東方二次創作 普通の魔法使い   作:向風歩夢

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最高の痛み

レミリアはグングニルを振り回し、カストラートに攻撃を加え始める。

 

「なめるなぁ!」

 

 カストラートも杖に魔力を込め光を剣状にすると、その刃でグングニルを受け止める。彼女たちの武器が接触した場所から火花のように稲妻がちりちりと発生する。

 

「僕が実験動物ごときに遅れを取るわけがない!」

「そんな戯言、死んでから地獄で好きなだけぼやいているといいわ!」

 

 レミリアは後方に跳び退くと両手に槍を顕現させると、次々にカストラートに向けて射出する。

 

「うっとうしいぞ! 下等生物!」

 

 カストラートは連続して飛んでくる槍を光の剣で受け流しながらレミリアに迫り、斬りかかった。レミリアは槍を横にして剣を受け止める。

 

「やるわね。人間……!」

「貴様が僕を評価するんじゃない!」

 

 カストラートがさらに力を込めると、レミリアの紅い槍に亀裂が入った。受け止めきれないと判断したレミリアは迫り合いを解除、後方に移動し距離を取る。

 

「……なるほど、パワーはあなたの方に分があるみたいね……」

「パワーは、だと? 自惚れるな! 僕に貴様ら実験動物に劣る能力などひとつもない!」

「そうかしら……? 随分と致命的に私に劣る能力があるみたいだけど……?」

「抜かせ!」

 

 カストラートがさらなる攻撃をレミリアに加えようと移動したときであった。カストラートの足元に魔法陣が現れ、地面から発生した魔法がカストラートの左肩を貫いた……!

 

「がっ!? なにぃ!?」

「どうかしら? パチェのトラップは」

「パチェ? あの、若造の魔法使いのことか!?」

 

 カストラートは左肩を押さえながらレミリアを睨みつける。額からは大粒の冷や汗をかいていた。

 

「私たちを見下すのは良いけれど、その舐めた態度があなたの弱点だったわね。パチェがあなたと戦いながら展開していた罠魔法に気付かないなんてね。詫びるなら今のうちよ?」

「だ、誰が貴様ら下等生物なんかに頭を下げるか……!」

「そう、残念だわ」

 

 レミリアは手に持った紅い光の槍を構え直し、カストラートの左側を中心に攻める。左腕が動かせなくなったカストラートは防戦一方になってしまう。

 

「はぁああああ!!」

 

 カストラートの隙を突き、レミリアはより一層の力を込め槍を振るう。光の剣で受け止めたカストラートだったが、剣は槍の衝撃に耐えきれず粉砕され、彼女の体は吹き飛ばされた。

 

「が……はっ!!」

 

 カストラートは口から鮮血を吐きだした。それを見て、レミリアは勝利を確信する。

 

「さあ、降伏しなさい。今なら命だけは助けてあげるわ」

「……命だけは助けてあげる……? 僕が下等生物に憐れみを受けている? そんなことは許されない……!」

 

 カストラートはよろめきながら立ち上がる。

 

「なんて傲慢なのかしら? そこまで行くと少し感心してしまうわね」

「……ムカつく吸血鬼だ。僕に最後の手段を取らせるなんてね。覚えていろ……! 僕にここまでさせた貴様はただでは死なせない。薬漬けにして、解剖して、あらゆる屈辱を与えてから殺処分してやる……!」

「威勢が良いことを言うのは結構だけど、もうボロボロじゃない。そんなあなたに何ができるというのかしら?」

「……できるさ。吸血鬼を服従させることを運命づけられた僕になら……」

 

 そう言うと、カストラートは首にかけていたネックレスの装飾を服の下から取り出す。それは銀製の十字架だった。レミリアはそれを見て思わず吹き出してしまう。

 

「あっはは! あなた、私たち吸血鬼の弱点が銀や十字架だっていう迷信を信じているの!? これは滑稽ね! ……最後の手段というから何かと思えば……期待外れよ。退く気がないようだから殺してあげるわ!」

 

 レミリアはカストラートにとどめを刺そうとグングニルを構える。

 

「死ね!」

 

 レミリアは槍を突き刺そうとした。しかし、その時、レミリアの頭部に激痛が襲う。

 

「な、なに? い、やあああああああ!?」

 

 レミリアは脳に激痛を覚え、地面をのたうちまわる。脳にダメージを受けているからなのだろうか、彼女の整った鼻から血が溢れだす。

 

「どうだ、下等生物よ。最高の痛みだろう?」

 

 カストラートはボロボロになった自身の体を引きずりながら、顔を邪悪に歪ませた。


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