「ぐぶっ。がっ……ばっ……」と吐血するルガト。
フランは真っ二つになってしまったルガトのもとに歩み寄る。
「まだ、息があるのね。しぶといやつ」
フランはルガトに向かって右手をかざす。
「肉片ひとつ残さず破壊してあげるわ。それでも死なないというのなら……死ぬまで破壊してあげる」
「……んで?」
「……何か言った?」
「なんで私が倒れている? お母様に認められた『本物の吸血鬼』が……」
「根暗なくせに意外と傲慢なのね。あなたが倒れているのは私より弱いからよ。シンプルでいいじゃない」
「私がお前よりも弱い……? あは、あははははは!!」
「何がおかしいの?」
「だってそうじゃない! いくら髪色や破壊の能力が先祖返りしてるからって、不完全な翼に不格好な装飾を付けているお前より私の方が弱い? そんなこと、あってはならない。吸血鬼は完璧でなくちゃならないのよ。この私のように!」
「……どこまでも不愉快な女ね。……お母様が下さったこの翼を愚弄する者は誰であっても許さない。死ね!」
ルガトを破壊せんと右手を握ろうとした時、フランの手が破裂し、鮮血が散る。
「う、あぁあああああああああ!?」と叫び声を上げ、フランがうずくまる。
「舐めないでよ、クソガキ」
ルガトの口調が変わり、眼からはハイライトが失われていた。上半身だけを宙に浮かばせたルガトは下半身を持ち上げ結合させて立ち上がる。
「人が少し大人しくしてれば、調子に乗って」
「お、お前……」
「あははは! なんだか気分が高揚してきたわ。自分の血をたくさん見たからかしら? 激しい痛みを受けたからかしら? 吸血鬼の本能が私に語りかけてくるわ! この世に吸血鬼は一人でいい……。最強の存在は一人でいいって!」
ルガトは輪をかけて不気味な笑みを浮かべ、フランを見下す。
「お母様にお前を見せるのはやめね。私にここまでの屈辱を与えたんだもの。苦しめて苦しめて苦しめて苦しめてから殺してあげる。ほーら、まずは左足からね」
ルガトが右手を握ると、フランの左足が爆発し、太腿から先が断ち切られる。
「う、ぎゃぁああああああああああああああああ!?」
「フフフフフ。感謝しなさい。お前が大事に左手に持っているレアアイテムは壊さないでおいてあげるわ。お母様への手土産にするから。さ、その杖から手を離しなさい?」
「はぁ、はぁ。だ、だれが……」
「あっはは! そう言うと思った! あなたもプライドが高そうだものね。素直に言うこと聞くわけないわよねぇ。じゃあ、無理矢理はがして上げるだけよ」
ルガトはフランの左手の親指だけを破壊する。
「あ、がああ!?」
「ほらほら。早く杖を離しなさい。離さないなら、次は人差し指を破壊するわよ」
「だ、だれが……!」
「あらそう」
「いやぁああああああああああ!?」
「あら、ごめんなさい。指を一本ずつ壊してあげるつもりだったんだけど、いっぺんに左腕を破壊しちゃった。本当にごめんね」
ルガトはフランから無理矢理レーヴァティンを奪い取る。
「あっはは。すごいわ、この杖。吸血鬼の力を増幅してくれる。私の破壊の能力が強まっているのが感じられるわ。あなたの体で試してあげる!」
フランの右脚から放たれる爆裂音……。
「あ、あ、あ、あ」
「あはは、すごいすごい。さすがレアアイテム。右脚が跡形もなくなくなっちゃったぁ。もう大して声も出ないのね。やっぱり不完全だから弱いのかしら。……残った右腕も消し飛ばしてあげる」
「………………!!!!」
フランはあまりの痛みと連続攻撃による体力の低下で声を出すこともできない。ただ、自分の四肢が飛び散るのを待つだけになっていた。
「もう、叫ぶこともできないの? これじゃあ、玩具にもならないわね。……あら、あなた泣いてるの?」
フランの双眼からは涙が流れ落ちる。
「その涙の意味は何かしら? 痛み? 恐怖? 怒り? 何にせよ最強の存在である吸血鬼に涙は似合わない。やっぱりあなたはその不完全な翼と同じく不完全な吸血鬼だったのね。もう声が出ないなら……玩具にもならないなら、その頭を残しても意味はないわね。さようなら」
ルガトはフランの頭部に照準を合わせると……右手を握りこむのだった。