「か、勝ったのか……?」
「……そうみたいね……」
アリスは浮かない顔をしていた。その表情を見た魔理沙は勝利に浮かれた心を冷静にさせる。
「……とんでもない奴だったぜ。人形とは思えない強さだった……。こんな人形を作っちまうなんて、あの婆さん何者なんだぜ?」
「……見当もつかないわね……。……魔理沙、この子たちを埋めるのを手伝ってくれる?」
「埋める?」
「ええ……。主人のために尽くした人形……。供養してあげないと……」
魔理沙とアリスは人形たちの破片を集め、綺麗に並べて埋葬した。アリスは手を合わせて祈りを捧げた。
「主人に見捨てられた人形たちよ……。安らかに眠ってちょうだい……」
「……お前ってこんなに情のあるヤツだったんだな……。知らなかったぜ。前に一緒に妖怪を倒した時はこんなことしなかったよな?」
「……私と一緒だから、情が移ったのかもね……」
「お前と一緒? それってどういう……」
「…………」
魔理沙の問いにアリスは答えない。アリスが喋りたがらないことを察し、魔理沙もそれ以上問いかけなかった。
「さ、急いで人里に向かうわよ。すっかり夜になっちゃったしね。遅くなる前に到着しなきゃ、ね」
「ああ……」
魔理沙とアリスは人里へ歩き始めたのであった。
◇◆◇
魔女集団のアジト……。魔理沙の母親にそっくりの容姿をしたマリーは、青ざめた顔をしていた。
「百十七号ちゃん……」
百十七号が完全停止したことを感じ取ったマリーは眉間にシワを寄せながら目を瞑る。
「お母様……。百十七号がその機能を完全に停止させました……」
「百十七号……? ああ、傑作からは程遠かったあの人形のことか……。……定期的に魔力を与えなければ動けなくなるはずじゃが……。……もしや、マリー……貴様が魔力を与えておったのか?」
「……はい。勝手ながら……」
「貴様も奇特なことをするものじゃ……」
「……お母様……。百十七号ちゃ……、……百十七号はお母様を敬愛しておりました。せめて亡骸に祈りを捧げてはいただけませんか……?」
「……なぜ、失敗作の人形に情を注ぐ必要があるのじゃ?」
予想通りの回答ではあった……が、百十七号のことを思うと、マリーは胸が苦しくなる。
「そんなことよりも、計画は進んでおるのか?」
「はい、順調にこの幻想郷と呼ばれるコミュニティの運が集まってきております……。お母様の悲願も成就するかと……」
「そうか、それは良い知らせじゃ……」
老婆はにやりと口を歪ませた。