春の始めから、地球は変態な侵略者の脅威にさらされていた。人々の笑顔が奪われそうになった時、遥か遠い異世界の
私はツインテールが……きらい。他人がツインテールにするのは気にならないよ。けど自分でツインテールにしようとは思わない。子供っぽいからってゆーのでもないよ、興味無いだけだもん。
『―思い出すんだ。』
TVでかっこよく活躍するツインテールの
『―思い出してくれ。』
私はツインテールがきらい―――のはずだもん。
『キミの本当の
「………なんか変な夢見てた気がする」
「お、起きた?変な夢か知らないけどまだ寝てるんだったら頬っぺた抓って起こしたわよ?」
誰かに呼ばれ続けてたよーなそーでもないような夢から覚めて最初に見たのは、自分の部屋の天井――じゃなくて、歳が近い方のおねーちゃんの顔だった。近いって言っても6つも離れてるんだけど。
「ちい姉はもうちょっと優しくなってもいーんじゃない?」
「優しく起こしてる間に起きたから問題無いでしょ。ほら、さっさとベッドから出て顔洗ってくる」
起きたばっかに聞かされる実力こーしが寸前だった宣告は、私のほっぺに触れている自分よりも大きなちい姉の手がしょーこだ……妹にやること?
その手を軽くつかんで小さくこーぎしてみたけど完全にスルーされて、おでこをつつかれるだけだった。まったく、妹の意見を聞けちい姉め。
まだ眠い目をこすってしっかり開けてみると、ちい姉はすっかり朝の準備を終えている様子。制服のスカートと頭から伸びるふたつの髪―ツインテールが揺れてる。
――これが私のちい姉・津辺愛香15歳。
いろいろとくちょーはあるけど、目立つとこだとおじーちゃんから武術習ってめちゃ強いし怒ったらめちゃ怖い人。見た目でもある意味、目立つとこあるんだけどそこ言ったら怒るからそのうちね。
もう1人、大きいおねーちゃんがいるから愛香おねーちゃんはちい姉なの。
――で、私が津辺好香。ツインテールはきらいな9歳。
見た目はおねーちゃん2人の下位互換よ。いずれはちい姉以上のスタイルになれるってこっそり思ってるけどね、ふふん。
なんだけど、その揺れるツインテールを見ているとつい、
「んー……まだ眠いからちい姉が下まで運んでー。怪力だしらくしょーでしょー?」
「はぁ?何よいつもより起きるの遅い上に甘えてくるじゃない。でも残念。お姉ちゃんに頼む態度じゃ無かったので却下よ」
背中に寄りかかっている私を軽く抱き上げたちい姉は(やっぱりらくしょーだ)ベッドの上に立たせてしまうと、寝ぐせで跳ねに跳ねた私の髪を一つまみ。
「寝ぼけてんじゃないわよ。急がないとこのぼさぼさの頭で学校いくことになっちゃうわよ」
なんて私の鼻をくすぐって、可愛い妹のめずらしいお願いを聞くことなく部屋を出て行った。はくじょーもの。
ツインテールは好きじゃない。でも、ちい姉のツインテールだけは……別かもね。
で、本格的に起きた私は顔洗って着替えて……大慌てで朝食を食べてる。
髪?ちい姉の忠告通りぼっさぼさのままよセミロングの筈がぴんぴんに跳ね上がって、ショートヘアかってくらいになってるわ。しょうがないじゃん時間ないんだもん。
いや、小学校の時間にはまだまだ間に合うよ。でもちい姉は高校生だから、私より始業時間が早い。一緒に家を出ようと思ったらギリギリなんだよね今。
「だから言ったでしょうが」
食卓の向かいに座って、あきれ顔してるちい姉に何か言い返したい。けどその時間も惜しい。その前に口いっぱいにトースト詰め込んでるせいでしゃべれないけどね。
「はいはい。まだ待っててあげるから落ち着いて噛みなさいよ。だいたい初等部はもうちょっと時間あるんだからそんなに慌てなくてもいーじゃない」
気遣いと意地悪が混ざった言葉をちい姉が言う。どこが意地悪かって?私が慌てる理由を知ってるクセに言ってるんだから意地悪なの!頬杖と失笑のコンボで私を見ているのも証拠だしょーこ。
「好香は愛香と一緒に登校したいんだから仕方ないのよねー好香?」
と、私の後ろから助け船が来る。いや、こっちも意地悪が混ざってるから助け船かはちょっと怪しいけど。うぬぬ、こっちの方も笑ってるのが見なくても分かる。おねーちゃんまで可愛い末妹をおちょくって楽しむとは何事かええい。
――津辺恋香19歳。
ストレートロングヘアがキレイな私のいちばん上のおねーちゃん。性格スタイル諸々、私とちい姉の進化系みたいな人……腕っぷしだけはちい姉がいちばんだけど。
あ、進化系って言ったけどちい姉がおねーちゃんみたいになれるとは……。私?私はおねーちゃんみたいになれるよなってみせるもん。言ったでしょちい姉以上のスタイルになるって、ふふん。
そんなおねーちゃんは、忙しなく朝食を詰め込む私の髪を梳いてくれている真っ最中。今日は朝の授業が無いので、いちばん時間によゆーがあるんだって。大学生はそんな時間割もあるらしい。私だったらもっと寝てられるのになあ、ちょっとうらやましい。
「お姉ちゃんそこで好香に聞いちゃダメでしょ」
「じゃあ愛香も分かってて言っちゃダメじゃない。ね、好香?」
身支度を手伝ってもらって、それを待ってもらってる立場だけど、前と後でニヤニクスクスと笑いながらからかわれるのは納得いかない。……私のほっぺたが膨れているのはもうトースト詰め込んでるからじゃないからね、おねーちゃん達め。
「でも、今日はなんで待っててくれたの?総二兄のとこ行かないで」
どたばたと準備を済ませて、ちい姉が一足先に待ってる玄関まで走ると気になることがでてきた。ちい姉は身支度を済ませると、お隣の喫茶店に行くことが多い。高校生になってからは特に。お目当ては喫茶店じゃなくそこにいる幼馴染。
――観束総二15歳。ちい姉と同い年で、私にとってはおにーちゃんのような人。
そして超超重度のツインテール好き。どのくらいかって、ツインテールさえあればご飯食べなくても生きてそう……とかちょっと思っちゃうくらいだよ。その点については私と合わない、というかちょっと引いてる、かな。
ちい姉って見本があるからか、何度かツインテールを勧められたこともあったんだよ。別に無理強いしてきたりなんかしないよ総二兄は。でもちい姉効果でやんわり布教はしてくるから、一応きっぱり「ツインテールなんかやだ」って言ったんだ。……その時はこの世の終わりみたいな顔された、解せぬ。おねーちゃんだってツインテールしてないのに。
とにかく。ちい姉は、ツインテールに頭を染められてそうなこの総二兄が好きなんだって。
おねーちゃんに聞いたところ、ツインテールも総二兄の為に磨き続けてるとか。私が生まれる前かららしーけど、それでいて現在も進展なさそうなのは、総二兄がツインテール以外に鈍感すぎるのかちい姉が情けないのか……そのどっちもか。
「あ、あたしだって毎日毎日そーじのとこに行ってないわよ!大体、今朝はあんたの様子が変だったからでしょ」
朝、いっしょに家を出る回数が目に見えて減ったのに、まだいらない見栄を張ったりしてるから進展ないんじゃない?と思ったけど、頭に置かれた優しい手に何も言えなくなった。よく覚えてない夢のせいでめずらしいことをしちゃったのを、スルーしてたようで気にかけてくれるのがちい姉なので。こーゆーちい姉だから好き。
「……ありがと。それはだいじょーぶだから」
とはいえ、はっきり心配されるとそれはそれで気恥ずかしいとゆーか。よし、ぱぱっと靴を履いて、いつでも逃げられるようにドアノブを回して。
「でも、私に気を回してるとちい姉じゃ誰かに総二兄あっさり取られちゃうんじゃないかなー?知らないよー?」
舌を出して、ぷふーっと笑って誤魔化した。ここから、ちい姉がぽかんとしてる間にドアを開けて一歩踏み出すスピード勝負だ。理解して「あ、こんのチビスケ!」って怒るちい姉を振り返らずにドアを閉めてダッシュ
――しようとしたら空から銀色のカーテン?が落ちてきた。
「おはようございます!今日も全身ペロペロしたいほど可愛いですね好香ちゃあごおおおばああっ!!!!!」
「ふんっ!」
カーテンじゃないお隣の二階から一直線に飛び込んできた銀髪のおねーさんだ。
「ひいっ!?」
そしておねーさんは、一瞬で私の背後から飛び出したちい姉に勢いそのまま二階へ殴り返された。乗り物を使わない人身事故に悲鳴を上げた私ってまちがってないよね。……もう
「朝から妹に手出そうとするんじゃないわよ!好香、いきなり飛び出したら危ないんだから気をつけなさいよ」
「
たったいま暴走トラックみたいに人間を宙に飛ばした人が言うセリフじゃない、と思うんだけど。私を後ろに庇いながらも、さっき馬鹿にしたことについてはしっかりほっぺを引っ張られてるので、そんな口答えはできないし謝るしかできない。
ちい姉は基本がやられたらやり返す人だから逃げ道を確保しておかないと後が怖いんだよ……うぅ、顔が痛い。
初等部で今も伝説になってる【
たった今、目の前で起きた惨劇と比べたら、私にはとても手加減してるのはわかるんだけどさ。もうちょっと大目に見てくれてもいいと思わない?
お隣の二階へ強制Uターンした銀髪のおねーさんは、何事もなかったかのように玄関から総二兄に続いて出てきてた。いつもだけど、ちい姉のパンチでここまで平気な人は、総二兄の他には見るの初めて……というか総二兄以上に平気な顔して立ち上がってくるから、言ってる事はよくわかんないけどかっこいい。
――トゥアールさん。銀髪のロングヘアと白衣がとくちょーのものすごい美人なおねーさん。
総二兄の家にホームステイしてる。初対面の時から凄く元気で何かと私に優しい……けど何か鼻息が荒い時が多くて、だいたいちい姉にボコボコにされてるのに何度でも立ち上がってくる凄い人。あと、頭もすごくいいみたい。なんか凄そーな道具をちい姉に投げてるの見たことある。……ちい姉は素手で壊してトゥアールさん殴り倒してたんだけど。
「ちょっとお隣の可愛い
「年端のいかない妹に向かってよだれ垂らしてダイブしてくる変態がいたら始末するでしょ」
「あんな可愛い妹さんに愛香さんがすぐ会わせてくれなかったからブレーキが緩んじゃったんですよ!!私がうっかり路上で見境なく幼女に飛びついてしまう前に責任とって好香ちゃんをペロペロさせるべきです!!!!!」
「だから近寄らせたくないんじゃボケエエエエエエエ!!!」
「あああああああ蛮族には殺意のブレーキが無いいいいいいい!!!!!」
今もなんか言い合ってあ、ちい姉がトゥアールさんを顔から地面に落とした。
ちい姉は私がトゥアールさんと会うの渋ってるけど、美人で頭も良くて何度倒れても立ち上がってくるなんて、ヒーローみたいでかっこいいし憧れるんだよね。前にそれ言った時は、ちい姉に熱でもあるのかとめちゃめちゃ心配された、解せぬ。
「そういやそーじの部屋から飛び出してきたわね……あたしが家に戻ってる間、何もしてないでしょうね?」
「ほごほほごごご」
地面にめりこんだままのトゥアールさんに探りを入れ?脅しをかけ?ているちい姉。
(なーんだ。毎日行ってないとか言ったくせに、今日も先に総二兄の家に行ってたんじゃん)
私に対しての無駄なごまかしをぽろっと自白しているちい姉はさておき。
私にとってトゥアールさん最大の特徴といえばやはりこれ。今年になって現れた【ちい姉の恋のライバル】とゆーこと。
知り合っていちばん日が浅い私にもわかる程に、トゥアールさんは積極的に総二兄へアピールしてる。そのアピールの内容は私にはよくわからないんだけど……ともあれ、ずっと進展のないちい姉にはけっこーな強敵だと思う。
私としては、かっこいいトゥアールさんも応援したい、んだけどこの機会にちい姉に頑張ってほしい。ツインテールがきらいな私なんかでもちょっといいかも、って思っちゃうツインテールを総二兄の為にずっと磨いてるちい姉を知ってるだけに肩を持ちたくなるんだよね。
それに、トゥアールさんが積極的って言ったけど、そのアピールにも総二兄は一切気付いてない様子なのでまだまだちい姉にチャンスはある……はず。その鈍さで私が生まれる前から気付かれてないのがちい姉だからね……でも、まあそこはトゥアールさんが刺激になってくれればワンチャンってやつをさ……。
「おはよう好香。愛香が心配してたけど大丈夫か?」
「おはよう総二兄。ちょっと寝ぼけてただけだからへーき。」
トゥアールさんを相手にしたちい姉の蛮力の嵐から目を逸らした総二兄が挨拶してくる。ちい姉ってば、総二兄にまで私のこと喋ったのか寝ぼけてただけなのにぃ。
「それにちい姉が睨んだらちょっとしたびょーきくらいは逃げちゃうって」
「はは、いくら愛香でもそこまでは……あるのかなあ」
私の言葉を笑い飛ばそうとして遠い目になる総二兄。
やっぱり私よりも長い付き合いだけに、私がまだ知らないちい姉の
ちなみに私たちの視界の端では、トゥアールさんに鮮やかなフィニッシュブローを決めるちい姉がいる。そんなだからじょーだんがじょーだんに思えなくなってくるんだよちい姉。
「愛香と一緒に登校したいんだろうけど、身体に悪いことはするなよ?」
ぬぐぐ、おねーちゃん達だけでなく総二兄にまで見抜かれているとは……
「でも、初等部と高等部じゃいちばん校舎離れて別れるの早くなったし、ちい姉も前より朝から総二兄の家に行くこと多くなったし、ちょっとくらい早起きしないといっしょに家出られないじゃん……まあ今日は寝坊したけど」
(総二兄の家に行くのはトゥアールさんのけんせーだと思うし仕方ないけどね)
しかし、ちい姉に直接言いづらいことをいちばん話せるのは総二兄だ。何でって?おねーちゃんでも
総二兄は隠し事は下手だけどちゃんと黙ってようとしてくれる分、2人よりずーっと信用あるよ。
「この、この世の理不尽……!なんで愛香さんみたいな蛮族にあんなお姉ちゃん大好きオーラ隠せない可愛い
「ほんっとにもーあのチビスケめ、照れくさいのはこっちよ。こんな近くで話しててあたしに聞こえないと思ってるのが抜けてるのよねー。あんたみたいなロリコンにだけは渡せないわよ危ないわね」
「会話中に当たり前のような目潰しがあああああ!!!」
もっとも殴り終えたちい姉と短時間でリカバリーしてるトゥアールさんにばっちり聞かれてたみたいなんだけど、私は知る由もなかった。