レイシフトの私的な使用は法律で禁止されています   作:ペニーボイス

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設定ガバらせるのが私の専門です、ごめんなさい(おい

邪ンヌちゃんの記憶に関しては怪しい部分しかありませんが、聖女様よりも彼女の口調を書きたい欲望に勝てませんでしたお許しを


Ⅱ トゥーレルの矢

 

 

「なんの…ご用件でしょうか?」

 

「………」

 

 

竜の魔女は俺を見たまま動こうともしない。

何を待っていらっしゃるんでしょうかお嬢様。

とりあえず、なにかを待ってそうなので、お紅茶を淹れさせていただくことにした。

 

何か怒りを招いてピエール・コーション司祭みたく丸焦げにされちゃたまったもんじゃない。

あの司祭丸焦げどころか骨も残ってなかったような…考えないほうがいいね。

ともかく、俺は一般ピーポーだし、一般ピーポーがサーヴァントを相手にする上で気にしなければならないのは、ご機嫌斜めにしないようにする事だろう。

相手が中世フランスを真っ黒焦げにした竜の魔女なら尚更のこと。

 

 

俺は彼女のご機嫌を取るため、ティーカップの中にブランド紅茶のティーバッグを入れてお湯を注ぐ。

本来ならティーポットかサモワールで淹れるのがベストなようにも思えるが、俺の私室にはそんな物ないのだ仕方ない。

 

3分後にはティーバッグを捨てて、出来上がりの紅茶にグラニュー糖を入れる。

よくかき混ぜた後、竜の魔女にそれを手渡すと、少し不機嫌な顔をしつつもそれを飲んで下さった。

 

 

「ふぅ…なかなかイイ趣味してるじゃない。」

 

「お、お褒めいただきッ」

 

「で、アレは?」

 

「ア、アレ?」

 

「タバコよ!タバコ!!アンタ本当に鈍いのね!!!」

 

「ヒィィィイッ!!」

 

「あと、もう少し落ち着きなさいッ!別にアンタを燃やすとか言ったわけじゃないんだからっ!ていうか、私の方が勝手に部屋入り込んでんのに、なんでアンタが気を遣うのよ!?」

 

 

ま、そう言われればそうなんですけどね。

でも貴女アレじゃん?

竜の魔女じゃん?

フランスをこんがり美味しく焼いちゃってたじゃん?

怖がるなっつー方が無理といいますか。

 

とりあえず、邪ンヌがタバコをご所望というところで、俺はポケットからタバコを取り出して彼女に渡す。

 

 

「誰が一箱寄越せなんて言ったのよ。一本でいいわ、一本で。………そ、その……ありがとう。」

 

 

おっと、いかん。

死にかけた。

死ぬとこだった。

せっかくレフ・ライノールによるテロ行為から逃れたってのに、死ぬとこだった。

あぶねえ、あぶねえ。

尊死って本当にあるんだね、気をつけよう。

 

私はライターを取り出し、邪ンヌの咥えるタバコの先端へ持っていく。

絵面はどっかの工業高校そのまんまである。

DQNのタバコに火ぃつけるパシリか俺は。

だが、俺のオイルライターはカチンカチンと悲しい金属音をたてるだけで一向に機能しない。

あ、あれ〜?

おっかしいなぁ。

オイル切れかなぁ。

 

 

「はぁぁぁ。…そんなのなくても大丈夫よ。…デュヘイン。」

 

 

邪ンヌが人差し指をタバコの先端へ持って行き、呪文のようなモノを唱えると、人差し指から小さな炎が沸いてタバコに火をつけた。

 

 

「ほら、アンタも吸いに来たんでしょう?」

 

 

邪ンヌが俺にもタバコを咥えさせて、同じように火を付けてくれた。

竜の魔女の炎で吸う煙草の、何とうまい事か。

 

 

「身に余るこうえ」

 

「普通に喋らないと燃やすわよ?」

 

「ありがとうございます」

 

「それでよし。」

 

「しっかしまあ、タバコなら売店でも売ってるでしょう。何でまた俺の部屋なんかに…」

 

「マスターちゃんに悪い影響を与えたくないの。健康的にも、倫理的にも、ね。」

 

「な、なるほどぉ…」

 

 

邪んデレし過ぎてない?

竜の魔女ってこんなんだったっけ?

 

俺は電力関係のエンジニアなので、魔力なんたらかんたらのレイシフトうんたらかんたらとか言われてもサッパリわからん。

そもそも仕事場が違うし、人理の修正とかなんとかで盛り上がってるDr.ロマ二を遠目に見つめるぐらいしか出来るこたぁない。

 

ただ、この竜の魔女がおフランスで何やらかしたかは知っていたし、ピエール・コーションなる司祭を丸焼きにしたのは運悪く映像で見てたし、そもそもこのカルデアにいらっしゃった時も周りに圧力と嫌味を振りまいてたハズなのだ。

 

それが今や藤丸立香なる少女の事をマスターちゃんなどと呼び、俺を尊死へ導かんとしているのである。

エラい変わりようっつーかそもそも別の人格の他人なんじゃなかろうか。

 

 

 

その邪ンヌはまだ、紅茶片手に燃焼促進剤の入っていないタバコをゆっくりと吸っている。

 

うぅん…さっき、ご機嫌斜めにさせちゃマズいって言ったけど、ここまで邪んデレてる邪ンヌなら大丈夫でしょう。

ちょっとくらいの雑談で燃やされるなら、もうとっくの昔に燃やされてそうだし。

ん〜、でもトラウマにガッツリ触れそうだからやめとくかなぁ。

 

 

「何よ?話したい事があれば話せばいいじゃない?」

 

「え、いいんっすか?」

 

「多少なら付き合ってあげてもいいわ。」

 

「本当に?」

 

「いいわよ」

 

「本当に?」

 

「いいわよ」

 

「本当「燃やすわよ?」

 

 

聞きたい事あるならとっとと聞けや発言をいただいたので、俺はそのご厚意に甘える事にした。

 

 

「実は…歴史について興味がありまして…」

 

「へぇ。私が火刑に処された時の事でも聞きたいの?」

 

「とんでもない。…百年戦争当時の戦いで、いっちゃん苦労したのは何ですか?」

 

 

まあ、無茶振りしちゃいましたわ、テヘペロ。

そもそも彼女、何を隠そう元はと言えばジルドレ元帥の願望の塊みたいなもんで、故にそれまでの記憶持ってるかどうかは怪しいもんっすからねえすいませんねえつい聞いてみたかったんですよなんか覚えてたりしないかなぁって思ってさあでもごめんね流石に無茶振りが過ぎ

 

 

「兵士の士気…かしらね。」

 

 

あっ、そういう事ですか。

神様の啓示を受けてからアクション起こすまでの記憶はなくとも、アクション起こした後の記憶はあるんすか。

 

しかしまあ、兵士の士気…かぁ。

偏見かもしれんけど、ジャンヌ・ダルクに率いられるフランス兵ってもんすっごい士気高いイメージが頭から離れない。

 

 

「…ああ。聖女サマのイメージが強いから、想像は難しいかもしれないわね。」

 

「正直言って、難しいっす。」

 

「いい?百年戦争が再燃した理由は、シャルル7世の即位よ。徒歩兵を構成する農民からすれば、王様が誰であろうが基本関係はないでしょう?」

 

「まあ、確かに、そうかもしれませんな。政治の質にも左右されるでしょうけど、基本的には王家の云々より自分の畑でしょう。」

 

「フランス王家に忠実な農民達も確かにいたわ。でも、百年間も断続的に戦争してんのよ?その間にペストが流行ったり、農民自身が反乱を起こしたり。」

 

 

ジャンヌ・ダルクの生誕した、フランス東部のドンレミ村はフランス王家への忠誠心の高い地域だったようだ。

しかし、他の地域も同様であったとは限らない。

ペストが流行していた1358年にはジャックリーの反乱と呼ばれる農民主体の反乱が起きている。

フランスだけではなく、この点はイギリスも同様で、1381年にワット=タイラーの乱が起きていた。

いずれも封建反動と呼ばれる領主による収奪が原因で、共に全国規模に広がっている。

 

 

「農民の士気も大変だったけど、騎士の方も大変だったわ。」

 

「騎士!?騎士の士気って往々にして高いイメージしかないんですが!?」

 

「アジャンクールの戦いで、フランスの重装騎士達はイングランドの長弓兵にコテンパンにされた。当時のフランスのバカ貴族共は、戦時だってのに団結しようともせず、『雄々しく突撃するのが騎兵の華』なんて考え方してたわけ。あの頑固馬鹿共説得すんの、どんだけ大変だったか。」

 

 

オルレアン包囲戦について調べると、当初王太子が信用してくれず「修道院行って検査受けてこい」って言われたり、指揮官達がジャンヌに何も知らせず進軍ルート変えてたりとかされてる。

まあ、本職の軍人からすれば、何の訓練も経験もない少女に「神様のお告げ」云々言われて信じろって方が無理な話かもしれない。

 

 

「当時の士気ってのは戦況における影響の割合が高いもんだから、色々と手を打ったりしたわ。オルレアンの周辺で何度も道路をパレードしてパンを配ったり、足怪我した後も野営地に加わってみたり。トゥーレル砦の時なんか、射たれたボルトをその場で引き抜いて戦列に戻ったのよ?」

 

「………痛かったっすよね?」

 

「めっちゃ痛かった。」

 

 

 

ですよねぇ〜。

おっと、気づけば手にするタバコの火は根元まで迫っている。

火が私の手元へと追撃戦を仕掛ける前に、私は灰皿を探し出して火を消す。

そこに邪ンヌのタバコが加わったあと、私はそれを吸い殻入れへ投げ入れた。

 

 

「また貰いに来てもいい?」

 

「歓迎しますよ。」

 

「そ。それじゃあ、マスターちゃんのとこへ戻るわ。」

 

 

邪ンヌはそう言って、華麗に回れ右してドアから出て行く。

うーむ、面白い話を聞けたなぁ。

こういうのもたまにはすっげえ気分転換になるっつーか。

 

さてさて、俺ももうそろそろ戻らねばならない。

 

ドアへ向かった途端、ドアが勝手に開いた。

何事かと身構えるが、ドアの向こうから現れたのは邪ンヌだった。

 

 

「どうしたんすか?」

 

「アンタ、フリ●クとか持ってない?」

 

 

生活指導の先生が怖いヤンキーかよ。

 

 

 

 

 

 

 

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