いつものように水浴びをしていた水野愛は一つのことが気になってしまった。
某所にて投稿したものです。
いつもの水浴びの時間、私はサキと一緒に水浴びを行なっている。
割と出るところは出ているサキの体を見て魔が刺したのかもしれないポツリと口から零れる。
「ねぇ、おっぱいさわってもいい?」
私の言葉に胡乱げな目になるサキはゆるりとこちらに体を向け手を広げると
「ほれ、さわりてぇなら、さわれや。減るもんでもなし」
「なっ!?」
「…な?」
「何やってんのよ!?」
「そりゃ、胸揉みたいんだろ?揉ませてやるけん、さっさと来るばい」
「じょッ冗談に決まってるでしょ!」
私は自分の言ったことが信じられず、とっさに否定してサキを置いて戻ってしまう。…でも、
「きれいだったな…」
真正面から見たあいつの体はとてもきれいに思えてしまった。
それからというものサキに視線がいってしまう。
睡眠中、ミィーティング中、レッスン中、食事中、移動中等々さすがにライブ中は見ないけど…
そんなある日、ベランダの柵にもたれかかり大きくため息をひとつ…
夕暮れの日が差すオレンジ色の世界で物思いにふける。
水浴びのこと、それに随分前に公園で寄り添ってくれたことを考えるとなんだかよくわからない気持ちになってしまう。
心の中をぐりぐりと何かが掻きまわすのだ。
「まさか、これが恋だっていうの?」
なんともいえない気持ちになって"世界、変わるらしい…"私の持ち歌の一節を諳んじてみる。
これが本当なら恋はすごいものだ。私をまともじゃなくさせてしまったのだから。
でもありえない。確かに最近サキが巽やリリィと話していると不安になるし、さくらや純子に絡んでいるとほんとに少しだけイラついてしまう。
けど、
「サキは…女なのよ…じゃあ、じゃぁ…」
この恋は叶わないじゃないか。私は抱いた腕に顔を埋もらせ、とつとつと嗚咽を漏らした。
後悔や失敗を悪いことと思わないように私は常々考えてる。けど、今だけはあんなバレバレの場所で物思いにふけっていた私をぶん殴りたい。
目の前の心配そうな表情のさくらとどこか物静かな純子を見て思った。
「ちッ違うのよ。私はあそこで…「サキちゃんのこと好いとーと?」………はぃ」
いつから見てたかはわからないと言い訳しようと思ったら最初から見聞きしてたのかもしれない。
あっさりばれてしまった。…ばれたなら仕方ない。
「このことはここだけの秘密にして」
「なんで!好いとうなら気持ち伝えるべきだよ。純子ちゃんもそう思うよね!」
さくらを手で制し私の考えを伝える。
「だから、やめて!それに私のことでチームを乱したくないの。純子ならわかるでしょ」
私とさくらから同意を求められ狼狽すると思った純子は愛さんの言いたいことはわかりますと言った。
ただ一つお聞きしたいのですがと前置きをしてこちらの目を見据えながら言った。
「それはあなたのキャラですか?」
「私の…キャラ?」
「えぇ、振られるのが怖くて言い訳しておめおめと逃げ出すのがあなたのキャラかと聞いてるんです」
「じゅッ純子ちゃん!?なんいっとーと喧嘩売りに来たんじゃなかよ!!」
「さくらさん、少し静かに。私は愛さんに聞いてるので」
「純子ちゃんがば怖かよ!喧嘩じゃなかとにぃどやんすぅ~どやんす~」
目の前の寸劇を見ながら純子に言われたことを考える…純子はわざわざ煽るような真似をする奴じゃない。
「………サキとチームを信頼しろってこと?」
私がそう言うと純子は顔をほころばせ、そういうことですと言う
「サキさんは愛さんの気持ちを無碍にするような方じゃありません。それに昔から言うじゃないですか。いのち短し、恋せよ少女って」
もう死んでますけどねと零しつつまた笑顔を見せる。
「純子ちゃ~ん。がば怖かったけど、信じとったよー!よぉし、じゃあ今から告白行こうばい!!」
「えッ!今から!?」
「愛することは信頼することです。サキさんに示しましょう。愛さんの気持ちを」
あの2人に言われるがまま、ここまで来てしまった…
「どがんしたんと愛、いきなり呼びだして」
愛することは…信頼することか。私はサキを…
「…ごめん、ちょっと伝えたいことがあって」
今なら…今なら引き返せる…
「愛?大丈夫か。つらいなら言えや」
振られるのが怖くて言い訳しておめおめと逃げ出すのがあなたのキャラかと聞いてるんです。
純子の声が回想される。私のキャラ…私はそんな奴じゃない
「サキ!私はあなたのことが好きなの…大好きなの…だから私と…」
私が決死の思いで行った告白はサキに……
「……すまん...そういうん無理だわ...ごめんな愛...」
………届かなかった。
「そ…そうよね。お、女相手なんて…きっ気持ち悪いものね。…まったく…私ったら、へっ変なこと言ってごめん。じゃッじゃあ私は…もぅ…行くから……」
ぐちゃぐちゃの心を抱えて去ろうとする私にサキは追い打ちをかける。
「ごめん」
私は振り返らずに立ち去った。
あたしは愛が出ていくのを見送った…これでいいんだ。これで…
「サキちゃんひどかよ!愛ちゃんがどんな思いで…」
出ていった愛の奴と入れ替わりで入ってきたさくらがあたしに抗議の声を上げる。
愛の気持ちを踏みにじった…そんなことわかってんさ…
「…一人にしてくれ」
あたしはさくらの声から耳を背け、その場から逃げ出した。
サキも去っていった部屋でさくらは悔恨する。
「純子ちゃん、どうしよう?私…愛ちゃんのためと思うたとに」
「…愛さんは素直に気持ちを出しました。あとはサキさんです。…けど、私ではサキさんにわからせるのは厳しそうです」
「じゃあどうすると?私でも純子ちゃんでも無理なら…」
「さくらはんでも純子はんでもダメなら。ほかの仲間に頼りなんし」
弱音を吐いていたさくらに声が掛けられ、振り向くと優しげな顔でゆうぎりがこちらを見つめていた。
「サキはんのことはわっちにまかせなんし。ああいう手合いに言って聞かせるんは慣れておりんす」
「ばってん、愛ちゃんはどうすると?」
さくらの疑問にゆうぎりは含み笑いをしつつ答える。
「心配することありんせん。きっと、不器用なお節介を焼かれてるでありんしょう」
純子やさくらを迎え受け入れた部屋は新しい住人を迎えていた。
その住人はいままでの者たちと違い体を丸くし顔を埋もらせるだけでなく、部屋に冷たい音楽を提供していたが。
わかっていた…わかっていたの…拒絶されるってわかってた…
けど、もしかしたらって思った。さくらや純子に言われて、もしかしたらって
でもダメだった。そらそうだ、女からの告白なんて気持ち悪いに決まってる。
だから…振られたときに前みたいに冗談って言おうとした。けど、言えなかった…言いたくなかった……
…こんなの私じゃない。私はもっと強かったはずだ。
自分から困難に立ち向かっていく……気合が入っている女だった
なによ、このざま…振られただけでうじうじ、こんなとこで閉じこもって泣いてるなんて
まるで…まるで…普通の女の子みたいじゃない…
「こんな気持ちになるなら…恋なんてしなきゃよかった」
「恋は偉大なんじゃなかったのか?愛」
突如響くあいつの声に私は現実に引き戻された。
「なんでッここにいんのよ!」
「そりゃ、ドアをオォープンしたからじゃろがい。お前らゾンビィはいィーつもここに閉じこもるからのー、ゾンビィ対策の一環でーす」
こいつの空回っている元気さにいつもなら苛立つのに、今は虚しさしか感じない。
「放っといて、マジで苛つくから」
これは重症だな…目の前のうじうじダンゴムシ化したゾンビィを見てそう思う。
あと、年頃の娘に苛つくからどっか行ってと言われるのは正直きつい。
さくらはネガティヴ化しても優しかったが…いや、もしかして俺に…これ以上はよしておこう…
「放っとけと言われて放っとけるかい、ばかたれぇ。俺は…ほら、あれだ、前言ったフランシュシュ学園の相談室の先生です。ここで喋ったことは漏れないから好きに喋ればいいんじゃいって奴だ。……それにだ、亀の甲より年の功、死亡年数より生存年数。俺の方がお前より長く生きている。何があったのか言ってみろ」
「単に勘違いしたバカ女が告白して振られただけ…ただ、それだけよ。もう吹っ切れたし明日からはいつも通りよ」
「ふぅむ、そうか…吹っ切れたか。じゃあ聞きたいんだが何故さっきから顔をあげないんだ?」
そう言うと一瞬たじろぐように見えたが殻に引きこもるように自らの体を抱き竦め動かなくなってしまった。
…言葉を誤ったかもしれない。結局、俺は完璧からは程遠い…少女の悩み一つまともに聞いてやれない始末だ。
―――だが、諦めるわけにはいかない。
「水野愛、お前は強い女だ。失敗を物ともせずバネにできる女だ」
そんなことない…弱い女、こうして失敗で座り込んでる。
「さくらが言っていたな。お前みたいになりたいと憧れだと」
私は憧れられるような存在じゃない、さくらみたいに何度も笑顔で立ち上がるなんて無理だ…
「愛、お前は「やめて!それ以上は…もう…私はあんたが思っているほど強くないし、さくらみたいに何度も立ち上がることなんてできない、弱い女なの…こんなことなら恋なんてしなきゃよかったのに……」
なのに、私は恋をしてこんなにも弱くなってしまった。
「ああ、そうだな。恋は人を弱くする…確かにその通りだ。だがな、恋は…愛は人に強い意志を与える。どんな障害でも小さく見えるような強い意志だ。お前の愛はたった一度振られただけで諦めるのか!何度だって、そう何度でもお前は挑戦できるだろ。理解されないなら理解させればいい!伝わらないなら伝えればいい!届かないなら届ければいい!それが水野愛!!お前のキャラじゃないのか!!」
それは熱い奔流だった。言葉の暴力だった。
それを受けた私はただ呆然と顔を上げて目の前にいる男を見つめてしまった。そうして、目の前の男はニヤリと口角を上げる。
「ようやく顔を上げたな。まったくひどい顔だ」
「ひどいって…それが女の子に言う言葉?」
顔を上げたらこれだ…まぁ確かにずっと泣いてたしひどい顔してると思う…ただ、気になってしまう。
こんな言葉を叩きつけたこの男はどんな恋をしたのだろう?
「ねぇ、あんたは…巽幸太郎はどんな恋をしたの?」
そう言うとあいつは暫し逡巡した後、口を開こうとして…乱入してきたサキに吹っ飛ばされた。
「愛!?大丈夫か!グラサンに手出されてねぇか!」
「手…出す?何言ってんの?」
「姐さんが言うとったんだ。グラサンは傷心の愛に手ば出そうとする狼だって…なんで顔隠してんだ?」
なんでそうなんじゃい…消え入りそうな声が聞こえる。…それよりもサキにこの顔を見せたくない。
「なんでもないわよ…気にしないで」
なんでもないと否定する私にサキは無理やり顔を見ようとしてくる。
「顔見せろや。グラサンになんかされたんじゃなかと」
「だから、なんでも、あっ…」
サキに腕を無理やり剥がされてしまった。
「そがん隠すけんなんされたかと、よかきれいな顔ばい」
私のひどい顔を見たサキはそんなことを言ってくる。
「振った女に勘違いさせるようなこと言わないでよ…」
「…愛、さっきはすまんかった。あたしは愛のこと考えとぉつもりやった。ばってん、自分のことしか考えとらんかった」
「なんでよ…さっきはなんで私のこと振ったの…」
「半端な気持ちでお前と付き合っちゃいけねぇってそう思ったけん…あがんこと言っちまった」
あいつを振って冷めやらぬ思いで部屋から逃げ出したあたしは外にいた。
寒さで気も治まるだろうと思ったが、治まるどころか大きくなるばかり
心の中はあいつのことでいっぱいだった…
「あぁックッソ、あいつが頭から離れねぇ」
自分の女々しさに嫌気がさし無意味に土を蹴ったり、悪態を吐くが思いは強くなるばかりだった。しばらく、そんな気持ちで過ごしてたら、突如頭の中が冷めていく理由はすぐに分かった。
「…愛の奴、泣いとったな」
最初は気合がまあまあある奴だとしか思っていなかった。
でも違った、あいつは自分の死を知ったうえで恐怖を覚えながら戦ったのだ。
普通じゃない奴が普通じゃないことをするのと普通の奴が普通じゃないことすることの差くらいあたしにだってわかる。
「あいつはあたしにゃもったいねぇくらいのがば強か女ばい。きっとあたしなんかよりもよかやつば見つけっさ…」
そんなことを吐き出すように言うが、本当は愛があたし以外の奴と仲良くしてる姿を見たくなかった。
あたしが一人で悶々と悩んでいたときだった…険しい顔をした姐さんがやってきたのは。
「サキはん。さっきのはなんでありんすか?」
「女同士なんて、ありえねーだろ。やけん、断ったんばい」
心がチクリと痛むが愛のためだ…しかたなか。
姐さんはあたしを見据えるとこっちに近づいてきた。
さくらみたいに張られるんだろう、あたしは甘んじて受けるつもりだ。
姐さんが一歩ずつ近づいてくる…遂にあたしの目の前まで来た。
改めてあたしの目を見据えると姐さんは手を挙げて―――
―――あたしの頭を小さかガキにするように撫でてきた。
「…んだよ……」
ふと見た姐さんの顔は愛おしげなもんをみるようだった。
「やめろってッ」
それが耐え切れなかった。手を振り払い距離を取る。
「ガキ扱いすんじゃねーばい…」
「わっちにはサキはんが童のようにしか見えんせん」
そう言うと離した距離を埋めるように近づき、また撫でてくる。
「ほんは痛いのに痛くないと強がりを言ってる童のよう…愛おしくなってしまいんす」
あたしはされるがまま姐さんの手に撫でられ続けた。
撫でられるたびにあたしの中のよくわかんないもんがほどけるような気がした。
暫く時間が経ったときだった、姐さんがわけのわからんことを言ったのは
「我が命の全けむかぎり忘れめやいや日に異には念ひ益すとも」
「今なんて言うたと?」
「大昔の恋の歌でありんす。…サキはん、人いうんは大昔から恋に悩んできなんした。あんさんがやっているんはニゲでありんす。わっちらのリーダーはそんなしょーもないおひとどすかえ?」
「…あたしは自分の気持ちがわからねぇんだ。愛のことは大切だ。ばってん、好いとるかって言われるとわかんねぇ…あたしはそんな半端な気持ちで愛の奴と付き合っちゃいけねぇと思ってる。だけん…あいつを振った……」
「サキはんはほんに不器用なおひと。恋つうんは黒か白かではっきりつけられるものではありんせん。数刻前までは好きであったと思えば、一刻後には嫌いと言ったりそんなもんでありんす。…わっちはあんさんは一度愛はんと付き合ってみるといいと思いんすよ。半端とは言いんすが、常に全力だと疲れてしまいんす。」
あたしの世界は黒か白か、敵か味方か、やるか、やらないか。当然、半端なことが嫌いだ。やるからには全力で突っ走るべきだと思っているし、それがあたしのキャラだって思っている。
だけんこそ、愛との間には中途半端なことはしたくなかった…ばってん、姐さんは付き合ってみろって言う
そういえば、少し前に愛の奴から変なこと言われたな…
「…水浴びのとき愛の奴に、胸ば触ってもよかかって聞かれたんさ。最初は怒鳴ろうと思うとった。ばってん、こいつならよかかって思うたけん、触ってもよかって言った…」
姐さんはめんどくせえあたしの相手をしてくれた。
愛へのよくわからん気持ちを話しているときだった。姐さんがポツリと呟いたのは
「はぇ、愛はんも積極的でありんすなぁ。まるで、幸太郎はんみたいでありんす」
「だけん、あたしは愛を……なんで今、グラサンの名前ば出すと?」
「今、愛はんのもとに幸太郎はんが向かっているからでありんすよ。古来より男は狼、手負いの獲物を狙うでありんしょう。傷心中の愛はんはまさに獲物そのもの。まあ、あの消極性の塊のような幸太郎はんにそんな度胸があるとは思いんせんが。…ありぃ?サキはん話の途中で行ってしまいんした…」
…もしや、サキはんは愛はんを取られると思って行ってしまいんしたか。
うーんと少しだけゆうぎりは悩んで現代で覚えた便利な言葉を使ってみることにする。
「てへぺろっでありんす」
虚しく響くてへぺろを背景に頑張りなんし、リーダー…と思わずにいられないゆうぎりであった。
幸太郎はんには、あとでさくらはんに舞でも仕込みんしょう
あぁ、女々しか…がば女々しか。自ら捨てておいて拾われそうになったらこの始末。
あたしは姐さんの話を聞いて居ても立っても居られず、あの場所までひた走る。
確信があった愛はあそこにいると…あそこで泣いていると……
いつもなら大して時間もかからないはずなのに、あの場所が遠くに思える。
疲れてもいないはずなのに息が続かないように感じる。
足が重くなり、腰が引けそうになり、このまま立ち止まりたくなる。
そんな思いでいたからか、あたしは足を引っかけてすっ転んだ。
痛覚なんてないはずなのに痛みを感じる。
「ちげぇ…こりゃ心の痛みばい」
今更になって愛に掛けた言葉への罪悪感に刺される自らの滑稽さに嘲笑してしまう。
吐いた弱音を退くようにむんずと立ち上がり前を見据え、再び足を動かす。
あと少し…階段を上り…居た!
そん時のあたしには愛がグラサンの奴に追い詰められてるように見えた。
あたしは愛を襲おうとするグラサンを突き飛ばし駆け寄った。
なぜだか愛は顔を隠そうとしてたが、無理やり確認すると涙でぐしょぐしょになっていたがきれいな顔だった。
愛から振った理由を聞かれたあたしは半端な気持ちで付き合いたくなかったから、お前のことは大切だけどそれが好いとうのかわからなかったからだと答えると…
―――あたしの頬に鋭い痛みが走った。
私はわけのわからない理由で振ったバカの頬を張る。
「これは女の子の気持ちを踏みにじった罰、…ねぇサキ。今は…あなたの今の気持ちはどうなの?」
私は聞いてみた。サキが今、私のことをどう思っているのかを…
すまん…と口が切られ。私はびくりと体が固まるのを感じた。
「…あたしにはわかんねえんだ。お前が大切なのは確かだ。ばってん、お前ば好いとうのかは。…だけん、お前と確かめたか!あたしが愛のこと好いとるんか!!半端なんは承知の上だ。愛!!こんなあたしでよかなら付き合ってくんねぇか!!」
そう言い切ったサキは私のことを見つめて答えを待っていた。
私は…落ち着いて…そう、落ち着いて考えましょう。サキは私と付き合いたいって告白してくれたのよね。じゃあきちんと答えないといけない…よし、大丈夫。
「私はあんたのがさつでぶっきらぼうで口が悪いとこが好きじゃなかった。でも、一度決めたところは曲げないとことか常にどんなことにも全力疾走するとこが好き…それで空回って失敗してたりするけど、まぁそういう時は私がフォローすればいいだけだしね。それに最近は、サキの好きじゃなかったところも無いと物足りなくなっちゃたから…その…つっ付き合ってあげてもいいわよ。あと、サキは…わっ…私のことがすっすきか…確かめたいようだけど、私は…もうあんたのこと好きだから………」
大丈夫じゃなかった。答えようとしてるだけなのに顔が真っ赤になってしまうし、なんか余計なことまで口走ってる気がする。
あぁーサキってこんなにかっこよかったっけ?恋は人を弱くしてしまうし巽の奴、愛は強い意志を与えるって言ってたのに私はもうサキに勝てそうもない。
「あー、愛?付き合ってくれるてことでよかと?」
私はがさつ女郎にはぁーと大きく溜息を吐きたくなった。
せっかくもっと好きになったのに、こいつときたら…まったく、仕方のない奴なんだから…
「付き合ってあげる。その代わり、絶対に惚れさせるから」
と言って私はサキに涙で濡れたひどい笑顔を見せる。
あたしは愛のやーらしか笑顔に照れて顔をそらしそうになるが、もう一度直視して記憶に刻む
刻んでから気付くあたし達付き合ったということはデートとかも行くのかと。
「あたしたち付き合ってんだよな…。カップルだよな。んーっと…ドラ鳥でも行くか?」
…ドラ鳥。あの掘っ立て小屋みたいな?個人的にお肉は嫌いじゃない。けどねー
「どうしてそうなんのよ!!初デートがドラ鳥って!!もっとなんかいいとこないの!?」
「あぁ!!いいじゃねえかドラ鳥。コッコさんに祝福してもらおうぜ」
そんな感じでムードもへったくれも無く怒鳴りあう私たち…なんとなく、なんとなくだけど
とても…らしいって思えた。
その時だった。無機質な電子音がなり、録画を終了しますとアナウンスが流れたのは…
巽は手に持っていたビデオカメラを懐にしまうとかっこよさげに笑い言った。
「ふぅー、どうやら俺はもうお邪魔虫のようじゃい。また、ぎゅーらしか馬に蹴られんうちにさっさと退散するかのー。…恋が叶ってよかったな愛。だが、恋愛に現を抜かしてアイドル活動をおろそかにするんは許さんからなッ!まぁ今は、そこで仲良く乳繰り合ってるんといいんじゃい。では、さらばだ」
と早口で捲し立てるように言いながら部屋から出ていく。
あと、サキィ!お前三日飯抜き、ゆうぎりはおやつ抜きじゃーーーぃとおそらく走っているのだろう少しずつ遠くなる声が外から聞こえる。
…それにしてもあいつったら、ちッ乳繰り合うって私とサキはそんな関係じゃないし…まだ。
もっもしかしたらいつかはそうなるかもしれないけど…健全にお付き合いしなきゃダメよね…とりあえず、キッキスとか…
私が色惚けしてた時にサキは冷静だった。
停止したのも一瞬で巽がここにいた理由とかゆうぎりさんの話を最後まで聞いてなかったこととか、そもそもあいつがアイドルに手を出すような奴じゃないことに気付いたのだろう。
動き出したサキは壮絶な顔をして叫ぶと巽を追い始めた。
「てめぇ、ぶっ殺す!!グラサン!!そんカメラ置いてけや!!」
まったくサキったらいつものゾが抜けてるじゃない、そういう抜けてるとこも嫌いじゃないけど…
巽とサキだけでなくいつからか他のメンバーも巻き込んだ仁義なき鬼ごっこが開催される中、私は数時間ほど惚けており、正気に戻った時にも鬼ごっこは続いてたので参加した。
私は源さくら!もうすこしでゾンビ1年生!先日の鬼ごっこでバラバラにされたけん、療養しとうたけど今はもうぴんぴんしとる!!
そんな私には悩みの種があるとよ。それは…
目の前の二人に挟まれるさくらは苦笑いするしかない、あまりにしょーもないことに付き合わされてるからだ。ちなみに他の仲間たちは危機を察知して逃げ出している。
目の前の二人、サキと愛はとある議題で闘っていた。議題の内容はどっちが先に告白したか
「えぇ、客観的に見たら私が先に告白したわ。それは認めらる気がしないでもない。けど、それは全体としてみたものでしょう?主観的に見たらあなたは私を振ったの。つまりは、そこで0に戻るのよ。そのあと、あなたは私のところに来て告白したじゃない。私はそれをOKした。そこが1…分かった?」
「分かるわけねーだろ!ぶっ殺すぞ!!お前があたしを呼び出しよって、好いとうけん付き合うてくれんかって言うたやろが」
そこまで言い切り二人はさくらを見やり問いただす。
「「どっちがただしい(か)って思うの(と)、さくら!!」」
二人に挟まれ困り顔のさくらだが、こうも思った。
こんなことでも喧嘩できる恋ってどんな気持ちになれるんだろう?
いつか恋してみたいなぁと半ば現実逃避ながらも願うさくらであった。