「さて、もうとどめを刺させてもらうんですけど。まだ抵抗するつもりかしら?」
「……当然でしょう? あなたみたいな異常者に幻想郷や冥界を荒らさせるわけにはいかないわ……!」
「あっそ。もう隠している力はなさそうだし、アンタが勝てる見込みなんてなさそうなんですけど。それでもまだやるっていうの?」
「だまりなさい……!」
幽々子は死を操る程度の能力を発動させた。死の波動がプロメテウスに襲いかかる。しかし、プロメテウスの表情に変化はない。余裕を見せる表情のまま、彼女は杖を波動に向ける。プロメテウスに到達する波動だけが打ち消され、無効化されたのだ。周囲の草木や虫たちが波動の影響で枯れたり、死んだりてしまう中、プロメテウスはダメージなくピンピンしている。
「そ、そんな……。私の力が……!?」
「もうお前の能力は見切ったんですけど。結構楽しませてもらったけど、とどめなわけ」
驚愕する幽々子に向けて零弾を連射するプロメテウス。次々と弾に撃ち抜かれる幽々子。回復力の高い幽々子だが、あまりに無数の零弾に撃ち抜かれ、次第に弱っていく。
「あ、うぅ……」
「幽々子様……!」
弱ってうめき声をあげる幽々子。その姿を見た妖夢がたまらず駆け寄ろうとする。
「そこにいなさいと言ったでしょう……。妖夢……!」
幽々子は妖夢を睨みつける。妖夢の身を思っての発言だったが、幽々子に穏やかな口調で指示できる余裕はなかった。幽々子の余裕のない表情を見た妖夢は思わず足を止める。
「この後に及んで仲間に助けてもらうつもりがないんだ。結構根性あるじゃん。でももう終わりなんですけど?」
プロメテウスはそう言いながら、零弾を一発幽々子の肩口に向けて発砲する。幽々子の体に穴が開いてしまうが……もう彼女の体は回復しなくなっていた。
「あっはは。もうかなり弱っちゃった感じ? それじゃあ、捕まえちゃうんですけど!」
プロメテウスはフラスコを取り出すと、口を幽々子に向ける。
「あっはは。安心するわけ! アンタの魂は上等な人造人間を作るのに使ってあげるから!」
プロメテウスがフラスコに魔力を込める。周囲の空気ごと幽々子を吸い込んでいく。吸い込まれまいと抵抗しようとした幽々子だったが、もう彼女にそんな体力は残されていなかった。
プロメテウスは幽々子がフラスコの中に入るのを確認すると、蓋をした。
「……っはぁ。死を与える能力を持った亡霊なんて激レアなんですけど! 大事に使ってあげるわけ!」
プロメテウスは恍惚とした表情でフラスコを見つめる。まるで、欲しい玩具を親に買ってもらった少年のような容貌。純粋にすら見えるプロメテウスの瞳に主人を奪われた妖夢は怒りと恐怖を併せた感情を覚え、背筋を震わせるのだった。