霊夢は紫に自分が確認した事実を告げる……。紫が異変についてどこまで知っているのか、確かめようとしたのだ……。
「……付喪神が人里から消えたわ……。この目で確認した……。……魔理沙の話だと、妖精も消えているらしいわ……。それも弱っちいやつらじゃない。比較的強い力を持っていた奴らがね……。紫……、あんた何か知ってんの? そして……その水晶は何か関係があるのね……?」
霊夢の問いに対して、紫は胡散臭い笑みを崩さずに霊夢に話し始めた……。
「……霊夢……、あなたも感覚が鈍っているのかしら? 博麗の巫女ともあろう人間が、この水晶の異常性に気がつかないなんて……。……ま、人のこと言えないわね……。私も博麗大結界が破られていることに気付かなかったのだから……。私としたことが、平和ボケしていたわ……」
「博麗大結界が破られている!? なんのことよ!? そんなの全く感じられないわよ!」
博麗大結界……。幻想郷と外の世界を隔てるために八雲紫と歴代の博麗の巫女が造り出した結界である……。幻想郷を幻想郷たらしめている最も重要な結界だ。もっとも、現在の巫女である霊夢は結界についてほぼ関わっておらず、紫とその眷属が管理をしている……。……しかし、関わってはいないと言っても、博麗大結界が破られるなどという大きな異変に自分が気付かないわけがないと霊夢は思い、紫に返答を求める……。
「……かなりの術者がこの幻想郷に侵入してきたらしいわ……。破られた場所を確認したけど、丁寧な術式がかけられていた……。結界を管理する私に気付かれないようにする術式を、ね……」
「……信じられないわね……。アンタにも私にも気付かれずに幻想郷に入って来れる奴がいるなんて……。そいつの目的は何なの?」
「知らないわ……。どこのだれかも分からないもの……。それに、一人かどうかも分からない。集団で入ってきてる可能性もある……。……全く虚仮にされたものだわ……。……この私を敵に回した侵入者にはそれ相応の報いを受けてもらわなきゃね……!」
霊夢は紫が放つプレッシャーを敏感に感じ取り、額に冷や汗をかく……。紫の表情は未だ胡散臭い笑みで満たされていたが、その笑みの内側に隠れる怒りを霊夢は見抜いた……。こんなに怒りを露わにする紫は久しぶりだ、と霊夢は緊張する……。
「……霊夢……、この水晶の正体が本当にわからないのかしら……? だとしたら大問題ね……。この程度のことを見抜けないようでは、博麗の巫女は務まらないわよ?」
「……なめないでちょうだい……! すぐに見抜いてやるわよ……!」
霊夢は紫が手に持つ水晶を強引に取り上げる……。すると、水晶が光だし、爆発を起こしてしまった……。博麗神社で魔理沙の持ってきた水晶に触れた時と同じである……。
「お、おい。博麗の巫女さん、アンタ何やったんだよ? 急に爆発させるからびっくりするじゃないか! 研究室を壊すつもりなのか!?」
「なんで、また爆発したのよ……?」
霊夢はにとりの苦情を無視して、独り言を呟きながら、思索にふける……。
「……まだわからないかしら……? あなたが触ったから爆発したのよ」
「私が触ったから……? 一体なんのことよ……。……!」
思考する霊夢に紫はヒントを出すように話しかけた……。霊夢は一瞬疑問に思ったが、紫のヒントから一つの答えを導き出したようだ……。
霊夢と紫のやり取りの様子を見守っていた魔理沙だが、ついに我慢できなくなり、不満を口にする……。
「おい、何ふたりだけで盛り上がってんだよ! 私には何が何だかなんだぜ? 霊夢、その水晶の正体がわかったんだろ? 私にも教えてくれよ!」
霊夢は魔理沙の方に振り向き、厳しい表情を向ける……。霊夢は魔理沙に向かって重たそうに口を開いた……。
「魔理沙……、アンタは今回の異変に関わるのはやめた方が良いわ……」
魔理沙は突然の霊夢の言葉に呆然とするのだった。