エレメリオンだとか名乗った妙な精神生命体が変身させた
「ウヌ、グゥ……あの妙なエレメリアンもどき、人間の小娘にいったい何を仕込んだ……!?」
強固な外装甲に覆われている自分の首がはっきりと少女の指型にひしゃげている。何やら力が緩んだ隙に叩き落とすことはできたが、それがなければ首がへし折られていた可能性もあった。まるで上級エレメリアン、或いは異世界にいる数多いるツインテールの戦士のような力。
だがあの幼女はツインテール属性など感じられなかった。そんな人間にエレメリアンのような精神生命体が融合して
「アルティメギルが珍しく手を焼いているとは聞いたが、この世界はどうなっているのだ……!?」
相手は起き上がってこないが、未知の存在を警戒したロックチョウデリットは追撃を起こせないでいた。
「いぃったぁぁい……!」
ロックチョウデリットにふり落とされて思いっきりお尻打った。めちゃいたい。ちい姉に叩かれ……たほどでもないけどいたい。
アスファルトの地面がバキバキに割れてるのにそれで済んでるのが不思議だけど。
『
頭に聞こえるエレメリオンの声は、相変わらずよくわかんない単語が混じってるけど、なんかすごい力で守られてるってことでいいのかな。
『だが、好香が自分の
「そ、そんなの急に言われても私ツインテールはきら――好きな髪型って、そんなの聞かれても考えたことないもん……」
急に「ツインテールが好きなはず。正直になれ」って言われてもこまる。きらいなはずだもん。
それにツインテールにしなかっただけで好きな髪型とか意識したことがないのもホントだし。友達のかわいい髪型やかっこよりちい姉とおねーちゃんのかっこがうらやましくて、こーでぃねーとは2人におまかせだったから、何がビビッとくるのか自分でもイマイチ……
エレメリオンにはっきりした答えを返せないでこまってたらロックチョウデリットが空に飛んでいくのが見えた。うわ!まっすぐこっち飛んでくる!!
「スカーーーーット!」
「やだ、ぶつかるぶつかちゃううう!!」
飛び起きてギリギリでよけられた。でもUターンしてまたもどってくる!飛んでくるのをよけて、を何度もくり返すうちにロックチョウデリットのスピードがどんどん上がってる。こっちは、なんかちょっとずつ体が重くなってきた。素直じゃないとしゅつりょくが下がる、ってこれも?
でも、どう思い出して素直になればいいのかわかんないんだって!そもそもかんがえてるよゆーだってないでしょこんな時に!!
「何もしてこないのであれば好都合。厄介なことになる前にその
「ひぃ、目がこわい!こっち来ないでってばぁ!!」
よけられなくなってきたので両手を突きだして受けたら、最初の時は止められたのに今度ははね飛ばされて地面を転がった。転がったのは平気だけど両手はめちゃしびれてる。
「いったたた……だんだん手もいたくなってきたぁ。こんなのやっぱり私じゃ無理だってぇぇ」
いわれるままに変身しちゃったけどこれ以上はどうにかできる気がしない。もうツインテイルズ……テイルブルーに早く来てほしい泣きそう。
『それでは好香。好きな人、憧れる人…いや少しでもかっこいいなんて思う人はいるかい?』
座り込んだ私にエレメリオンが聞いてくる。だから、よゆーないのにぃ……けっこーマイペースじゃないエレメリオン?
でも好きな人、かあ。それならすぐに言える。これはこれで言うのちょっとはずかしーんだけど、なんでかな。合体してるせいかエレメリオンには、はずかしい気があまりしないや。
「いるよ、ちい姉とか……最近だとテイルブルーとかトゥアールさんもかなあ」
好きな人、だけならおねーちゃんや総二兄なんかもだけど、かっこいいとかもあこがれるとかもありだとやっぱりこーなる。全部でいちばんはとーぜんちい姉だけどね。
やった、今度はロックチョウデリット避けられた
「
「わわ、飛ばされきゃあああ――あいたぁっ!!」
……けどダメだ。ものすごい風に巻かれて飛ばされて建物にぶつかって止まった。あ、ぶつかった壁壊れちゃったどうしよ……
「フン、力の扱いを知らぬようで防御だけは硬い。あの精神生命体の力か……それにしても捲るスカートが無い相手では今一つ我が風の振るい甲斐が無いものだ」
『直接の突撃だけでなく超加速による暴風圧がヤツの武器か!』
なんか馬鹿にされてる気がするけど、怒る前に怖いんだってばこっちは。話しかけてくるエレメリオンがいなかったら絶対とっくに泣いてるからね。もう嫌いだあいつ。
『――好香のお姉さんなら私も見ているよ。先程は
「えーと、それって……?」
ロックチョウデリットの動きにかまわないで、エレメリオンは私に伝えてくる。
『好香が嫌いな髪型には変われない。好香は“ツインテール”で“嫌い”という以上に思い浮かぶものがある。それがこの姿のきっかけだ。』
私はツインテールが嫌い。きょーみないって思ってる。――でも、ツインテールで最初に浮かぶのは。私がいちばん見ているツインテールをくっつけてるのは。
「ツインテールなら……ちい姉」
私がいちばん知ってるツインテールはちい姉―愛香おねーちゃんだ。
『好香はお姉さんが好きなんだろう。嫌いと言っているツインテールでも最初に思い出すのはお姉さんだ。だったら――お姉さんのツインテールは嫌いかい?』
ビル壁にもたれてる私に目掛けてロックチョウデリットが迫ってる。でもなんか……さっきより速いはずなのに、さっきよりはっきり見える。
「ちい姉のツインテールは……嫌いじゃないよ……」
私が知ってるちい姉はずーっとツインテール。お風呂や寝る時なんか解いてるけど、それ以外でツインテールにしてないちい姉を見たら変な感じがするくらい。私が大好きな
「ちい姉のツインテールは好き、大好き!」
これが私のほんとの気持ち。
ジャンプしてロックチョウデリットを避ける。さっきよりも体が軽い。
ロックチョウデリットの方は、私が避けても直角に飛んでビル壁にぶつからずに空へ上ってる。その移動する暴風の衝撃でビルの方が削れていってる。
でもそんなことどうだっていいや。私には関係ない。
『そうだ。難しく考えなくていい。それが1つめの“好香の好きな
エレメリオンの言葉を聞いてると、どんどん力が湧いてくるような感じ。
空中にいる私をまた暴風で振り回したロックチョウデリットがキックで突撃してくる。
『今の好香には、好香が好きなツインテールを私が増幅して結ばれているんだ。』
このツインテールは私が好きなツインテール?じゃあそれって――
「それじゃあ、このツインテールってちい姉とお揃いなの!?」
『ああ。そのツインテールも鎧も、好香の“大好き”そのものさ!』
ロックチョウデリットのキックを両腕で受け止めた。物凄い音が響いたけど――今度は全然痛くないし痺れない。
「私が見てたちい姉のツインテールになってて、ちい姉が大好きでこのかっこかぁ……えへ。じゃあこのままでいいや!!」
なんか口元が緩んできた。でもなんかすごい嬉しい。だって私は今、私の大好きで大好きなちい姉みたいになれてるんでしょ。嬉しいに決まってるじゃんこんなの!
胸のエレメライザーが光って、力が溢れる。なんでもできそうな気がしてきた。
「このぉ、どーしてあんたに蹴られなきゃいけないのよ鳥オバケ!!」
「ヌオォッ!?」
キックを受け止めた両腕を思いっきり降ったらボール投げるみたいにロックチョウデリットを投げ飛ばせちゃった。
「うっわ、すごい……!」
『好香の
エレメリオンの言う通り、単語はよくわかんないのが多いけど意味が理解できるようになってきた。――でも、なんかひとつ私の漢字が違うような部分があった気もするけどエレメリオン国語苦手?
「なんかわかってきたかも!あいつもやっつけられそう!!」
それよりも今はロックチョウデリットをやっつける。ちい姉みたいになれてるってわかったら怖くもなくなってきた。怖がらせてくるならやっつければいいんだ……って思うのは考えもちい姉ぽくなってるのかな?
『ああ!やるぞ好香!』
エレメリオンの返事が心に響いたら、助走をつけて思いっきりジャンプ。放り投げられてもすぐに空中でバランスを取ってたロックチョウデリットに近づいた。よーし今度はこっちが羽毟ってぶん殴って地面に落としてやる!
「二度は背に触れさせん!!」
もっと高くに飛ばれて私の腕は空振り。
「今度は私がその首をへし折ってくれる!!」
ロックチョウデリットは空で自由の利かない私の背中に向かって急降下してくる。
『好香!跳ぶんだ!!』
「うん!」
変身しても私は空を飛べないみたい。でも空を“跳ぶ”ことはできる。空気を蹴って空の上でもっと高くジャンプ。急降下するロックチョウデリットとすれ違う。すれ違う瞬間に右足を掴めた。おお、ちい姉にされたこと私にもできた!さすがだ変身した私!
「なにぃっ!!」
「ばーかゲームじゃ二段ジャンプなんてよくあるでしょ!ふふん、やったこっちも掴めた!」
私の二段ジャンプに驚いてるロックチョウデリットにドヤ顔を見せる。蹴ってきた左足も掴めた。これでさっきのお返しができる。両足を掴んだまま思いっきり振りかぶる。
「さっきはお尻ぶつけて痛かったんだからね!アンタも1回くらい地面に頭ぶつけてみればいいのよ!!せーーーーー………っっの!!!」
「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
今度は空じゃない。地面にむかってぶん投げてやった。ぐるんぐるんと投げたこっちがちょっと引いてしまうくらいの勢いで回転しながらロックチョウデリットは地面に吸い込まれ、大きなクレーターを作って墜落した。
「おぉー……!頭っていうか体全部ぶつけちゃった」
地面に出来た大きな穴の側に着地して、中心を覗き込んでみたら更にぽっかり穴が開いてる。ロックチョウデリットはその穴にめり込んでるみたいで姿も見えないし、這い出してくる様子もない。
「ちい姉の髪なら大好きって言ったらこんな力でちゃうの……?」
『“大好き”が文字通り“力”となる。それが
自分でやっちゃったクレーターにぽけーっとなってたらエレメリオンが教えてくれる。繋がって私の理解レベルも伝わってるのかな、説明がだんだん分かりやすい言葉を選んでくれてる気がする。
「あ、このへん結構壊しちゃったけど、大丈夫かな……」
『すまない。物体を修復するような力を発揮する属性は私も好香も持っていない。工事の人に任せよう。』
え、そんなどうしよ。でもそれしかないか……うぅ、ツインテイルズがあんまり物壊さずに戦ってるの凄いことだったのかも。
珍しいエレメリアンの間を置かない同日出現の報に俺たち―ツインテイルズが現場に到着するのは、いつもよりも若干の時間を必要とした。転送ポイントへ移動するタイムロスの他に、今回はエレメリアンの反応が動き過ぎた。レーダーをチェックしているトゥアールが言うには2つの大きな
それがようやく動きを止め、俺たちが追いつくことができたのだが。
「なんだこれ……!アルティメギルのやつら何してんだ!?」
ビルを飛び越え最後の跳躍をした俺たちの眼前に広がった光景に思わず目を見開いてしまう。大小のクレーターやら削れたビル壁に始まるかなりの破壊の爪痕。
エレメリアンの目的は
なので、いくら俺たちが遅れたとはいえ、市街地でこれほどの被害が出ているのは初めてかもしれない。加えて当のエレメリアンの姿が見えない。
一体どういうことなのかまるで事態が掴めない。
「ツインテールの気配がある……!?」
だというのに俺―テイルレッドにはツインテールの気配が感じられる。もしやドラグギルディのようにツインテール属性のエレメリアンなのか!?
「レッド、あそこ!何かいるわ!」
隣を跳躍するブルーが指さした場所―大きい方のクレーターの傍にツインテールの影が見えた。上からじゃ砂塵で全容はよくわからないが、今までの経験からするとエレメリアンにしては随分小さいな。上半身は大きく見えるが身長そのものは俺と同じかもう少し低いんじゃないか。
着地と同時、とにかくこれ以上暴れさせるわけにはいかないとブルーとイエローが即座に武装を展開。ウェイブランスとヴォルテックブラスターを構えた。
「待て、ブルー、イエロー!こいつはエレメリアンじゃない……!!」
が、俺は前に出て二人を制した。さっきは確かにシルエットしか見えなかったが、それでもツインテールの形状が見えないなんて俺にはありえない。目の前にあるのは触手でも鋼鉄でもない。あれは人間の髪で結われたツインテールだ!
景色が晴れて現れた相手の姿は、まるで俺たちと同じくテイルギアを纏った戦士。あるいはグラスギアの
何にせよ人間相手だ、警戒は解けなくても迂闊に攻撃するわけにはいかない。
「わ、ツインテイルズだ……!」
――のだが俺たちに気付いた相手の第一声はどこか緊張感が無かった。
周囲の状態、身に纏う硬質な武装とはまるで釣り合わない無警戒の様子でこちらにトコトコと歩いてくる。と思えば、後ろの二人の武器が自分に構えられてるのに気付いて足を止めた。
「え、えぇ~と……やっぱりこんなに壊しちゃうのって駄目だった……?」
いや、やはり警戒してるというより身を竦ませただけのようだ。
その態度は、本当に格好が普通の服なら叱られそうで様子を窺う幼い子供だ……外見相応の年齢だろうか。
じっくり見ればそのツインテールも、見事だがどうにも違和感がある。熟練のツインテールのようでいて初めて結んだ初々しさがあるような。ツインテールに馴染んだ誰かが結んだようでこの子が自分で結んだようなアンバランス……ツインテールの見た目と年齢が一致しないと言うべきか。いろんな意味でなんだこの女の子。
「ブルー、イエローまず武器を下ろそう。見たままの小さい子供みたいだし怖がらせるだけだ」
俺たち以外の現役ツインテール戦士の存在がアルティメギル側についているダークグラスパーという悪い例しか知らないせいで、ブルーは勿論、イエローも警戒を解いていない。
その判断も分かるが相手が目に見えて所在なさげにおろおろし始めてるから待ってほしい。外見通りならそれこそダークグラスパーより年下だろうし、大きな2人から凄まれたら余計に怯えてしまいそうだ。
相手は人間の上に敵意もまったく感じないとなると、まずは話を聞かないことには始まらない。
「ええと、何もしないから落ち着いてくれ。状況を知りたいだけなんだ」
俺が一歩進み出て声をかけると、少し安堵した表情を見せた。こういう場合はテイルレッドが幼女の姿でありがたい。近い年齢の相手が代表で話しかけたことで応対する余裕を持ってくれそうだ。
「ほ、ほんと……?その、地面壊しちゃったのはいけないと思ってるんだよ?でもでもこれにもじじょーがあってていうか、べんしょーって言われても何もできないからその……テイルブルーとテイルイエロー怒ってそうだからえっと……」
「大丈夫だって。2人も怒ってるわけじゃないから!あー俺たちの事は知ってるんだ?」
「うん。それはツインテイルズって有名だし……」
うーん。やっぱり年相応の反応で、逆に困るなこの状況だと。素直に話してくれそうな感じはあるんだけど、まだ怒られやしないかと戸惑ってそうだ。折角のツインテールが畏縮している。
「そっか、じゃあまずは君の名前を教えてくれないかな?」
「え、名前?」
「そうだけど……?」
「ちょ、ちょっと待って!」
なんだなんだ。落ち着かせるためにもまずはお互いを知ることから、と思ったんだがキョトンとした顔されたと思ったら、後ろ向いて一人でぶつぶつ言い始めた。いや、これは誰かと話している……通信相手がいるのか。
もしや、この子にも俺たちのトゥアールのような協力者がいるのか?
……「名前ないの?」「それは違うの?」とか聞こえてくるあたり、もしかして名前を考えてるんだろうか?無理せずに別に本名で……とも言えないな。コードネーム呼びは俺たちも同じなわけだし、どんな立場でも正体を明かせない事情だってあるだろう。
それにしても身振りに合わせて揺れる水色のツインテールが可愛い。ツインテールは口程に物を言う、とはあるが子供らしい元気さが伝わってくるな。
『慌ただしく揺れる小さい子のお尻っていいですよね……危険が無いとわかってれば今すぐにでも基地に招待したいですよねグフフ……』
……こちらの通信から聞こえる我らが
このまま何も聞かずに帰した方が1人の幼子の安全が守られるのではないか……と俺が思い始めたところで、動きが止まりこちらに振り返った。どうやら名前は決まったようだ。
「あ、あなた達に名乗る名は無いわ!!」
腰に手を当ててはっきりとそう言ってきた……だが、ドヤ顔してるけど微妙にぷるぷる震えてるそうか、決まらなかったんだな名前。さて、これはどう事情を聞いていこうか……
今回はヒーローと謎のヒーロー?としてツインテイルズと顔合わせた好香(^u^)