってみ」
「指揮官は元正規軍所属って言ってたけど」
「誰だそれ言ったの」
少なくともその履歴を知ってるのはこの基地に居ない筈…。
「スプリングフィールドさんにゃ」
「何でだよ…」
あれから、スプリングフィールドは一緒に出撃していた部隊員に…特にグリズリーに謝りに行ったらしい。
その夜グリズリーと飲んでるのを見掛けたのでどうやら打ち解けたらしい。
話が逸れた。
確かに彼女なら知っていそうだが…。
「昨夜飲み会で聞いたにゃ」
「えぇ…」
「それで、正規軍の自立人形ってどんな感じだったかにゃって」
正規軍の戦術人形について、か。
アレはグリフィンの抱える言わば民生用とは段違いの性能を誇る。
…光学兵器を装備しても問題ない出力のジェネレーターとかな。
文字通り話にならないレベルの差がそこにはある。
「あいつ等は確かに強力だ…けど、ま…華がない。一緒に戦うならお前達のほうが楽しいかな」
一言で言うならば無骨。
戦闘に特化させる為に余分な機能は必要ないと言わんばかりに機械とさせている。
兵器としてみるならむしろ戦術人形の方が欠陥品なのだろう。
「へぇー…」
「…あ、でもいたな…とびきり美人なやつ」
「人形?」
「え?ああ…」
「指揮官が人間の女を口説いてるトコ見たこと無いにゃ…」
「居ないからなぁ…」
そう言えば本部の衛生部門のオイゲンちゃん、元気かな…連絡先貰ったしたまにはデートにでも誘おうか。
………………あれ?端末に入れといた連絡先が消えてる。
「…?」
「どんな人だったにゃ?」
「え?そうだなー…二人いたんだけど、片方がもう片方にべったりでな」
懐かしい。
たまたま声を掛けたらすぐ打ち解けて背中預ける仲になったのを思い出す。
「べったりだったんだがちょっと話したら友好的になってくれてね。冷静沈着なんだけど不測事態に弱いのがまた可愛いとこだ」
「なんか、IDW達とあんまり変わらないのにゃ」
「そうだな…だから、あいつも悩んで苦しんでたな」
一人でいるのを見かける度にしょぼくれていた。
その都度声を掛けてやったら懐かれたと言う具合だった。
「やっぱり指揮官はタラシにゃ」
「そういう事言わないでくれよIDW。それに、今は目の前の君の事でいっぱいさ」
「えっ、この流れで口説かれてる…!?」
…そう言えば、軍辞める前に何か言われたっけな…。
確か、誰かの為にしか戦えなかった私を支えてくれてありがとう…だったかな。
その後に何か小声で言ってたけど。
「…そう言えば、片方って言ったけどもう片方はどうしたにゃ?」
「…やっぱ突っ込む?…もう片方か…」
ちょっと頭が痛くなって来る。
初対面の時に凄く見下されててあんまり相手してなかったんだよな…。
「…で、無視して相方と交流してたら…」
「…そりゃ自分にべったりだった子が指揮官に口説かれてそっちになびいたら割り込んでくるにゃ…」
「そこまで言ってないんだけど」
「日頃の行い見てれば分かるにゃ」
「そうか?嬉しいねぇ、しっかり見てくれるなんて」
「そう言うのいいから続き話してにゃ」
「ウッス」
どこまで話したっけな。
あ、そうそう。
それからなぜかあの手この手でこっちの意識を向けさせられる様な事されたんだよな…。
一度風呂入ろうとしたら既に水着姿のそいつが居たりして。
「…順当にゃ」
「話やめていいか?」
「面白いから続きはよ」
「…キャラがちがくない君?」
なんか視線を感じると思ったら目を閉じてるそいつと目があったりな。
「目を閉じてる?」
「ん?ああ、そいつ…ずっと目を閉じてるんだわ。理由は結局知らなかったけど」
俺が軍を辞めるとき、何も言わずにどこか行ってたな。
「その子も口説いたりは?」
「…………冗談だろ?
「それは…何という」
そんなんに迫られても正直しんどい。
「…休憩は終わりにゃ指揮官。楽しかったけどにゃ」
「お、もうそんな時間か。片付けよう」
いそいそと書類の整理にかかる。
しかし…あいつら、元気にしてるかな。
と、言うわけで思い出話ですが彼女達の登場フラグです。
…いつ出るかなぁ。