東方二次創作 普通の魔法使い   作:向風歩夢

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次元斬り

「……ほう。ワシへの恐怖に打ち勝ったか? じゃが、そんなことに意味はない。その程度ではのう!」

 

 マリーに自身の雷を背後にワープされ、防御壁を張らざるを得なかったテネブリスは怒りを隠せないでいた。

 

「……もう、貴方の思い通りにさせるわけにはいかないのです、お母様……! いいえ、テネブリスさん!」

「……よかろう。ワシの名を呼び、敵対するのならば、もう容赦をする必要はない。すぐに始末してくれるぞ! マリー!!」

 

 テネブリスはその身に魔力を込め始める。あまりに強大な魔力の高まりに空気が振動を起こしていた。

 

「……魔理沙ちゃんとこの子たちをお願いします、紫さん……!」

 

 マリーは結界を張り、紫と魔理沙、そして自身の配下であったルークスの生き残りの魔女たちをまとめて保護した。

 

「おい、おばさん! なんで私たちを閉じ込めるんだぜ!?」と怒鳴る魔理沙。その横にいた八雲紫は「……あなた、死ぬつもり?」と、マリーに問いかける。

「……いいえ。私はテネブリスさんの言う通り、臆病者です。死ぬのは怖い。でも、魔理沙ちゃんたちを失うのはそれよりも怖い……。それだけです。……魔理沙ちゃん、大人しくしていて。運のないあなたは、この闘いの役に立つことはない。賢いあなただもの。それくらいは理解できるでしょう?」

「……おばさん、私はまだアンタのこと何も知らねえんだ。死なれたら困るんだぜ。アンタには母さんのこと、もっと教えてもらわないといけないんだからな!」

「ええ。絶対死なないわ。まだ、リサに返せてないものがあるから。あと、私はおばさんじゃないわ、お姉さんよ!」

 

 マリーはそう言い残して、宙へと舞った。そして、テネブリスと対峙する。

 

「始めましょう、テネブリスさん」

「……ククク。良いじゃろう。この体で動けるのもこれで最後じゃろうからなぁ。記念に貴様を殺してやろう……!」

 

 テネブリスもまた、マリーと同じく無数の黒球を召喚する。

 

「貴様とワシとの力の差、思い知らせてやろう……!」

 

 テネブリスは無数の黒球をマリーへと撃ち出した。高速に打ち出されたそれらをマリーはギリギリのところで避けていく。マリーが避けた黒球は無人になった人里の民家などの建造物や地表にぶつかる。黒球が接触した建物たちが飲み込まれるように綺麗さっぱり消滅してしまった。

 

「な、なんだよ、あれ。まるでミニチュアのブラックホールなんだぜ……!?」と結界の内側で驚きの表情を浮かべる魔理沙。

「……あれが純粋な『境界を操る』能力の一端なのね……」

 

 八雲紫もまた、冷や汗をかきながらマリーとテネブリスの戦局を見つめていた。

 

「私だって……!」

 

 マリーは短杖を構え、黒球を生成する。

 

「はぁあああ!」

 

 気合を入れたマリーの黒球がテネブリスに向かって発射される。

 

「ふむ。最高傑作に認めただけのことはある……が、やはり理想には遠く及ばん!」

 

 テネブリスは球状のバリアを自身の周囲に展開する。マリーの黒球が衝突するが、バリアはビクともしていなかった。

 

「くっ……!?」と息を吐き出すマリー。

「なけなしの勇気を振り絞ってワシに盾突いたことは褒めてやろう。じゃが、これで終わりじゃ」

 

 テネブリスは右手の人差し指を天に掲げ、それを振り下ろした。

 

「ま、まずい。あれは……!」

 

 マリーはテネブリスが繰り出そうとする術の危険性に勘付き、とっさに人差し指の延長線上から体を逃がす。次の瞬間、延長上に位置していた建物、森、大地が音を巨大な音を立てながらずれ動き、巨大地震で形成される断層のようになってしまった。断面は日本刀で切断されたトマトのごとく、鮮やかである。断層の先端は確認できないほど果てしなく遠くにあり、視認できない。

 

「な、なにしやがったんだぜ、あの婆さん!?」と驚く魔理沙。

「まさか次元を斬った……!? これほどの広範囲に及んで……!?」と続いて紫も冷や汗をかく。

「次元を斬る?」

「……ええ。私のスキマも次元を斬ることで発生する」

「紫、お前もあれができるのかよ!?」

「無茶言わないでちょうだい。あんな広範囲に次元を切断するなんて私にはできないわ。あの老婆、下手をすれば地球ぐらいの大きさの次元を斬ることができるのかもしれない……」

「ち、地球だって? さすがにそれは言い過ぎだろ!?」

「……言い過ぎだったらいいわね。……言い過ぎであってほしいところだわ」と言って、紫は拳を握り締める。

 

 マリーもまた、圧倒的なテネブリスの術を前に目を大きく見開いていた。

 

「これで完全に思い出したじゃろう? 貴様がわしに勝つなどあり得ん」

 

宙に浮いたテネブリスはマリーを見下す。

 

「……さすがはテネブリスさん。……神に愛された最初の魔女……」

「さて、今度こそ殺してやるぞ、マリー!」

 

 テネブリスは再び、次元切断の術をマリーに繰り出す。先ほどよりも速いスピードで繰り出された術に、マリーは反応することができなかった。

 

「う、あぁああああああああああああああ!?」

 

 悲鳴を上げるマリー……。術を受けたマリーの左腕はすっぱりと切断され、宙を舞うのだった。

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