業の軌跡   作:蕾琉&昇華

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お久しぶりです。昇華です。
更新がここまで遅くなってしまい誠に申し訳ありません。
テストが被ったりスマホが壊れたりといろいろあったんですよ、ええ。言い訳ですけど......
次からは出来るだけ速く出来るように頑張ります、ええ勿論。
今回は長めとなっております。詳しく言えば一万三千字ほどです。後今見返したら時系列がおかしくなっていました。すいません。

それでは本編をどうぞ


5.四章

自由行動日。

 

俺は朝から起きて朝飯(分校の教師と生徒全員分)を作り、朝のリーブスに出ようとしたとき、ポストに何かが入っているのが確認できた。

 

「ん?なんだこれ?」

 

そこに入っていたものは、

 

『これは皆の依頼の中から選別したもののまとめた用紙だよ。依頼頑張ってねシオン君!

                   トワ』

 

書かれていた内容を何度か読み返して意味を理解しようと奮闘するが、全く脈絡が無さすぎて混乱する。

とりあえずトワさんの説明書きと同封されていた依頼用紙を確認してみるが、

 

「クルトはまあ、あいつらしいし理解できるが......もうひとつはなんだこれ」

 

一つめのクルトからの依頼は、模擬戦をしてくれと言う簡単なものだったがもうひとつが頭おかしいんじゃないかと思うものだったが。

 

『機甲兵の運用テスト  依頼者-G・シュミット

内容 機甲兵の調整が終わったのでテストをしたい。貴様なら生身でも機甲兵と戦えるだろう』

 

いや頭おかしいだろ!?生身ってなんだよ!それに依頼者がシュミットってところも信用できない。だって研究しか頭にないあいつだし、まあ、やれないことは無いだろうからやるが。

 

「さてと、それじゃあ1日始めますか」

 

頬を叩き、寮の扉に手をかけた。

 

 --依頼。クルトとの模擬戦--

 

クルトとの模擬戦をグラウンドには既に双剣を持ち、素振りをしていたところに声をかけて依頼について話していた。

 

「ありがとう、僕の依頼を受けてくれて」

 

「うん?特に感謝されることでもないと思うが」

 

「いいや、君は十二分に強い。そんな君と戦えるならそれは感謝するべきことだから」

 

「そうか、ま、気にするほどのことでも無いしさっさと始めるか」

 

そう言って俺は剣を呼び出す。

その剣は装飾などは一切なく、相手を斬るための刃に、手を守るための鍔、そして剣を振るうための柄だけの武骨な片手剣。

それを左手で持ち、中段で構える。

それを見たクルトは双剣をヴァンダール流のなかなか見ない型をとる。

 

「いくぜクルト」

 

「ああ、宜しく頼む」

 

お互いに動くことなく依頼、俺との模擬戦が始まる。

先に動いたのはクルトの方だった。

俺に向かって走って接近し、双剣を振るう。それを片手剣で反らしながら、がら空きの腹に拳を突き刺す。

 

「ぐふぅっ!?」

 

鳩尾にもろに拳を受けたクルトは大きく体を曲げ動きを止める。そこに俺のハイキックが刺さる。

そのまま吹き飛んだクルトはどうにか体勢を建て直し着地する。しかし、息を整える暇すらあたえずに上からの振り下ろしを叩き込む。ギリギリで双剣を交差させて防ぐが体が大きく沈みこむ。

いったん剣を上げ、バックステップを取って下から振り上げる。それをギリギリで避けるクルトは、苦し紛れに双剣を振るい、大きく距離を取る。

しかし、それを俺は許さない。

右手に作り出した短刀を持ち投げつける。それはクルトの脇腹を軽く掠める。

さらにその上から片手剣を叩き付け、追撃を加え、それを防御したクルトに対してその上からまた片手剣を叩き付ける。

 

「うっ!?っはぁぁああぁぁぁっ!!」

 

何度も叩き付けられる片手剣の威力に押され始めるクルトだが、双剣で片手剣を弾きそのまま綺麗な連撃をくりだす。

上から、袈裟懸け、一文字、等々複数の角度から斬撃が狭い来るがそれを反らし弾き生まれた空間に体をねじりこんで回避する。攻撃が終わったタイミングでカウンターを決めようとしたが、素早く振るった双剣に防がれる。

そのまま弾かれ、カウンターを受け浅く腹を裂かれるが素早く後ろに下がり、精製したナイフを投げて牽制する。

 

「『我が求は三色の武具!』」

 

左手の掌をクルトに向けて、真に世界に影響を及ぼす言葉を紡ぐ。

すると俺の背後に赤い宝石で型どられた大剣と青い木を削られて作られた片手剣そして緑の液体で形成されている槍が現れる。

それは大剣、槍、片手剣の順にクルトに向かって飛来する。クルトは双剣を交差させ、飛来する武器に突っ込む。

 

 

前から来る大剣の振り下ろしを双剣の片方で反らしながら避けるが、槍が前方から複数に分裂して襲い掛かってくる。

致命傷になるものは剣で切り裂き、掠める程度のものは避けずに前進する。

負けたくないと言う気持ちが体を前に前にと進ませ、頭の中をクリアにしてシオンに迫る。

目の前には先ほど反らした大剣が横凪ぎに振る事前行動に移っていた、それを加速して根本の方で受けることで威力を軽減し、かつ双剣を両方使って強引に大剣の動きをずらす。

大剣を切り抜けた先には片手剣の連撃が待っていた。

双剣で剣を叩いて方向を反らし、刃を滑らせることで事なきを得て、さらにシオンに接近する。後少し、後一歩でシオンに届く。その寸前に双剣が止められる。

双剣を止めた物の正体は先程弾き飛ばした槍の形状をした液体が壁のように形を変えシオンを守っていたのだ。

弾かれるようにして大きくバックステップをとり、迫り来る大剣と片手剣を避け、加速する。また現れる緑の壁にクロスを描くようにして切りつける。

切りつけた時に双剣に陰と陽の力をこめていたため、容易く緑の壁を貫通し、クロスした陰陽の斬撃が飛ぶ。それはシオンに直撃し、大きく吹き飛ばす。が空中で体勢を建て直し軽々と着地し、またもやクルトに向かって掌を向ける。

 

「『我が望みしは七色の武具!』」

 

前回とおなじような言葉を詠むシオンの背後に七色の武器が現れる。赤の大剣、青の片手剣、緑の槍は先程と同じものだ。残りの四色は黄色の気体が集まって型どる槌。紫色の骨が組合わさり出来た鎌。橙色の肉で出来た醜悪な刀。黒い土が集まり姿を為す弓と矢。これら七つの武装が展開され、一斉に襲い来る。

はじめは橙色の肉の刀。幅の広く、右上から斜めに振り下ろすような斬撃。

双剣で刀の刃を反らしながら距離を詰めようとするがシオンは大きくバックステップをとりつつ黄色の槌が大きく広がり叩き潰さんと振り上げる。

それをさらに加速することでそれを避けきり、赤い大剣と青い片手剣、そして紫色の鎌が一斉に角度を細かく変え、お互いの邪魔をしないような絶妙な方向から刃が迫る。

最もリーチの長い大剣を右手の剣で火花を散らせながらも弾く、その後にワンテンポ遅れる形で来た片手剣を左手の剣を下から上に振り上げる形で青い片手剣に当て軌道をずらして安全地帯を作り出し、正面から真っ二つに切り裂こうと振り下ろされた鎌の刃を引き戻した双剣で滑らせ、速度を緩めることなくシオンとの距離を詰める。シオンは焦ることなく緑の槍を壁のように展開し、黒い弓で矢を打ち出すことで牽制してくるがそれを双剣を高速で振るうことで打ち緒としたり箆を斬ることで無効化したりとしていくが少しずつ集中力がなくなりはじめ、動きが鈍り始める。

先程までは極限まで集中することで無駄がなくなり最適で最高の行動が取れていたが少しずつ動きにブレが出始める。

体を掠める矢が多くなるが既に接近し緑の壁のすぐ近くまで接近しきった。

 

「『レインスラッシュ!』」

 

様々な角度から流れるように繰り出す連撃で緑の壁を破壊し、その奥にいたシオンと視線があう。

素早く振り抜かれた片手剣を双剣で受け止め、鍔迫り合いとなる。

激しく火花を散らしながらお互いに力を込め会う。勝ったのはクルトだった。

大きく弾かれたシオンに全力で攻撃を叩き込む。どうにかして片手剣で捌こうとしているが徐々に押され始め、ついには片手剣をクルトに弾き飛ばされ片手剣が宙を舞う。

そしてそのまま左手の剣でシオンのがら空きの胴を薙ぐ。

鮮血を胴から溢れ出させながら大きく吹き飛び、ゴロゴロと転がる。

そのままゆっくりと立ち上がったシオンの制服は切り裂かれた部分の下。シオンの生身が見えるようになっており、先程クルトに切られた胴は体の組織が時間を巻き戻すかのようにして繋がって行く。

クルトは全力を出した反動か片膝をつき息を荒らげる。

シオンは切られた胴に回復術を施し、傷を塞ぐ。

シオンに手を貸されたクルトはゆっくりと立ち上がり、感謝を告げて何処かへと行く。これでクルトからの依頼は完了したと、シオンが一息をついたとき、

 

「む、シオンか。ちょうどいい今から調整を始めるからな、待っておけ」

 

シュミット博士に捕まり、シオンはグラウンドで待機することになった。

 

 

     ーーG-シュミットの依頼ーー     

 

「『で、何でシオンがいるんだ?』」

 

シュミットが連れてきたヘクトルからランディの声が聞こえる。

 

「俺とお前とで戦ってデータが欲しいんだとよ」

 

「『お、応。それでお前の異端兵(エレーティコ)はどうした?』」

 

ごく普通の疑問に俺は首を振ると、察したかのようにため息をつく。

俺は大剣を召喚して片手で持ち背後にも複数の武装を展開し、全力で戦える構えをとる。ランドルフも戦うことを決めたのか両手でしっかりと戦斧を握り、構える。

 

「ようやく始めるのか、さっさと始めろ」

 

そう言ってくるシュミットを思わずにらみつけながらヘクトルに意識を向ける。まずもって真っ正面から打ち合えば力で押される。技でどうにかして凌ぐしかないか、

 

「それじゃ行くぜ?ランディ!」

 

「『ああ!かかってこい!』」

 

戦闘の開始はお互いの掛け合いから始まった。

正面から向かうのではなく一旦バックステップを取り辺りの空間に干渉し剣や槍などを一斉に精製、射出する。

しかし戦斧を振るうだけで大半が弾かれ、残った武具も装甲を薄く傷付けるぐらいで終わり、一気に接近したヘクトルの大上段から振り下ろされる戦斧の横を大剣で全力で叩き反らす。左側にそれた戦斧の脇を一気に加速してすり抜け、大剣から二丁銃剣に切り替え脚の関節部を狙って振り抜くがギャリギャリギャリィ!と火花と嫌な音を立てるものの関節に決定的なダメージを与えるには至らずにすぐさま足元から離れ、複数発弾丸を関節に叩き込むも強化されているのか中々通らない。

小回りが効き、回避し続けカウンターをヘクトルの脚に向かって叩き込み続けているが異様なまでに強度が高く、ダメージが通っているように全く見えない。

こちらもランディの戦斧を弾いたり、滑らせて軌道をずらしたりして事なきを得ているものの当たるのは時間の問題で、徐々に追い詰められていく。

ランディも手加減することなく攻めて来るため攻勢に出ることが出来ず防戦一方となり、戦斧の一撃を受け止め続けた大剣にはヒビが入り、現在はまた別の大剣を精製して戦っている。背後に展開していた複数の武装も使い続けた結果ヒビが入ったり砕けてしまったりとして新たなものに変わっている。

一方のランディが操るヘクトルは数分にも及び攻撃を受けているもののかすり傷程度の傷があるだけで全くと言って良いほどダメージが通っていない。

俺は制限があるなかで全力を出しているが制限を外さないとおそらく負けてしまうだろう。

 

「さっさと全力を出せ、制限を掛けていては倒せんぞ」

 

俺の迷いを見透かしたように投げ掛けてくる言葉に思わず苦笑いがこぼれる。

 

「わかったよ、制限だろ?外してやるよ!」

 

シュミットの少し挑戦的な物言いに反発するような形で力を解放することを決める。

意識するのは体の心の奥底の枷、それを外す。

全身を包み込むどす黒い覇気。薄く紫色がかっていた髪は真っ白に変わり、薄水色の瞳は赤黒く濁り始め黒く濁ったアメジストのような色に染まる。

 

「いくぞ?ランディ」

 

呟いた言葉はランディに届いたらしく戦斧を構える。しかしその構えはいつも以上に緊張したもので、俺を警戒しているらしい。

ゆっくりと右手を上げ横に振る。それを合図に背後におびただしい数の武具が精製、展開される。

そして左手には呼び出した暗黒時代の頃から使い続けている究極の大剣、唯我独尊・椿を喚び出し、持つ。

そして一歩目を無造作に踏み出す。

しかしその一歩でヘクトルの目の前に一瞬にして接近する。原理は簡単で、今の場所と一歩先の場所とヘクトルの目の前を結びつけただけ、縮地方なんて呼び方もされる戦闘技術の一つだ。ほとんどの人間は出来ないような代物だが。

しかし咄嗟に反応し戦斧を大剣との間に挟み込めるランディも十二分な力を持っている。

お互いに拮抗した状態だったが俺が強引に振り抜いたことでヘクトルの体勢が崩れる。

そのタイミングで指を鳴らす。

すると、俺の背後に十数個の武具が精製され、一斉に飛び出す。体勢の崩れたヘクトルに向かって放たれた槍や槌などの装甲の厚い兵器に対して効果的な武具で追撃する。

いままでは通らなかった槍や槌はしっかりと装甲にキズをつけた。

しかしランディの巧みな操作と戦斧の扱いでほとんどが当たらず、しっかりと当たったのは僅か四本だった。

投擲するだけではなく、精製した槍や斧を空いている右手で持ち、ヘクトルの膂力から放たれる戦斧の連打を、弾き反らし、砕かれながらも直撃を避けながら反撃に精製した武具を射出する。

動きは少しずつ早くなる。枷を外した後の力に馴染んできたため動きが最適化され少しずつヘクトルにキズが増えていく。そして、全力で振るった大剣がヘクトルの持つ戦斧を砕く。そのまま追撃を決めようともう一歩を踏み込んだ時、

 

「そこまでだ!いいデータがとれた。私はアインヘルで研究をする。それではな」

 

シュミットが止め、パソコンを持って裏のアインヘル小要塞に続く道を歩いて行った。

 

「ふぅ、終わりがなんだか釈然としないがいいか」

 

枷を再度かけ直し、どす黒い覇気が無くなり髪は紫色がかり瞳は薄水色に戻る。

ランディはヘクトルから飛び降り、こちらに向かって歩いて来る。

 

「お疲れ、ランディ。巻き込まれたのか?」

 

「ああ、シュミットに今日の朝から捕まっててな。もう昼だろ?さすがに疲れたぜ」

 

お疲れ、と声を掛けておき俺はランディと別れ、することもないのでアインヘル小要塞に向かって歩いて行く。すると途中で電話がかかってきた。

 

「どうした?リィン」

 

『シオン?繋がったか』

 

電話をかけてきた相手はリィンだった。電話をなぜかけたのかと聞くとこれからアインヘル小要塞に行くから俺に来てほしいと言うもので、それを伝える為だと言っていた。といってもすぐそこなので少しくつろいで向かった。

 

 

俺がアインヘル小要塞についたときにはすでにリィンがいた。その両脇には白と黒の対称的な少女がいて、白い方の少女は俺に気付くと、

 

「お兄ちゃーん!!」

 

お兄ちゃんと叫びながら飛び付いてくる。

 

「何でここにミリアムがいるのかは聞かない。

と言うか元気過ぎるだろ。ミリアム」

 

俺よりも頭一つ分背が低く、少し緑がかった水色の短髪。藍色をメインとしつつ、白いラインの入った帽子。肩から腕までが白く、真ん中が黄色く左右が藍色で脇が開いている服、水色のポーチに、灰色と側面の白いホットパンツ。太ももを半分ほど隠した少し薄い黒のハイソックス、そしてジッパーの周囲が水色で他は白のロングブーツと言った動きやすい服装の少女。

ミリアム・オライオン、アルティナの姉と言った位置付けで俺の妹と一応はなる。

とりあえず頭を向けて撫でてアピールをしてきたので、よしよしと撫でておく。アルティナがなんだかしてほしそうに見ている気がするが気のせいだ気のせい。

 

「久しぶり!お兄ちゃん!」

 

「応、久しぶりだなミリアム」

 

落ち着いた雰囲気のアルティナとは真逆で、はつらつと言った印象を受ける。

かわいらしい笑顔を浮かべるその様子は天使と言った言葉を思い起こさせる。

 

「にしても、何でアインヘルに連れてきたんだ?もっと他にあっただろ、カフェとか雑貨屋とか」

 

「どっちも行ったんだが」

 

「お、応。お疲れリィン」

 

苦笑いを浮かべるリィンを労いながら、なぜだか引っ付いて来たアルティナも撫でていると、

 

「ふむ、〈白兎(ホワイトラビット)〉に〈黒兎(ブラックラビット)〉そして銀哭に灰の騎士と、データを取るには十分だな」

 

シュミットがこちらを見ながら歩いて来る。

それからミリアムに向けてのアインヘルの説明と今回のアインヘルの軽い説明、それと下に降りる方法についてと複数の説明を受けた後に一人の少女を紹介された。

何でもシュミットの弟子でギミックだったりの解説を各所でしてくれるとのこと。

名前はティータ、ティータ・ラッセル。分校の制服の上からパーカーを羽織り、艶やかな金髪を腰まで伸ばし後ろで纏めている。前に二房垂れてもいる。

 

「ど、どうぞよろしくお願いします」

 

どうも緊張しているようでガチガチだったのでとりあえず落ち着かせといた。近くで見れば俺が銀哭だとわかったようで少しだけだが落ち着いてくれた。

ティータは上の部屋に向かい、俺達は入って来た部屋の奥、昇降機のある部屋に入った。

昇降機の扉の横側には〈Lv.0〉と表示されたモニターとキーボードが付けてあり、それをカタカタと操作して昇降機の進む先を〈Lv.1〉に変える。

 

「よし、設定変更完了」

 

「ありがとうシオン。それじゃあアルティナ、ミリアム、準備はいいか?」

 

リィンは左右にいる少女達に問いかける。

 

「もちろん大丈夫です」

 

アルティナは冷静に返す。

 

「もっちろん!早く行こーよ!」

 

ミリアムは輝かしい笑みを浮かべて腕を振り上げる。

 

「シオンもいいか?......って聞くほどのことじゃ無かったな」

 

リィンは苦笑しながらそう言い、昇降機の扉を開ける。

まずミリアムが入り、続いてアルティナ、そのつぎはリィン。そして最後に俺が入る。

扉は音を立てずに閉まり、ゆっくりと動き出す。

 

 

アインヘル小要塞〈Lv.1〉に到着した俺達は昇降機から降り、武装を取り出す。リィンは太刀を、俺は大剣を、ミリアムとアルティナはそれぞれ戦術殻を呼び出してゆっくりと進む。

最初の小部屋でギミックの説明を受け、短い通路を抜け最初の大部屋に着く。

そこにはスッポンと竜を混ぜたような魔獣が三匹いた。

他の部屋に繋がるような通路は一つ、それとよくわからないシャッターが降りた通路が二つあった。

スッポンのような魔獣をこちらをロックオンしており、威嚇を繰り返している。

 

「とりあえず、やるか」

 

「ああ、二人とも行くぞ!」

 

「うん!」「はい!」

 

ミリアムとアルティナの声にあわせて俺が一番前に出る。アルティナと俺が、リィンとミリアムが〈リンク〉する。

まずは突進、噛みついて来たスッポンのような魔獣の攻撃を身を捻って避け、反撃に顔面を斬りつける。右目を切り裂いて大きく体勢が崩れたタイミングでアルティナと位置を入れ換える。

アルティナは戦術殻(クラウ・ソラス)の剛腕を魔獣の頭部に叩き込んでいた。それによって脳は破壊され、絶命した。リィン達は二匹を相手取りうまくさばいていた。

背後から奇襲を決めたアルティナにあわせて魔獣の頭上に大剣を精製、脳天を貫く。

リィン達二人はもう一匹を仕留めており、大部屋の魔獣はいなくなった。

大部屋に入って来たところから右手の方しか道が続いておらず、その先にはゼラチンで出来た不定形型の魔獣が七体ほどいたが俺が前に出て注意を引きつつ、準備が整ったところで下がり、アーツの一斉掃射で殲滅した。

その部屋には他の部屋に続くような通路はなく、一つだけ通気孔(ダクト)があった。

 

「よし、入るか」

 

そう言った俺のことをジト目で見てくるアルティナと対称的にもう入ろうとしているミリアムの姿に思わず苦笑が漏れる。それから少し話してミリアム、アルティナ、俺、リィンと言った順番で潜ることになった。

通気孔(ダクト)の中は狭く這いずって進む。ミリアムは見えるとかそう言ったことは気にしないのでずんずんと進むが、アルティナは気にする為目線を反らしながら進めと念をおされ前に進みずらい状況ながらも通気孔(ダクト)を抜けた。

通気孔(ダクト)を抜けると小部屋になっていて、グラスドローメと言うらしい先程の部屋にもいた魔獣が今度は三匹いた。今回は全員で攻撃やクラフトを行い封殺した。

通路はシャッターで閉じられていたが近くの端末でシャッターを上げて進んだ。進んだ先の部屋には蜥蜴と蜻蛉を足して二で割ったような姿の魔獣が四匹とグラスドローメと言う魔獣が四匹と、合計八匹の魔獣が部屋を徘徊していたが近くにいた一匹の魔獣に発見されたことを皮切りに八匹の魔獣が一斉に向かってくる。

 

「一斉かよっ!?」

 

「さすがに八匹はきついかと!」

 

「わわわっ!?」

 

「シオンっ!」

 

リィンは冷静に俺に視線を向ける、その視線の意味を理解した瞬間に指をパチンと鳴らす。その瞬間に魔獣達の頭上に一斉に精製される武装。ドローメの上には刃のついている大剣や片手剣、曲刀に刀と言った武装が、蜻蛉のような魔獣には槌や鎌、槍等の甲殻に対しても効果のある武装がそれぞれ選別され精製、射出される。

上空から打ち出された武装が魔獣を切り裂き、叩くが、即座に精製したため殻を砕いたり粘液の体がはぜるが致命打には程遠く足を止めるだけだった。しかし十二分な時間を稼いだ俺は白黒の妹と位置を変わる。

 

「頼むぞっ!ミリアム!アルティナ!」

 

「りょーかいっ!任せてお兄ちゃん!」

「了解です。『クラウ・ソラス』」

 

背後の戦術殻から放たれる二筋の光線は直進し、魔獣を巻き込む爆発を引き起こす。

ドローメは体の八割が蒸発し、ドグネックフライヤーと言うらしい蜻蛉のような魔獣はほぼ大半の殻がなくなり、中の肉は爆散している。

それでもしぶとく生き残る魔獣はいるのだが、そこには俺がしっかりと魔力を込めた-さっきの足止め用の違う-確実に止めを決めにいった武装が突き刺さる。一匹ごとに十本程の剣、槍、槌、矢が突き刺さる。射出した武装四十本はしっかりと魔獣の息の根を止めた。必要以上に痛め付けてだが。

 

「よし、感覚も上々と」

 

魔力を込めた精製は久々だったので上手くいくかは分からなかったが予想以上に上手くいった。魔力の消費もそこまででは無いので、制限がかかっている状態だと言うことを鑑みれば及第点には乗るだろう。

十二分な成果に頷きながら先に進んでいた三人を追う。

その先でも複数の魔獣と出会ったものの感覚をある程度取り戻せた俺が精製した武装の一斉掃射で大半が片付き、最奥前に到達する。

そこで一旦休憩を挟み、武装の確認、クオーツの確認を行った後、最奥の部屋に入る。

 

最奥の部屋には何もいないが中心に異様な魔力の渦を感じた。おそらくトールズ本校の旧校舎にあった遺跡の模倣だろう。全員が中心に向かうと数歩歩いたタイミングで魔獣、いや、魔物が姿を現す。

巨大な体躯は青く、頭からは巨大な角が左右に生えており、前屈みになった体には金の線が走っている。

両腕が長く発達しており、地面につけて自重を支えているが、脚自体もしっかりとしている事から腕による攻撃も可能だと思われる。

なんて俺が冷静に相手を観察していると猫背になっていた上体をあげ息を吸い込む。これから予想されるのは吐息(ブレス)咆哮(ハウル)か、どちらにしろ先制の機会を与えてしまったことを反省しながらバックステップを取る。ミリアムとアルティナは戦術殻でバリアを張りながら耳を塞ぐ。リィンは俺と同じでバックステップを取っていた。

俺達が全員行動に移ったワンテンポ後で魔物は口を開ける。その口から放たれたのは咆哮(ハウル)。しかしそれはこちらにダメージを与えるものではなく、魔物自身を強化する特殊なもの。

俺達がそれを理解した時にはもう遅く、すぐちかくにいたミリアムとアルティナに向かって身体能力の強化された魔物が突っ込む。

鈍重そうな見た目からは想像も出来ないほど速く接近し、豪腕を凪ぎ払う。二人をバリアの上から吹き飛ばし、追撃を決めようとしたところで大楯を呼び出して間に入り込み、豪腕の一撃を食い止める。が、あまりの威力に体勢が崩され、その上から腕の骨が軋む程の威力の剛腕を連続で叩き込まれる。異様なまでに威力の高い連打を大楯を構え、真っ正面から受け続ける。アルティナ達はバリアの上から受けたとは言え異常なまでの威力の一撃をまともに受けたため追撃を受ければ危うい。だから回復するまでの間誰かが注意を惹き続けなければいけない。しかしリィンは刀で守るには適せず俺は大楯を呼び出すことが出来るので俺が注意を惹き付けることになったのだが、身体強化を施したであろう魔物のラッシュを真っ正面から受け止め続けて三十秒ほどがたった時点で腕の骨が限界を迎えた。

大楯を構えていた両腕のうちメインで支えていた左腕に激痛が走る。と同時に片腕だけでしか支えていなかった大楯が弾かれる。左腕の再生が始まるがもう一度大楯をしっかりと構える余裕もなく、咄嗟に差し込んだ大楯ごと殴り飛ばされる。

右腕の骨は複雑骨折を起こし、大楯越しに殴られた肋は二、三本折れた。全身を激痛が駆け巡るが空中で体勢を建て直し、壁に激突するのを防ぐため魔力を使って綿を精製する。衝撃を吸収出来るように三十センチほどの厚さで俺がぶつかるだろう壁に設置する。

衝撃を綿のクッションで吸収し、俺は即座に復帰する。左腕は既に再生が終わり、肋も後数秒で終わる。右腕こそ複雑骨折なので時間はかかるが後二十秒もあれば完璧に治るだろう。

しかしそれまでの間ミリアム達が戦わないといけない。あの高医療の攻撃を防ぎながらだ。さすがにそれは無理だろうと急いで復帰しようとするが、俺の目に写るのは初撃に比べて遅い攻撃を繰り出していた。

それを受け止めるミリアムは吹き飛ばされずにそのまま豪腕を弾き返す。そこから考えられるのは身体強化が消えたと言うこと。

俺は左腕を横に振るう。それと同時に魔力を大幅に消費する。することはしっかりとした性能の武装、十本の剣を二秒程で精製する。それはミリアムが後ろに下がったタイミングで一斉に射出され、魔物を串刺しにする。

両腕に二本ずつ両足に二本ずつ、頭と胸の中心に一本ずつ突き刺さるが、両腕と両脚には根本まで深々と突き刺さったが、胸の中心には軽く、頭は弾かれた。それに徐々に腕と脚に刺さった剣は押し出されて行く。胸の中心に刺さった剣にいたってはすぐに抜けた。しかし傷自体は残っており、血も流れているが動きを阻害している感じはない、痛覚はあるだろうが極端に鈍いのだろうか?しかし攻撃が通るのならば叩き続けるだけ、俺達は一斉に攻撃を繰り出す。

 

「緋空斬!!」

 

鞘に入れていた太刀を居合い切りの要領で放った緋色の鎌鼬は魔物の胴体を深々と傷付けるが、いまだに致命傷には至っていないらしくいまだに攻撃を繰り返そうとするが、

 

「いっけー!ガーちゃん!!」

 

「クラウ・ソラス!」

 

ミリアムとアルティナの戦術殻から繰り出される剛腕の殴打と鋭い豪腕の一撃をまともに受け、大きく動きが止まる。そこに俺は両手で大剣を持ち、地面に擦り付け、火花を上げながら突っ込む。

咄嗟に咆哮(ハウル)をあげ、身体強化を施したが、そのときには既に懐に入り込んでいた。

 

「剛破断!!」

 

魔力を流し、切れ味を底上げした上で一気に振り上げる。

地面を擦りながら振り上げることで居合いを再現し、硬い肉体を右脇腹から左肩に向かって切り上げる。

硬いはずの体表は魔力を流し、切れ味を上げたことで切り裂き、居合いの勢いそのままに体を二つに切り分ける。

上半身と下半身は別れ、両方の断面から血が溢れ出すのかと思えば粉々に-光を反射して煌めく程には-霧散する。

振り上げた形から大剣を下ろし、辺りに新たな魔獣、もしくは魔物が現れる気配がなくなったのを確認して大剣を消す。

 

『ふむ、十分だ。そこでアインヘル小要塞Lv.1は終わりだ......最後の魔物、〈スオウ〉は少なくとも苦戦以上するように強化していたのだが。まあいい、十分なデータは取れた。さっさと出ていけ』

 

俺が大剣を消し、他の三人も武装を解除したタイミングでシュミットが放送を入れてきた。出ていけと言われたので最奥の部屋からでて、魔獣のいなくなった小要塞を歩き、昇降機を使って上がる。

シュミットはおらず、ティータに謝罪と見送りを頂いてから小要塞を出る。

 

 

すっかりと日の暮れていた為ミリアムを駅まで送り、リィンとアルティナとも別れ、寮に戻る。時計は六時を示していて、未だに他の生徒はあまり寮に戻って来ていないが部活をしてそれなりに疲れて帰って来るだろう。

とか言いつつ、なかなかいる生徒と教師陣双方分の料理を作るのが地味に楽しくなってきた。献立も食べたい物を聞いて回れば尽きること無く出てくるのだからありがたい。と言うわけで今日はコーンスープとハンバーグ、野菜炒めの三品に大量生産されたプリンと様々な味のゼリーがデザートとして付いてくる。米は各自自由、取る量もハンバーグ以外は自由と言ったバイキング風の夕食を一時間で人数分に+αで作り終える。

 

「おっし、おーい!!出来たぞ!!冷める前に食べろ!!」

 

食堂ではなくリビングにいるだろう生徒に向かって大声とまでは行かないがそれなりに大きな声で呼ぶ。

すると食堂の扉が勢いよく開き、Ⅷ組とⅨ組、そしてⅦ組の面々が入ってきた。献立を確認して目星をつけて一気に料理を取っていく。恐ろしい勢いで無くなっていく料理に苦笑しながらリィン達Ⅶ組の座っていた机に付き、先に取っていた料理を食べ始める。

カチャカチャとナイフとフォークが皿に当たる音と楽しそうに喋る声が食堂を包み込み、和やかに夕食は進む。

 

それからは食べ終わった人から食堂を出ていき、就寝前の自由時間を過ごす。その時俺はと言うと、皿洗いを何人かに手伝ってもらい-フレディと言うⅧ組の男子とティータに手伝ってもらった-ゆっくりと湯に浸かっていた。

 

「ふぅぅ~、癒されるぅ~」

 

体を洗い、湯船に肩まで浸かっている姿は機甲兵を操る時に浸かっていた女体。しかし風呂は男風呂。いつもは男の姿でいるのでさすがに女体とはいえ女風呂に入るのもどうかと思って男風呂に入ることにした。

肩を風呂の縁につけて体を伸ばす。それなりにある胸は湯船に軽く浮かびリラックス仕切った体はだらしなく垂れる。

目を閉じて湯に浸かり、体をほぐしていると、ガラガラと音がして誰かが入ってくる。

 

「なっ!?何でこっちに女子がっ!?」

 

「ん?」

 

目をうっすらと開けて誰が入ってきたのかを見る。

赤い髪に生徒にしては鍛えられた身体、そしてその身体に入った無数の傷痕。

 

「なんだ、ランディか」

 

生徒ならいざ知らず、教師で知り合い、そしてこの姿を知っているランディなら大丈夫だとそのまま体を伸ばしきる。

 

「なんだ、じゃないだろ!」

 

「んー?別にいいだろー?」

 

「いや、まあ......じゃないだろ!?お前姿!」

 

ランディはどうしても俺と入りたく無いらしく、風呂場から脱衣場に逃げようとする。が無駄に枷を外して身体能力を上げ後ろから抱きつくようにして逃がさない。ギュッ!と密着を強める。

 

「なっ!?おい!?」

 

「ふふふ、このまま出ていけばヤバイぞ?」

 

「脅迫紛いのことをするなっ!後速く離れろっ!」

 

「なら一緒に風呂に入れ!」

 

無理矢理離そうとするランディだが、枷を外して身体能力を無駄に上げている俺を剥がすことの出来ないと観念したのか、俺に捕まったまま風呂に入る。

渋々と言った感じで風呂に入ったランディだったが、湯船に浸かったらそんなことを言えなくなった。

 

「ふふふ、久々にお前と入るな、ランディ」

 

「ああ、そうだな。で?男の姿にはならないのか?」

 

「ん?なんだ、豊満な胸にしか興味はないと?」

 

「そういう訳じゃないが、男風呂で湯船に浮かぶ胸はなんだか違うんだよ」

 

「そうか、まあ、風呂上がったらだな」

 

「最後までじゃねぇかよ」

 

下らない話をしながら身体をほぐす。

少し浸かってから身体を洗うために上がる。ランディは風呂に浸かったままだったが俺が強引に上がらせて、俺がランディの背中を流す。

最初に胸でしてやろうかと聞いたら

 

「普通に流せ」

 

と普通に返された、面白くない。まあ、さすがに胸では恥ずかしかったからやらないけど。

とまあ終始ふざけながら風呂を楽しんだ。

そして結局女体のまま脱衣場を出て、リビングに向かう。女体があることを知らないⅧ組とⅨ組の生徒はあんな生徒居たっけ?と話し合っていた。

特に触れる必要があることはなく四階の教師陣の部屋がある階の階段から最も遠い部屋の右隣、何部屋か開いていた部屋の一つに俺の個室がある。俺が個室なのは男子生徒の部屋に余りが無かっただからだと。

俺は俺のベッドにダイブする。慣れていない枷を外して、久々に魔力を消費してと、周りにはわからないように気丈に振る舞っていたが、体が重い。風呂場で疲れがとれたのかと思っていたがそうでもなかったらしい。

俺はベッドにダイブした後で衣装を変える。

白いパーカーに短パン。いわゆる寝間着だ。

俺はベッドの上でそのまま力尽きる。瞼がゆっくりと降りてきて視界が真っ暗になる。そして意識も暗闇に落ちていく。




いかがでしたか?
うーん、この小説は戦闘描写が下手すぎる。何でランキングに乗るような方々はあんなに上手いんでしょう?謎です。(単純明快)
私自身ランディさんが凄く好きなんですよね。ええ。主人公は性別自由自在ですから。まあ、正妻はアルティナなんですよね......ハァ。

それではこれぐらいで、評価、感想等を頂けたらありがたいです。また次回に合いましょう。
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