東方二次創作 普通の魔法使い   作:向風歩夢

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あふれる活気

「ちぇっ! 暇になっちゃったぜ……」

 

 魔理沙はほうきに乗り、風を受けながら独り言を呟く。もう少し、博麗神社に滞在するつもりだったのだが……、思わぬ紫の博麗神社来訪があり、予定よりも早く神社を出ることになってしまった。

 

「どうせ、家に帰っても暇だしなあ……。……人里にでも寄るか……」

 

 特に人里に用事があるわけでもなかったが、暇を持て余すのももったいないと感じたのだろう。魔理沙は人里に降り立った。人里に着いた魔理沙は人里が少し騒がしいことに気付く。あくまで幻想郷比ではあるが、里は普段から活気にあふれている。だが、この日は普段にも増して活気にあふれていた。活気の原因が気になった魔理沙は音を頼りに騒がしい声がする方に動いて行く。しばらく、歩いていると、人だかりができている場所を見つけた。魔理沙は人だかりの一番外にいた男に事情を聞く。

 

「なあ、なんでこんなに人が集まってるんだ?」

「おっ、霧雨さんのとこのお穣ちゃんか」

 

 魔理沙は霧雨さんというワードを出されて、眉をひそめる。人里は決して広くはない。自分を知っている人間だって当然多い。魔理沙が家出した後、魔法の森に住んでいるのも霧雨道具店の娘という扱いをされるのが煩わしいからだ。普段なら、適当に挨拶をして去る魔理沙だが、今日に限っては人だかりの原因に対する好奇心が大きく、男に回答を求める。

 

「なんでも、誰でも魔法が使えるようになるマジックアイテムを売っているらしいんだ。皆大盛り上がりさ。魔法を使える人間は限られるからなあ。ホントに誰でも使えるってんなら、大金出してでも買いたい奴はいるんじゃないか?」

「誰でも魔法を使えるようになる?」

 

 魔理沙は再び眉をひそめる。魔理沙はかなりの努力をして魔法を使いこなせるようになったクチだ。だからこそ、魔法の習得が難しいことは誰よりも知っている。

 

 そもそも、魔理沙は人里に住む一般的な人間の中では魔法を上手く扱えていた方だった。しかし、それでもアリスのようなベテランの域に達する魔法使いの実力には遠く足元にも及ばない。

 

 魔理沙には悔しい現実だが、アリスのように年数を重ねずに強力な魔法を使おうとするならば、生まれ持ってのセンスがどうしても必要になるのだ。……魔法とは発動原理が異なるため、比較は難しいが……、いつも霊夢と弾幕ごっこを行い、霊夢の術を見せ付けられ、センスの違いを目の当たりにさせられている魔理沙は、誰でも魔法を使えるアイテムがあると言われても信じることができなかった。

 

「一体、どんなペテン師がいるんだ?」

 

 魔理沙は独りごとを言いながら、アイテムを売っている人間を確認しようと人ごみをかき分け、前に進む。人ごみを抜け、視界が開けると、そこには背の低い老婆が大量の水晶を机に並べていた。


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