東方二次創作 普通の魔法使い   作:向風歩夢

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帰省

「……見失っちまったみたいだぜ……」

 

 魔理沙は人里に降りる。あの母親に似た女性は何者だったのか、どこにどうやって消えたのか……疑問は尽きなかった。

 

「……気は進まないけど……、親父に聞いてみるか……」

 

 魔理沙はさっきの女性の正体を父親に聞くことにした。女性自身も自分のことは父親に聞くようにと言っていた。父親が何か知っているのは間違いないと魔理沙は実家の入口に足を運ぶ……。入口に到着した魔理沙だが、やはり扉に手を駆けることができないでいた。長い間、家を空け、父親と会っていなかったせいだろう。どんな顔や態度で家に入れば良いか魔理沙は分からなかったのだ。

 

「……私らしくもないぜ……。元気百倍で入ってやるぜ……!」

 

 意を決した魔理沙は、勢いよく引き戸を開け、荒げた声を家の中に放り投げる。

 

「おい、クソ親父、帰ってやったぜ!」

「……ウチに『魔法使いになる』と言って出ていった不良娘はいねえよ」

 

 低い声が魔理沙の耳に届く。久しぶりに聞いた『聞き慣れた声』だった。魔理沙の父親が奥の部屋から土間に出て来る……。齢は六十を迎えるくらいだろうか。しかし、恰幅が良く、筋骨隆々なその姿は年齢を感じさせない頼もしさを放っている。

 

「それとも、魔法使いはやめると決めたのか? それなら家の敷居を跨いでもいい……」

「誰が魔法使いをやめるかよ……!」

 

 魔理沙は父親の言葉を即座に否定する。

 

「この、はねっ返り娘が! ……誰に似たんだ……」

「知らないぜ、そんなこと!」

 

 久しぶりに会ったにも関わらず、二人は早くも口げんかを始める。お互い、相手の話を聞くことなく感情をぶつけあっていた。しばしの無言な時間が流れた後、口を開いたのは魔理沙だった。

 

「……さっき、母さんに似た金髪のおばさんが家から出ていったよな? あれは誰なんだぜ?」

「……こどもには関係ないことだ……」

 

 魔理沙の表情は気色ばむ……。魔理沙が母親のことを知りたいと父親に質問をすると、いつも同じような答えが帰ってくる。『こどもは知る必要がない』、『こどもには関係がない』と。また、その言葉か、と魔理沙は頭に血を昇らせる……。

 

「もう、私は子供じゃないんだ! ……なんで……なんで親父も、あのおばさんも、……母さんも……隠しごとするんだよ!」

 

 魔理沙は引き戸を開けたまま、家から飛び出す……。その姿を見送った魔理沙の父親は和室の居間に戻る……。居間のタンスの上には、魔理沙の父親と母親そして幼い魔理沙が映った家族写真が飾られていた。魔理沙の父親は写真を手に取り、微笑んだ表情で写っている魔理沙の母親に視線を送る……。

 

「……どうやったら、魔理沙を傷つけずに魔法の道をあきらめさせることができるんだろうな……。お前なら上手くやれたのか……? リサ……」

 


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