レイシフトの私的な使用は法律で禁止されています 作:ペニーボイス
「オキタソージのビキニより、聖杯の回収に漕ぎ出すことが幸福への第一歩でしょう!…アマゾネスだって、です!ちびノブ達の笛や太鼓に合わせて回収中の聖晶石からキュケオーンが吹き出してくる様は圧巻で、まるで宝具演出なんだ、それが!総天然色のチェイテ城や一億総大奥を私が許さない事くらい、バビロニアじゃあ常識なんだよ!!」
交流担当の爺さんが、カルデア医務室の前で、大演説を始めた。
偶然通りがかった俺と皇女殿下。
どうやら爺さんの見舞いに来たらしいDrロマ二とダヴィンチさん、それに爺さんの看護に当たっていた感じの婦長も口をアングリと開けている。
この爺さんのぶっ飛び具合に、その場の全員が置いていかれていた。
「今こそロンドンに向かって凱旋だ!燦々たる虚影の塵は時計塔をくぐり、周波数を同じくするゴーレムとオートマタは先鋒を司れ!残APを気にするチンピラの輩は虚数潜航艇の進む道に、さながらランタンとなってはばかることはない!思い知るがいい!ホムンクルス達の心臓を!さぁ!このイベントこそ内なる海賊3年生が決めた遥かなるキャメロット!」
呆然とする皇女殿下と俺に、邪ンヌたんが合流する。
どうやら、偶然にも我々と同じく食堂へ行くつもりだったらしいが、この爺さんのトチ狂い具合には足を止めざるを得なかったようだ。
やがて爺さんは右腕をスパッと上に挙げ、宣言をする。
「進め!集まれ!私が!慢心王!!!…あ〜はははははっ!!!!」
高笑いしながら走り出す爺さん。
我に帰った婦長が全速力で爺さんを追う。
いったい身体のどこにそんなパワーを秘めていたか知らないが、爺さんは凄まじいスピードで走り抜け、婦長ですら追いつけていない。
……あのまま窓から外に飛び出したりとかしないといいが。
「分かる、シマズ?アンタもああなってたかもしれないの。」
「…つまり、流行りのテラスでハイホーしてたかもしれない…と。」
「そ。無理は禁物よ。アレから3日経つけど、ちゃんと休めてる?」
「はい、うん、休めてる。」
「なら良かったわ。…ところで、そこの皇女サマは?」
「雇用による関係とはいえ、仮にもロマノフの臣下であるならば、私にも彼の管理をする義務があります。堕落しきった生活を続けていれば、せっかくの療養も意味がありませんから。こうやって、朝食の時間くらいは合わせて彼の様子を掌握しているのです。」
「有難き幸せ…」
「はぁ……アンタ意外と
「うっ…ウゥッ…」
「な、何!?どうしたのシマズ!」
「………優ちぃ…みんな優ちぃよぉ」
…………………………………
カルデア食堂
優ちぃ優ちぃ邪ンヌたんと皇女殿下と共に食堂へ至った俺は、特別枠で支給されたエミヤ券をカウンターに出して本日の朝食が盛り付けられたプレートを受け取る。
どれどれ、本日の朝食は…
居並ぶ料理はごく普通のものだ。
スクランブルエッグに、ソーセージ、グリーンサラダと…汁物は普通のじゃないな…グヤーシュと、柔らかそうなロールパン。
ドリンクコーナーでオレンジジュース(濃縮還元のやつではなく、何かの罰なのかモーさんがオレンジを絞って作っていた)とコーヒーを取り、更にはレーンの最後で大魔女のキュケオーンを取ろうとする。
だが、私の前にいた皇女殿下がキュケオーンをスルーして一歩奥のケフィアを取ったので、俺もキュケオーンをスルーしてケフィアを取り、はちみつをかけた。
はちみつを一杯…二杯…三は
「ストップ。シマズさん、そんなにはちみつをかけてはケフィアの酸味が完全に損なわれてしまいますよ?」
いつの間にか振り返っていた皇女殿下に、俺の甘々はちみつオーバーロード作戦は阻止された。
そうですよねーいくらなんでもちょっと盛り過ぎというか何というか。
ちょうどいいところで止めりゃあいいモンを延々と欲張り続けるところが俺の悪いところというか何というか。
とにかく、これで朝食の用意は出来たので、後は座って食べる事にする。
ん〜〜〜と、どこの席にしようかな〜?
「ぐわっはっはっはっ!!」
カルデアの食堂は中々の広さを誇る。
今や数多くなったサーヴァント達と、同じくらいの数のスタッフを合わせた数の約半分を収容できるスペースがあるのだ。
そんなスペースに、一際大きな笑い声がこだまする。
何事かと笑い声の方を見ると、モノクルを掛けたエジソン博士が茶髪の精悍な軍服男と向かい合って座り、例によって馬鹿でかい笑い声を挙げているのだと分かった。
エジソン博士には前々からお世話になっていたし、1週間の療養を取る俺の勤務を肩替わりしてもらっている。
申し訳ないながらも感謝しても仕切れないほど感謝しているので、エジソン博士の隣の席に行って、挨拶でもしようと思い、俺は未だに馬鹿笑いを続けている博士の元へ向かった。
「博士…いや、これは第26代大統領閣下の方ですか。お隣に失礼してもよろしいですか?」
「おおっ!これはこれは、シマズ君じゃないか!!ハハハッ!いかにも、"
「それではお言葉に甘えて…しかし、博士には申し訳ない事を。……こういうのを聞くのもアレなんですが………何か…仰っていませんでしたか?」
「ああ!あんなに張り切っているエジソン君を見るもの久しぶりだ!!なんでも、カルデアの全ての電気設備を直流式に改造するらしい!!」
「え〝っ」
「対抗馬はテスラ君だ!これは凄いぞ、シマズ君!なんたって、あのメンロパークの魔術師とテスラ博士の電流戦争がこの目で見れるんだからな!ぐわっはっはっはっ!!」
二十八センチ榴弾砲の射撃音ではないかというぐらいの爆音を感じながら、俺はエジソン博士の隣の席に座って朝食を食べ始める。
前方には竜の魔女が、左手には皇女殿下が。
わざわざ大口径砲の隣を選んだ男にここまでついてきてくれるとか…天使かよ。
「はっはっはっ………さて。どこまで話したかな?」
「アンタの従兄弟がイギリス人に武器を送ったってところまでだが…そこの男は何者だ?」
「彼はシマズ君。この施設の電気技師だ。」
「どうぞよろしくお願いします。」
「おうっ!こちらこそよろしく!俺はナポレオン。可能性の男、虹を放つ男。勝利をもたらす為に来た、人理の大英雄だ!」
………今なんて?
ナポレオンつった?
ナポレオンって、ナポレオン・ボナパルト?
ちょっと待って、イメージと違う。
あまりに違う。
ナポレオンって白馬に乗った絵が有名だけど、背が低すぎてロバに乗ってた逸話まであるんだが。
何この長身美男子。
本当にナポレオン?
「……ああ。アーチャーで召喚されたオレは…なんというか、皆が抱いている偶像みたいなモンなんだ。皇帝ナポレオンは過去の人物。過去に執着する亡霊にはなりたくないんでね。………で、大統領閣下。従兄弟がイギリス人に武器を送ったと言ってたが、当時のドイツはそんなに強かったのか?」
「そうらしい。フランクリンの奴はチャーチルに泣きつかれて武器を送りたがってたが、当時のアメリカ世論は不介入を求めていてね。」
「あの頑強なイギリス人がそこまで追い詰められるなんてな…フランスも早々と降伏しちまったんだろう?」
「まあな、無理もない。当時のドイツは従来にない斬新な方法でフランスに攻め込んだ。我々が経験してきたよりも、より大きな幅で、より手速く。フランス軍に不手際があったにせよ、対応は難しかったろう。」
俺は朝食を取りながらも、隣で繰り広げられている魅力溢れる話には聞き耳を立てずにいられなかった。
ナポレオンは言わずと知れた高明なる指揮官、セオドア・ルーズヴェルトも米西戦争での指揮経験がある。
実際に歴史の先頭に立って戦った偉人達の話は実に引き込まれるものがあった。
今彼らが話しているのは、恐らく第二次世界大戦の話だろう。
セオドア・ルーズヴェルトの従兄弟、フランクリン・ルーズヴェルトはナチスの台頭した時期に大統領に就任した。
やがてヨーロッパでナチス・ドイツが覇権を広げると、ダンケルクで大量の武器を失ったイギリスのチャーチル首相はフランクリン・ルーズヴェルト大統領を頼るようになる。
大統領はレンドリース法を議会で可決させるが、それは1941年の事で、第二次世界大戦勃発から実に18ヶ月後の事である。
それまでは35年に可決された中立法なる法律と、孤立主義派の反対議員によって阻止されていたのだ。
未だに第一次世界大戦の苦い経験が、世論では幅を効かせていたんだろう。
その頃フランスはナチス・ドイツの支配下にあった。
先程"大統王"が述べた通り、ドイツ軍は電撃戦という革新的な方法でヨーロッパ有数の大国の攻略に成功したのだ。
それは第一次世界大戦時によく見られた塹壕戦ではなく、戦車を始めとする機甲部隊による機動戦であり、理解の不足していたフランス軍は短期間で追い込まれたのだった。
「戦車という新兵器が出来上がったのは、その前の大戦だった。ドイツ人はそれを改良して、画期的な運用法を確立したというわけだ。」
「かぁ〜!そんな戦術ならオレもやってみてえ!きっと軽歩兵や騎兵でも想像出来ない速さなんだろうな!」
ナポレオンも部隊の機動性を重視した。
イタリア戦役の頃より、ナポレオンは部隊の行軍速力によって敵を包囲・殲滅する方法を用いている。
第二次世界大戦でドイツ人が行ったのは、機甲部隊による敵防衛戦の突破、そして包囲・殲滅で、これは第一次世界大戦での浸透戦術…このSSでも以前紹介したブルシーロフ攻勢が萌芽と言える…を発展させたものだ。
ナポレオンが行ったモノよりも火力はもちろん速力にも格段の差があるから、彼が惹かれるのも、納得できるものがあった。
なんとなぁく、頭に図が浮かぶ。
三号戦車の車長ハッチで腕組みをしながら満面の笑みを浮かべる、この快男児という絵面が。
「そういえば…いや、こういった話を持ち出すのは…」
「何だ、構わねえぜ、大統領閣下。アンタと腹を割って話してえって言ったのは俺の方なんだからな。」
「……君の甥も、つまりナポレオン3世も、その、ドイツ人には"苦戦"したのだろう?」
俺はついフォークを落としたが、それは朝食を食べ終わったからではない。
何つー事言い出すんだ、この第26代大統領閣下は。
皇帝ナポレオンの甥、ルイ・ナポレオン、又の名をナポレオン3世はドイツ人相手に手こずったどころではない。
彼はビスマルク率いるプロイセンに大敗を喫し、挙句彼自身捕虜になっている。
だが、ナポレオン自身があまり顔色を変えなかったあたり、あまり気にしてはいなさそうだった。
それもそれで何となく甥に対して薄情な反応にも思えたが…しかし、次に彼が発した言葉は、そんな見解を見事に打ち砕いた。
「ルイの奴かぁ…アイツもアイツなりに上手くやってたんだがな。」
「おや?………ああ、失礼。残念ながら、ナポレオン3世の評判は、後世あまり良くないのでな。」
「ヒトの評判なんて気にしてどうすんだ?俺だって、エジプト遠征の時にペストに罹った大勢の将兵を置き去りにしちまった。アンタも経験はあるだろうが、指揮官は時に非情なまでの決断を強いられる事もある。そもそも、山ほど多くの決断を、常に強いられているんだ。」
ペスト患者を見舞うナポレオンの絵画は有名だが、それはペストに罹った将兵を置き去りにしたナポレオンが責任を問われるのを避けるために後に描かせた物だと言われる。
ナポレオンはそういった"評価"は気にしても、他者からの"評判"は気にしていなかったのだろう。
それを跳ね除けて、非情極まりない選択を行うにはかなり強い意志が必要となる。
ナポレオンはそれを持ち合わせてもいたからこそ、かの栄光を掴み取ったのかもしれない。
「ルイの奴は確かにしくじった。だが、それだけじゃないだろう?フランス第二帝政の"皇帝"になった男だ。それなりの功績はあるハズだぜ?」
「うぅん…シマズ君、知ってるかね?」
「ナポレオン3世といえば、メキシコ出兵の失敗や普仏戦争での失態が目立ちがちですが…金融の近代化や鉄道網の整備、パリの都市計画は近年再評価されているそうです。…でも、それより忘れてはならないのは、海外植民地の獲得でしょう。」
フランスから遠く中国で、アロー戦争が起こったのはまさにルイ・ナポレオンの時代だった。
ベトナム戦争といえば反戦運動やヒッピーが思い浮かぶかもしれないが、そもそもあの戦争はベトナム人の独立戦争で、そしてベトナムは元々フランスの植民地。
いつフランスの植民地になったのかといえば、これもナポレオン3世の時代である。
フランス植民地帝国の素地を創り上げたのは、まさにルイ・ナポレオンだったのだ。
「誰にでも功罪はあるものさ。アンタの従兄弟にだって、悪評もあるんだろう?」
「ああ、そうらしい。…共産主義者の取り巻きに囲まれてた、とか。真珠湾は陰謀だった、とか。」
「ほらな?…まあ、何が言いたいかというとだな。俺もアンタも…ルイもアンタの従兄弟も、生きてる間は全力でやってきたに違いないんだ。その評価なんてのは後世の人間に任せておけばいい。どちらにせよ、死んじまった後俺たちにできるのは…見守る事だけさ。」
ナポレオンは少々椅子にもたれ掛かって一息をつく。
彼の生涯は正に波乱万丈。
ありとあらゆる創作物のテーマになったり、評論文が書かれたり、論じられたりしている。
だが、誰がどう言ったところで、ナポレオンの生涯はもう変えることはできない。
想像を膨らませて「もし、ああしておけば」と語ることは自由だが、それは教訓として域を出てはならないのではないだろうか。
過去の偉人達は偉大な功績とともに、偉大な教訓をも残している。
ただ一面を見て評価を下すのではなく、さまざまな方向から見る事で、偉人達の姿はより立体的に見えてくる事だろう。
そしてそれは…その人物に対する評価をも一変させるかもしれない。
合衆国第26代大統領閣下とフランス皇帝ナポレオンの取り止めのない話は、まだ随分魅力あるものを感じられたが、しかし、俺は朝食をすっかり食べ終わったので自室に帰る事にする。
いただいたお休みはあと4日。
しっかりと休んで、英気を養わせてもらおう。
何故か、自室にまで皇女殿下がお付き添い下さったことに気がついたのは到着した後のこと。
俺は全く気が付かずにタバコを取り出したところで、慌ててそれを引っ込めた。
よく見ると、皇女殿下の右手には大きな紙袋がぶら下がっている。
「ふふん♪シマズさん、実は、今日プレゼントを持ってきました。」
「おおっ!何という幸せ!皇女殿下から直接下賜いただけるとは…」
「では、どうぞ受け取ってください。」
皇女殿下から紙袋を受け取る。
アレかな、イースターエッグ詰め合わせとかかな?
そうは思ったものの、紙袋に入っているのは深緑色の衣類のようだった。
こ、これは…
「我がロマノフの臣下、帝政ロシア軍の軍服です…正しくは、軍服風の作業着ですが。工兵隊のモノを参考に作りました。」
「……………」
「シマズさんの作業着があまりにも汚れていたので、新しい作業着を差し上げようと思って。ヴラド公に教えていただきながら、作ってみたんです。……シマズさん?泣いているの?」
俺はベッドに座って、作業着を膝の上に置きながら、顔を手で覆って涙していた。
さっき大統領と皇帝が家族の話をしていたからかもしれない。
普段の作業着の薄汚さを気にかけて、わざわざ新調してくれた皇女殿下の温かさは、昔から俺を心配してくれていた母親の事を思い出させたのだ。
皇女殿下にその訳を話すと、彼女は優しい微笑みを投げかけて、俺の隣に座り込む。
そっと目を閉じて、昔を思い出すように、ゆっくりと、優しく語りかける。
「………弟のアレクセイは、軍服が好きな子だった。…私も大統領と皇帝陛下のお話を聞いて、ちょっと家族が恋しくなったわ。ねえ、シマズさん。あと少し隣にいて、お茶でもご一緒していいかしら?」
俺は嗚咽でまともに返事を返せないままに、手近にあった電気ケトルのスイッチを入れる。
ケトルは湯を沸かし、すぐに温かくなった。
皇女殿下を皇女殿下させすぎてますし、この間の邪ン姉さんといいお前何なんだと思うかもしれませんがお許しください。
星5サバ交換で皇女殿下お迎えして、挙句の果てにピックアップで邪ン姉さん出たんだもん!
ウソじゃないもん!トト●いたもん!
うっしゃあああああ↑↑↑↑↑
というテンションがね、止まらなくてね(何言ってんのこいつぁ)