いつもの悪夢ではない。
何故、こんな物を見てしまったのか。
ーーー夢を見ていた。
手を伸ばしても届かない。
声を上げても聞こえていない。
走り出しても追い付け無い。
なのに、何故俺は奴へ焦がれるのか。
俺はーーーー
「……………なんて夢だ。まるで初恋のガキだ」
朝。
なんてことは無いいつもの朝。
けれど、見た夢だけは違った。
いつもなら、夢を見れば必ず絶叫していた。
だが…今日のアレはなんだ?
思わず、歯の埋っている肩に手をやる。
コレのせいだと思いたくない。
「………さっさと、始末してやる」
俺と相棒を散々弄んだツケは、重いぞ。
起き上がり、備え付けの洗面台で顔を洗う。
…鏡に映った顔は、正直、血色がいつもより良くて、気味が悪かった。
「………何なんだ、一体」
「指揮官さん、おはようございます」
「おはよう、カラビーナ…鍵、まだ開けてないんだけど」
「開けました!」
「お前な…」
何時ものようにはいってくるカラビーナに呆れて振り返ると…彼女は驚いたような顔をし、俺を凝視していた。
「…どうした?」
「指揮官さん、今日は随分と顔色が良いです。夢は見なかったみたいですね」
「…そうか?」
「はい!今日は5割増で素敵です!まるで意中の女性が見付かって気合いの入った様な感じですね!」
ヤケに具体的な指摘をされて言葉に詰まる。
「ありがとう…君は今日もキュートだな。リップ変えた?」
「…………えっ、どうして分かったんですか?」
「…………なんてな。着替えるから出てくれ」
「ちょっ、指揮官さん!?やっぱり指揮官さんは私を見てくれてるんですね!?嬉しい!結婚して下s 」
ドアを閉めた。
…しかし。
「…冗談だろ?俺が…ヤツに…惚れてる?」
いやでもぶっちゃけ顔好みだし…。
待て待てアレの外見はまだ16かそこらだぞ…。
カラビーナに言われたのも相まって頭の中がぐちゃぐちゃだ。
「有り得ない…第一人形は守備範囲外だ…それに、相棒をボロボロにしたやつだぞ…」
そんな奴を、どうして…、
そこまで考えて、頭を振った。
たかが一度見た夢で動揺し過ぎだ。
「………きっと欲求不満だ、これは」
最近処理してなかったしな…。
風俗行こうにも足を向けた瞬間誰かから連絡来るし。
「なら、わたくしが!!フリーですよ!指揮官さん!!」
「当然の様にピッキングすんじゃねぇ!無駄に有能なのがホント残念だな!」
どうしてこの子はこうも残念なんだろうか。
「…気持ちは、嬉しいけどな。やっぱり…戦友をそんな目で見れない」
「そのくせわたくし達を夢中にさせるんですもの。罪なお方ですわ」
「性分、かな。人形ってわかっててもつい女性扱いしちまう」
「いつか、襲われても知りませんわよ?」
「相手が君じゃない事を祈るよ」
「あら、わたくし以外がお望み?」
「あ、いや…決して君に魅力が無いわけじゃ」
「…ふふっ、冗談ですわ。でも、わたくしに魅力が足りないなら、振り向かせるまで努力すれば良くってよ」
「強かだな」
「わたくしをこんな風に育てた責任、とってくださいまし」
バッチリウィンクされてしまった。
…責任、か。
そう言えばグリフィンには人形を個人で買い取り様々なリミッターを外す「誓約」と言うシステムがあるらしい。
…しかし、誓約か。
本当に人間の代わりを果たす様になったんだな。
「…考えておく」
「…えっ?」
私室から出る。
誓約の話はとりあえず保留。
とにかく、ドリーマーを片付けないと。
「…金が無い」
ただその一言だった。
着地地点は決めてありますが、何ページかかるかさっぱり考えておりません。
完結の予定はありますが、どのくらい長くなるかわかりません…でも、お付き合いしてくださるとか嬉しいです。