東方二次創作 普通の魔法使い   作:向風歩夢

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不気味な女児

◇◆◇

 

 魔理沙とアリスは森の中を二人で移動していた。

 

「おい、もうちょっとスピード落としてくれよ! 振り落とされちまうぜ……!」

「あんたこそ、私の首絞め過ぎよ! もうちょっと腕の力抜きなさいよ!」

「だから、スピード落としてくれって言ってるんだぜ!?」

 

 魔理沙はアリスにおんぶされた状態で空を飛んでいた。魔理沙は地面に落ちてはいけないとアリスに力いっぱいしがみ付いている。向かう目的地は、アリスの洋館と同じく、魔法の森にある魔理沙の自宅『霧雨魔法店』だ。

 

「それにしても参ったぜ……。全く魔法を使える気配がないぜ……。朝はまだふらふらしながらも飛べてたんだけどな……。なぁアリス、お前は運が減ってるのを感じ取れるか?」

「正直言って、わからないわ。私は普段から意識して自前の運を使って魔法を発動させてたから……。アンタと同じように幻想郷にある運を使って魔法を発動してる奴じゃないと感じ取れないんじゃない?」

「……私は運なんて皆、持ってるもんだと思って魔法を使ってたからなぁ。自分に運がないなんて知らなかったし……。……意識して幻想郷の運を使って魔法を発動してる奴なんているのか、なんだぜ?」

「んなこと私に聞かれても知らないわよ……」

 

 辺りはすっかり暗くなりかけていた。お昼前には霊夢と別れた魔理沙だがアリス宅に長いこと居座っていたことに気付いて驚く。程なくして魔理沙たちは霧雨魔法店に到着する。

 

「やっぱり、空を飛べないと不便だよなあ……。空さえ飛べたらアリスの家からここまで十分もかからないってのに……」

「愚痴はいいからさっさと用事を済ませなさいよ……」

 

 魔理沙は自宅でマジックアイテムを大きなリュックサックに詰め込んでいく。運が無くなり、自力での魔法発動ができなくなった魔理沙だが、あらかじめ魔力が込められているマジックアイテムなら使用可能であることに気付いたのだ。魔理沙はこれでもか、とリュックにマジックアイテムを押しこんで行く。

 

「よし、こんなもんなんだぜ!」

 

 魔理沙はその小さな体と同じくくらいに膨らんだリュックを背負う。

 

「よし、じゃあアリス、人里まで連れて行ってくれ!」

「……アンタまさか、私にまたおんぶして空飛べって言うんじゃないでしょうね?」

「え? 当たり前だろ?」

「『当たり前だろ?』じゃないわよ! そんなデカイ荷物持ったアンタをおんぶして空飛べっていうの!? ふざけんじゃないわよ!!」

「ええ……。ケチくさいんだぜ……」

「なんとでも言いなさいよ。とにかく私はおんぶして空飛ぶつもりはないから! これ以上文句言ったら、ボディガードもしてやらないからね!」

「そ、それは困るんだぜ……。アリスさん、お願いします! 空は飛ばなくてもいいから、人里まで付いてきて下さい、なんだぜ……」

 

 魔理沙はアリスとともに徒歩で人里に向かうことにした。歩いて移動するには2~3時間はかかる距離だが、魔理沙はアリスにへそを曲げられると困る。いくらマジックアイテムがあるといっても魔法と違ってすぐに発動できるわけではない。ましてや魔理沙はマジックアイテムのみでの戦闘に慣れていないのだ。もし、妖怪に襲われても対処できるかわからない。今の魔理沙にアリスの護衛は必須だった。

 

「アリスぅ……。リュック持つの、手伝ってくれなんだぜぇ……」

「欲張ってそんなに詰め込むから、すぐ疲れちゃうのよ! 持つのは絶対手伝わないからね!」

「薄情なヤツめ……」

「なんとでも言いなさいよ!」

 

10分後、再び魔理沙はアリスに泣きつく。

 

「……アリスぅ……」

「……わかったわよ! 取りあえず休憩にするわよ! その後、ちょっとだけなら持って上げるわよ!」

「ホントか!? サンキューなんだぜ! アリス!」

 

 根負けしたアリスを見て魔理沙は満面の笑みでお礼を述べる。どうにもアリスは子供のような姿を見せる魔理沙についつい甘くなってしまう。

 アリスと魔理沙は荷物を交代で持ちながら歩き続ける。

 

「ようやく、魔法の森を抜けれそうなんだぜ」

「人里まではまだ1時間は歩かないと行けないわね」

 

 二人ははあとため息を吐く。

 

「……っ!?」

 

 アリスは何かの気配を感じ、周囲を見渡す。妖怪ではない……。それはアリスと似た気配を持っていた。異様な雰囲気にアリスは冷や汗を流す。

 

「どうしたんだぜ!? アリス!」

 

 魔法を使えなくなり、気配を感じることができなくなった魔理沙だが、アリスの様子がおかしいことに気が付き、声をかける。

 

「近くに妙な奴がいるわ。……妖怪や妖精じゃない。これは……」

 

 アリスがごくっと唾を呑んだときだった。二人に話しかける奇妙な声が聞こえてくる……。

 

「すごい、すごい! 百十七号の気配に気付くなんて……! お姉さん、凄腕の魔法使いなんだね!」

 

 甘ったるい子供の声だった。声のする方向に二人が顔を向けるとそこには幼い女児が黒いフードをかぶってアリス達を見つめていた。

 

「やったぁ! 見つけたよ。出来そこないさん! あなたを殺して百十七号が偉大な母(グランマ)のお気に入りになるんだから!」

 

 アリスと魔理沙は不気味なことを述べる女児に視線が釘付けにされてしまうのだった。


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