レイシフトの私的な使用は法律で禁止されています   作:ペニーボイス

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今回キャラ崩壊多目です(何を今更)
てか一部瓦解してます、すいません


36 ミール・オブ・ブリテン

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんな事を考える日が来るとは思わなかったし、できればこんな日を迎えたくもなかった。

 大した事をしてないのにイースターエッグで召抱えられ、42年の東部前線を共に経験した皇女殿下に対して忠誠以外の何物も抱く事はない。

 だけれどもコレはちょっと考えものと申しますか。

 

 

 その日の朝1番から、殿下のご様子は少しばかりおかしかった。

 うん、その…主に声が。

 声がどう考えたっておかしい。

 

 何たって、CV:小山●美…つまるところのバララ●カ

 皇女殿下はその麗しいお見た目にも関わらず、ドスの効いたバララ●カボイスを使いこなしていた。

 

 

「軍曹、支度はできたか?…よし。それでは、これより会合場所へと向かう。先導しろ。」

 

 

 皇女殿下CV:バララ●カの命令により、俺は片手にアタッシュケースを提げて殿下の3歩前を進む。

 眉間にシワを寄せてガンを飛ばしている殿下がその後を歩いて、サングラスを掛けた邪ン姉さんが更にその後に続いていた。

 もうここまで来るとロマノフ家の皇女殿下とは呼べない気がする。

 今の彼女はロシアンマフィアの頭目だ。

 

 

 さて。

 ロシアンマフィアと化した我々が向かっているのは、カルデアの会議室(D)である。

 今日はどうやらそこで、カルデアに巣食う4つの組織の会合があるらしい。

 我々『カルデア=ロマノフ家』はその内の一つとして参加するのだが、議題については何一つ知らされてない。

 それとなく聞いてみたが

 

「心配するな軍曹。貴様は私の側に控えていれば良い。」

 

 と貫禄たっぷりのアネさんボイスで言われた。

 

 

 アネさん皇女殿下と我々従者2人はやがて会議室(D)のドアの前に至る。

 そのドアの両脇にはこれまたサングラスを掛けた燕青と荊軻さんがいて、我々を見るなり声をかけてきた。

 

 

「ん?…ああ、ロマノフ家か。集合時間ジャストタイム、会議はお前たち待ちだ。」

 

「我々は時間通りに行動するように訓練を受けている」

 

 受けてないよ?

 殿下、少なくとも私めはそんな訓練受けてませんよ?

 

「………ボディチェック完了。通ってよし。」

 

 

 俺は燕青の、殿下と邪ン姉さんは荊軻のボディチェックを受けた後、会議室の中へと歩を進める。

 燕青の言う通り、中には4つの勢力の代表たちが卓を囲んで待ち構えていた。

 その内の1人が、少し遅れての到着となった皇女殿下を挑発する。

 

 

「…ふん…やはりロシアの道路は整備が進んでないと見えます。随分と悠長ですね、白雪顔(スノーフェイス)。」

 

「ブリ公の漫談を聞くのが今日の議題?…それならあなたを永久凍土に埋めて、もうお開きにしましょうか、水着獅子王(バニーガール)。」

 

 

 のっけから場の空気に緊張が走る。

 セクスィなバニー衣装に身を包んだ水着獅子王の両脇には、ギラギラしたスーツを纏ったランスロット卿とベディヴィエール卿が控え、こちらにガンを飛ばす。

 あ、あの殿下?

 邪ン姉さんならともかく、俺とか何の戦力にもなりませんよ?

 拳銃置いてきちゃったし。

 こんな事になるんならどっかに隠して持ってくるんだった。

 

 

 顔合わせ早々臨戦態勢をとる殿下と水着獅子王に、またしてもややこしい人物が横槍を入れる。

 

 

「お前ら何マリィをシカトしとんじゃッボケェ!!」

 

「テメェらギロチンにかけてここをヴォルテール広場にしたろかッ!?」

 

 

 何事かと見ればこれまたギラギラしたスーツを着たアマデウスとサンソンが怒声を放っている。

 彼らの間には、普段の帽子を取り外し、見事なブロンドヘアを複雑極まりない形にまとめたマリー・アントワネットがワイン片手に控えていた。

 

 何てこった…もうそろそろ頭痛薬が欲しい

 

 

 

「静粛に!…此度君達を召集したのは、内紛を始めるためではない。その事をどうか忘れることのないように。」

 

 

 静かな語り口が、お互いガンを飛ばし続ける殿下と獅子王、クソ喧しくて仕方のないマリー一味を黙らせたのはその時だった。

 その人物は卓を囲むそれぞれの誰よりも重々しい語り口を用いていたが、その見た目はあどけなさの残る少女のそれである。

 側にクロームのメイドを控えさせるその少女は、卓に両肘をついて、組んだ両手の上に顎を載せながら我々を一通り見回すと、再び口を開いた。

 

 

「…我々は共通の目的のために集ったはずだ。もし、ここで我々が仲違いを起こし、お互いを相手に抗争を始めれば、司法の連中は今日を祝ってパーティを始めるだろうな。」

 

 

 見た目は少女なのに、その言葉には相当な重みがある。

 彼女の名はライネス・エルメロイ・アーチゾ

 若干15歳にして、エルメロイ家の次期当主とされている人物である。

 彼女が今サーヴァントとしてここにいるのは、彼女をある英霊が依代としているからだ。

 その英霊とは司馬懿。

 あの三国志において、諸葛孔明と並び称される軍師である。

 

 司馬懿もといライネス氏の発言には耳を疑った。

 え、殿下って何か犯罪に手を染めてたんですか?

 もしかして俺も知らず知らずの内にその共犯になってたりします?

 そもそも司法って、具体的に誰???

 

 ライネス氏のおかげで内紛は避けられたわけだが、しかし危機が去ったわけではない。

 もしかすると何かしらの悪巧みがこの場で組まれるかもしれないのだ。

 できれば巻き込まれたくもないわけだが、場の雰囲気からして逃げられそうもない。

 挙句のはてには皇女殿下がガンを飛ばしながらも震えるお手で私めの手をギュッと掴んでくる。

 バララ●カ顔でそういうのはやめてもらえませんか殿下。

 

 

「それでは、これより会議を行うとしよう。本日の議題…それは………」

 

「!!」

 

「!!」

 

「!!」

 

 ライネス氏の宣言に、殿下、バニ上、王妃のいずれもが身を乗り出した。

 場は緊張に満ち、何かとんでもない陰謀が企まんとされている空気すらある。

 やがて彼女は静かに、こう言った。

 

 

来月のエミヤ食堂希望献立を決定する!!

 

 

 はい?

 あまりにも突拍子もない発言に、俺は逆に度肝を抜かれた。

 その、何というか…給食委員会みたいなのをこんな重々しい会議をわざわざ開いて決めていたのが信じられない。

 

 そもそも会議しなきゃいけない議題か、これ?

 皆がそれぞれ食べたいモノを各々書いて出せば良いんじゃないの?

 それが本来あるべき姿なんじゃないのかなあ?

 

 俺の個人的な思いを知ってか知らずか、まずは皇女殿下が手を挙げる。

 今まで見たことないほど自信に満ち溢れ、得意満面といった表情を浮かべる殿下もまた可愛らしい。

 

 

「私はカルデア=ロマノフ家の当主として、昨晩じっくりと思慮を重ねて参りました。」

 

 あ、よかった。

 声優が元に戻ってるわ。

 

「…シマズさん、アタッシュケースからボードを。」

 

 

 皇女殿下に命じられた通り、俺はアタッシュケースからボードを取り出して会議の面々に提示してみせる。

 書かれているのは…

 

 

「これが、我々カルデア=ロマノフ家が提示する案…一晩考えを煮詰め、この案に辿り着きました。」

 

 

『牛肉の何か』

 

 

 いや、せめて料理の名前書いてください皇女殿下。

 牛肉の何かってなんですか?

 ロシア料理なら普通にビーフストロガノフって書けば良くないですか?

 ベタ過ぎるけどピロシキやボルシチって書いた方がまだ良かったと思いますよ?

 考え全然煮詰まってませんよね、むしろ半熟ですよね、コレ。

 

 

 今世紀最大級のドヤ顔を披露する皇女殿下の案を、王妃様が鼻先でフッと笑ってみせる。

 

 

「アナスタシア、あなたの案はとても素敵だけれど、後一歩が足りないわ。」

 

 

 そもそも料理名すら決めてないのに"とても素敵"との評価をなされる王妃様の感性に目を剥いていると、横から邪ン姉さんに肘で突かれる。

 

 

「こういうのはマトモに考えたら負けよ、シマズ。」

 

「そ、そういうもんなんでしょうか…」

 

「そういうモンなの。」

 

 

 邪ン姉さんとコソコソ話している間にも、王妃様の隣に控えるサンソンがボードを取り出して我々に提示する。

 

 

「これが、私達『ヴィヴァ・ラ・フランセーズ』の答え。…カルデアの皆様方にも支持されるヴィヴァ・ラ・フランスな案よ!」

 

 

『エスカルゴバター』

 

 

 ハードルが高い

 確かに食べた事はないけどハードルが高い。

 主に心理的なハードルがあまりにも高すぎる。

 

 もっとね、フランス料理なら色々とレパートリーがあると思うんです。

 牛肉のブルゴーニュ風とか、舌ヒラメのムニエルとか、ビスクやポトフという選択肢もあるでしょう?

 何故数あるメニューの中からわざわざエスカルゴを選ぶ?

 何故そんなハードルの高いメニューを選ぶんです王妃様?

 

 

 

 今度は水着獅子王が鼻先で殿下と王妃様をフッと笑い、意見を述べた。

 

 

「お二人共、真に必要とされているモノをわかっていませんね。ここ数日間、カルデア食堂のメニューには肉料理が目立ちます。カルデア職員達の栄養管理の為にも、我々はバランスを取る事を提言しなければならない。」

 

 

 おお!バニ上マトモ!

 このメンツの中で一番まともな提案をしてくれそうな雰囲気のある彼女は、机の下から自らボードを取り出した。

 しかし、俺はそのボードを見てバニ上に幻滅する。

 

 

『ウナギのゼリー寄せ』

 

 

「王よ!ご乱心ですか!?」

 

「正気にお戻りください、我が王!!」

 

「待ちなさい!何も、考えもせずにこの案を出したわけではありません!…その…何というか……あのように雑な料理を味わったことがあるのが我々ブリテンのサーヴァントだけとは、不公平というものではありませんか!」

 

 ただの嫌がらせっつーんだよ、ソレ!

 

「我が王、今一度お考え直しを!アレをエミヤ殿に提案するということは、我々もそれを口にしなければならないということ!」

 

「アレは正に諸刃の剣!我々にも被害が及びかねます!」

 

 

 生物兵器扱いかよ!?

 そもそも提案すんじゃねえよ!

 どうしてくれんのよ!

 王妃様が興味ありげに身を乗り出してんだけど!?

 アレか!?

 大抵うまいモンは食ったから、何かこう、新しいものが食べたい的なアレですか王妃様!?

 

 

「ふん………私としてはコレを推したいと思うのだが…」

 

 

 ライネス氏がため息混じりに手を挙げて、側のメイドさんがボードを掲げてみせる。

 

 

『青椒牛肉絲』(チンジャオロース)

 

 

 それで良いです、てかそれが一番良いですぅ!!

 殿下、ほら出ましたよ!

 アレこそまさしく牛肉っぽい何かですよ!

 

 

「ウナギのゼリー寄せ…確かに美味しそうな」

 

「美味しくないです、殿下。絶対美味しくないです。それより、ほら、ライネス氏の提案に乗りましょう。アレぞ牛肉料理です。」

 

「え?…アレは牛肉料理の名前なの?…初めて見ますね。」

 

「是非とも試された方がよろしいかと。とても美味しい牛肉料理です。」

 

 

 俺が殿下を説得してる間にも、フランス勢はコソコソと話し込んでいる。

 どうやらアマデウスとサンソンが必死に王妃様を説得しているらしい。

 

 ブリテン勢に目を向けると、こちらはこちらで内紛が巻き起こっている。

 

 

「…私の案に賛同できないのであれば代案を示しなさい!」

 

「では、我が王。僭越ながらこのベディヴィエールが対案を提案致します。」

 

 そう言いながらバニ上にボードをみせるベディヴィエール卿。

 

『スターゲイジーパイ』

 

 

 もう正にカオスの状態である。

 

 

 ウナギのゼリー寄せにしろ、スターゲイジーパイにしろ。

 イギリス料理が不味いのには理由がある。

 バニ上や円卓騎士団の時代なら、おそらくは他の欧州諸国ともそれほど差はなかったと思う。

 イギリス料理が本格的に評価を落としたのは、主に産業革命期が原因であった。

 

 

 イギリスは言わずもがな産業革命期の震源地であった。

 労働者階級はそれまでの"陽が登ってから陽が沈むまで"という牧歌的な生活から、時計という精密機械によって縛られる生活へと、その生活様式を変えなければならなかった。

 

 産業革命期の労働とは全くもって過酷なものである。

 まだカール・マルクスもいなかった時代、貧富の格差は急速に拡大。

 資本家はひたすら労働者をこき使い、それを咎めるための法も、労働者同士が結束するための組合も存在しなかったのだ。

 

 資本家達はより大きな利益を挙げるために、安い賃金で労働者を長時間働かせるようになる。

 そうなると、労働者達は自分達の生活のために使える時間を侵食されることとなった。

 つまるところ、イギリス人労働者たちの家庭では夫婦揃って工場勤務ということも珍しくなく、調理に時間をかけられなくなっていったのだ。

 

 その為、食材を過剰なまでに加熱して、衛生的な安全を確保したのちに流し込むという、何かしらの作業に近いことが行われるに至った。

 よって味付けなど気にも留めなかったのだ。

 他にも色々と理由はあるようだが、これがその一説とされている。

 

 

 

 この人類の叡智を集めた施設において、そんな料理出されたらたまったモンじゃない!

 やがてライネス氏が再び静粛を要求し、会議の決を取り始めた時、俺はどうかブリテン勢の要求だけは取り上げられないよう、心の底から祈っていた。

 

 

 

「それでは、結果を集計するとしよう。まずは、水着獅子王の案に賛同する者。」

 

 バニ上1人だけ手を挙げて、後は沈黙。

 

「では、マリー・アントワネットの案に賛同する者。」

 

 王妃様だけ手を挙げて、後は沈黙。

 

「では…私の案に賛同する者。」

 

 

 ライネス氏と、皇女殿下が手を挙げる。

 アーチボルト家次期当主は、ちょっと意外そうな顔をして、口元を綻ばせた。

 

 

「ふむ…なるほど。では、私の案で決まりだな。各勢力は希望献立にこの案を挙げるように。」

 

 

 ここまで来てやっと、俺はライネス氏の目論見に気がついた。

 わざわざこんな会議を開いたのは、集中豪雨的な票集めをして、それぞれにとって最も都合の良い結果を出す為なのだと。

 

 彼女の考えには流石と思わずにはいられなかったが、俺の頭の中でより安堵感を得られた事柄は、ウナギのゼリー寄せやエスカルゴバターを口にせずに済むということだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ライネス先生にはまた今度三国志ネタで出てもらう予定です。
ぶっちゃけると三合会書いてみたかっただけで歴史内容ペラッペラなんですがたまにはこういうのもええかなと
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