【完結】借金から始まる前線生活   作:塊ロック

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出張先で何も出来ないので気が付いたらキーボード叩いていた作者です。
本日3ページ目の更新ですので読み飛ばしにご注意を。

ただ、和解させようとしたのにどうしてこうなった。


歩み寄り

「おはようございます、指揮官…♡」

「……………え?」

 

朝。

特に悪夢も見ずに目が覚めると、目の前に満面の笑みを浮かべたM4が横になっていた。

 

「こうやって一夜明かすのも久しぶりですね」

「鍵は掛けてた筈なんだけど」

「あの頃は私も指揮官とずっと一緒で」

「正直怖かった」

「こうやって再会できて、私は幸せです…」

「俺も会えたのは嬉しいよ。けど、もっとこう、健全な付き合いがしたい」

「ふふ、指揮官ったら。照れてるの可愛いですね」

「話聞けよ。あとそのシャツ俺の」

 

相変わらず人のワイシャツ勝手に着てからに。

春もそうだし最近リサもそれで寝てるらしいんだよな…ワイシャツどんどん消えてくんだけど。

 

「指揮官、今日はどんなご予定でしょうか」

「え?今日?周辺警戒と書類仕事くらいだが…」

「…一緒に居たら、駄目ですか?」

 

うーん…特に今日副官決めてなかったしな…。

そう言えば基地の案内も満足に済ませてなかったし、副官にして連れ回せば一緒に済ませられるか。

 

「…仕事、手伝って貰おうかな。今日は頼むよ、副官殿」

「はい、任されました指揮官」

 

さて、着替えて仕事を始めようかな…。

 

「で、M4。悪いけど出てくれない?」

「…ふふ、良いんですか?こんな格好の私を廊下に出しても…」

 

なる程、誰かに見られたら騒がれると。

だが、その事態は既に対策済!

 

「カラビーナなんてタンクトップとショーツだけで部屋まで来たからな」

「…指揮官?」

 

…あれ、M4の目が笑ってない。

 

「私は今、冷静さを欠こうとしています」

「…えぇ?」

「説明、してもらえます?」

 

 

…この後めちゃくちゃ弁明した。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

「M4、そこの資料取って」

「えっ、どれですか?」

「3番の棚の上から二段目。背表紙赤い奴」

「どうぞ」

「サンキュ」

 

M4に手伝って貰いながら資料を纏めていく。

ここの書棚も、来たばかりの頃はスッカラカンだったのに…いつの間にか増えていた。

 

「…」

「ん?M4、何読んでるんだ?」

「え、あ…いえ、交戦記録を少し…」

「…気になるか?」

「…はい。指揮官が今までどう戦ってきて、何と戦っているのか。私は知らなきゃいけません」

「そうか…」

 

何から教えるべきか。

 

「…うち、S-12地区な何故か1体の鉄血ハイエンドが居座っててな」

 

結局、うちの戦役はほとんどこいつのせいと言っても過言では無かった。

 

「夢想家…」

「そう。そいつがずっと居座っている。ほとんどヤツと睨み合い状態だ。過去に2度戦闘があったが何とか勝利している」

「…この基地は、人間の兵士も居るようですね」

「当初は人形が少なかったからな。それに、PMCを吸収したあとで人も余ってた」

 

その観点から、ウチには偵察班や工作班、狙撃班がいる。

でもやはり直接戦闘は人形がやってはいるが。

 

「そっからかな…少しずつ仲間も増えて」

「そう、ですか…片っ端から口説いたんですね」

「言い方。まぁ…でも、間違ってはない、か」

「指揮官は一度刺された方が良いのでは?」

「一度で済めば良いがな」

「…お望み通り刺してやろうか?」

 

M4と談笑していたら、ドスの効いたM16の声が割り込まれた。

…執務室の出入り口に背中を預けて立っていた。

 

「姉さん」

「よう、M16。ウチには慣れたか?」

「フン、ぼちぼちな」

「そいつは良かった」

「…ホントはM4がお前の副官やるってのも反対だったんだ」

「そうか」

「…ジョージ指揮官。1つ聞いていいか?」

 

M16が改まって聞いてきた。

 

「三ヶ月…私達はアンタに大分反抗的な態度取ってた。けどなんでアンタはそれを放置している」

「自覚あったのか…」

 

AR小隊が着任してから、結構三人の当たりが強いのは知っていた。

俺達の確執がすぐに無くなるわけでもないし、真面目に接していればその内認めてくれるだろうと気楽に構えていた。

 

「他の指揮官みたいに上から抑えつければ良い。権限があるしな」

「嫌だね。女に無理強いするなんて趣味じゃない」

「…正気か?私達は人形だぞ?」

「正気で戦争何か出来るかっての」

 

手を止めて立上り、M16の方へ歩いていく。

…壁から背中を離し…その前に、右手を彼女の顔の隣へ。

 

所謂壁ドンの体勢でM16を追い詰めた。

身長差もあり、M16はその場から動けない。

 

「…女も人形も同じさ。俺にとっちゃな」

「狂ってる」

「そうかな。俺はお前みたいに綺麗な女は大好きだぜ?」

「綺麗なものか!こんな、傷だらけでガサツな私が!」

「いいや。お前は美しいよM16」

「んなぁっ…!?」

 

赤面して固まる。

左手をそっと顎に沿わせて、軽く引き俺とを顔を向き合わせる。

 

「傷は戦い抜いた証。それを醜いと罵るなら、俺はソイツを叩き潰してやる」

「な、何を…」

「別に俺を嫌ってくれても構わない。だが、俺はお前と良好な関係を築きたいと思う…出来れば、償いもしたい」

「償いって…私は、ただ…お前が気に入らなかったから…。正直、活躍や仕事っぷりを見て…認識は改めてる」

「嬉しいね。俺の事、見てくれてるんだ」

「ち、違っ、そうじゃなくてだな」

「…冗談だ。今夜1杯やろう」

 

M16から離れた。

…彼女はへなへなと座り込んでしまった。

 

「…まさか、この私が口説かれるなんてな」

「誰しもが違った魅力を持っている。俺はただ、それを見付けて、自覚させて、それを誇って欲しいだけさ」

「はっ。欲張りな奴だ」

「返事、聞いても?」

「ジャック・ダニエル」

「うん?」

「ジャック・ダニエルはあるのか?」

「春に聞いてみないとな」

「ふん、期待しないで待ってる」

 

すっかりいつもの調子に戻ったM16と盛大に笑いあった。

…背中から刺すような視線を感じて固まった。

 

「…指揮官?」

「( ゚д゚)ハッ!?」

 

恐る恐る振り向く。

…M4さんが、俯いて肩を震わせていた。

 

「…姉さんと指揮官が和解できたのは、嬉しいです…けど、けれど!私の目の前で姉さんを口説くってどういう事ですか指揮官!!」

 

 

この後、めちゃくちゃご機嫌取りをした。

 

 

「…ハッ、こりゃM4も大変だな」

 

 




M16、陥落。
残り二人…和解、出来るだろうか。

ちなみに今回のジョージは意識して口説いています。

…まるで、脳裏にこびりついて離れない、黒い女の影から逃げるように。

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