本当に唐突に、その時はやってきた。
『ジョージ指揮官。言い忘れていたが本日付けでS-12地区を拠点としてハイエンドの動向を探る任を帯びた部隊がそちらへ到着する』
「もっと早く言え!!」
朝イチ、いきなりクルーガーから秘匿回線が通ったと思えばこれである。
隣に立っていたスプリングフィールドも苦笑いしていた。
『その件に関しては本当に申し訳ない…一部の者の暴走を許してしまった結果だ』
「暴走?」
『存外、恨みを買っている様だぞ』
「俺が?何の接点も無かったのに?」
『本部勤務の際に曲がりなりにもIOP製ハイエンドに懐かれているんだ。研修生はいざ知らず指揮官からはそれなりにねたまれるだろう』
…成る程。
なんか、ここに飛ばされたのもそれが原因な気がする。
「で、どこの小隊が来るんだ?またネゲヴ小隊?」
『AR小隊だ』
「春!準備!!出迎えだ!放送の電源入れろ!」
『…指揮官?』
「あー、あー、聞こえてるかな?忙しいところ申し訳ない。新しくAR小隊が基地に駐屯する事になった…俺からは一言だけ。…諸君、派手に行こう」
『ジョージ!!』
「ヒッ、あ、はい!」
『…気持ちが高ぶると周りが見えなくなるのは…母親譲りか』
「親戚の叔父さんムーブしないでくれないか…」
とても居た堪れない。
そんな事より。
「本当にAR小隊で間違いないんだな?」
『ああ。彼女達を頼んだぞ』
「…任せろ」
…遂に来るんだな、M4。
「指揮官、大変です。ヘリが1機こちらへ向かってきています」
「早くない!?ヘリポート行くぞ!!」
クルーガーの回線を切断し、俺は指揮官に配布される赤い外套に袖を通した。
…春が、その様子をずっと見ていた。
「…どうした?」
「いえ…とうとう、それを着る事になったんですね」
「あれ、見た事無かったか?」
「私がここに来てからは見た事無いですね…ジョージ。指揮官就任おめでとうございます」
「ははは…春、向こう出る前に言わなかったかそれ」
「あら、そうでしたか?」
何となくおかしくなったので、二人して笑いあった。
「いちゃついてないでさっさと行きなさい!!」
執務室のドアを勢い良く開いたリサからお怒りの一言が飛んできた。
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ヘリポート。
…1機のヘリが着陸する。
「AR小隊、ただいま到着しました。初めまして指揮…か…ん…」
…ああ、久しぶりに彼女の声を聞いた。
びっくりして目を丸くしている。
両サイドに立っていた3人が明らかに俺の事を警戒している…まぁ、仕方ないか。
「久しぶり、M4」
こう言う時に気の利いた一言が出ないのが悲しい。
けど、飾らない言葉の方が、こう言う時には良いのかも知れない。
「あ、ああ…指揮官!」
隣の姉の制止を物ともせず、M4が飛び込んできた。
全力で。
「ぐぉッ!?」
踏ん張りが利かず一緒に後方へ転がって言った。
「指揮官!指揮官!ああ、お久しぶりです…!やっと…やっと…」
「ああ…やっと会えたな」
「う、ああ…どうして、涙が」
「はは…なんだ、しばらく見ないうちに泣き虫になったな」
「ち、違うんです、これは」
「…良いよ。今だけは好きにして」
「はいはいお二人さんそこまでな」
俺の上に覆いかぶさっていたM4をM16がひっぺがした。
「…久しぶりだな、お前ら」
「私としちゃまさかまたアンタの世話になるなんてな」
「任せろ、しっかり面倒見てやる」
「…なんか、前見たときと比べて変わったわね」
桃色の髪の人形が呟く。
確か、彼女は…。
「AR-15、よろしくな」
「…ええ。前に会った時よりは期待出来そうね」
「…うーっ」
そして、犬よろしく警戒心むき出しの人形が一人。
「SOPMODⅡ。よろしくな」
「…ふん」
「…手厳しいな」
M4以外からの信頼は無いに等しい。
しかし、何の因果かやり直しの機会が回ってきたらしい。
「…ジョージ指揮官、これから…よろしくお願いします」
「ああ。歓迎しよう、盛大にな」
これでようやく、揃ったんだ。
「ジョージ!仕事支えてるんだから!」
「ああ、すぐ行く
「…リサ?」
ぼそり、とM4が呟いた。
…あ、なんか嫌な予感が。
「…指揮官?」
「な、なんだ…?」
「あの女、誰ですか」
「誰って、WA2000だよ。本部に居たろ?」
「…どうしてWA2000と呼ばないのですか?」
「え、呼びにくいだろ?」
「彼女と特別親しい訳では無いんですね?」
「あ、ああ…」
M4の表情は見えない。
…後ろに控えていた3人は当の昔に春が案内して連れて行っていた。
ちょっと、ストッパー居ないんだけど。
「ジョージ。書類忘れてるわよ」
「ああ、すまんすまん。M4、これ命令書な」
「距離近くないですか!?」
M4が急に叫ぶ。
俺と相棒の距離が近い…?
「そうか?相棒」
「別に、いつも通りでしょ」
「いつも…!?」
「ちょっと、ジョージ。アンタ指揮官なんだからいい加減相棒呼び止めなさいよ」
「じゃあお前も指揮官って呼べよ」
「呼んでるじゃない」
「いや呼んでないが」
「嘘」
「本当」
「目の前でいちゃつかないでくれませんか!?」
いちゃついてる訳じゃないんだが…。
「えっ、というか、何ですか二人とも!?恋人通り越して夫婦の距離感じゃないですか!」
「なっ…だ、誰がこんなのと!」
「こんなのってお前。上司だぞ」
「WA2000!貴女やっぱり前から思ってましたけど危険です!」
「いやアンタに言われたくないわよ」
「まぁ、なんだ…こんな感じで緩いけど。慣れてくれ」
「頭がですか」
「…喧嘩売ってるのかしら。買うわよ」
「貴女なんて怖くありません!ぶち転がしてやりますよ!!」
そう言ってリサに飛び掛って…そのまま背中から床に倒された。
…あれ、それ母さんの真空投げ…。
「どうして…こうなるの…」
仰向けになったM4が顔を覆って呟く。
いや、俺も聞きたい。
取りあえず手を差し出して立たせてやった。
「リサ。先に行っててくれ」
「急いでよ」
…さて、ようやく落ち着いて話せる訳だが…。
「M4、会いたかったよ」
これからまた、騒がしくなりそうだ。
第2章『紙幣と運命のマリオネット』完。
第3章『借金完済編』へ続く。
そんな訳で、M4との再会で一区切りと致します。
割と唐突でしたが、これ以上伸ばすと再会の理由が難しくなるので断行しました。
ぐだぐだな方が、却ってらしいかなと半ば開き直りの様な感じですがね。
それでは、第3章で会いましょう。