何とかAR小隊との和解に成功したのだった。
「…まさか、そんな強引な人だとは思わなかったわ」
副官でもないのに書類整理を手伝ってくれていたAR-15に言われた。
「男女の駆け引きには時として強引に行くべきでもある」
「貴方、いつか刺されるわよ」
「女性に刺されるならそれも本望…って訳じゃない。思い詰めさせてしまったからな」
だから、それは相応の罰だ。
「…
「善処するよ」
「お疲れ様です、指揮官、AR-15。休憩にしましょう?」
執務室のドアを開けてM4が入ってきた。
手にはコーヒーカップの乗ったトレーを抱えていた。
「スプリングフィールドが手が離せないと言う事なので預かってきました」
「わざわざありがとうM4。君も一緒にどうだ?」
「はい!」
「…これがいつもオドオドしてた小隊長だとは思えないわね、ホント」
「変に強かになったな」
「全く、誰のせいかしらね」
肩をすくめて見せると、AR-15はため息を吐いた。
「誰のせいでもないよ…きっとこれが本当のM4何だろう」
「…なんの話でしょうか?」
本人が目の前に居るのに、本人置いてきぼりの会話が行われている。
「君がキュート過ぎるって話さ」
「なっ、もう、指揮官!」
「ははは…」
AR-15がうわぁ、って感じで見ているが気にしてはいけない。
…そこで、執務室のドアがノックされた。
「どうぞ」
「入るわよ」
入ってきたのは、WA2000…リサだった。
「どうした?」
「用がなかったら来ないわ」
…?
リサがM4とAR-15に目配せして、二人が立ち上がった。
「すみません指揮官、少しSOPMODⅡの所へ行ってきます」
「?わかった」
二人共出て行き、俺とリサだけが残された。
「それで、どうしたんだリサ?」
「別に。ただ…聞きたいことがあって」
「聞きたいこと?」
「…AR小隊、
「…バレてた?」
「アンタと会ってもうすぐ一年。私が見抜けないとでも?」
「敵わねぇな相棒」
どうしてもこびり付く黒い影から逃げたくて、意識を反らすために色々やっていた。
「ねぇ、ジョージ…肩、大丈夫?」
「肩?何だよ相棒、この歳で四十肩の心配か?」
「………そう。最近、夢…見てる?」
「え?…まぁ、見てる」
いつもの調子でない。
どことなく思い詰めている雰囲気がある。
「その割には叫んで無いみたいだけど」
「あー、それか…ちょっと前から毛色が変わってな」
「へぇ、どんな?」
「…オイオイ相棒、いつからお前カウンセラーになったんだ?ちょっと怖いぞ」
「良いから言いなさい!!」
…リサの表情は変わらない。
それどころか、俺を見ている目がどんどん険しくなっている。
「わ、判ったよ…なんと言うか、拷問される夢じゃ無くなった。…段々とアイツに意識が向けられてる様な、そんな感じの夢だ」
初恋のガキみたいだ、と自虐したがあながち間違ってないかもしれない。
「原因、わかる?」
「原因?何でだろうな…っ?!」
ずきり、と頭と
何で、肩が…。
「…あの、女ッ…!」
リサが、呻くように吐いた。
一歩ずつ、近付いてきた。
「私から仲間を奪って、プライドも、武器も、居場所も、何かもかもズタズタにして!」
余りの剣幕に、後退る。
だが、リサの方が早い。
「全て奪って!その上で…」
左肩を掴まれた。
…あまりに強く掴まれ、顔をしかめる。
「その上で、アンタまで奪おうっての?!」
「お、おいリサ…落ち着け」
「もうこれ以上…
「がふっ…!?」
リサの右の拳が、俺の腹にめり込んだ。
意識が飛びはしなかったが、膝をついた。
「ジョージ…恨んでもいいわ。でも、アンタがアイツのモノになるなんて絶対許さない…!!」
「ゲホッ、相…棒…」
「…ごめんなさい」
リサの腰から、ナイフが閃き。
…俺の右肩に、突き立てられた。
「…あ」
ぶすり、と嫌な音がした。
「ひぁぁあ゛があ゛あアア゛ああ!!?!!?!」
次回、『幕間ーWA2000ー』。