【完結】借金から始まる前線生活   作:塊ロック

94 / 183
試験運用を終えて、解放された後。
ジョージと護衛の人形で街へ出ていた。


爪痕

「つ、疲れた…」

 

夕方。

IOP傘下の市街地の喫茶店で机に突っ伏していた。

 

「お疲れ様です指揮官」

「ボスカッコ良かったぞ!あんなの見たことない」

「ありがとう二人共…ただあれしんどいわホント」

 

9A-91とG17に労われてちょっと心が軽くなる。

 

「けど、IOPはあんなの作ってどうするつもりなんだろ」

「その点に関しては謎だ。正規軍に売り出すにしたってコスパ悪過ぎる」

 

人間の強化外骨格なんて向日は持ってるだろうし。

 

「指揮官、帰るのは明日なんですよね」

「ああ…今から戻るともう深夜だからな」

 

片道8時間の移動時間は存外キツいものがある。

輸送班にはもう休暇は出してあるので、今頃リフレッシュに夜の街へ繰り出しているだろう。

 

俺も行きたかった。

 

「指揮官はこれからどうするんですか?」

「うーん…珈琲飲んでおみやげ買って…帰って寝ようかと思ったけど」

「ここまで来たのに寂しいなボス…疲れてるから仕方ないけど」

「二人共、護衛交代しながらでいいから何処か行ってきてもいいぞ」

「駄目だぞボス。春の姐御にしっかり護衛頼まれてるからな。眼を離すつもりは無いぜ」

「Дах、その通りです………今日はずっと一緒です、指揮官」

 

純粋に心配しているG17と、どことなくニュアンスの違う9A-91。

仕事熱心だなと思ったが…俺が危機感を感じてないだけかもしれない。

 

…一人の方が、また会えるだろうかと考えーーー

 

「…!?」

 

ーーーなんてコトを考えている?

会いたいと思っている?俺が?奴に?

 

違う、違う違う違う!

コレは俺の思考じゃない!

俺の望みじゃない!

 

こんな事を考えて良いわけが無い!

俺は奴を破壊しなきゃいけない、完膚なきまでに!!

 

「…ボス、大丈夫か?顔色が悪いぞ」

「すまん、G17…やっぱり戻って休むよ」

「それが良いですよ指揮官…何だかとても苦しそうです」

 

二人に支えられて立ち上がる。

 

しかし、どうしてかこの感情に作為的な物を感じてしまう。

 

(俺は、ヤツに何をされた?)

 

何か重要な事を見落としている気がする。

思考が上手くまとまらない…同じ自問をぐるぐる斗行っている気がする。

 

「…ボス?ボス、聞いてる?」

「…え、あぁすまん…どうしたG17」

「お客さん」

「…え?客?」

 

確かに、俺の目の前で立ち止まっている女性がいる。

ゆるゆると顔を上げてそいつの顔を見る。

 

…左眼に、縦一線に傷跡を持つ人形が立っていた。

 

「ハァイ、ジョージィ。元気?」

 

そいつは、いつもの何食わぬ顔で朗らかに挨拶してきた。

なんだか、だいぶ久しぶりに会った気がする。

 

「久しぶり…UMP45」

 

名前を呼ぶと、そいつはニッコリと笑った。

 

「話があるわ。来て」

 

 




再会、UMP45。
そしてジョージの思考を徐々に侵食するドリーマーの影。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。