あの後、アインズがガゼフを見送った後私は
「ふむ───やはりここまでか。」
遂にガゼフが膝をついた。もはやガゼフ・ストロノーフには戦う体力など残っていない。現状、気力のみで立っているようなものだ。
「さて、私も行きましょうか。」
そう言ってアテナとヘカテーを連れて転移する。
「あれ?シエルさんも今来たんですか?」
どうやらアインズもガゼフと入れ替わりで今来たようだった。
「ええ、はい。」
そこで、私は念話に切り替えてアインズに話し掛ける。
『すみません、アインズさん。今回はちょっと私に任せてもらえませんか?上手くいけば情報をたんまりと得られると思うので。』
『え、はい。そう言うことなら構いません。私達は防御に徹するので。』
『すみませんね、わざわざ。』
そういい終えて念話を終える。
その間律儀に待ってくれていた法国の皆さんだが遂に堪忍袋の緒が切れたようで、隊長とおぼしき男がこちらに怒鳴ってきた。
「一体何者だ!!貴様ら!」
随分な物言いだと思った。そちらがこの村を襲ってきたのではないかと言い返したい気分だが、我慢だ我慢。
「汝等に告ぐ。」
私は鷹揚に女神のロールプレイで話し掛ける。
「即刻この村から立ち去るといい。さもなくばこの私が天罰を下さん。」
私がそう言うと男は激昂したようで更に怒鳴ってきた。
「ふざけるなよ、そんなに調子にのっておいてただで済むと思わんことだ!全天使を突撃させよ!!」
男がそう言うと召喚された天使が此方に向かってきた。
「
私がその魔法を唱えるとすべての天使が停止した。この魔法はその名の通り、下位天使を全て支配するものでそこに例外はない。これの上位に
「なっ、何だ!!?おい!天使達よ、敵を攻撃せよ!!」
男は天使にそう命令するが、全ての天使はこちらの支配下にあるので動くことはない。
さて、そろそろかな。
そう頭の中で言って、私は六対十二枚の羽を顕現させた。
「なぁ!・・・・天使、様・・・・」
「もう一度言う。汝らよ。まだ戦いを挑むか?」
「も、もも申し訳ございません!!天使様!!」
「ふむ、それは何に謝っているのか?」
「そ、それは天使様に対する数々の無礼を・・・・」
はあ?謝る相手が違うだろう。
「まあいい。汝らは何を目的にこの地に参った?正直に申されよ。」
「それは、ガゼフ・ストロノーフの抹殺、です。」
「ふむ、─────」
その時だった。空間にピシッ、という音が迸った。
『シエルさん。どうやら彼等は監視されていた様です。私の攻勢防壁に引っ掛かりました。』
すかさずアインズがそう報告を入れてきた。
『ありがとうございます。これで更に情報を引き出せます。』
「どうやら汝らは監視されていたようだな。して、心当たりは?」
私が男にそう問いかけると男もわからない様子で酷く焦っているように見えた。
「な、なぜ?本国が私を監視?」
「どうやらソナタにも事情は分からぬようだな。そう言えば汝の名前をまだ聞いていなかったな。名を何という?」
「わ、私はニグン・グリッド・ルーインと申します。法国で陽光聖典の隊長を務めております!!」
陽光聖典ですか・・・これはまた聞き出せそうですね。
「陽光聖典と────他に法国にそういう組織はあるのか?」
「は、はい!他にもあります。」
「そうか。」
どうやら法国は厄介そうですね。敵に回したのは間違いでしたかね?
「そ、それで!天使様!是非とも天使様にお返ししたい物が!!」
そう言いながらニグンは懐から一つの水晶を取り出した。
ふむ、たしかあれは魔封じの水晶でしたね。
「これには
と、半ば祈るように。それこそ信心深い信者が神に赦しを請うような(実際にそうであるが)姿であった。
それにしても、魔封じの水晶をそんな低位階の魔法に使うなんて勿体無いにも程がある。もっと最低でも第八位階の魔法でも込めておくべきなのに。
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シエルさんに任せてホントに良かったなぁー。
そう思うアインズである。
────いやぁ、シエルさんの女神ロール中々様になってるなぁ。
とか、
────スレイン法国の奴等って神を信仰してるんだなぁ。
とか、
────この世界の人類ってビーストマンとか言うやつらに追い詰められてるの!?
とか、様々な事を思ったアインズだが、一度途中で攻勢防壁が発動したのには少しだけ意外だった。まさか、こいつらが国から監視されてるなんて思わなかったから。まあ、そのお陰で更に情報を引き出せたのだが。
結局、シエルさんは彼等が定期的にわたしたちに情報を提供することで今回は見逃すと手を打った。彼等は貴重な情報源だからわたしにとっても文句のない決定だった。